児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

私的な場の盗撮も禁止 奈良、条例改正へ意見公募

 最も違法有害な画像というのは児童ポルノのはずですが、法定の目的がない場合に盗撮して児童ポルノを製造する行為は法律では処罰されない。処罰すればいいものを。
 それが奈良県では条例で処罰されることになりますね。
 迷惑条例(卑わいな行為)の保護法益は社会的法益が主のはずですが、私的空間では違うはずですね。
 プライバシー権の刑法的保護について考えるべきですね。名誉毀損罪で一部カバーしているようですが。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060706-00000182-kyodo-soci
 救急車や会議室など私的な場所でも、盗撮は許しません−。奈良県警は7日から、「公共の場」での盗撮を禁じた県迷惑防止条例を「私的な場所」にも適用できるよう改正することを目指し、パブリックコメント(意見公募)を実施する。

 子どもポルノの所持禁止に続いて、悪い人が出るたびに、奈良県民への規制が強くなっていくようです。


追記
 盗撮ものに甘いと言わざるを得ない島戸検事の言い回しを借りれば「盗撮の事実に気付かず何ら特別の性的行為を強いられ、あるいは促されるわけではないから、直ちに性的虐待を受けたものとはいえないし、提供目的を欠く場合、盗撮の結果が被害者の心身に悪影響を及ばす危険が具体化しているともいえないから、盗撮を手段とした撮影行為を直ちに処罰する必要はない。」とも言えそうですね。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」について警察学論集57-08
島戸P97

カ「姿態をとらせ」
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。
いわゆる盗撮については、本項の罪に当たらない22)。一般的にそれ自体が軽犯罪法に触れるほか、盗撮した写真、ビデオ等を配布すれば名誉毀損の罪も成立し得るし、他人に提供する目的で児童ポルノを製造すれば、第7条第2項、第5項により処罰されることとなる。

島戸P110
22)盗撮された児童は、盗撮の事実に気付かず何ら特別の性的行為を強いられ、あるいは促されるわけではないから、直ちに性的虐待を受けたものとはいえないし、提供目的を欠く場合、盗撮の結果が児童の心身に悪影響を及ばす危険が具体化しているともいえないから、盗撮を手段とした単純製造の行為を直ちに児童ポルノに係る罪として処罰する必要はない。他人に提供する目的がある場合は、第7条第2項又は第5項の罪が成立する。

追記0708
迷惑防止条例」により、「公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における人の姿を撮影すること」に落ち着くんじゃないですか?

https://www.police.pref.nara.jp/mail/PubCommeMail/setumei.htm

「盗撮行為の禁止」に関しての意見募集
 みだりに、スカートの中の下着や、浴場、トイレなどの衣服を脱いだ人の姿を撮影するような、「盗撮行為」は、他人の性的しゅう恥心を害する悪質で卑劣な行為です。
 このような盗撮行為について、奈良県では、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下「県条例」といいます。)」により、以下のように規制が行われています。

しかし、現行の県条例では
①  規制場所が「公共の場所」や「公共の乗物」に限定されているため、
○ 会社の会議室や各種の学校の教室等で盗撮された場合
○ 利用者が限られる車両内(救急車、パトカー、タクシー、貸し切りのバス等)で盗撮された場合
などには、条例を適用できない
②  浴場、更衣場、トイレ等での衣服を脱いだ人の姿(全裸、半裸、下着姿など)を盗撮する行為は直接の規制の対象とはなっていない(下記〔参考〕参照)
ことから、現状での取締りには限界があります。

 〔参考〕    
1  「正当な理由がなくて、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見」する行為は、軽犯罪法違反(窃視の罪)となりますが、刑罰は拘留又は科料です。
 また、盗撮をする目的で施設に立ち入る行為が住居侵入(3年以下の懲役又は10万円以下の罰金)等の犯罪を構成することもあります。
2  大阪府和歌山県のように、県条例と同様の「迷惑防止条例」により、「公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における人の姿を撮影すること」を禁止し、スカートの中の盗撮行為に対するものと同じ刑を科している府県もあります。

 そこで、県警察としては、県条例の一部改正を行い、盗撮行為の規制を強化することを検討しております。
 つきましては、条例改正に向けて県民の皆様のご意見を募集し、参考にさせていただきたいと思いますので、多数のご意見をお寄せ下さいますようお願いいたします。