一審 東京地裁事件(買春罪 被害者2名 前科なし)
私選弁護人
職罪寄附30万円
弁論1回で結審
調書上も被告人質問でも被害者への謝罪なし
被害者に対する謝罪も、弁償の申出もなし
実刑(懲役1年)
控訴審
私選弁護人
被害弁償100万円
被害者への謝罪の手紙
原判決破棄 執行猶予3年
分析
原審弁護人(私選)の弁護ミス。被告人に用意させた30万円の使い方を間違っている。30万円もあれば、まず、謝罪・被害弁償・専門機関におけるケアを試みなければならない。(児童の被害=将来的な心身への悪影響が謝罪と金銭賠償で瘉されるとは思えないが、犯人側にできることはこれくらいしかない。)
この弁護人は児童買春事件は性犯罪であって、性犯罪では被害弁償を検討しなければならないことに気づいていない。
皮肉なことに、裁判所は児童買春に被害者がいることを知っていたので被害弁償を行わなかったことを指弾されてしまった。(判決理由を見ると、裁判官も新法なので慎重に解説書等を確認したものと思われる。)
原判決で謝罪・弁償が必要であること指摘されて、初めて気づいた。
控訴審では、被害者への示談ができて、執行猶予に減刑された。
しかし、100万円というのは、児童買春事件(騙しや強制がない)の示談金としては高すぎる。遅きに失して、被告人に余分な支出をさせている。(一審実刑判決を聞いてからの示談においては、事件から遅すぎて示談に応じない場合も多いし、示談に応じてくれる場合でも、金額面では、どうしても足元を見られてしまう。一審段階では、被害者調書・被害者証人の採否をも利用できるから、通常の示談金は、せいぜい、1名30万円である。)
察するところ、原審弁護人は、児童買春と売春とを混同して、「被害者がいない罪だから、被害弁償は不要。それより風俗を乱した点について職罪寄附を30万円程度すれば、執行猶予になる」とアドバイスしたと思われる。
被害者の存在に全く気づいていないので、被告人質問でも被害児童らへの謝罪の言葉を引き出していないし、情状証人にも弁償への協力を約束させていない。
被告人自身も、捜査段階でも謝罪の手紙を書かせるなど、安価で有効な慰謝の手段もあるのだが、それもやっていない。
そのため、被害者2名の普通の児童買春事件にもかかわらず、異例の実刑判決となった。
私選弁護人には高額の着手金・報酬金を支払っているはずである。早期終結で実刑判決とは、この原審弁護人は弁護人らしいことは何にもしていない。
こんな弁護人を選任した被告人は不運というしかない。
自白事件においても、
検察官請求証拠を被告人とともに吟味して、同意・不同意を活用して検察官証拠を最少限に絞らせること、
検察官立証の期間を活用して、被害者への慰謝の措置を最大限試みること
を徹底すべきである。
児童買春事件で執行猶予が多いのは、ほとんどの検察官が法の趣旨を知らないため求刑が甘いこと、ほとんど裁判所も法の趣旨を知らないし、被害の深刻さを知らないために量刑が甘いだけである。万一、詳しい検察官と詳しい裁判所に当たって、弁護人だけが詳しくなければ、思いがけず重い判決になる。
児童買春事件は甘くみてはいけない。