実験的な事例を紹介したこういう文献もあります。
自白がある場合の補強証拠としては使えるということです。
解説は三尾有加子検事へどうぞ。
そして.これらの押収物のうち,計量秤,ガラス瓶.チャック付ビニール袋から微量の覚せい剤が検出されたが.被疑者の尿から大麻.覚せい剤は検出されなかった。
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そこで,被疑者については.毛髪鑑定を実施し,その大麻使用の事実及び覚せい剤使用歴を明らかにすることとした。
2 毛髭鑑定の方法及び結果
被疑者の頭髪50本をランダムな部位から切り取って1束にし.この束を1センチメートルことに切断して14の分画とした。そして.この14分画の頭髪の束を.それぞれエタノールで処理した上.分画ごとに.ガスクロマトグラフィーとガスクロマトグラフィー質量分析を併用して分析した。
その結果.被疑者の毛髪のうち.毛根からの距離が2--3センチメートル、4--5センチメートル、5--6センチメートル、8 --9センチメートル,9 --10センチメートル、10--11センチメートル及び13センチメートル~毛先の部位から.覚せい剤が検出された。
なお.大麻については.どの部位からも検出されなかった。
3 考察
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人間の頭髪は1日に0.35ミリメートル, 1 か月に約1センチメートル伸長するとされているため, 1センチメートルごとに分割して分析すれば.覚せい剤使用時期は1か月単位で推定することができるというわけである。
(2) 本件鑑定で.前記の覚せい剤が検出された毛髪の部位を時期に直すと.平成16年8月中ごろから11月中ごろまでの問と,平成17年1月中ごろから5月中ごろまでの間となる。第3 覚せい剤使用についての処分
このように.被疑者から詳細な自白を得られたこと.その内容と毛髪鑑定がおおむね一致したことなどから毛髪鑑定による覚せい剤取締法違反の罪での起訴を積極的に検討することとなった。
この点,裁判例を調査したところ,毛髪鑑定の信用性を認め,証拠として採用した地裁裁判例(薬物の自己使用目的につき)は存在するものの,毛髪鑑定から直接的に薬物自己使用を認定した事案は見当たらなかった。これは,毛髪鑑定の場合,前記のとおり,その使用時期の推定方法が確立されたものとまでいえないこと.1度の覚せい剤使用で覚せい剤が毛髪に移行することはないと考えられていることなどから,結局毛髪から検出された覚せい剤が,起訴事実となる覚せい剤使用によるものであると特定できないために起訴自体がなされていないことによると考えられる。
しかし,被疑者が.覚せい剤使用の日時場所を含めて詳細に自白し.かつ,その自白に十分な信用性が認められ,毛髪鑑定により推定される薬物使用履歴と被疑者の供述内容が合致している場合には,その毛髪鑑定を自白の補強証拠として捉えれば覚せい剤使用につき,立証は十分であり,有罪判決を
得ることは可能であると考えた。
そこで,被疑者については覚せい剤取締法違反により起訴することとし,公訴事実は,被疑者の供述どおり「平成17年2月20日,自宅において炙りの方法で覚せい剤若干量を使用」とした。
第4 判決結果
本件被告人及び弁護人は.公判において公訴事実を認めて争わず,第1回公判で結審し,問題なく有罪判決を得ることができた。