児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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「わいせつな行為」とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」~司法研修所検察教官室著「捜査実例中心刑法各論解説」

 この定義には「性欲興奮」が入ってるので、使わないですよ。
 女児については、検察教官室は性的羞恥心説でしょうかね。0歳児は羞恥心害されないから無罪でいいですね。

強制わいせつ罪(刑法176条)の「わいせつな行為」
1 「わいせつな行為」について
「わいせつな行為」とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」と解されている。
具体的には、陰部や乳房、臂部への接触行為など身体的接触行為のほか、裸にして写真を撮影する行為など直接体に触れなくてもわいせつ行為に当たり得る。
2わいせつな行為に当たるか否かの判断について
最大判平29.11.29 (刑集71-9-467)は、「刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味合いがあるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。
したがって、そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。
しかし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当ではない。」旨判示した。
この事案は、被告人が、当時7歳の女児に対し、自己の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、同児の陰部を触るなどした事案である。
裁判所は、「知人から金を借りる際、金を貸す条件として被害児童とわいせつな行為をしてこれを撮影し、その画像データを送信するよう要求されたため行ったものであり、性的意図はなかった。」旨の被告人の主張は排斥できないとしつつ、上記行為について、「当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから、その他の事情を考慮するまでもなく、性的な意味合いの強い行為として、客観的にわいせつな行為であることは明らかである。」旨判示した。
上記判例は、わいせつ性の判断において一律に性的意図は不要としたものではなく、「個別具体的な事情の一つとして行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。」としつつ、行為者の主観を考盧するまでもなく客観的行為のわいせつ性が明白な場合には、行為者の性的意図が欠けていても強制わいせつ罪は成立し得るとしたものであることに留意する必要がある。
なお、上記判例について、前田雅英「最新刑事判例研究(第45回)」(捜査研究66-12-2)を参照されたい。
3年少者に対するわいせつ行為について
乳房への接触行為について、乳房が発達していない年少者であっても、性的意識が全く発達していないとはいえず、社会通念上も性的感情の侵害があると見られることから、乳房が未発達というだけではわいせつ行為にならないとはいえないと解されている。
4参考裁判例(新潟地判昭63.8.26判時1299-152)
被告人が、小学校のグラウンドで遊んでいた女児(当時7歳) を認め、同児に甘言を用いて誘い出し、同児を籾殻袋の上に座らせ、ポロシャツの前ボタンを外した上、そこから手を差し入れてその右乳部を多数回撫で回し、さらに、スカート内に手を差し入れてパンツの上からその臂部を撫でた事案。
なお、被告人には、5歳から9歳の女児の陰部を手指で弄ぶなどした強制わいせつ罪等の複数の前科があった。
公判で、弁護人は、「乳部も臂部も未だ何ら男児と異なるところはなく、その身体的発達段階と社会一般の通念からして、本件行為はわいせつ行為ということはできない。」旨主張した。
しかし、裁判所は、「被害児童は、性的に未熟で乳房も未発達であって男児のそれと異なるところはないとはいえ、同児は、女性としての自己を意識しており、被告人から乳部や臂部を触られて蓋恥心と嫌悪感を抱き、被告人から逃げ出したかったが、同人を恐れてこれができずにいたものであり、……一方、被告人は、同児の乳部や臂部を触ることにより性的に興奮をしており、そもそも被告人は当初からその目的で本件行為に出たものであって、この種犯行を繰り返す傾向も顕著であり、そうすると、被告人の行為は、強制わいせつ罪のわいせつ行為に当たるといえる。」旨判示した。
捜査のポイント
年少者に対するわいせつ行為について、
前記参考裁判例では、7歳の女児の乳部を撫で回すなどの行為がわいせつ行為と認定されたが、これは、被告人の性的傾向や、本件犯行時に陰茎が勃起するなど性的興奮状態にあったことのほか、被害児童は、「乳部を触られた際、気持ちが悪く、恐ろしくて泣き出したくなった。」旨供述し、被害後、祖母に「あのおじさん、エッチなおじさんなんよ・」などと言った言動なども考慮して判断したものと思われる。
このように、特に年少者に対する行為がわいせつ行為に当たるかどうかは判断が困難な場合もあることから、形式的に判断することなく、被疑者の性的傾向、当該行為に至る経緯、当該行為の態様、被疑者の性的興奮の程度、犯行後の被疑者の言動、被害児童の被害時の心情や、被害後の周囲への言動なども十分捜査をし、適切に判断する必要がある。
また、性的意図の有無について、前述のとおり、判例は、強制わいせつ罪において一律に性的意図を不要としたものではなく、客観的に見てわいせつな行為であることが明らかとまでは言い難い行為(例えば、単に接吻する行為や、裸体を写真撮影するにとどまる行為など)の場合には、被疑者の性的意図の有無が問題となるものと考えられることから、従前のとおり、被疑者の性的意図の立証も意識した捜査を行う必要があると思われる。