具体的には
求刑4年・求刑3年・求刑2年6月の場合の科刑
という質問。
一般的にいえば、
それが科刑の上限だという検察官の御意見なので、それ以下の刑になる
3年以下の求刑だから執行猶予になるということではない。
結局、量刑相場に個別事例を当てはめて決まる。
と回答する。
たとえば、奥村弁護士担当の福祉犯では、
- 求刑4年
判決:懲役3年執行猶予5年
判決:懲役3年執行猶予5年保護観察
判決:懲役2年6月 実刑
- 求刑2年6月
判決:懲役2年6月執行猶予3年
判決:懲役2年実刑
- 求刑1年6月
判決:懲役1年6月執行猶予3年
- 求刑1年
判決:10月実刑
というのがあって、求刑と科刑の関係については、
それが科刑の上限だという検察官の御意見なので、それ以下の刑になる
3年以下の求刑だから執行猶予になるということではない。
結局、量刑相場に個別事例を当てはめて決まる。
としかいえない。
まあ、検察庁の経験とか量刑データベースはすごいから、「求刑懲役4年」の場合、検察官としては、「実刑」という御意見だというのはわかります。
それで執行猶予となった場合に、検察官控訴してきたり、してこなかったりするので、被告人には不安な日々がしばらく続きます。
原田國男「量刑判断の実際」 増補版
執行猶予を付するかどうかの問題と刑期の長短とは別の事柄であり,刑期は責任に応じて定め,執行猶予は主に予防の観点から決すべきであるから,まず,刑期を定めてから猶予とすべき情状があるか否かを検討すべきであって,実刑とすへき場合と執行猶予とすべき場合とで,刑期が異なることは許されないという考え方もあり得る.しかし,実務では,前述のように,刑期と執行猶予の許否を一体として量刑判断をしているものと思われる。これは,両者で厳密に情状を区別することが困難であること,執行猶予の刑期は,それが取り消されたときに服役しなければならない刑の期間を示して,善行保持のための心理的強制の効果をねらったものといえることなどを理由とする。したがって,執行猶予とするときの刑期が実刑とするときのそれよりも長期になることは,不合理ではない。そして,その刑期を求刑と同一とするのが実務の大勢なのである。
・・・・・
執行猶予か実刑か悩むことは,実務ではかなりあり,筆者も法廷のノブを握るまでいずれか迷ったこともある。そのような場合には,「疑わしきは被告人の利益に」の精神を信用して被告人を執行猶予にしたこともある。被告人に贋されたと思って執行猶予にするという寛容さもあってよい。なお,迷っているときには,あらかじめ執行猶予と実刑の両者の場合に備えて2つの主文を用意しておくのか賢明である。急に気が変わると主文ミスを招く危険がある。