児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

懲役2年6月執行猶予5年保護観察(東京地裁H19.7.5)

 最初から、遺族が怒っているところと、各罪名の保護法益とがマッチしてません。
 著作権侵害罪で初犯実刑というのはないので、こんなところでしょうね。
 「精神科医のカウンセリング」という情状は有効。
 保護観察は相当の負担なので、奥村が私選弁護人なら、一審の執行猶予判決を受けて、被害者に謝罪や弁償をして、「保護観察取ってくれませんか?」と控訴します。
 保護観察にしても施設内にしても再犯防止プログラムの効果は???です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000036-mai-soci
<事故死児童写真>無断掲載の元教諭に有罪判決 東京地裁
 交通事故死した子供の生前の写真を自分のホームページ(HP)に無断掲載したとして著作権法違反などに問われた東京都あきる野市の元小学校教諭(34)に対し、東京地裁は5日、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。井口修裁判長は「遺族の心情を踏みにじる卑劣な行為だ」と強く非難した。
 判決は、被告が起訴事実のほかにも多数の遺体写真をHPに掲載して性的好奇心をあおるようなコメントを付けたり、HPの閉鎖要求に応じなかった点を挙げ、「自らの性的嗜好(しこう)や関心を満足させるためには手段を選ばない態度で、動機に酌量の余地はない」と厳しく断罪。また当時、小学校教諭だったことから「職責に全く反する言語道断の振る舞い。教育者に対する信頼が損なわれた」と述べた。
 一方で、被告が起訴事実を認めて反省の態度を示していることや精神科医のカウンセリングを受診している点などを考慮し、刑の執行を猶予して社会内で更生する機会を与えるべきだと判断した。ただ「性癖を制御するのは容易ではなく、保護観察所で再発防止のための処遇プログラムを受ける必要がある」として保護観察を付けた。
 判決によると、被告は05年9〜10月、東京都内で交通事故死した片山隼(しゅん)君(当時8歳)ら5人の子供の写真16枚を遺族のHPから無断転載した(著作権法違反)。05年8月にはHPを見た男性2人に子供の裸を撮影した画像2枚を電子メールで送信した(児童買春・児童ポルノ処罰法違反)。
 被告は自分のパソコンに児童や死体の写真約80万枚を保存し、00年ごろから「クラブきっず」と題したHPを開設した。HPには7年間で約20万件のアクセスがあったことが判明している。【銭場裕司】
 ◇執行猶予判決への不満も 遺族会見で
 我が子を思い、命の大切さを訴えようと作成したHPの写真を無断で悪用された遺族の怒りは強い。判決後に会見した隼君の父片山徒有(ただあり)さん(50)は「保護観察が付いたのは良かったが、社会内処遇では限界があるのでは」と話し、執行猶予判決への不満もにじませた。また「児童ポルノの単純所持やプロバイダーに対する規制を強め、子供から犯罪を遠ざけることが必要」と訴えた。
 名古屋市で02年、屋上駐車場から落下した車の巻き添えになった片岡樹里ちゃん(当時3歳)の母朋美さん(43)は「樹里の生きた証しを残したいと、増えることがない写真を1枚1枚使って、涙でHPを作り上げた」。無断転載を見た時には「暗闇に落とされた。2度、3度樹里を殺された」という。
 「きちっとした形で罪をつぐなうことが子供たちの供養になる」と法廷の意見陳述で訴えていた朋美さん。会見では「人間らしい心を取り戻して、謝罪してもらいたい。こういったことが容認されない、安心して暮らせる社会であってほしい」と述べた。

追記
 法令適用としては、判決を見たいと思っています。
 提供罪2回の罪数処理はどうか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000904-san-soci
被告は平成17年8月、マレーシアや国内で撮影した、男の子が服を脱いでいる写真を2人に電子メールで送信。また、同年10月、交通事故で死亡した子供の遺族が開設したHPに掲載した子供の写真を、自分が開設したHP「交通事故きっず」に無断掲載した。

 刑法的には遺族の感情は保護対象ではないのに、著作権者の被害感情や精神的苦痛にどこまで踏み込めるか?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000103-yom-soci
井口修裁判長は「亡くなったわが子の思い出を記録にとどめ、交通事故の被害の深刻さを広く社会に訴えて根絶を目指す遺族らの痛切な思いを踏みにじった卑劣な犯行」と述べ、被告に懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役2年6月)の有罪判決を言い渡した。
 判決は、被告に小児性愛や死体を愛好する傾向があり、同じ性癖を持つ人間とインターネットを通じて接触するためにHPを開設したと指摘。「交通事故で死亡した子供の目を覆うばかりの無残な遺体の写真を掲載し、ゆがんだ性的好奇心をあおるようなコメントを付けた」とし、その結果、「遺族らは不眠状態に陥り、休職を余儀なくされるなどの深刻な被害を受けた」と述べた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000060-jij-soci
井口修裁判長は「遺族の心情を踏みにじる卑劣な行為」として、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役2年6月)を言い渡した。
 井口裁判長は「写真にどぎつい表現で好奇心をあおるようなコメントを付けており、交通事故の根絶を願う遺族の痛切な思いを踏みにじった」と非難。「遺族はHPを閲覧して衝撃を受け、不眠状態に陥るなど深刻な被害を受けた」とした。

 怒る被害者なのでしようがないことですが、謝罪しても糾弾され、謝罪しなくても糾弾されるわけです。
 それにしても、被害者多数の場合の被告人の謝罪文ってほぼ同一ですね。これからは、変えて書かせます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070705-00000025-san-soci
「社会内で更生できるのか疑問」。事故死した子供の写真を無断掲載された遺族らは東京都内で会見を開き、執行猶予を付けた被告への判決に疑問を呈した。
 被告は事故死した子供を性的興味の対象にしていた。交通事故で亡くした二男=当時(8)=の写真を無断で使用された片山徒有さん(50)は「死体に興味を持つのは普通ではなく、強制的に治療させる必要があるのではないか」と強調。「児童ポルノの単純所持だけで規制の対象にできるようにしてほしい」と、規制強化の必要性を訴えた。
 さらに、片山さんは、被告に改めて謝罪を求める手紙を送ったことを明かした。
 被告は5月の初公判後、写真を無断掲載したことを謝罪する手紙を親に送ったが、手紙の文面は一緒だった。
 交通事故死した二男=同(6)=の写真を無断で使われた垣内奈穂子さん(45)には、裁判を有利に運ぶための戦術にしか映らなかったという。
 「謝罪する機会はいくらでもあったのに、この時期に手紙を書くなんて…」。垣内さんは手紙を開封しなかった。
 被告は法廷で「個別具体的なことを書いて、悲しい記憶を呼び起こしてはいけないと思った」と供述し、同一文面の謝罪文を送った理由を説明。しかし井口裁判長に「それで済むことなのか」と詰問された。
 垣内さんは判決後、「その後、謝罪の手紙は来ていない」と、改めて被告の非常識な行為を厳しく糾弾した。