青少年条例の自撮り規制の解説~神奈川県青少年保護育成条例
婚姻してると青少年ではないですからね。画像は児童ポルノだけど、
(児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第31条の2何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録をいう。第53条第4項第13号において同じ。)の提供を求めてはならない。【条例】
(罰則)
第53条略
2.3略
4次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(1)~02)略
(13)第31条の2の規定に違反した者であって、次のいずれかに該当するもの
ア青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた者
イ青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し、対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた者
(14.15略
〔趣旨〕
本条は、インターネットを通じて青少年が言葉巧みにだまされたり、脅かされたりして、自分の下着姿や裸の画像を撮影させられた上、メール等で送信させられる、いわゆる「自画撮り被害」が増加している実態にかんがみ、青少年を将来にわたって苦しめる要因となりうる危険性を排除するため、青少年に対して自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録媒体その他の記録の提供を要求する行為を禁止する規定である。〔解説〕
I条文関係
1「何人」とは、各条項とともに県民はもとより、旅行者、滞在者も含め、成人であると未成年であるとを問わず、現に本県内にいるすべての人をいうことから、青少年が本条に定める行為を行った場合にも、当然取り締まりの対象となる。
ただし、本条例は、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為から青少年を守ることを目的とするものであるため、本条例に違反した者が青少年であるときは、条例第55条(適用除外)により、罰則は適用されない。
2「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、要求する相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等であり、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等の提供を求めた場合については、該当しない。
どのような表現が児童ポルノ等の提供の要求に該当にするかどうかについては、要求文言とその前後のやりとり等を総合的に半|」断し、該当性の判断を行うこととなるが、仮にその要求に青少年が応じてしまった場合に、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下児童買春、児童ポルノ法という。)第2条第3項に該当する児童ポルノ又は同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識できる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録が提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要である。3「提供を求め」とは、児童買春、児童ポルノ法第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物(写真等)としての児童ポルノを交付するよう求めたり、電磁的記録を電子メールやSNS等により送信するよう求める行為がこれに当たる。
Ⅱ罰則関係(第53条第4項第13号)
1「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた行為者が、それを拒否されたと認識しているにもかかわらず要求することである。
したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが行為者に到達していることが明らかである場合には該当する。
2「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいい、脅迫(人に恐怖心を生じさせるもので生命、身体、自由、名誉又は財産に害を与えることを告知)とは異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しない。
3「欺き」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることである。真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
具体的には女性や同年代になりすまして児童ポルノ等を要求する行為等が考えられる。
4「困惑させる」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。
青少年に威力を示す場合、義理人情の機微につけ込む場合、恩顧愛執の情義その他青少年を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられ、具体的には「送ってくれないと別れる」、「死ぬ」などと言い、青少年を困惑させて児童ポルノ等の送付を求めることが考えられる。
これは、青少年に対する言動のほか、青少年の年齢・知能・性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判|釿する。
5「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除なども含まれ、金額の多寡は問わない。
6本規定により処罰するためには、行為者からの要求文言等を青少年が了知していることが必要であり、単に行為者からの要求文言の送付のみでは足りない。
7本規定は、刑法の属地主義の原則により、構成要件該当事実の一部が神奈川県内で発生した場合に適用される。すなわち、要求を行う者又は要求を受ける者(青少年)のいずれかが神奈川県内に所在する場合などに適用される。
なお、神奈川県外から要求を行う者において『要求を受ける者(青少年)が神奈川県に所在すること』の認識は必要ないが、青少年が県外にいるという積極的な認識がある場合は慎重に判断すべきである。8本規定は、「当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること」を禁止するものであり、年齢の知惰性がなくとも処罰可能とする条例第53条第7項の対象外であることから、要求を行う者に要求の相手が青少年だという認識がなく、かつ、認識できるような事情がない場合には適用されない。
これは、「自画撮り被害」が相手を直接視認などで確認することができないインターネット上のやりとりの中で行われることが想定され、要求する相手が青少年だと認識していない者にまで本規定を適用することは過剰な規制と考えられるためである。
~〔参考法令〕(第5関係法令参照)
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律①③
判例】
○昭和62年12月2日高松高裁判決
(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年香川県条例50号)違反事件)
<争点>
条例の罰則が当該地方公共団体の区域外にある者に対して適用されるか。
〔判決要旨〕
県条例が禁止する内容の電話を当該地方公共団体の区域外から区域内に通話した者は、電話を受けた場所である結果発生地が当該県内である以上、当該県民及び滞在者と同様に本県条例が適用されるものと解されるべきである。