3項製造罪(姿態とらせて製造)と児童淫行罪を観念的競合とした東京高裁H17.12.26とは事案が異なるので、判例違反にならないということか?
それだと、検察庁が困るよね。
近々、調査官が判例雑誌で匿名解説するのを待ちましょう。
参考までに、判決文と上告理由を紹介しておきます。
最高裁H19.7.18
判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,・・・刑訴法405条の上告理由に当たらない。
第3部 上告理由
上告理由第1 法令違反・判例違反〜児童淫行罪と製造罪の罪数関係について(観念的競合である)
1 法令違反
両罪は観念的競合になるというのが判例(東京高裁H17.12.26、大阪高裁H18.9.21)であり、実務である。
ところが、原判決は、児童淫行罪(家裁)と製造罪(地裁)は併合罪であり公訴事実の同一性がないと判示した。原判決
まず,①の主張について検討する。原判示の児童に淫行をさせる罪に係る行為である被告人らと児童との性交等とその場面を撮影した行為とは,時間的には重なっているものの,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下では,社会通念上1個のものと評価することはできないから,両者は併合罪の関係にあるというべきである。論旨はその前提を欠き,理由がない。第2部で述べたように、撮影→編集→ダビングという製造行為は包括一罪であって、児童淫行罪+撮影(製造罪)は観念的競合であって、
児童淫行罪+撮影(製造罪)
+
撮影→編集→ダビング
は全部、科刑上一罪である。というのが判例の帰結でもある。
にもかかわらず原判決は原判示の児童に淫行をさせる罪に係る行為である被告人らと児童との性交等とその場面を撮影した行為とは,時間的には重なっているものの,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下では,社会通念上1個のものと評価することはできないから,両者は併合罪の関係にある
として、真っ向から従来の判例に反対する判示をした。
しかも、同じ被告人の同じ行為(淫行の際の撮影行為と児童淫行罪)について観念的競合という評価を前提にした大阪高裁H18.9.21にも反するのである。さらに、児童淫行罪と製造罪を観念的競合として家裁で審理することは実務の通例であって、それらにも反する。罪数についての最高裁の判例がないと実務にも混乱が生じる。
奈良家裁H16.2.5
奈良家裁H16.1.21
横浜家裁横須賀支部H17.6.1
東京家裁H16.10.25
長野家裁H18.4.20
千葉家裁H12.12.22
札幌家裁小樽支部H18.10.2(控訴中→札幌高裁も追認)
従ってこれらを併合罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するから原判決は破棄を免れない。
上告理由第2 憲法39条違反(二重処罰)
上告理由第3 憲法違反〜少年法37条は憲法39条違反
上告理由第4 法令違反(管轄違)