児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

暴力的性犯罪に引き続いて、裸体画像を撮影送信する行為は、強制わいせつ罪ではなく強要罪(神戸地裁h21.12.10、大阪高裁h22.6.18、名古屋地裁岡崎支部h30.4.19)

 

 画像を撮影送信する行為が、わいせつ行為だとすると、判示第3の強姦の後に画像送信を求めた行為(判示第4~6)は、反抗抑圧する程度の脅迫が効いているので、強制わいせつ罪になるはずですが、強要罪になっているというのは、画像を撮影送信する行為が、わいせつ行為ではないという判断が出ていると思います。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100406170426.pdf
神戸地裁H21.12.10
(罪となるべき事実)
 被告人は,養女であったA(平成6年6月15日生)に対して長期間にわたり虐待を加え同児童を極度に畏怖させていたものであるが,
第1(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の1関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年5月2日午後8時41分ころから同日午後9時23分ころまでの間,神戸市a区b町居住c番地のd所在の県営B住宅e号室の当時の被告人方(以下「被告人方」という。)において,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号1ないし5のとおり,同児童に対し,「胸寄せろ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,これに応じなければ自己の自由,身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨さらに畏怖させ,よって,同児童をして,その両乳房,陰部を露出させた姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影させ,同携帯電話機に装着されたマイクロSDカード(神戸地方検察庁平成20年領第1336号符号2-2)に画像データ5ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第2(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の2関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年5月11日午前10時32分ころから同日午前10時37分ころまでの間,被告人方において,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号6ないし11のとおり,同児童に対し,「服をまくり上げろ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童をして,その乳房を露出させた姿態,同児童の陰部に被告人の陰茎を挿入している姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影し,上記マイクロSDカードに画像データ6ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第3(平成20年8月8日付け起訴状記載の公訴事実関係)
 同児童を強姦しようと企て,平成19年5月11日,被告人方において,同児童(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,着衣を脱ぐよう申し向けて脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同児童を姦淫した,
第4(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の3関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年6月11日ころ,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,電子メールにより,「何か挟んで撮れ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,これに応じなければ自己の自由,身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨さらに畏怖させ,よって,同児童をして,同日午後零時46分ころから同日午後5時35分ころまでの間,別表番号12ないし22のとおり,被告人方において,全裸で両乳房の間や陰部に物を挟んだ姿態等をとらせ,これを同児童の携帯電話機内蔵のデジタルカメラで撮影させ,そのころ,その画像を被告人の携帯電話機に送信させ,上記マイクロSDカードに上記画像データ11ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第5(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の4関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年7月19日ころ,同児童(当時13歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,電子メールにより,「キュウリをなめている写真を撮れ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童をして,同日午前11時13分ころから同日午前11時44分ころまでの間,別表番号23ないし25のとおり,被告人方において,露出した両乳房になすびを挟んだ姿態等をとらせ,これを同児童の携帯電話機内蔵のデジタルカメラで撮影させ,そのころ,その画像データを被告人の携帯電話機に送信させ,上記マイクロSDカードに上記画像データ3ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第6(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の5関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年7月19日午後8時32分ころから同日午後8時33分ころまでの間,被告人方において,同児童(当時13歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号26ないし29のとおり,同児童に対し,「なめろ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童に被告人の陰茎をなめたり,咥えたりする姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影し,上記マイクロSDカードに画像データ4ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第7(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第2関係)
 同児童を強姦しようと企て,平成19年7月19日午後8時30分ころから同日午後8時50分ころまでの間,被告人方において,同児童(当時13歳)が上記のとおり極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,「脱げ。」などと申し向けて脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同児童を姦淫したものである。
(証拠の標目)
 省略
(事実認定の補足説明)
(求刑・懲役18年、マイクロSDカードの没収)
平成21年12月10日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 東尾龍一 裁判官 佐藤建 裁判官 村井美喜子

