児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童が自らを撮影する「自撮り」の画像を加害者にメールで送るという方法が、オッサンの製造罪(単独犯)になる理由は理論的には理解できない 

 児童正犯説が負け続けていまして

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24H1V_U6A320C1CC0000/
警察庁によると、2015年に児童ポルノの被害が確認された子供は前年よりも159人増え、905人だった。統計を始めた00年以降で最悪を更新した。昨年7月から罰則対象となった個人的な趣味で児童ポルノを所持する「単純所持」の摘発は17件だった。
 自らを撮影する「自撮り」の画像を加害者にメールで送り、脅される被害を受けた子供が376人と4割を占めた。警察庁の担当者は「スマートフォンを使って交流サイト(SNS)で知り合った相手から被害に遭うケースが増えている」と話している。

阪高裁H28.1.29
(2)弁護人は,児童自身が自由意思で画像データを撮影送信したのであるから,児童が児童ポルノ製造罪の正犯であって,被告人は共犯又は共同正犯に当たると構成すべきであると主張する。しかし,本件では,公訴事実のとおり,被告人が,児童に法2条3項3号に係る姿態をとらせ,その上で,これを携帯電話で撮影させ,その画像データを送信させて,自身の携帯電話に装着された電磁的記録媒体にその画像データを保存するという方法により,同号に係る児童の姿態を描写した児童ポルノを製造したという,被告人を単独実行正犯とする構成による児童ポルノ製造の事実を認定することができ,一審判決は,そのような本件訴因の内容に従って前記事実を認定したものにほかならず,その判断自体が相当であることは動かない。児童が自ら上記姿態をとってこれを撮影し,その画像データを被告人に送信したことが認められるが,法7条3項の規定に係る「描写することにより」との要件については,文理上その方法,態様が限定されているわけではない上,いずれも,判断能力が未成熟な児童に対し,被告人が指示又は依頼をしてその撮影・送信を行わせたものと認められるから,やはり一審判決の事実認定やその法的評価に誤りがあるとみる余地はない。仮に,弁護人が主張するような事実認定上,法律上の構成が可能で、あったとしても,そのことにより,本件公訴事実に沿って認定評価を行った一審判決の判断が不当ということにはならないので、あって,その主張は採用の限りではない。
なお,弁護人は,被告人が児童に画像データの送信を依頼したことについて,被告人が脅迫や欺岡をした事実はないとも主張するが,脅迫等を用いた事実がなかったとしても,そのことは,原判断の当否に影響するものではない。

阪高裁H21.12.3
第3 控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
 論旨は,本件については,?県青少年健全育成条例23条2項の「わいせつな行為を教える」,又は同条1項の「わいせつな行為をし」に該当する条例違反の罪が成立するにすぎないのに,法7条3項の児童ポルノ製造罪の成立を認め,?(ア)被告人に,被害児童が正犯である法7条1項(提供罪)及び同条2項(提供目的製造罪)の教唆犯が成立し,同条3項の児童ポルノ製造罪に該当しないのに,同罪の正犯とし,(イ)仮に(ア)が認められないとしても,被害児童と被告人とは同条3項の児童ポルノ製造罪の共同正犯であるのに,被告人の単独犯とし,さらに,(ウ)被害児童の正犯性が否定されるとしても,被告人は教唆犯であるから共犯の従属性により不処罰であるのに,被告人を処罰した原判決には判決に影響することが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,?については,関係証拠によれば,原判示の犯罪事実を優に認めることができるから,本件について法7条3項の児童ポルノ製造罪が成立することは明らかである。
?については,同条各項の規定は,平成16年法律第106号による改正前の法に規定がなかったものであるが,旧法施行後の状況等にかんがみ,児童の権利の擁護を一層促進するため新たに犯罪化され,処罰の範囲が拡大されたものであるところ,対象となる行為は,いずれも法2条3項各号に掲げる児童の姿態を描写した児童ポルノを前提とするもので,当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取・性的虐待行為にほかならず,しかも,不特定多数の者に対する提供(法7条4項)及びその目的での製造等(同条5項)の罪ではもとよりその流通が予定され,特定少数の者に対する提供(同条1項)及びその目的での製造等(同条2項)の罪では流通の危険性が大きく,他人に提供する目的を伴わない製造罪(同条3項)にあっては描写された児童の人権を直接侵害する行為であり,流通性は小さいものの,その危険性を創出するものであるから,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長するごとになるため,児童を性的搾取・性的虐待の被害から擁護することを意図して上記各行為を処罰するものとしたのであって,当該児童は,原則的に,その被害者と位置付けられているというべきである。
そうすると,被告人が,携帯電話の下着売買募集のサイトで知り合った被害児童に対し,携帯電話のメールで,被害児童のポルノ画像を買い取る旨執ように働き掛けた上,指示して姿態をとらせた被害児童のポルノ画像を撮影・送信させて,自己の記録媒体に保存させたという本件について,(ア)の点は,被害児童が児童ポルノの提供(同条1項)及びその目的での製造(同条2項)の罪の正犯で,被告人はその教唆犯にすぎないとする点で,(イ)の点は,被害児童と被告人が他人に提供する目的を伴わない児童ポルノ製造罪(同条3項)の共同正犯であるとする点で、(ウ)の点は,被告人が教唆犯にすぎないという点で,いずれも誤っており,所論はいずれも採用することができない独自の見解というほかない。
 その他,所論が主張するところを検討しても,原判決には所論が指摘するような法令適用の誤りがあるとはいえない。
 論旨は理由がない。

