児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

原審(児童淫行罪)の訴訟手続には参加資格のない者に被害者参加を許すなどした法令違反があるが,公判期日に出席した被害者参加弁護士の訴訟活動の内容等に照らすと,当該法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとは認められないとされた事例(東京高裁H27.10.28 速報番号3561号)

 被害者参加代理人って、必ずしも実体法とか手続に詳しいとは限りません。

原審の訴訟手続には,刑訴法316条の33第1項の規定に違反して,児童福祉法60条1項の罪(児童に淫行をさせる罪)の相手方である被害児童及びその委託を受けた弁護士に被告事件の手続への参加を許し,刑訴法31 6条の34第1項により同弁護士を公判期日に出席させ,さらに同法31 6条の38第1項に基づき同弁護士に意見の陳述を許した違法があるものの,原判決の基礎となった証拠について同弁護士の訴訟活動によって影響を受けたところはない上,原判決の量刑理由を踏まえ,論告における検察官の科刑意見と原判決の量刑とを対比したときに,同弁護士による意見の陳述がなければ原判決の量刑が異なるものになったと認めるべき理由もないから,原審における訴訟手続の法令違反が,判決に影響を及ぼすことが明らかであるとは認められない

白木功他「『犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成19年法律第95号)』の解説(2)」法曹時報 第60巻10号
(注5) なお,現住建造物等放火罪(刑法第108条)については,被害者参加制度は「個人の尊厳」の根幹をなす生命,身体又は自由に害を被った被害者等を対象とするものであるところ,同罪の保護法益は,第次的には公共の安全であり,生命,身体の保護は間接的なものにととまると解されていること、実際にも,同罪の被害者等については, 刑事訴訟法第292条の2の心情を中心とする意見陳述の運用状況をみても,これを申し出る場合が少なく,そのニーズは必ずしも高くないと考えられたことなどから,被害者参加制度の対象犯罪とはされなかった(もっとも,現に人がいる建造物等に放火して人が死傷したような場合においては,被害者参加制度の対象としている殺人罪傷害致死罪,傷害罪等が成立する場合が多いものと考えられる。)。
また,財産犯については,その保護法誌が, 生命,身体又は自由ではなく,財産であることや,刑事訴訟法第292条の2の意見陳述運用状況をみても財産犯の被害者等のニーズは必ずしも高くないものと考えられたことなどから,被害者参加制度の対象犯罪とはされなかった。

ということで、福祉犯については需要がないということのようです。

刑訴法第316条の33〔被害者等の手続参加〕
裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
二 刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百十一条、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪
三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
四 前三号に掲げる罪の未遂罪
?前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20151107-OYT1T50097.html
東京地裁が今年4月、被害者参加制度の対象ではない事件の審理で、被害者側の参加を誤って許可し、実刑判決を言い渡していたことが分かった。
 10月28日の控訴審判決で東京高裁は「参加を認めたのが法令違反なのは明らか」と指摘し、「量刑には影響しなかった」として被告側の控訴は棄却した。
 高裁判決などによると、被告の男は2013年9月、義理の娘(当時17歳)と自宅でみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反で起訴された。娘とその代理人弁護士は公判開始前、被害者参加を申し出た。
 刑事訴訟法は、被害者参加制度の対象を「故意の犯罪で人を死傷させた罪」や強姦ごうかん罪、業務上過失致死傷罪などに限定。被害者側は検察官を通じて参加を申請でき、裁判所は被告や弁護人の意見を聞いた上で参加の可否を決定する。