児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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ひそかに製造罪(14年改正法7条5項)の新設

 こんな文章を書きました。

 ひそかに製造罪(14年改正法7条5項)の新設
 ほとんど話題にならなかったが、今回の改正で唐突に加えられた製造形態である。

第七条
5  第二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 提供等の目的がない製造行為については、従前「姿態をとらせて製造罪」(04年改正法7条3項、14年改正法7条4項)が設けられていたが、性的虐待には当たらないとして盗撮による製造は除かれた*1。
 実際には、トイレ内や浴場による児童への盗撮事案が多発して画像が流通した実情に対応して盗撮による製造に対応したものである。
 「ひそかに」とは窃視罪(軽犯罪法1条23号)の「ひそかに」を借用したものと思われ、描写されないことの利益を有する者に知られないように描写することをいうと解される(伊藤栄樹・勝丸充啓「軽犯罪法新装第2版」P168)。被描写者に知られた場合については、成立するという見解*2もあるが、その場合は「描写されないことの利益を有する者に知られない」とは言えないので、「姿態をとらせ」(14年改正法7条4項)の要件を満たさない限りは製造罪は成立しないと考える。

※1
盗撮による製造罪については、04年改正ではこう説明していたのに

島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」について警察学論集57巻08号P97
盗撮された児童は、盗撮の事実に気付かず何ら特別の性的行為を強いられ、あるいは促されるわけではないから、直ちに性的虐待を受けたものとはいえないし、提供目的を欠く場合、盗撮の結果が児童の心身に悪影響を及ばす危険が具体化しているともいえないから、盗撮を手段とした単純製造の行為を直ちに児童ポルノに係る罪として処罰する必要はない。

 今年になってこう説明して、その変化についての説明がない。

 186 - 衆 - 法務委員会 - 21号 平成26年06月04日
○西田委員 お答え申し上げます。
 これも趣旨説明で触れさせていただいた点でございますけれども、今回は、これまでの現行法が、いわゆる提供目的の所持に対する処罰、それと、あとは、児童に姿態をとらせて製造する場合の処罰があったわけですけれども、盗撮もだめだということで、処罰範囲を拡大する趣旨でつくらせていただいたものでございます。
 これまでは、このように、先ほど申したように、提供目的はだめです、そして、児童にそういう姿態をとらせてつくるのもだめですということにしたんですけれども、当然、盗撮というのも甚だ悪質でございます。児童の尊厳を著しく侵害することは言うまでもございませんし、一方で、児童を性的行為の対象とする風潮を助長する、あるいは抽象的、一般的な児童の人格権を侵害する、そういった行為であることも言うまでもないと思っております。流通の危険性を創出する、こういった危険性があるわけでございますし、そういったことを防止する観点も考慮しなければなりません。
 そういったことから、今回、新たに盗撮も処罰の範囲に入れるということで拡大をする趣旨でございます。

※2
 国会議員は被害者が知っていても「盗撮」だというんだ。

186 - 衆 - 法務委員会 - 21号 平成26年06月04日
西田委員
例外的ではあるかと思うんですけれども、盗撮されていることに気づいてしまった場合であったとしても、ひそかに児童に知られないようにこれを撮影しているような場合であっても、これは基本的に適用されるというふうに解されます。