児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

買春罪の包括一罪の事例(和歌山地裁H14.1.8)

 どうも、和歌山では、当初の約束に基づく数回の性行為は包括一罪ということらしいです。法令適用が甘いですね。
 奥村説としては、対償供与の約束は、各性行為の直前にあればいいのだから、1個の対償供与の約束で包括する必要はないと考えていますが、弁護人としては、数回の買春行為については、こういう裁判例を示して、包括一罪の主張をすると思います。

和歌山地裁H14.1.8
同日 同一児童
1 A地点買春 性交類似行為
2 B地点買春 対償追加して、性交→性交類行為

判例も押さえておきましょう。

東京高裁H16.2.19
諭旨は,要するに,原判決は,罪となるべき事実第1ないし第4として,被告人が,平成14年8月12日,同年9月12日,同月22日及び同年10月6日の四日間に,被告人方において,いずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,当時16歳の女児に対し,現金の対償を供与する約束をして,同児童と性交したとの事実を認定判示した上,これを併合罪としているが,同一被害児童に対する複数回の買春行為はもとより,児童買春罪の保護法益は社会的法益であって,被害児童を異にしても全体として包括一罪の関係にあるというべきであるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
しかしながら,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「本法」ともいう。)が買春の相手方となった児童の権利を擁護するものであることは法の目的に照らして明らかであり,買春罪の保護法益は一次的には当該児童の健全な心身と解すべきであるから,買春によりこれが侵害される都度独立して同罪が成立すると解するのが相当であって,これを包括一罪とすべきいわれはない。原判決には所論のような法令適用の誤りはなく,論旨は理由がない。

阪高裁H16.1.15
5 控訴趣意中,法令適用の誤りの主張(控訴理由第8)について
 所論は,原判示の各事実は,被害児童が異なり2名であるものの,1個の対償供与の約束に基づいて同一日時,場所で実行された犯行であるから観念的競合とすべきであり,あるいは,児童買春罪の保護法益と罪数についての解釈が確定していない以上,被告人に有利に解して包括一罪と評価すべきであるから,これを併合罪として処断した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。しかし,児童買春罪は,児童買春がその性交等の対象となった当該児童の権利を侵害し,その心身に有害な影響を与えるとともに,児童を性欲の対象としてとらえる社会風潮を助長し,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えることになるため,これを処罰の対象としているのであって,社会的法益のみならず,当該児童の権利保護にも処罰根拠があり,その個人的法益も保護法益であるから,被害児童が異なり,一個の行為とはいえない原判示第1の事実と同第2の事実について,これを併合罪として処断した原判決に法令適用の誤りはないというべきである。論旨は理由がない。

 奥村弁護士は、併合罪だということはわかりました。