児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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性的意図はないことなどから「わいせつな行為」には当たらないと主張された事例(福島地裁r5.12.12)

性的意図はないことなどから「わいせつな行為」には当たらないと主張された事例(福島地裁r5.12.12)

大法廷h29.11.29が引用されています。

福島地方裁判所令和5年(わ)第36号
令和5年12月12日刑事部判決

       判   決

会社員 a 平成4年○○月○日生
会社員 b 平成5年○○月○○日生
会社員 c 平成6年○月○○日生
 上記3名に対する各強制わいせつ被告事件について、当裁判所は、検察官門倉良則及び同永澤靖識並びに私選弁護人齊藤好明(被告人3名につきいずれも主任)各出席の上審理し、次のとおり判決する。


       主   文

被告人3名をそれぞれ懲役2年に処する。
被告人3名に対し、この裁判が確定した日から4年間それぞれその刑の執行を猶予する。
訴訟費用のうち、証人dに支給した分はその3分の1ずつを被告人3名の負担とし、証人e及び同fに支給した分はその2分の1ずつを被告人a及び同bの負担とし、証人g及び同hに支給した分はその2分の1ずつを被告人a及び同cの負担とする。


       理   由
第4 被告人aの行為の「わいせつな行為」該当性
1 弁護人は、被告人aが、自己の陰部を被害者の陰部付近に着衣の上から接触させていないことを前提として、その余の行為に性的意図はないことなどから「わいせつな行為」には当たらないと主張するので、以下この点について検討する。
2 強制わいせつ罪における「わいせつな行為」該当性は、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らして、その行為の性的な意味の有無や性的意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断すべきである(最高裁平成29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照)。
3 被告人aの行為は、ベッドに仰向けになった女性の股の間で男性が腰を前後に振るというものであるところ、これ自体、性行為を容易に連想させるものであって、社会通念に照らして、性的な意味合いが強い行為であることは明らかである。そして、職場の宴会の場において、被告人aが、個人のその場の判断で、職場の同僚に過ぎない被害者に覆い被さり、被害者の股を開かせた上で腰を前後に振って、被告人aの陰部と被害者の陰部付近が接触したという具体的な状況を踏まえてみても、被告人aの行為の性的な意味合いが弱まることはあり得ない。仮に、被告人a自身は、笑いを取るために行ったことで性的意図がなかったとしても、そのような主観的事情は、本件においては、「わいせつな行為」に当たるか否かの判断に影響を及ぼすものではない。
 よって、被告人aの行為は、「わいせつな行為」に当たるものであり、弁護人の主張は採用できない。
第5 結論
 以上によれば、その他弁護人の主張を踏まえて検討しても、各被告人の行為が、それぞれ強制わいせつ罪の構成要件に該当することは明らかであり、被告人3名それぞれに判示のとおり強制わいせつ罪が成立する。
(法令の適用)
1 構成要件及び法定刑を示す規定
 被告人3名の各判示所為はいずれも令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条前段に該当する。
2 宣告刑の決定
 所定刑期の範囲内で被告人3名をそれぞれ懲役2年に処する。
3 刑の執行猶予
 被告人3名に対し、それぞれ情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
4 訴訟費用
 訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項本文により、証人dに支給した分はその3分の1ずつを被告人3名の負担とし、証人e及び同fに支給した分はその2分の1ずつを被告人a及び同bの負担とし、証人g及び同hに支給した分はその2分の1ずつを被告人a及び同cの負担とする。
(量刑の理由)
1 被告人3名の各行為態様は、仰向けに倒した被害者の身体に覆い被さり、手で股を開かせたり、同人の両手首を強い力で押さえつけたり、上半身を密着させたりするなどして被害者を抵抗困難な体勢にさせた上、被害者の足の間で腰を前後に振り、各被告人の陰部と被害者の陰部付近を着衣越しに接触させたというものであり、前記のとおり、各行為の性的な意味合いは強い。