児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノが撮影・送信されてしまっている児童ポルノ要求行為(埼玉県青少年健全育成条例)の逮捕

 青少年条例の要求行為というのは、児童ポルノ製造罪(7条4項)の未遂・予備的性格ですので、撮影・送信されてしまい製造罪が既遂になった場合には、要求罪は成立しないと思います。
例えば
 1/1 要求
 1/2 製造
 1/3 要求
 1/4 製造
 1/5 要求
だとすると、要求罪は1/5だけになるでしょう。
 だいたい国法の製造罪は未遂を処罰しないのに、条例で未遂を処罰していいのかという論点もあります。

 兵庫県条例の同様の規定について、神戸地検も実効性がないと回答しています。

兵庫県知事井戸敏殿
神戸地方検察庁検事正
罰則の定めのある条例案に関する協議について(回答)
本年11月13日付け文第2280号をもって依頼のありました「青少年愛護条例の一部を改正する条例」について検討した結果,罰則の適用に関し,下記のとおり回答します。

第1 検討結果
1 児童ポルノ等の提供を求める行為
(1) 罰則を設けること
本条例の一部改正(以下, 「一部改正」という。)は, その必要性に基づいて,青少年に対して児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止するものであり, これを担保すべく罰則を設けることにも合理的必要性が認められる。
ただし,
①警察が事件を認知するのは,青少年の相談を受けることによるのが通常と思われるが,青少年が行為者の求めに応じて児童ポルノ等を送信して児童ポルノの製造等に至るより前の段階で,警察が認知することは見込まれ難く, また,製造等に至っている場合に製造等のほかに法定刑の低い児童ポルノ等の提供を求める行為を併せて処罰する必要性に乏しいこと,
②現時点で他の地方公共団体には同様の罰則を設ける条例がないため,青少年が提供を求める行為を了知した時に兵庫県内にいたが(結果地),行為者が行為時に同様の条例が存在しない場所にいた事案では,行為者には,故意として,禁止場所における禁止行為であるとの認識,つまり,提供を求める行為が禁止されている兵庫県内で青少年が了知するとの認識が求められる可能性があることなどから,一部改正による罰則が適用される場面は,実際にはかなり限定されるものと思料される。

埼玉県青少年健全育成条例
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第19条の3
何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であ つ て、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第21条の4第1項及び第5項第2号において同じ。) その他の記録をいう。第29条第3号において同じ。)の提供を求めてはならない。
○追加(平成 30 年 10 月 16 日条例第 34 号
・・・
第29 条 次の各号のいずれかに該当する者は、 30 万円以下の罰金に処する。
(3)第 19 条の3の規定に違反して、次に掲げる行為を行 つ た者
イ 青少年に拒まれたにも かか わらず、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めること。
ロ 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し、対償を供与し、若しくはその供与の申込み若しくは約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めること。
・・・
※年齢知情条項は適用なし
第31 条 第 11 条第3項、第 12 条第3項若しくは第4項、第 16 条第2項、第 17 条の2 、 第17条の4第1項若しくは第2項(第1号又は第2号に係る部分に限る。)、第17条の5(第3号に係る部分を除く。) 、 第 18 条第 1 項、第2項若しくは第3項、第 18 条の2、第 18 条の3、第 19 条第1項若しくは第2項、 第 19 条の2、 第 20 条、第 21 条第2項又は第 21 条の2第1項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第 28 条から第 29 条 まで の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らな

第三十三条 この条例の罰則は、青少年に対しては、適用しない。

解説

(趣旨)
本条は、全ての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を、当該青少年に不当に求める行為を禁止したものである。

(解説)
本条は、脅されたり、だまされたりするなどして、青少年自身が裸体等をスマートフォン等で撮影させられた上、メール等で送らされる被害、いわゆる「自画撮り被害」にあった青少年が急増しているため、不当に求める行為の禁止が新設されたものである。
1「何人も」とは、国籍、住所、年齢、性別を問わず、全ての人(自然人)を指す。 ただし、青少年が 本条 の違反行為を行っても罰則は適用されない(条例第 33 条)。
2「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等であり、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については該当しない。
3「児童ポルノ」の該当性については、児童ポルノ禁止法第2条第3項の定義に準ずる。
4「提供を求める」は、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」と同じであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得るべき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいう。
具体的には、有体物(写真等)としての児童ポルノを交付するよう求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為 等 が該当する。
5「求める」とは、青少年に対して、要求するのみならず、勧誘するなども含めた広い概念をいう。
6青少年に拒まれたにもかかわらず再度要求した者や、不当な方法により要求した者は、30万円以下の罰金に処せられる( 条例 第29条3号)。
[関係条文]
児童買春、児童ポルノ等に係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2 条( 定義 、第7条 (児童ポルノ所持、提供等


・・・
第3号関係
( 「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた者がそれを拒否されたと認識しているにもかかわらずということになる。
したがって、やり取りの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが提供を求めた者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
( 「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、脅迫に至らない程度の人に不安の感を生じさせる行為をいう。
( 「欺く」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させる行為である。真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
( 「困惑させる」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。
相手方に威力を示す場合、義理人情の機微につけこむ場合、恩顧愛執の情義その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢・知能・性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。
( 「対償を供与し、若しくはその供与の申込み若しくは約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
対償は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8bbf7dc41523ce82756f58bcc8091dc428f52cc7
女子高生に「わいせつ画像の定期契約」求めた男逮捕 同じ趣味で知り合った2人 生徒のスマホ見た父母驚き
逮捕容疑は昨年7月18日~8月1日、県内居住の10代の女子高校生が18歳に満たないことを知りながら、「定期契約しませんか」「毎月3千円とか」「画像も欲しいです」などとメッセージを送信し、わいせつな画像を要求した疑い。

 同署によると、同年8月11日に女子高校生の両親が「スマートフォンの中を確認したところ、わいせつな画像が保存されていた」と同署に相談し、通信状況などから男とのやりとりを発見した。2人は共通の趣味から交流サイト(SNS)で知り合ったという。「裸が見たかった」と容疑を認めているという。