児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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ひき逃げ「求刑軽い」、検察側に釈明命令…岡山地裁

 判決は求刑に拘束されないから、検察官の求刑そのものが気にくわなかったみたいですね。
 弁護人は検察官の求刑が納得できないことが多いのですが、そこは有利な事実や独自の量刑調査で対抗する。

 明らかに、論告や弁論が間違っていることもありますが(処断刑期を超える求刑とか、執行猶予付けられない人に執行猶予を求めるとか)、それでも、訂正しないことが多いですね。


 量刑のデータベースが充実して、量刑基準が公開されていればこんなことないはずですよね。

http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20050827p402.htm
7月5日の論告求刑公判で検察側は懲役3年を求刑、判決日も指定されたが、裁判官は翌6日、被害女性に落ち度が少ないことなどを理由に「求刑が低きに失する」と、検察官に文書で釈明命令を出したという。

第293条〔最終弁論〕
1 証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
2 被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。

条解刑訴P531
1)本条の趣旨 本条は、審埋手続の最終段階である訴訟当事者の意見陳述について規定する。
一般に1項の検察官の意見陳述は「諭告(求刑)」と、2項の被告人・弁護人の意見陳述は「弁論」と、規211条の意見陳述は「最終陳述」と呼ばれる。実務の実際においては、まず検察官が「諭告・求刑」を行ない、続いて弁護人が「弁論」をなし、最後に被告人か「最終陳述」を行なうのが通常である。
これら意見陳述の目的は、訴訟の全過程を通じて行なわれた訴訟活動の結果を明らかにし、裁判所に当事者の主張するところを確認させ、その判断形成に寄与することにあり、当事者にとって極めて重要な訴訟行為の一つである。

・・・
検察官は、論告で有罪の主張をしたときは、最後に科せられるべき具体的刑罰の種類および量に関する意見を述べるのか通常であるし,これを「求刑」という。この求刑について、現行法施行当時、これが裁判官を事実上拘束するものとして、石なわせるべきではないとする議論もないではなかったが、判例は、求刑も法律の適用に関する意見てあって、裁判官がこれに拘束されるものでないことはもちろん、これを行なわせることは何ら違憲、違法ではないとし、現在のところ求刑を行なうことが確立した実務慣行となっている。
実際的に考えても、求刑の形で述べられる検察官の科刑意見は、検察官同一体の原則に基盤を置き.統一的な刑事政策的配威とともに地域的な特殊性を加味しつつ述べられるものであることから、それが一つの客観的基準を提供するものということができる.即ち、求刑も検察官の意見陳述としてかなり重要な意味をもっている。

東京高裁S31.11.16
 証拠調が終つた後、検察官は事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならないことは刑事訴訟法第二百九十三条第一項の定めるところであり、原審第十八回公判廷において検察官が「本件公訴事実はその証明が十分であるから相当法条適用のうえ被告人斎藤を懲役二年に処せられるを相当と思料する」と陳述していることは検察官の法律適用についての意見としてなんら欠けるところはなく、
論旨はかかる場合に求刑をなすことは憲法第七十六条第三項、第九十六条に違反すると主張するけれども、刑罰法令は罪刑法定主義に則り、予め一定の犯罪構成要件とこれに科すベき刑罰の種類及び分量とを抽象的に規定したものであるから具体的にこれが適用実現を審理する公判手続において、その適用実現を請求する検察官は、単に抽象的な犯罪構成要件に該当する具体的な犯罪事実の存否に関する意見のみならず、該事実にして存在する限りこれに相当する法条を指摘し且つ該事実に妥当する具体的刑罰の種類及び分量に関する意見をも陳述するのが当然であつて、蓋しかかる具体的な刑罰に関する意見がすなおち法律の適用についての昔一見に属するものであるからである。そして訴訟法はひとり攻撃側に立つ検察官に対してのみならず防禦側にある被告人及び弁護人に対してもまた同一点について意見を陳述することができるものと規定しているのである(刑事訴訟法第二百九十三条第二項参照)。かくて裁判官は公判審理において事実及び適用法条についてのみならす、具体的刑罰の種類及び分量についても当事者双方の忌憚なき意見をききその良心に従い独立して公平に職権を行うもので毫も当事者一方のみの意見に拘束されるものではない。
 従つて原審における検察官の求刑は正当であつてなんら憲法に反するところはないから論旨は到底揉用できない

最高裁S25.7.14
 かりに、裁判所が検事の意見に反して、その求刑よりも重い刑を言渡したとしても、(本件第一審においては、検事は懲役一年を求刑しているけれども第二審においては、検事は懲役二年を求刑し、裁判所は同一年六月を宣告している。)それをもつて、所論のように憲法第三六条又は同第三七条に反するものとすることのできないことは、当裁判所屡次の判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二二年(れ)第三二三号、同二三年六月二三日大法廷判決、昭和二二年(れ)第一七一号、同二三年五月五日大法廷判決参照)