児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

衆議院法務委員会H23.8.9

衆議院法務委員会
第17号 平成23年8月9日(火曜日)
平成二十三年八月九日(火曜日)
○奥田委員長 次に、第百七十三回国会、高市早苗君外三名提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案及び辻惠君外二名提出、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。高市早苗君。

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 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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高市議員 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党無所属の会及び公明党の提出者を代表して、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 まず、本法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 児童ポルノの所持、提供等の行為は、描写された児童の心身や生活に有害な影響を与え続けるのみならず、このような行為が社会に広がることにより児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長し、児童が被害者となる犯罪を誘発する可能性も指摘されています。

 したがって、児童ポルノについては、法律の施行状況や国際的動向を踏まえつつ、厳しく規制していかなければなりません。

 平成十一年の児童買春、児童ポルノ禁止法の成立から十年以上たち、平成十六年には改正によって厳罰化され、それなりに効果を上げてきましたが、昨今の状況は大きく変化しております。

 特に、インターネット等の発達により、児童ポルノが瞬時に世界じゅうに拡散するようになり、描写された児童が受ける被害の拡大と長期化は看過できない状況となっています。

 また、我が国の現行法では、G8諸国のうち六カ国が罰則をもって禁止している児童ポルノの単純所持が禁止されておらず、このことが児童ポルノの蔓延を助長しているとの国内外の批判が高まっており、我が国の信用にもかかわる問題になっております。

 そこで、児童ポルノをめぐるかかる国内外の状況と、平成十六年改正時に三年を目途とする検討規定が置かれたことを踏まえ、児童ポルノについてさらに厳格な規制を設けて児童を保護することとするため、平成二十年六月に児童買春、児童ポルノ禁止法改正案を提出いたしましたが、衆議院解散により廃案となりましたので、平成二十一年十一月に改めて本法律案を提出した次第でございます。

 次に、本法律案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、適用上の注意規定を明確化しております。すなわち、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して、他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないものとしております。

 第二に、児童ポルノ所持等の禁止規定を設けております。すなわち、何人も、みだりに児童ポルノを所持等してはならないものとしております。

 第三に、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等についての罰則を設けております。すなわち、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノの所持等をした者は、一年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するものとしております。

 なお、現に所持等をしている児童ポルノについては、改正法施行後に速やかに廃棄の措置を講じていただくことを期待し、罰則については施行後一年間は適用しないこととしております。

 第四に、インターネットの利用に係る事業者の努力規定を設けることとしております。すなわち、インターネットの利用に係る事業者は、捜査機関への協力、管理権限に基づく情報送信防止措置その他インターネットを利用した児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとしております。

 第五に、児童ポルノに類する漫画等、すなわち漫画、アニメ、CG、疑似児童ポルノの規制や、いわゆるブロッキングの措置に関する検討規定を設けることとしております。

 本法律案では、実在する児童の保護を最優先とするものの、児童ポルノに類する漫画等の規制やインターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限についても、さまざまな議論が存在しております。よって、改正法施行後三年を目途として、児童ポルノに類する漫画等と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究及びブロッキングの技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨及び内容でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○奥田委員長 次に、辻惠君。

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 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

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○辻議員 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、民主党・無所属クラブの提出者を代表して、その趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 まず、本法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 児童ポルノは、児童に対する性的搾取及び性的虐待であって、その心身に有害な影響を与えるものであり、児童に対する重大かつ深刻な人権侵害であると言えます。そのような認識から、平成十一年に児童買春、児童ポルノ禁止法が成立し、児童ポルノの製造、提供等が処罰されるようになり、平成十六年の改正においては法定刑が引き上げられましたが、昨今のパソコンの普及やインターネットの発達により、児童ポルノは容易に世界じゅうに広がるようになり、複製も簡単になっているという実態があります。

 このような現状の改善は、基本的には製造、提供側を規制する現行法による取り締まりを徹底することにより図られるべきと考えますが、需要があるからこそ供給があるのも事実であり、有償で反復して取得するという、特に悪質で、かつ供給を喚起するような行為については処罰対象とする必要性があると言えます。

 そこで、今回、新たに児童ポルノ等の有償かつ反復での取得という特に悪質なケースに限って需要の側を処罰する規定を設けるとともに、定義の明確化を図ることで処罰範囲を明確化し、また、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度の充実及び強化を図り、もって児童の権利の擁護に資することとするため、本法律案を提出することとした次第であります。

 次に、本法律案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、児童ポルノ等取得罪の新設等であります。

 その一は、児童ポルノ等の取得について罰則を設けております。すなわち、みだりに、児童ポルノまたはこれに係る電磁的記録等を有償でかつ反復して取得した者は、一年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するものとすることとしております。

 その二は、児童ポルノの製造の罪について処罰範囲を拡大しております。すなわち、提供目的以外の児童ポルノの製造の罪について、意図的に児童に一定の姿態をとらせて製造した場合に限らず、盗撮等の場合にも処罰範囲を拡大することとしております。

 第二に、心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度を充実及び強化することとしております。

 すなわち、心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体として、厚生労働省法務省都道府県警察、児童相談所及び福祉事務所を例示し、措置を講ずる主体及び責任を明確化することとしております。これに加えて、社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとすることとしております。

 第三に、児童ポルノの定義の明確化等であります。

 児童ポルノ及びこれに係る電磁的記録等の定義から「専ら医学その他の学術研究の用に供するもの」を除くこととしております。これに加え、その定義を明確にするため、第二条第三項第二号を「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって殊更に性欲を興奮させ又は刺激するもの」に、同項第三号を「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、殊更に性欲を興奮させ又は刺激するもの」との客観的な要件に改めることとしております。

 第四に、適用上の注意規定の明確化等であります。

 この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないものとするとともに、この法律のいかなる規定も、架空のものを描写した漫画、アニメーション、コンピューターゲーム等を規制するものと解釈してはならないものとすることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○奥田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十八分散会