児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

対象外なのに、被害者参加誤って許可…東京地裁

 被害者参加については罪名が限定されていますので、普通は間違えませんが、被害者参加人代理人弁護士も、弁護人も、裁判所もご存じなかったようです。
 解説は、

白木功他「『犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成19年法律第95号)』の解説(2)」法曹時報 第60巻10号
(注5) なお,現住建造物等放火罪(刑法第108条)については,被害者参加制度は「個人の尊厳」の根幹をなす生命,身体又は自由に害を被った被害者等を対象とするものであるところ,同罪の保護法益は,第次的には公共の安全であり,生命,身体の保護は間接的なものにととまると解されていること、実際にも,同罪の被害者等については, 刑事訴訟法第292条の2の心情を中心とする意見陳述の運用状況をみても,これを申し出る場合が少なく,そのニーズは必ずしも高くないと考えられたことなどから,被害者参加制度の対象犯罪とはされなかった(もっとも,現に人がいる建造物等に放火して人が死傷したような場合においては,被害者参加制度の対象としている殺人罪傷害致死罪,傷害罪等が成立する場合が多いものと考えられる。)。
また,財産犯については,その保護法誌が, 生命,身体又は自由ではなく,財産であることや,刑事訴訟法第292条の2の意見陳述運用状況をみてもj財産犯の被害者等のニーズは必ずしも高くないものと考えられたことなどから,被害者参加制度の対象犯罪とはされなかった。

ということで、福祉犯については需要がないということのようです。

刑訴法第316条の33〔被害者等の手続参加〕
裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。
一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
二 刑法第百七十六条から第百七十八条まで、第二百十一条、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪
三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。)
四 前三号に掲げる罪の未遂罪
?前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

http://www.yomiuri.co.jp/national/20151107-OYT1T50097.html
東京地裁が今年4月、被害者参加制度の対象ではない事件の審理で、被害者側の参加を誤って許可し、実刑判決を言い渡していたことが分かった。
 10月28日の控訴審判決で東京高裁は「参加を認めたのが法令違反なのは明らか」と指摘し、「量刑には影響しなかった」として被告側の控訴は棄却した。
 高裁判決などによると、被告の男は2013年9月、義理の娘(当時17歳)と自宅でみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反で起訴された。娘とその代理人弁護士は公判開始前、被害者参加を申し出た。

 刑事訴訟法は、被害者参加制度の対象を「故意の犯罪で人を死傷させた罪」や強姦ごうかん罪、業務上過失致死傷罪などに限定。被害者側は検察官を通じて参加を申請でき、裁判所は被告や弁護人の意見を聞いた上で参加の可否を決定する。