 児童共犯説の判例がぼちぼち出ています。

神戸地裁H24.12.12
第1 16Aが18歳に満たないことを知りながら
1 同女と共謀の上 前後2回にわたり (Aの住所 大阪市内)において
同女に上半身裸で乳房を露出した姿態をとらせた上 同女において 同女の携帯電話機のカメラ機能を利用して静止画として自ら撮影し、
平成28年3月24日午後5時43分から午後6時43分頃までの間
前後23回にわたり その画像データを被告人が使用する携帯電話機に宛てて電子メールの添付ファイルとしてそれそれ送信して
いずれもその頃 大阪府堺市内の被告人方において 同画像データを 同携帯電話機に受信してこれを記憶させて蔵置して 
もって 児童に衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものをとらせ これを視覚により認識する事ができる方法により電磁的記録にかかる記憶媒体に描写し、当該児童に係る児童ポルノを製造し、

第1の1の罪に関する主位的訴因について
第1の1の罪の主位的訴因にかかる公訴事実においては被告人が単独で児童ポルノを製造したとされており この点 検察官は被告人が自らの携帯電話機に画像データが添付されたメールを受信してそのデータを保存した行為が児童ポルノ製造の実行行為であると主張する
しかし 当裁判所は、証拠上 被告人が製造行為を行ったとは認められず、 従って単独正犯としての被告人の罪責を問うことはできないと判断し、予備的訴因(被害児童との共同正犯)に基づき有罪と認定した
その理由は次の通りである
 本件のメールの受信については、関係証拠によっても、被告人がその受信の際、自己の携帯電話機を用いて何らかの具体的操作を行ったことを示唆する証拠はない。昨今の携帯電話機のメール機能では、サーバーから自動的に個々の携帯電話機にメールデータが保存される設定となっているのが通常であり(これは公知の事実である。)、被告人の携帯電話機も同様であったとうかがわれること(甲5)からすれば、 被害児童が当該画像データを添付したメールを被告人の携帯電話機宛てに送信したことにより その後 被告人において特段の操作を行うことなく サーバーを介して自動的に同携帯電話機かそのデータを受信し、メールに添付された画像データごと同携帯電話機に保存されたものと推認される
このように メールの受信が自動的に行われ 被告人の側で受信するメールを選別したり 受信するかどうかを決定することができない状態であったこを踏まえれば このような方法で行われるメールの受信(厳密にはメールデータの携帯電話への保存)をもって 被告人による製造行為ととらえることは困難というほかない
 以上の通り 被告人が児童ポルノの製造の実行行為を行ったとは認められず 主位的訴因については犯罪の成立を認めることができないと判断した(なお 付言すると 当時16歳という被害児童の年齢や 被告人は要求の際に欺罔・脅迫等の手段を用いて織らず、被害児童が被告人の要求に応じた主たる理由は被告人への好意にあったことなどすれば 本件については証拠上 間接正犯の成立も認めることができない)。

