児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例(判例タイムズ1326号P134)

 併合罪説は奥村説ですから。
 次は強制わいせつ罪との関係ですが、これは丸々重なるので、観念的競合にならざるを得ないでしょう。

3児童ポルノ製造罪と児童淫行罪をはじめとする他の性犯罪(例えば,児童買春・児童ポルノ等処罰法上の児童買春罪,刑法上の強姦罪,強制わいせつ罪,条例における淫行罪等)との関係については,これまでの裁判実務は観念的競合説と併合罪説とに分かれている状況にあった。児童ポルノ製造罪には.「姿態をとらせ」が要件となる3項製造罪(平成16年法律第106号の改正により新設されたもの)と「姿態をとらせ」が要件とならない2項製造罪等の罪とがあるが,取り分け前者については.「姿態をとらせ」という要件があるために性交等をさせることをもって姿態をとらせながら撮影して児童ポルノを製造する場合に,児童ポルノ製造罪と児童淫行罪等とは行為が重なるから「一個の行為」であって観念的競合であるとの解釈に結び付きやすい理由があり,そのような処理例も実務上少なからずあった(東京高判平17.12.26判時1918号122頁参照)。本件の原判決もこのような立場に立って観念的競合であるとして児童ポルノ製造罪(3項製造罪)についても家庭裁判所の管轄を認めたものであった。
他方で,これらの罪について併合罪であるとする処理例も多数あり(2項製造罪に関する事実であるが,この問題を詳細に論じた東京高判平19.11.6(公刊物未登載)が,大口奈良恵「児童買春罪と,その機会に行われた児童ポルノ製造罪とが,観念的競合関係ではなく,併合罪関係であるとした事例」研修716号387頁に紹介されている。).近時では.3項製造罪の場合も含め,併合罪説に立つ高裁判断が多数を占めつつある状況にあったように思われる。
最高裁判例においては,最三小決平18.2.20刑集60巻2号216頁,判タ1206号93頁が「法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たる」としており,同判例は,本件のような問題については併合罪説に親和的であるとの見方はあったが.本件のような場合における罪数を正面から判示したものはなかった。
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5本件で問題となった3項製造罪については,「姿態をとらせ」の要件の意義をどう理解するかによって,同罪と児童淫行罪等との行為の重なり合いの判断も異なってくる可能性もあるが,本決定は,「被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの」としており行為の重なり合いがあること自体は認めている(本決定が「姿態をとらせ」を構成要件として規定された行為ととらえていることは明らかである。)。その上で.「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や「両行為の性質等」を挙げて,結論として両罪は併合罪であるとの判断をしており.「一個の行為」であるかの判断における考慮要素として,興味深い判示であるように思われる。実際に生じ得る事例を考えてみても,前記最三小決平成18年によれば複製行為についても3項製造罪を構成し得ることになるから,児童淫行罪等と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠けることがあり一事不再理効の及ぷ範囲等を考えても併合罪説の方が妥当な結論を導くことができるように思われる。
6少年法37条については前記のとおり既に削除されたので,本件のように管轄が問題になることは今後は生じないといえる。しかしながら,児童ポルノ製造罪と児童淫行罪をはじめとする他の性犯罪の罪数問題については,これまでも実務が分かれていたところであるから,本決定の判示は,今後のこうした事案の罪数処理に関して重要な意義を有するものと解される。また,本件は,観念的競合か併合罪かの判断手法に関しでも,興味深い検討材料を提供しているものと思われる

 「3項製造罪VS○○罪」を総当たりで判例作ってくれと言われているように受け取りました。現状では、強制わいせつ罪とは観念的競合になりそうです。高裁では優勢なので。

 この最決も、その一審と控訴審も、東京高判平19.11.6も、最三小決平18.2.20も、全部、弁護人奥村徹です。いっつも場当たり的に「弁護人の主張の反対」という判決を書いていて、ついに行き詰まって最決で統一を図ったということです。

 信じられないことですが、法令適用に迷いがあると量刑にも迷いが出てきて、最決の事案は師弟関係の児童淫行罪であるにもかかわらず珍しく執行猶予がついています。法律の研ぎが甘いので、刀が鈍っている感じです。名刀○○みたいにちゃんと研いでもらって、ズバッとやってもらいたいものです。