児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

行為の通常随伴性

 だれが見ても、淫行と製造は通常随伴しませんよ。
 なのに、小樽支部と札幌高裁は観念的競合にしていました。札幌高検の検察官も観念的競合を主張していました。

中谷雄二郎 罪数の判断基準再考 植村立郎判事退官記念論文集 第1巻 p75
このように平成21年10月決定は,各構成要件的行為間の通常随伴性の有無76) や行為の性質の異同を行為の1個性の判断方法として取り込んだものである。
このうち,児童に性交等の淫行をさせる行為と児童に性交等の姿態をとらせる行為との聞の通常随伴性についてみるに,児童の淫行は,性交又は性交類似行為に限られるのに対し, 3項児童ポルノ製造の罪で児童にとらせる姿態には,性交又は性交類似行為に係る姿態だけではなく,児童の若しくは児童が性器等に触る行為に係る姿態,又は衣服の全部若しくは一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものも含むとされている77)。しかも,性交等に係る姿態であっても,あくまで姿態(ポーズ)であるから,実際に性交等をさせるまでの必要はなく,性交等をしているように装わせる場合も含むと解されるから,児童をして児童ポルノ法所定の姿態をとらせる行為は,児童に性交等の淫行をさせる行為を通常伴うとはいえないであろう。
両行為の性質の異同についてみても,児童に性交等の淫行をさせる行為は,児童に淫行をさせる罪の構成要件的行為そのものであり,かつ,同罪の犯罪目的を実現する目的実現行為78) でもあるのに対し, 3項児童ポルノ製造の罪の犯罪目的は,児童ポルノの製造にあり,児童に性交等の姿態をとらせる行為は,その手段行為の付随的な一部にすぎないといえる79)。しかも,製造済みの鬼童ポルノを複写する行為も児童ポルノの製造に該当することを併せ考慮すると,両行為の性質が大きく異なることも明らかであると思われる。

平成21年10月決定は,児童に淫行をさせる罪と3項児童ポルノ製造の罪とは構成要件的行為の一部が重なっても併合罪であることを明確に判示した点で判例性を有するほか,各構成要件的行為聞に通常随伴性がなく,その性質も異なることを理由に,行為の動態が社会的見解上別個のものであるとして,観念的競合の成立を否定したものであり,行為の1個性の判断において,行為の通常随伴性及び行為の性質の異同についても検討すべきことを判示した点で新規性があり,重要な判例ということができる。