児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強姦(177条後段)と3項製造罪は混合的包括一罪

 前提として
 撮影行為はわいせつ行為(最近では東京高裁h22.3.1等)。
 強制わいせつ罪と3項製造罪は観念的競合。(仙台高裁h21.3.3 名古屋高裁h22.3.4等)
 また、姦淫はわいせつ行為の一種であって強姦罪は強制わいせつ罪の特別類型なので、強姦の際のわいせつ行為は強姦罪の包括一罪(裁判例コンメンタール第2巻p303池本判事)。

第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第177条(強姦)
暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

 で、こういう訴因がやってきた。

第1 被告人はa(11歳)が13歳未満の者であることを知りながら、h22.6.1 大阪市北区西天満所在の被告人方において、姦淫し、もって同女を強姦した。

第2 前記日時場所において、被告人は同女が18歳未満であることを知りながら、カメラ付き携帯電話の撮影機能を使用して、同児童を相手方とする性交にかかる姿態をとらせて撮影し、1号ポルノ・3項製造罪

 第1は強姦罪(177条後段)
 被害者が11歳なので第2の行為はわいせつ行為であって強制わいせつ罪にも該当する。
 第2の行為が強制わいせつ罪で起訴されていれば、第1と第2は強姦罪の包括一罪(上限は懲役20年)。
 第2の行為が強制わいせつ罪+3項製造罪の観念的競合で起訴されていれば、第1と第2は強姦罪の包括一罪(上限は懲役20年)。
 だとすれば、第2の行為が3項製造罪で起訴されたとき、たまたま罪名が児童ポルノ製造罪になっただけのことで、このときだけ併合罪(上限は23年)とするのは均衡を欠くから、第1と第2は強姦罪の包括一罪(上限は懲役20年)になるはずである。