児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春罪において年齢認識が要求される時点〜年齢聞いて迷ったが、ついやってしまった

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070219-00000033-mai-soci

http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20070219-158897.html
「年齢を聞いて迷ったが、ついやってしまった」と容疑を認めている。
 調べでは、容疑者は昨年6月21日、東京都国分寺市内のホテルで、伝言ダイヤルで知り合った当時16歳の無職少女(17)に2万円を渡し、わいせつな行為をした疑い。
 昨年10月に恐喝容疑で少女が逮捕され、容疑者の買春行為が発覚した。

 ここからは奥村070219説。
 児童買春罪の実行行為は
① 対償供与ないし対償供与の約束
② 対価関係に基く性交等
で、供与ないし約束で着手、性交等に至れば既遂。
 児童買春罪の実行行為になるためには、①の時点でも②の時点でも。児童であることを認識していなければならない。
 すなわち、成立要件は
① 児童との対償供与ないし対償供与の約束
② 児童との対価関係に基く性交等
となる。

 じゃあ、①と②の途中で知情した場合はどうなのか?
 奥村070219説としては、①がないから、犯罪不成立。児童と約束していない。性交直前までの児童と認識持って客観的に約束した時点を捉えて訴因としなければならない。
 裁判所の見解としては、おそらく、「①の約束というのは、約束ができているという状態でという意味だから、途中で知情した場合でも、それ以後は「児童との対償供与ないし対償供与の約束」という認識に欠けることはないから、児童買春罪の成立に問題ない。論旨は理由がない。」ということになると思います。
 しかし、奥村は、贓物保管罪・運搬罪・各種所持罪の知情みたいに考えるのは反対。
 約束というのは、ある時点をピンポイントで捉えて意思表示が合致したことを意味する。
 判例は、外形標準説だし。約束の後から知情という主観的要素が備わっただけじゃだめですよん。

名古屋高等裁判所金沢支部h14.3.28
 所論は,原判決は,原判示第2,第3の1及び第4の各児童買春行為について,対償の供与の約束をしたことを認定したが,証拠によれば,被告人にはこのような高額な対償を支払う意思はなく,詐言であったことが明らかであるとし,このような場合には児童買春処罰法2粂2項にいう代償の供与の約束をしたことには当たらないから,同法4条の児童買春罪(以下,単に「児童買春罪」という。)は成立しないという。
 しかしながら,児童買春は,児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであることから規制の対象とされたものであるところ,対償の供与の約束が客観的に認められ,これにより性交等がされた場合にあっては,たとえ被告人ないしはその共犯者において現実にこれを供与する具体的な意思がなかったとしても,児童の心身に与える有害性や社会の風潮に及ぼす影響という点に変わりはない。しかも,規定の文言も「その供与の約束」とされていて被告人らの具体的意思如何によってその成否が左右されるものとして定められたものとは認め難い。対償の供与の約束が客観的に認められれば,「その供与の約束」という要件を満たすものというべきである。関係証拠によれば,原判示第2,第3の1及び第4のいずれにおいてもそのような「対償の供与の約束」があったと認められる。所論は採用できない

阪高裁h15.9.18
http://courtdomino2.courts.go.jp/Kshanrei.nsf/webview/27642C03FB01140B49256E6700180854/?OpenDocument
①については,被告人は,捜査段階において,携帯電話機を買ってやる約束をしたが,被告人名義で契約するわけにもいかないし,時間もないので,携帯電話機の代わりに現金を交付するつもりであったとの供述をしており,その内心の意思いかんにかかわらず,被告人がAに対して携帯電話機を買い与える約束をして性交に応じさせたことは関係各証拠に照らして明らかであるから,対償の供与の約束があったというべきであり,