児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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鳥取県青少年条例による、児童ポルノ要求行為の正当事由は「犯罪捜査、弁護活動相談・救済機関の相談業務、医療行為、学術研究等の正当な業務のために児童ポルノに該当するものの提供を求める場合など」

 他の県は威迫困惑という手段の限定になってますが、鳥取県は手段は何でもよくて正当事由ないものがアウトという規定です。

鳥取県青少年健全育成条例の解説r0210
児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第18条の2何人も、正当な理由がなく、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。)の提供を求めてはならない。
【関係条文】
第26条略
2~4略
5次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(1)~(3) 略
(4) 第18条の2の規定に違反した者
6~9略
【要旨】
本条は、すべての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ等の提供を求めることを禁止する規定です。
【解説】
青少年が脅されたり、だまされたりして、自分の裸体をメール等で送らされる「自画撮り被害」が全国的に拡大しており、スマートフォンの所有率の高さ、SNS等インターネット上のコミュニケーションの普及などにより、青少年がこうした要求行為にさらされる危険|生がさらに高まることが懸念されるところ、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号) 」では、児童ポルノ等の要求行為自体を禁じていないことから、「自画撮り被害」の未然防止のため、児童ポルノ等の要求行為を禁止したものです。
1 「何人も」とは、第15条の解釈と同じく、県民はもとより旅行者、滞在者などの全ての自然人を指し、国籍、性別、年齢を問いません。
なお、条例の効力は、原則として当該地方公共団体の地域において属地的に生ずると解され、電話や手紙、インターネットを通じて要求行為が行われた場合、行為者が要求行為を行った場所のみならず、被害者となる青少年が要求行為を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、直接的かつ現実的に本県に関わりを持った行為者にも本条は適用されますbよって、県外から県内の青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為、県内から県外の青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為についても規制の対象となります

2 「正当な理由がなく」とは、社会通念上正当な理由があるとは認められない場合をいいます。
この要件が置かれた意義は、処罰範囲を合理的に限定するところにあり、本条の場合、この要件があることによって、例えば、犯罪捜査、弁護活動相談・救済機関の相談業務、医療行為、学術研究等の正当な業務のために児童ポルノに該当するものの提供を求める場合などは、第18条の2の構成要件に該当しないこととなります。
3 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等をいいます。したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、本条に該当しません。自画撮り、自撮り、セルフィー等と呼ばれる自分自身を被写体としてスマートフォンデジタルカメラ等で撮影したデジタル写真画像が典型的な例ですが、画像だけでなく、動画、アナログ写真等も含みます。
なお、「児童ポルノ」とは、児童ポルノ禁止法第2条第3項で規定されているとおり、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他であって、第1号、第2号又は第3号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいいます。
4 「提供を求める」とは、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得るべき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、有償・無償を問いません。
具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するよう求めたり、無体物としての電磁的記録を電子メールで送信するように求める行為がこれに当たります。
また、「求める」とは、青少年に対して、直裁的な表現で要求するのみならず、勧誘する、
提供するよう暗に仕向けるなども含めた広い概念です.
なお、どのような表現が「児童ポルノ等の提供を求める」に該当するかについては、要求文書とその前後のやり取りを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなりますが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童ポルノ禁止法第2条第3項に該当する児童ポルノ等が提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要です。
5本条に違反した者は、条例第26条第5項第4号により罰則(30万円以下の罰金)が適用されます。
6本条は、不当な手段を用いた要求行為のみを禁止しているものではなく、恋愛関係にある場合や、遊び半分であっても、児童ポルノ等のやり取りにより、インターネット上への画像等の流出やリベンジボルノに繋がるおそれがあることから、青少年に対して児童ポルノ等の提供を求める行為を、いかなる態様であっても禁止するものです。
7年齢の知情|生については、本条例は、第26条第9項で、条例上の特定の罰則規定については、その行為をした者が青少年の年齢を知らなかった(その点について故意がなかった)場合でも、知らないことについて過失があれば、処罰可能とする規定を置いていますが、本規定はその対象外としています。
児童ポルノ禁止法では、第7条第2項から第8項の各罪について、児童を使用する者については、当該児童が18歳未満の者であることの認識がなくとも、認識がないことに過失があれば処罰することとしていますbまた、同条第1項に規定する児童ポルノの単純所持は年齢を知らないことをもって処罰を免れない規定が適用されません。このため、本条例で規制する児童ポルノの製造や所持の前閏浩である要求行為について、行為者に、相手が青少年であることを認識できない場合にまで処罰することは過剰であるためです。