児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

製造罪は、強姦とは併合罪、強制わいせつとは観念的競合だという話。

 高裁と最高裁とでこの問題が越年しました。
 くどいですが、100回くらい唱えると刷り込まれて本当になるかもしれないので、書いておきます。
 強姦・強姦致傷の犯罪事実として撮影行為を挙げるものも散見されるが、撮影行為が、強姦の実行行為(「暴行・脅迫」や「姦淫」)と評価されるわけがないので、これは余事記載(訴因特定・補足説明)と理解すべき。誤解を招くので、ほんとは量刑事由として記載すべきですね。
 あるいは、強制わいせつと強姦の複合形態(包括して強姦)の強制わいせつ部分として撮影行為が評価されているとも理解できる。
 撮影は性交にあらず、常識ですわな。
 さらも、主張してもいいですが、姦淫行為の「不可罰的事後行為」などと主張すると、「刑法を勉強し直してこい」と怒られそうな気がします。誰かが主張しないと判断も出ないわけですが。

大阪地裁H18.3.22
【判決日付】平成18年3月22日
【参考文献】判例タイムズ1209号313頁
被告人は,
第6 帰宅途中のF(当時21歳)を認めて同女を姦淫しようと企て,同年9月5日午前3時ころ,大阪市〈以下略〉501号室の当時の同女方前まで跡をつけ,帰宅して玄関ドアを閉めようとした同女に対し,矢庭にその口を手で塞ぎ,髪の毛を引っ張るなどの暴行を加えながら,同室内に侵入した上,同室内において,同女に対し,「抵抗したりしたらどうなるか分かってるやろな。明日から外歩けんような体にしたる。髪の毛とか眉毛とかも全部剃って外出られんようにしたるぞ。」などと申し向けてその反抗を抑圧し,あらかじめ準備したバイブレーター等を膣内に挿入してその姿をビデオ撮影し,自己の陰茎を口淫させるなどした上,強いて同女を姦淫した
第12 帰宅途中のL(当時22歳)を認めるや,強いて同女を姦淫しようと企て,同年11月14日午後10時30分ころ,大阪市〈以下略〉802号室の当時の同女方前まで同女の跡をつけ,帰宅して玄関ドアを閉めようとした同女に対し,矢庭にその口を手で塞ぎ,その顔面を手拳で多数回殴打するなどの暴行を加えながら,同室内に侵入し,同所において,そのころから同月15日午前1時ころまでの間,同女に対し,「黙って言うことを聞いたら,殺さへん。」などと申し向けてその反抗を抑圧し,同女を裸にして,両手をロープで緊縛しながら陰部を弄ぶなどし,さらに,あらかじめ準備したバイブレーターをその陰部にあてがい,自己の陰茎を口淫させながら,その姿をビデオ撮影するなどした上,強いて同女を姦淫し,その際,上記暴行により,同女に約3週間の通院加療を要する右上眼瞼皮下血腫,右上眼瞼腫脹及び右眼結膜下出血の傷害を負わせた
ものである。

 強制わいせつ(致傷)の犯罪事実に撮影行為が含まれる場合は、性的傾向の発現であるかぎり「わいせつ行為」と評価されているようである。
 主張してもいいですが、口淫などのわいせつ行為の「不可罰的事後行為」などと主張すると、「刑法を勉強し直してこい」と怒られそうな気がします。

佐賀地裁H18.3.14
【判決日付】平成18年3月14日
第4 わいせつな行為をする目的で,同年10月15日午後5時35分ころ,福岡県大牟田市g町h丁目i番地所在のG方南方約130メートル先路上において,帰宅途中のH子(当時7歳)に対し,同児を持ち上げて,同所に停車中の普通乗用自動車の運転席側後部ドアから同車両内に押し込むなどの暴行を加え,直ちに同児を自己の支配する同車両内に乗せたまま同車両を発車させて略取した上,そのころから同日午後7時5分ころに同市j町k丁目l番地所在のI方北側路上で同児を解放するまでの間,同市内又はその周辺に停車させた同車両内において,同児が13歳未満であることを知りながら,同児に対し,同児を全裸にし,その陰部をバイブレーター様の異物で弄び,その口腔内に自己の陰茎を含ませ,その状況を所携のデジタルカメラで撮影するなどした
第5 わいせつな行為をする目的で,同年11月4日午後3時30分ころ,佐賀県鳥栖市m町n番地所在のJ神社東側路上において,下校途中のK子(当時9歳)に対し,同児を持ち上げて,同所に停車中の普通乗用自動車の運転席ドアから同車両内に投げ入れるなどの暴行を加え,直ちに同児を自己の支配する同車両内に乗せたまま同車両を発車させて略取した上,そのころから同日午後5時ころに同市o町p番地所在のL方西側路上で同児を解放するまでの間,同市内又はその周辺に停車させた同車両内において,同児が13歳未満であることを知りながら,同児に対し,その下着を脱がせ,その陰部を手指で弄び,その状況を所携のデジタルカメラで撮影するなどし,その際,同児に対し,約1週間の治療を要する第1度会陰裂傷の傷害を負わせた
第6 わいせつな行為をする目的で,平成16年2月20日午後4時15分ころ,同市q町r番地所在のM方北側路上において,下校途中のN子(当時9歳)に対し,同児を持ち上げて,同所に停車中の普通乗用自動車の助手席側後部ドアから同車両後部座席に押し込むなどの暴行を加え,直ちに同児を自己の支配する同車両内に乗せたまま同車両を発車させて略取した上,そのころから同日午後5時ころに同市s町t番地所在のO方東側路上で同児を解放するまでの間,同市内又はその周辺に停車させた同車両内において,同児が13歳未満であることを知りながら,同児に対し,その下着を脱がせ,その陰部を手指で弄び,その状況を所携のデジタルカメラで撮影するなどした