広島高裁h26.5.1
(なお,被告人の当審公判供述の趣旨等にも鑑み,職権で判断を加えると,原判決が認定,摘示した原判示第3の事実の内容は,前記(1)で摘示したとおりである。
要するに,原判決は,Aの原判示の姿態を撮影して,その画像データを被告人の携帯電話機に送信し,その携帯電話機の記録媒体に蔵置させるに至らせるという,児童ポルノ製造の犯罪の主要な実行行為に当たるものを行ったのはA自身であるという事実を摘示しているが,Aが共同正犯に当たるとは明示しておらず,被告人に関する法令の適用を示すに当たっても,刑法60条を特に摘示していない。
他方,原判決は,本件について間接正犯の関係が成立するという事実を示しているものでもなく,本件の関係証拠に照らしても,間接正犯の成立をうかがわせる事実関係があるとは認め難い。
しかし,原判決は,罪となるべき事実として,Aが上記の実行行為を自ら行ったという事実は摘示し,これらの行為は,被告人が,自らの意思を実現するため,Aとの意思の連絡の下,Aに行わせたものであるという趣旨と解される事実関係を摘示しているものと理解することが可能であるし,かつ,そうした事実関係を前提に犯情評価等を行っていると見ることができることなどに照らすと,原判決が,被告人とAとの共謀の存在を明示せず,法令の適用に刑法60条を挙示していないことが,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認ないし法令適用の誤りに当たるとは,いまだいい難いと考えられる。)。

 判例は交際していると共犯になるとか言うんだが、森山野田によれば、その場合は無罪になると解説されていたのに、いつのまにか児童もオッサンも捕まる方向になっている。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
p190
Q42
18 歳未満の児童が、交際相手に対し、自分の裸体の写真や、その交際相手との性交等の写真を渡した場合にも第7条第1項の罪は成立するのですか。
A
他人に児童ポルノを提供する行為については、第7 条第1 項の罪が成立し、これは児童による場合であっても、自己を描写したものであっても、また交際相手に対するものであっても、変わるところがありません。
もっとも、第7 条第1項の罪が保護しようとする対象は、主として描写される児童の尊厳にあると考えられますから、当該児童ポルノにおいて描写される児童がその交際相手に対して提供したり、交際相手が当該被描写児童に対して提供する場合のように、提供者、被提供者と描写される児童との関係や被描写児童の承諾の経緯、理由等を考察し、当該提供行為について真撃に承諾し、かっその承諾が社会的に見て相当と認められる場合には、違法性が認められない場合もありうると考えられます。

p100
この場合において、たとえ描写される児童が当該製造について同意していたとしても、当該児童の尊厳が害されていることは否定できず、また、児童を性的行為の対象とする風潮が助長され、抽象的一般的な児童の人格権が害されるといえますので、第7 条第3 項の罪が成立します。
もっとも、ごくごく例外的に児童と真撃な交際をしている者が、児童の承諾のもとでその裸体の写真を撮影する等、児童の承諾があり、かつこの承諾が社会的にみて相当であると認められる場合には、違法性が阻却され、犯罪が成立しない場合もあり得ます
p109
Q48 被写体となる児童が児童ポルノの製造に同意していたとしでも、第7 条第3 項の罪は成立するのですか。目的を問わず、児童ポルノの製造(いわゆる単純製造)を処罰することにすると、交際中の高校生どうしが相手の裸体の写真を撮影する行為まで処罰されることになってしまいませんか。
A
第7 条第3 項の罪は、児童に第2 条第3 項各号に規定する姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写してその児童についての児童ポルノを製造する行為について、その児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為にほかならず、かつ、流通の危険性を創出する点でも非難に値するので、新たに処罰の対象とするものです。
この場合において、たとえ描写される児童がその製造について同意していたとしても、その児童の尊厳が害されているといえますし、そもそも、この児童の同意は、この児童の判断能力が未成熟なことに基づくものであると考えられますので、当罰性が認められ、第7 条第3項の罪が成立すると解されます。
お示しの事例のように、児童が、真撃な交際をする相手による写真撮影を承諾する場合のように、製造者と描写される児童との関係、描写される児童の承諾の有無及びその経緯(社会的相当性)等から、刑法上の違法性が認められない等の理由により、犯罪が成立しない場合もあると考えられます。
このことは、法案の中で具体的な文言として明記されているものではありませんが、刑法の一般理論によって犯罪が成立:しないとされる問題です。つまり、児童ポルノに限らず他の刑罰規定に関し犯罪が成立しない事由を具体的な文言として明記されていなくても、刑法の一般理論によって犯罪が成立しない場合があります。この点、犯罪が成立しない個々具体的な場合を明記することは困難であり、また実際的でもありません。したがって、ことさら犯罪が成立しない場合を明記しなくても、刑法上の違法性が認められない等との理由により犯罪が成立しないとの解釈が当然に導かれると考えています。