控訴審で破棄自判されていて、法令適用が維持されています。

阪高裁H22.6.18
判決
上記の者に対する強姦、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強要被告事件について、平成21年12月10日神戸地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は検察官出席の上審理し、次の通り判決する。
主文
原判決を破棄する
被告人を懲役 年に処する。
未決勾留日数中300日をその刑に算入する。
神戸地方検察庁で保管中の携帯電話(FOMA,F902i,シルバー色)に在中のマイクロSDカード1枚(同庁平成20年領第1336号符号2-2)を没収する。
理由
第1 事実誤認の主張について
省略
第2 職権判断
 量刑不当の論旨(なお、弁護人は、控訴趣意補充書において、原判決の量刑は不当に重いと主張するが、その理由としては事実誤認の主張として述べるところを援用するというのみであって、量刑が不当であることに関する具体的な事実の援用はなされていないのであるから、量刑不当の主張は不適法なものと認められる)に対する判断に先立ち、職権により調査するに、原判決には、以下の通り、理由齟齬の違法があると言わざるを得ない。
 すなわち、原判決は、主文において「被告人を懲役年に処する」としながら、理由中の(法令の適用)においては、「被告人を懲役13年に処し」としていて、その判決書中の主文と理由との間にくいちがいがあること、原審裁判所は、平成22年1月7日付けで、原判決書の理由中の上記「懲役13年」を「懲役年」と更生する旨の決定をしていることが明らかであるところ、更正決定について明文の規定のない刑事事件の判決に関しても、判決書自体又は記録に照らして、判決に計算違い、誤記その他これらに類する明らかな形式的誤謬があると認められる場合には、更正決定によりこれを正すことができるものと解されるが、上記の主文と理由とのくいちがいの内容は、判決書自体又は記録に照らしても、いずれの記載が誤りであるのかが明らかとはいえず(被告人作成の控訴申立書に「懲役年の判決」との記載があることをもって理由部分が誤りであるとはいえない)、また、そのくいちがいは判決の最も重要な部分である刑期に関するものであり、理由齟齬を来す実質的な瑕疵であって、単なる形式的誤謬とはいえないのであるから、更正決定によりこれを正すことはできないと解するのが相当である。
 そうだとすると、上記決定は、更正決定でなし得る限界を超えたものとして無効というほかなく、これによって原判決書の理由中の「懲役13年」の記載が「懲役年」に更生されていると認めることはできず、原判決には、判決の最も重要な部分である刑期に関してなお主文と理由との間にくいちがいがあるというべきであるから、原判決は破棄を免れない。
第3 破棄自判
そこで刑訴法397条1項、378条4号により原判決を破棄し、同法400条ただし書により更に判決することとする。
 原判決が認定した事実に、原判決が挙示する法令を適用し(科刑上一罪及び併合罪の各処理を含む。なお、「1罪として犯情の重い各児童ポルノ製造の刑で処断する」とあるのを「一罪として犯情の重い各児童ポルノ製造の罪の懲役刑で処断する」と訂正し
「判示第1、第2及び第4ないし第6の各罪について所定刑中、いずれも懲役刑を選択し、」とあるのを削除する)、その処断刑期の範囲内で被告人を懲役年に処し(なお、刑訴法402条における「原判決」の刑は宣告された刑をいうものと解されるところ、本件においては、原判決書の主文の記載が「懲役年」であるのに加え、被告人作成の控訴申立書の記載からも懲役年の刑期が宣告されたことが明らかであると認められるから、当審において懲役年の刑を宣告しても同条に反するものではない)、
刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中300日をその刑に算入し、神戸地方検察庁で保管中の携帯電話に在中のマイクロSDカード1枚は、判示第1、第2及び第4ないし第6の各罪に係る児童ポルノ製造によって生じた物で、被告人以外の者に属しないから、刑法19条1項3号、2項本文を適用してこれを没収することとし、訴訟費用は刑訴法181条1項但し書きを適用して、被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
省略
よって主文の通り判決する
平成22年6月18日
大阪高等裁判所第6刑事部

 橋爪論文で紹介されている名古屋地岡崎支判平成30.4.19を閲覧しましたが、LINEで「俺は暴力団組長だ」とか脅迫して、リアルで呼び出してわいせつ行為をして(判示第3強制わいせつ罪)、その4日後にさらに脅迫して自慰行為させ撮影送信させている(判示第4 強要罪)、強制わいせつ罪としての脅迫はあるわけで、これを強要罪としたのは、裁判所もわいせつ行為ではないと判示したことになりますよね。この裁判例は、強制わいせつ罪が伴っているので、非接触型のわいせつ行為の裁判例としては適切ではなく、大分地判平成23.5.11(公刊物未登載)の方を紹介すべきだと思います。
 検察庁は、大学教授に、未公開の裁判例を提供して、解説書いてもらってるんですが、もっと事案を選ばないと。強制わいせつ罪とした裁判例はあちこちにあるから、それを提供してやらないと。

橋爪隆(東京大学大学院法学政治学研究科教授)「非接触型のわいせつ行為について」研修860号
最近の裁判例には,インターネットで知り合ったA女に対して,自らが暴力団組長であると称していた被告人が,Aを畏怖させてわいせつ行為に及んだ上,さらに携帯電話のアプリケーションを利用して,Aを脅迫する内容のメッセージを送信するなどして,畏怖したAに自慰行為を行わせ,その姿態を撮影した上で動画データを自らに送信させた事件について,検察官の起訴に対応して,強要罪の成立を認めたものがある(名古屋地岡崎支判平成30.4.19公刊物未登載)。本件において強制わいせつ罪での処理が見送られたのは,被告人が遠隔地からメッセージを送信しており,Aは1人で自慰行為を撮影していることから,被告人の面前で同様の行為を行わせた場合に比べて,性的自由の侵害性が乏しいという評価に基づくものなのかもしれない。
しかし,被害者に自慰行為を行わせ,これを撮影させる行為は,被害者に一定の性的行為を行わせ,かつ,その内容や態様を第三者に知りうる状態に置く行為であり.まさに被害者の身体を性的に利用する行為として、わいせつ行為に該当するというべきであろう。このような理解からは,本件行為については,強制わいせつ罪の成立を認める余地もあったように思われる(注25)。
注25)なお,大分地判平成23.5.11(公刊物未登載)は,被告人が被害者をメールで脅迫し,被害者に自らの性器などを撮影させ,その画像データをメールに添付して送信させた事件について,強制わいせつ罪の成立を認めている