児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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青少年条例の「わいせつ」概念~鎮目征樹「児童に対する性犯罪処罰規定の現状と課題について」刑事法ジャーナル69号

 高松高裁r03(上告中)によれば、議論されることもなく、既に強制わいせつ罪の定義(大法廷h29.11.29)と同じと解されて、性的意図不要になっています。

https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2021/02/28/000000
高松高裁R03.3.2
③原判決は,本件行為中に「単に自己の性的欲望を満たす目的で」と認定して,本条例16条1項の「猥せつ」の定義に性的意図を盛り込んでおり,性犯罪につき性的意図を不要とする最高裁判例に反していて法令の解釈を誤っている点,において,原判決には,それぞれ判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
 4 論旨③について
 原判決の説示をみても,原判決が,一般的に性犯罪について行為者の性的意図が必要であると説示しているとは解されないから,論旨は前提を誤るものであって理由がない。

最高裁でも追認されたので、青少年条例の「わいせつ」についても、必ずしも性的意図不要になったようです。

最決R03.11.1
弁護人奥村徹の上告趣意のうち,県青少年保護育成条例16条1項にいう「猥せつ」の概念が過度に広範であり,不明確であるとして憲法31条違反をいう点は, その概念が所論のように過度に広範であるとも,不明確であるともいえないから,前提を欠き, その余は,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であり,弁護人sの上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって, いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって, 同法414条, 386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

鎮目征樹「児童に対する性犯罪処罰規定の現状と課題について」刑事法ジャーナル69号
第2に、性行為の内容によって、被害児童が受ける精神的被害や健全育成に対する悪影響が相当程度異なるのであれば、(地方自治法所定の上限があるため致し方がないこととはいえ)条例が淫行とわいせつ行為を全く同じ法定刑で同様に処罰する現状について、それが適切といえるかにつき検討の余地がある。
また、この点に関連して、わいせつ行為の意義・外延が問題となるが、条例のわいせつ行為の意義について、裁判例の一つ(前掲注(而・大阪高判平成23・12・21 [A43])は、これを刑法の風俗犯と同様に「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」と定義する。
刑法上の性犯罪におけるわいせつ概念については、近時、判例の新たな展開を受け、再検討の必要性が指摘されており、条例におけるわいせつ概念についても、議論の深化が期待される。