原判決は、動画データを電磁的記録に係る記録媒体その他の物に記録して保存する行為が、わいせつ行為とは日時や場所を異にするものを併合罪と評価していると解される。(東京高裁R05.3.30)
原判決は、東京地裁令和4年8月30日
強制わいせつ罪と製造罪(複製なし)、強制性交罪と製造罪(複製なし)を観念的競合にした原判決が追認されています。「一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性」があるということか。ハメ撮り一個説
強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ被告事件
東京高判令和5年3月30日D1-Law.com判例体系〔28311761〕東京高裁R05.3.30
第3 理由齟齬の主張について
1 論旨は、〈1〉原判示第4の7、第11の2、第15の3(趣意書に第15の2とあるのは誤記である。)、第16の3、4、第17の2の各児童ポルノ製造に関し、また、〈2〉原判示第4ないし第11、第13ないし第17に関し、各強制わいせつ、強制性交等罪とこれを撮影した各児童ポルノ製造罪の罪数評価に、それぞれ理由齟齬がある、というのである(〈1〉1/12趣意書72頁以下、1/25補充書1頁以下、〈2〉1/12趣意書162頁以下)。
2 その根拠として、所論は、〈1〉については、被告人の行為により児童らが原判示の各姿態をとるに至ったことは明白であって、原判決は「姿態をとらせた」事実を認定しながら、「ひそかに」児童ポルノを製造する行為に関する児童ポルノ法7条5項を適用している、〈2〉については、わいせつ行為や口腔性交を撮影する行為も強制わいせつ罪におけるわいせつ行為であり、これを児童ポルノ製造罪として評価するのであれば、児童ポルノ製造罪と強制わいせつ罪等は観念的競合となり、現に原判示第16の4、第18では観念的競合としているのに、その余については併合罪としており、解釈に一貫性がない、などと主張し、いずれも理由が齟齬している、というのである。
3 しかしながら、所論は、結局のところ、いずれも原判決の法令適用の誤りを主張するにすぎず、原判決の理由自体に食い違いのあることを具体的に指摘するものとはいえないのであって、刑訴法378条所定の事実の援用を欠く不適法なものである。
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第6 強制わいせつ、強制性交等罪と児童ポルノ製造罪の罪数に関する法令適用の誤りの主張について
1 論旨は、原判示第4ないし第11、第13ないし第17に関し、各強制わいせつ、強制性交等罪と、これを撮影した各児童ポルノ製造罪とを併合罪とした原判決には、法令適用の誤りがある、というのである(1/12趣意書162頁以下)。
2 その根拠として、所論は、わいせつ行為等を撮影する行為は、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為であり、これを児童ポルノ製造罪としても評価するのであれば、一個の行為であるから、各強制わいせつ罪、強制性交等罪と、各児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にある、などと主張する。
3 1の各事件において、原判決は、動画データを電磁的記録に係る記録媒体その他の物に記録して保存する行為が、わいせつ行為とは日時や場所を異にするものを併合罪と評価していると解される。刑法176条後段等に触れる行為と児童ポルノ法7条4項、5項に触れる行為は、基本的にはそれぞれが性質を異にする行為であり、社会的評価において、直接的なわいせつ行為とこれを撮影した動画を保存して児童ポルノを製造する行為は別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり、一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性がなければ、それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるところ、原判決も同様の観点から前記のように評価したものと解されるのであって、この判断が誤っているとはいい難い。