 これは、強制わいせつと強姦未遂の複合形態(包括して強姦未遂)の強制わいせつ部分として撮影行為が評価されている。

神戸地裁H17.11.25
【判決日付】平成17年11月25日
第5(平成16年9月2日付け起訴状記載の公訴事実)
女子児童に強いてわいせつな行為をし,状況によってはさらに強いて姦淫する目的で,平成15年5月31日午前9時ころ,兵庫県明石市<番地等略>所在の中学校の敷地内にその正門から侵入し,同中学校玄関ホール前付近において,G(当時14歳)に対し,
「職員室はどこ,案内して。」などと言葉巧みに申し向けて同女を同中学校の中庭にある植え込みに誘い込み,同所において,「抵抗したら殴るぞ。殺すぞ。」などと語気鋭く申し向けて脅迫し,同女の体操服のシャツ等をまくり上げ,その両乳房をもむなどし,さらに,同女を同中学校玄関ホール北側入り口前付近まで連行し,同所において,同女の体操服のシャツ等をまくり上げ,同女の体操服の半ズボン等を脱がせて同女を裸にし,所携のカメラ付き携帯電話で同女の乳房や陰部を撮影した上,同女が抵抗しなかったことから,強いて同女を姦淫しようと決意し,前記脅迫により反抗を抑圧されている同女を姦淫しようとしたが,同女の膣内に自己の陰茎を挿入できなかったため,その目的を遂げなかった

 これなんか、もろに撮影行為を「わいせつ」と評価していますよね。日本語の読解能力として。

横浜地裁H16.9.14
【判決日付】平成16年9月14日
【参考文献】判例タイムズ1189号347頁
 第1 被告人は・・・被告人の指示や行為に疑いを懐いて拒否することができない心理状態に陥らせたうえ,その抗拒不能状態に乗じて以下の各わいせつ行為をした。
 1 被告人は,平成13年4月14日ころ,前記藤沢教室において,A子(当時14歳)に,悪性黒色腫や癌の診療行為等を装って,着衣を脱いで全裸にならせたうえ机の上に仰向けに寝かせ,陰部を押し開き,手指を挿入するなどしたり,その乳房を手でもむなどしてその身体を弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した。
 2 被告人は,平成14年7月21日ころ,同県鎌倉市岡本〈番地略〉○○大船教室個別指導教室において,同女(当時15歳)に,同様な診療行為等を装って,着衣を脱いで上半身裸にならせ,乳房を手で触るなどしたうえ,全裸にならせて机上に仰向けに寝かせ,陰部を押し開き,手指を挿入するなどしてその身体を弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した。
 3 被告人は,同年11月3日ころ,同個別指導教室において,同女に,同様な診療行為等を装って,同様に全裸にならせて机上に仰向けに寝かせ,股を開かせたうえ陰部を押し開き,手指を挿入するなどしてその身体を弄び,さらに,陰部等をビデオカメラで撮影した。
 4 被告人は,平成15年1月13日ころ,同教室において,同女に,同様の診療行為等を装って,同様に全裸にならせて机上に仰向けに寝かせ,股を開かせたうえ陰部を押し開き,手指を挿入したり,舌でなめるなどして弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した。
 5 被告人は,同年7月17日ころ,同教室において,同女(当時16歳)が同様の状態にあるのに乗じ,同様の診療行為等を装って,同女に制服を着たまま机上に仰向けに寝かせ,その太股等を手で触るなどし,パンティを脱がせ,股を開いたうえ陰部を押し開き,手指を挿入するなどし,さらに同女に着衣を脱いで全裸にならせて机上に俯せに寝かせ,その太股付近を手でなでるなどしてその身体を弄び,さらに,その陰部等をビデオカメラで撮影した

 性犯罪の種類によって製造罪との罪数が異なるのは、強姦罪の構成要件が限定的であるのに、強制わいせつのそれが比較的限定されていないことによります。要するに「わいせつ」は何でもありで、「女児の尻を平手で叩く」というのもありました。

 児童淫行罪は性交・性交類似行為と限定的、児童買春罪は性交・性交類似行為・性器接触行為と限定的だから、それぞれと製造罪とは併合罪
 青少年条例違反とは、「わいせつな行為」という非限定的な構成要件なら観念的競合でしょうね。