児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止~千葉県青少年健全育成条例の解説 令和2年7月

児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止~千葉県青少年健全育成条例の解説 令和2年7月
 国会図書館にあります。

27 児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止
(第19条の4)
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)第19条の4何人も、青少年に対し、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。以下この条において同じ。)の提供を行うように求めること。
二青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
三前各号に掲げるもののほか、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
追加〔令和2年条例19号〕
4【解説】(1) 「何人も」とは、県民はもとより旅行者、滞在者を含み、また成人であると少年であるとを問わず、県内外にいる全ての者をいう。
(2) 「青少年」とは、千葉県青少年健全育成条例第6条第1号に定める「青少年」をいう。
(3) 「児童ポルノ等」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。
参考
「性交類似行為」とは、実質的に見て、性交と同視し得る態様における性的な行為をいう。
例えば、異性間の燃交とその態様を同じくする状況下におけるあるいは性交を模して行われる手淫。口淫、同性愛行為を指す-.(出典『よくわかる改正児篭貿春・児篭ポルノ禁止法~:
「殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているもの」について『児童の性約な部位』とは、性器等(性器、肛門、乳首)若しくはその周辺部、響部又は胸部をいい、典型的なものとしては、全裸や下着姿の児童が、性器が見えるポーズや、胸部を強調するポーズ蝉を撮っている写真簿が考えられる。
「殊更に」 という文言は、当該翻像等の内容が、性欲の興奮又は刺激に向艤られているものと評価されるものであることを要求する趣旨の文言である。
そこで、たとえ全裸の写真であっても、自宅などで水浴びをしている幼児の自然な姿を、親が成長記録として撮影した画像ば、澗常、「殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているj とはいえないと考えられる.
(4) 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等(児童ポルノ法第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録)で、写真や電磁的記録に係る記録媒体のほか、メール等に添付する画像データも含まれる。
したがって、要求された青少年の姿態が描写されていない児童ポルノ等は該当しない。
※典型例としては要求された青少年が自分自身の裸等を被写体として撮影する、いわゆる「自画撮り画像」であるが、当該青少年に係る児童ホルノが撮影されていれば足り、当該青少年以外の者が映り込んでいる画像や、当該青少年以外が撮影した画像も該当する。
また、要求行為時点以前に撮影された画像も含まれる。
※どのような表現が「児童ポルノ等の提供を行うように求めること」に該当するかについて、要求文言とその前後のやり取りを総合的に判断し、該当性の判断をすることとなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童ポルノ法第2条第3項に規定する児童ポルノ等が提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要である。
(5) 「提供を求める」の「提供」は、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」と同じであり、「提供を求める」とは、当該児童ポルノ等を相手方(児童ポルノ等が提供された先)において利用し得べき状態に置くよう求める法律上・事実上の一切の行為をいう。
具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するよう求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
また、「求める」とは、青少年に対して、要求するのみならず、勧誘するなども含めた広い概念である6 (「勧誘」とは、甘言を用いて相手方に勧めたり、誘ったりすることであり、「送ってくれたら5,000円払う」は勧誘、「5,000円払うから、送ってくれ」は要求に当たる)※総合的に判断し、「児童ポルノ等」の提供を求めていると社会通念上明らかに認められる場合は、文言による場合以外であっても「提供を求める」にあたり、その方法を問わない。
(6) 「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者が、要求を受けた者から、当該要求行為を拒否されたと認識しているにもかかわらずということであり、やり取りの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合をいう。
※青少年が「拒否している」というためには、文言その他の態度等によって拒否していると社会通念上明らかに認められる必要がある。
なお、黙示のものも含まれる。
その例示としては、着信拒否設定(受信拒否) されていることを要求者が認識している場合が考えられる。
( ・メールが未開封の場合に処罰するとすれば、行き過ぎた規制ではないか)
ストーカー規制法においては、「拒まれたにも関わらず」について、「黙示のものも含まれるが、行為者が拒絶を認識していることが必要である。」として運用されている。
メールが未開封のままとなっているのみの場合は、拒まれていると認識することは難しく、処罰の対象とはならないと考えられる。
自画撮り規制に関して「拒まれたにも関わらず」に、黙示のものも含まれるとすることも、行為者が拒絶を認識していることが必要であるとすれば、行き過ぎた規制であるとは言えない。
(・SNSには既読を確認できるものもあるが、メールでは拒否を認識するのが難しいのではないか)
=行為者が拒絶を認識していることが必要であることから、メールが着信拒否設定をされた場合であっても、拒否された旨のメールが送信者に届く場合や、第三者などからたまたま拒否している旨を知り得た場合には、「拒まれた」に該当するといえるが、そうした事情がなく、着信拒否されていることを送信者が知り得ない場合は該当しないと考えられる。
(7) 「威迫」とは、言動、態度等により相手方に心理的威圧を加え、不安の念を抱かせることをいう。
「威迫」には、「送らないと、お前の家に行くぞ」「逃げようと思っても逃げられないんだから、写真撮って送れ」「写真を撮って送るか、5,000円払うかどっちかだ」などのメッセージを送信したり、入れ墨の画像を送りつけたうえ、「俺は恐いんだよ」などと自画撮り行為を要求する場合が該当する。
※一方、刑法上の「脅迫」は、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要し、両者は異なる。
脅迫は「渡さないと殺す」と言い、要求するなど、相手に恐怖心を生じさせるものが当たる。
(8) 「欺き」とは、嘘を言って相手を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に陥らしめる行為をいい、児童ポルノ等を要求するために行われるものであることを要する。
「欺き」には、同性や同年代になりすまして、体の悩み相談を装って、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を要求する行為が該当する。
※要求行為者が何もしていないのに、相手が勝手に誤解している場合には、相手の錯誤を強めたり、不知を利用していない限り、「欺き」には該当しないと考えられる。
(9) 「困惑させる」とは、立場を利用したりするなど、言動や態度により、相手を惑い困らせ、精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。
「(交際相手が)送ってくれないと別れる」などと立場を利用する場合、社会通念上青少年であれば対応に苦慮して正常な判断ができなくなってしまうような「画像を送ってくれないとおつちやん自殺する」などの言動による場合や、しつこく求めて、あきらめた気持ちにさせて性的写真を送らせる場合など、情緒不安定や未熟等につけ込むものが「困惑させる」~に当たる。
なお、「困惑させる」は、行為者が青少年の無知、未熟、情緒不安定等につけ込み、積極的に行うことを要し、単に「困惑した」からと言って、これに当たるわけではない。
(10) 「対償を供与し、若しくはその供与を約束する方法」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対108‐〔条例の解説〕給付としての経済的な利益を供与、又はその供与の約束することをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
5,000円を実際に払った場合は「対償を供与」する方法に、「送ってくれたら5,000円払う」~や「5,000円払うから、送ってくれ」は「対償の供与を約束する方法」に当たる。
(11) 青少年が県内に所在することの認識要求を行う者が県外であっても、要求を受ける青少年が県内にいる場合には、本条の適用がある。
また、判例によれば、要求を行う者において「要求を受ける者が県内に所在すること」の認識は原則として必要ない。
ただし、青少年が県外にいるという積極的な認識がある場合には、慎重に判断すべきである。
高松高判昭和61年12月2日~被告人が香川県条例において禁止されている内容の電話を数回にわたり徳島県の自宅から香川県内の他人宅にかけた事例「条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地舌の三一口奉弓二)方公共団体の 区域外から区域内に向けて内容が犯韮となる電話をかける行為に及んだ場合には、をか』けけたた場場所所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、ように犯罪の結果発生地が香川県内とされる以上、行為者は直接的かつ現実的に香川県に関わりを持ったというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである」