児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

10/1~11/28の15回の淫行(青少年条例違反罪)を包括一罪として、翌年4/15の淫行を包括一罪とした事例(某高裁r2.7)

 金沢支部福岡高裁に続き3件目
 16罪併合罪にした原判決は破棄されています。

 日付は修正しています。
 弁護人は、各淫行の日数差を計算して、犯意継続を主張しています。

2019/10/1
2019/10/7
2019/10/10
2019/10/12
2019/10/18
2019/10/21
2019/10/28
2019/10/31
2019/11/2
2019/11/8
2019/11/14
2019/11/21
2019/11/22
2019/11/26
2019/11/28

2020/4/5

「整骨院で、施術を受けに来た少女の裸を撮影した」行為を、ひそかに製造罪とした事例(東京地裁→東京高裁H29.3.16)

 新聞記事で「盗撮」「製造」となっているのを抽出して、判決書を閲覧しています。
 この事件の判決は、ひそかに製造罪になってました。「施術中の姿態を撮影した」という点で、姿態をとらせていて、姿態をとらせて製造罪が成立します。
 こういう法文の並びになっていますので、ひそかに製造罪は成立しません。
 控訴して「殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないなどと主張されていましたが、東京高裁はひそかに製造罪だとして控訴棄却しています。
 

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

整骨院で女児裸撮影 容疑の29歳院長逮捕
2018.01.25 産経
 院長を務める整骨院で、施術を受けに来た少女の裸を撮影したとして、杉並署は24日、児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、柔道整復師を逮捕したと発表した。逮捕は23日。
 逮捕容疑は平成28年11月~29年1月、杉「整骨院」で、当時小学6年の女児の裸をスマートフォンで動画撮影し、児童ポルノを製造したとしている。
 杉並署によると、容疑者は施術中、女児に「テーピングをしてきて」などと言って、棚にスマホを仕掛けた部屋に誘導し、隠し撮りしていた。
 29年6月に別の女性から「盗撮された」との110番通報があり、同署が捜査していた。容疑者のスマホには他にも女性が盗撮されたような動画が複数見つかっており、同署が詳しく調べる。

「マッサージと称して胸部を露出させ」盗撮した行為を、ひそかに製造罪とした事例(東京簡裁)

「マッサージと称して胸部を露出させ」盗撮した行為を、ひそかに製造罪とした事例(東京簡裁)

 この事件の判決は、ひそかに製造罪になってました。「マッサージと称して胸部を露出させ」という点で、姿態をとらせていて、姿態をとらせて製造罪が成立します。
 こういう法文の並びになっていますので、ひそかに製造罪は成立しません。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

エステ店でマッサージと称し盗撮容疑 /東京都
2016.05.28 朝日新聞社
 エステ店で当時高校1年の女子生徒の胸部を盗撮したとして、麻布署は横浜市港北区大倉山2丁目、容疑者を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(盗撮製造)の疑いで逮捕し、27日発表した。おおむね容疑を認めているという。署によると、逮捕容疑は昨年9月16日、港区六本木4丁目のエステ店「」で、インターネットで募集した無料施術を受けに来た女子生徒(16)にマッサージと称して胸部を露出させ、隠していたビデオカメラで盗撮したというもの。容疑者は副業として昨年5月から店を経営していたという。

暴力的性犯罪に引き続いて、裸体画像を撮影送信する行為は、強制わいせつ罪ではなく強要罪(神戸地裁h21.12.10、大阪高裁h22.6.18、名古屋地裁岡崎支部h30.4.19)

 

 画像を撮影送信する行為が、わいせつ行為だとすると、判示第3の強姦の後に画像送信を求めた行為(判示第4~6)は、反抗抑圧する程度の脅迫が効いているので、強制わいせつ罪になるはずですが、強要罪になっているというのは、画像を撮影送信する行為が、わいせつ行為ではないという判断が出ていると思います。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100406170426.pdf
神戸地裁H21.12.10
(罪となるべき事実)
 被告人は,養女であったA(平成6年6月15日生)に対して長期間にわたり虐待を加え同児童を極度に畏怖させていたものであるが,
第1(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の1関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年5月2日午後8時41分ころから同日午後9時23分ころまでの間,神戸市a区b町居住c番地のd所在の県営B住宅e号室の当時の被告人方(以下「被告人方」という。)において,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号1ないし5のとおり,同児童に対し,「胸寄せろ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,これに応じなければ自己の自由,身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨さらに畏怖させ,よって,同児童をして,その両乳房,陰部を露出させた姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影させ,同携帯電話機に装着されたマイクロSDカード(神戸地方検察庁平成20年領第1336号符号2-2)に画像データ5ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第2(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の2関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年5月11日午前10時32分ころから同日午前10時37分ころまでの間,被告人方において,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号6ないし11のとおり,同児童に対し,「服をまくり上げろ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童をして,その乳房を露出させた姿態,同児童の陰部に被告人の陰茎を挿入している姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影し,上記マイクロSDカードに画像データ6ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第3(平成20年8月8日付け起訴状記載の公訴事実関係)
 同児童を強姦しようと企て,平成19年5月11日,被告人方において,同児童(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,着衣を脱ぐよう申し向けて脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同児童を姦淫した,
第4(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の3関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年6月11日ころ,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,電子メールにより,「何か挟んで撮れ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,これに応じなければ自己の自由,身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨さらに畏怖させ,よって,同児童をして,同日午後零時46分ころから同日午後5時35分ころまでの間,別表番号12ないし22のとおり,被告人方において,全裸で両乳房の間や陰部に物を挟んだ姿態等をとらせ,これを同児童の携帯電話機内蔵のデジタルカメラで撮影させ,そのころ,その画像を被告人の携帯電話機に送信させ,上記マイクロSDカードに上記画像データ11ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第5(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の4関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年7月19日ころ,同児童(当時13歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,電子メールにより,「キュウリをなめている写真を撮れ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童をして,同日午前11時13分ころから同日午前11時44分ころまでの間,別表番号23ないし25のとおり,被告人方において,露出した両乳房になすびを挟んだ姿態等をとらせ,これを同児童の携帯電話機内蔵のデジタルカメラで撮影させ,そのころ,その画像データを被告人の携帯電話機に送信させ,上記マイクロSDカードに上記画像データ3ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第6(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の5関係)
 同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年7月19日午後8時32分ころから同日午後8時33分ころまでの間,被告人方において,同児童(当時13歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号26ないし29のとおり,同児童に対し,「なめろ。」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,前同様にさらに畏怖させ,よって,同児童に被告人の陰茎をなめたり,咥えたりする姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影し,上記マイクロSDカードに画像データ4ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
第7(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第2関係)
 同児童を強姦しようと企て,平成19年7月19日午後8時30分ころから同日午後8時50分ころまでの間,被告人方において,同児童(当時13歳)が上記のとおり極度に畏怖しているのに乗じて,同児童に対し,「脱げ。」などと申し向けて脅迫し,その反抗を抑圧した上,強いて同児童を姦淫したものである。
(証拠の標目)
 省略
(事実認定の補足説明)
(求刑・懲役18年、マイクロSDカードの没収)
平成21年12月10日
神戸地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 東尾龍一 裁判官 佐藤建 裁判官 村井美喜子

控訴審で破棄自判されていて、法令適用が維持されています。

阪高裁H22.6.18
判決
上記の者に対する強姦、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強要被告事件について、平成21年12月10日神戸地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は検察官出席の上審理し、次の通り判決する。
主文
原判決を破棄する
被告人を懲役 年に処する。
未決勾留日数中300日をその刑に算入する。
神戸地方検察庁で保管中の携帯電話(FOMA,F902i,シルバー色)に在中のマイクロSDカード1枚(同庁平成20年領第1336号符号2-2)を没収する。
理由
第1 事実誤認の主張について
省略
第2 職権判断
 量刑不当の論旨(なお、弁護人は、控訴趣意補充書において、原判決の量刑は不当に重いと主張するが、その理由としては事実誤認の主張として述べるところを援用するというのみであって、量刑が不当であることに関する具体的な事実の援用はなされていないのであるから、量刑不当の主張は不適法なものと認められる)に対する判断に先立ち、職権により調査するに、原判決には、以下の通り、理由齟齬の違法があると言わざるを得ない。
 すなわち、原判決は、主文において「被告人を懲役年に処する」としながら、理由中の(法令の適用)においては、「被告人を懲役13年に処し」としていて、その判決書中の主文と理由との間にくいちがいがあること、原審裁判所は、平成22年1月7日付けで、原判決書の理由中の上記「懲役13年」を「懲役年」と更生する旨の決定をしていることが明らかであるところ、更正決定について明文の規定のない刑事事件の判決に関しても、判決書自体又は記録に照らして、判決に計算違い、誤記その他これらに類する明らかな形式的誤謬があると認められる場合には、更正決定によりこれを正すことができるものと解されるが、上記の主文と理由とのくいちがいの内容は、判決書自体又は記録に照らしても、いずれの記載が誤りであるのかが明らかとはいえず(被告人作成の控訴申立書に「懲役年の判決」との記載があることをもって理由部分が誤りであるとはいえない)、また、そのくいちがいは判決の最も重要な部分である刑期に関するものであり、理由齟齬を来す実質的な瑕疵であって、単なる形式的誤謬とはいえないのであるから、更正決定によりこれを正すことはできないと解するのが相当である。
 そうだとすると、上記決定は、更正決定でなし得る限界を超えたものとして無効というほかなく、これによって原判決書の理由中の「懲役13年」の記載が「懲役年」に更生されていると認めることはできず、原判決には、判決の最も重要な部分である刑期に関してなお主文と理由との間にくいちがいがあるというべきであるから、原判決は破棄を免れない。
第3 破棄自判
そこで刑訴法397条1項、378条4号により原判決を破棄し、同法400条ただし書により更に判決することとする。
 原判決が認定した事実に、原判決が挙示する法令を適用し(科刑上一罪及び併合罪の各処理を含む。なお、「1罪として犯情の重い各児童ポルノ製造の刑で処断する」とあるのを「一罪として犯情の重い各児童ポルノ製造の罪の懲役刑で処断する」と訂正し
「判示第1、第2及び第4ないし第6の各罪について所定刑中、いずれも懲役刑を選択し、」とあるのを削除する)、その処断刑期の範囲内で被告人を懲役年に処し(なお、刑訴法402条における「原判決」の刑は宣告された刑をいうものと解されるところ、本件においては、原判決書の主文の記載が「懲役年」であるのに加え、被告人作成の控訴申立書の記載からも懲役年の刑期が宣告されたことが明らかであると認められるから、当審において懲役年の刑を宣告しても同条に反するものではない)、
刑法21条を適用して原審における未決勾留日数中300日をその刑に算入し、神戸地方検察庁で保管中の携帯電話に在中のマイクロSDカード1枚は、判示第1、第2及び第4ないし第6の各罪に係る児童ポルノ製造によって生じた物で、被告人以外の者に属しないから、刑法19条1項3号、2項本文を適用してこれを没収することとし、訴訟費用は刑訴法181条1項但し書きを適用して、被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
省略
よって主文の通り判決する
平成22年6月18日
大阪高等裁判所第6刑事部

 橋爪論文で紹介されている名古屋地岡崎支判平成30.4.19を閲覧しましたが、LINEで「俺は暴力団組長だ」とか脅迫して、リアルで呼び出してわいせつ行為をして(判示第3強制わいせつ罪)、その4日後にさらに脅迫して自慰行為させ撮影送信させている(判示第4 強要罪)、強制わいせつ罪としての脅迫はあるわけで、これを強要罪としたのは、裁判所もわいせつ行為ではないと判示したことになりますよね。この裁判例は、強制わいせつ罪が伴っているので、非接触型のわいせつ行為の裁判例としては適切ではなく、大分地判平成23.5.11(公刊物未登載)の方を紹介すべきだと思います。
 検察庁は、大学教授に、未公開の裁判例を提供して、解説書いてもらってるんですが、もっと事案を選ばないと。強制わいせつ罪とした裁判例はあちこちにあるから、それを提供してやらないと。

橋爪隆(東京大学大学院法学政治学研究科教授)「非接触型のわいせつ行為について」研修860号
最近の裁判例には,インターネットで知り合ったA女に対して,自らが暴力団組長であると称していた被告人が,Aを畏怖させてわいせつ行為に及んだ上,さらに携帯電話のアプリケーションを利用して,Aを脅迫する内容のメッセージを送信するなどして,畏怖したAに自慰行為を行わせ,その姿態を撮影した上で動画データを自らに送信させた事件について,検察官の起訴に対応して,強要罪の成立を認めたものがある(名古屋地岡崎支判平成30.4.19公刊物未登載)。本件において強制わいせつ罪での処理が見送られたのは,被告人が遠隔地からメッセージを送信しており,Aは1人で自慰行為を撮影していることから,被告人の面前で同様の行為を行わせた場合に比べて,性的自由の侵害性が乏しいという評価に基づくものなのかもしれない。
しかし,被害者に自慰行為を行わせ,これを撮影させる行為は,被害者に一定の性的行為を行わせ,かつ,その内容や態様を第三者に知りうる状態に置く行為であり.まさに被害者の身体を性的に利用する行為として、わいせつ行為に該当するというべきであろう。このような理解からは,本件行為については,強制わいせつ罪の成立を認める余地もあったように思われる(注25)。
注25)なお,大分地判平成23.5.11(公刊物未登載)は,被告人が被害者をメールで脅迫し,被害者に自らの性器などを撮影させ,その画像データをメールに添付して送信させた事件について,強制わいせつ罪の成立を認めている

自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪の取締り方針|取扱注意|

 単純所持罪については、こういう通達が出てます。
 不開示の部分も、昇進試験雑誌kosuzoなどをみれば垣間見えます。

自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪の取締り方針|取扱注意|
原議保存期間1年未満(平成27年12月31日まで)
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正
する法律(平成26年法律第79号。以下「改正法jという。)により新設された「自己の性的好奇心を満たす目的」による児童ポルノ所持罪(第7条第1項)(以下「自己性的目的所持罪jという。)の罰則が、本年7月15日から適用開始となります。
自己性的目的所持罪については、改正法案を審議した参議院法務委員会において、「児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと」、「第7条第1項の罪の適用に当たっては、同項には捜査権の濫用を防止する趣旨も含まれていることを十分に踏まえて対応すること」に政府は格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされたことから、以下の方針に基づく適正な取締り及び関係部署への指示を徹底願います。
1 基本方針
自己性的目的所持罪の取締りは、以下の基本方針に基づき行うこととする。
○ 児童を性的搾取・性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用
児童ポルノ禁止法第3条(適用上の注意)は、「この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。」と規定している。また、参議院法務委員会でも、この規定と同趣旨の附帯決議がなされていることから、この基本原則に則り自己性的目的所持罪の罰則の適用に当たること。
○ 製造・提供罪等、より重い罰則の適用
児童ポルノの製造、提供、公然陳列等の事案については、自己性的目的所持罪ではなく、より重い本来の罰則を適用することを原則とする
■■■不開示部分■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

kosuzo2017年8月号
3立件時の検討事項
原則として、児童ポルノ自己性的目的所持罪の適用を検討する前に、強制わいせつ等の刑法犯や、児童ポルノの製造、提供、公然陳列等の、より罰則の重い犯罪の適用を検討する。

○客観的・外形的証拠に基づいた適正な取締りの徹底
自己性的目的所持罪は、「自己の性的好奇心を満たす目的J及び「自己の意思に基づき所持するに至った」ことを、できるだけ客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、被疑者の供述を裏付ける客観的・外形的証拠(所持態様・分量・内容、通信ログ・内容等)を確保すること
警察庁少年課に対する事前協議の徹底
既述のとおり、自己性的目的所持罪については、参議院法務委員会において、捜査権の濫用を防止することについて格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされるなど、本罪の適用は慎重に行わなければならない。こうしたことから、警察として全国的に斉一な取締りが実施されるよう、平成26年6月25日付け少年課長通達「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律に基づく取締りの報告について」に基づき、確実に警察庁少年課(福祉犯係[警電■■■■■■■■■■■■■■■■|)に事前報告を行い、協議すること
2対象事犯
児童を性的搾取・性的虐待から守るとしづ児童ポルノ禁止法の目的及び参議院法務委員会附帯決議を踏まえ、「児童に対する新たな性的搾取文は性的虐待の防止J又は「供給者側の犯行の抑止」に繋がる以下の事案を「重点検挙対象事犯」とする。
なお、以下に示す重点検挙対象事犯は、重点となる対象を示したものであり、重点対象であることの立証(....................)を求めるものではない。また、重点検挙対象事犯に該当しない事案であっても、悪質なものについては、検挙対象となり得る(下記{自己性的目的所持罪取締り方針概念図】参照)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■不開示部分■■■■■■■■■■■■
3 任意廃棄を含む注意警告の措置に留める事案
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■不開示部分■■■■■■■■■■■■

どのような事案について警告等の措置に留めるべきかは、事案ごとに警察庁少年課との協議において判断する。

kosuzo2017年8月号
4適用を検討するべき福祉犯の罪名、要件及びその立証要点
(1)適用を検討するべき罪名
児童ポルノ自己性的目的所持罪(児童買春等処罰法7条1項)
(2)要件
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る)
(3)立証要点
ア捜索・差押え
被疑者の居宅など関係先に対する捜索・差押えを確実に実施し、本件に関係する証拠品を押収・精査して本件犯行を裏付ける捜査を行う。
また、児童ポルノ画像については確実に押収して、以後の流通・閲覧防止を図る。
イ被害児童の特定
児童買春等処罰法における「児童」とは、18歳に満たない実在の者をいうことから、本件児童ポルノの被写体となる被害児童の特定に向けた捜査を徹底する。
なお、被害児童が特定されない場合であっても、医師の年齢鑑定により児童性(18歳未満の児童であること)が判定されれば、立件することは可能である。
児童ポルノ該当性
当該画像を見分して、児童ポルノに該当するか否かを判断する。例えば、本件画像について、児童買春等処罰法2条3項3号の児童ポルノ該当性を判断する場合には、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臂部又は胸部)が露出され又は強調されているものであるか、性欲を興奮させ又は刺激するものであるか等について慎重に判断する。
エ年齢知情性
被疑者において「被害児童の年齢が18歳未満である」という認識が必要であるため、この点を鋭意取り調べるとともに、各種裏付け捜査を徹底する。
オ客観的・外形的証拠に基づいた適正な取締りの徹底
「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づき所持するに至った」ことを、できるだけ客観的・外形的証拠により立証することが必要である。
本件の場合、被疑者の供述があれば、それを裏付ける又は否定する客観的・外形的証拠(所持態様・分量・内容、通信ログ・内容等)を確保する。

KOSUZO 2017教旬ガイドブック
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノ所持した者に当たらない場合
○嫌がらせ等によりメールで送り付けられた場合
○ネットサーフィンによる意図しないアクセスの場合
○パソコンがウイルスに感染し、勝手に児童ポルノをダウンロードした場合
○インターネット上の掲示板に児菫ポルノが掲載された場合の掲示板やサーバの管理者の場合
(4)職務質問に伴う所持品検査で児童ポルノと思われるも
のを発見した場合の自己性的目的所持罪による現行犯逮I捕は、被写体が18歳未満かどうかは医師の鑑定又は被写~、体の特定を待たなければはっきりしないこと、「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づいて所持するに至った者」を客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、それらが明白でなければ困難である。
(5)警察庁では、自己性的目的所持罪の適用に当たっては、全ての事案について事前報告を求めていることから、認知した段階で本部少年担当課に速報して指示を受ける。

児童は実在すること・・法務省刑事局参事官玉本将之「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)における「児童ポルノ」(同法2条3項)の意義、児童ポルノ製造罪(同法7条5項)が成立するためには当該児童ポルノに描写されている人物が製造時に18歳未満であることを要するか(消極)(最高裁令和2年1月27日決定、裁判所ウェブサイト掲載)」警察学論集第73巻第7号

児童ポルノ」の意義
児童ポルノ法における「児童ポルノ」は、同法2条3項において、「写真、電磁的記録……に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」と定義されている。
そして、ここでいう「児童の姿態」については、法文上直接明示されてはいないものの、平成11年の児童ポルノ法制定時から、実在する児童の姿態を意味し、したがって実在しない児童の姿態を描写したものは「児童ポルノ」に該当しないと解されてきた5)。
その実質的理由として、児童ポルノ法は、「児童ポルノ」について、
それが児童を性の対象とする風潮を助長するのみならず、描写の対象となった児童の人権を害するものであるという観点から、必要な規制を行うものであるところ、実在しない児童を描写したポルノについては、描写の対象となった児童の人権を害するということはできないという説明がなされているが6)、児童ポルノ法2条1項は、「この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。」と規定して、「児童」の範囲を年齢によって画しており、年齢は、出生の日から起算し、所定の方法によって計算するものである(年齢計算二関スル法律1項、2項)ことからすると、「児童」が現に実在する人物に限られ、「児童ポルノ」も実在する児童の姿態を描写したものに限られると解すべきことは、文理上明らかであるといえる。
本決定は、児童ポルノ法2条,項の規定に言及した上で、同条3項
の「児童ポルノ」の意義について、従来の解釈と同様に、実在する児童の姿態を描写したものに限られると解すべきことを明示したものである。

殺人・児童ポルノ単純所持罪等被告事件において、児童ポルノの具体的摘示に欠けると思われる判決(新潟地裁R1.12.4)

「他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」というのは、2号ポルノの法文そのままですし、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録」というのは3号ポルノの法文そのままですし、事実としては具体的な事実を示したものとは言えないでしょう。
「他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」の具体例としては、男性が乳房を触るとか陰部触るとかいう記載です。
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているもの」の具体例としては、陰部を露出しているとか、乳房を露出しているとかです。
 控訴審で理由不備を主張してください。

刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

名古屋高裁H23.7.5
 論旨は,要するに,上記各児童ポルノ製造の事実に関し,(1)各起訴状の公訴事実には,被告人が各児童にとらせた姿態につき「被告人と性交を行う姿態等」(平成22年5月26日付け起訴状公訴事実)又は「性交に係る姿態等」(同年6月1日付け起訴状公訴事実第2,第4,同月29日付け起訴状公訴事実第2)とのみ記載されており,「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態」(児童ポルノ処罰法2条3項1号)のほかにいかなる姿態をとらせて撮影したとして起訴しているのか不明瞭であり,各起訴状の罪名及び罰条においても,「児童ポルノ処罰法7条3項,2条3項」とのみ記載されて2条3項各号の記載がないことからすると,訴因が不特定であるというほかなく,これを看過して実体判決をした原審の訴訟手続には法令違反がある,(2)原判決の各犯罪事実には,各児童に「被告人と性交を行う姿態等」をとらせ,これを撮影して児童ポルノを作成したことは示されているが,法令の適用の項で摘示している児童ポルノ処罰法2条3項3号に該当する具体的事実が示されていないから,原判決には理由不備の違法がある,というのである。
 まず,(1)の点について検討すると,各起訴状の公訴事実における犯罪の相手方,日時・場所等の記載は,他の犯罪と識別するに十分なものであり,これによって被告人側の防御の範囲も画されているといえるし,また,各公訴事実の「被告人と性交を行う姿態」あるいは「性交に係る姿態」の記載の直後にいずれも「等」と記載され,罪名及び罰条において,児童ポルノ処罰法7条3項,2条3項と記載され同項の何号であるかが明示されていない,という各起訴状の記載内容をみれば,各児童に同法2条3項1号のみならず2号あるいは3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した事実をも本件各訴因に含まれ得る趣旨を読み取ることができることを併せ考えれば,同項の何号かの明示を欠くことによって,被告人側に対する不意打ちの危険が生じその防御に支障を来すなどともいえない。そうすると,本件各訴因が特定されていないともいえないから,公訴棄却せずに実体判決をした原審の訴訟手続に法令違反はない。
 次に,(2)の点について検討すると,原判決は,犯罪事実第1の2,第2の2,第3の2につき,法令の適用の項において,いずれも児童ポルノ処罰法7条3項,l項,2条3項1号,3号に該当すると判示しているのであるから,各犯罪事実において,同法2条3項1号のみならず3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実をも摘示する必要があるというべきである。しかるに,原判決は,上記各犯罪事実において,各児童に「被告人と性交を行う姿態等」をとらせた上,これを写真撮影し,その静止画を記録媒体に記録させて描写し,もって「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態等」を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した旨を摘示するにとどまり,児童ポルノ処罰法2条3項3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実を摘示していないのであるから,原判決には,上記各事実に関し,罪となるべき事実の記載に理由の不備があるといわざるを得ない。
 論旨はこの点において理由がある。そして,原判決は,原判示第1の2,第2の2,第3の2の各児童ポルノ製造罪とその余の各罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は全部につき破棄を免れない。
2 破棄自判
 よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)

仙台高裁R2.6.25
第3 理由不備の論旨について
1論旨は,「原判決は,罪となるべき事実の第2において,児童ポルノ法2条3項3号に該当する事実を記載していないから,原判決は判決に理由を附さない違法がある」と主張する。
2上記の公訴事実について有罪の言渡しをする場合,罪となるべき事実としては具体的な事実を示さなければならない。原判決は,「被害者に,被告人と性交する姿態等をとらせ,これを被告人のスマートフォンの撮影機能を用いて撮影し,その撮影データ16点を,同スマートフォン本体に内蔵された記録装置に記録させて保存し」と示すにとどまり,児童ポルノ法2条3項3号に該当する事実を示していない。上記記載の「被告人と性交する姿態等」の「等」の中に,同法2条3項3号に該当する事実が含まれていると解するのは困難である。原判決は,有罪の言渡しに必要な罪となるべき事実の記載を欠き,判決に理由を附さない違法があるといわざるを得ない。 ~
論旨は理由がある。原判決は,原判示第2の児童ポルノ製造罪と第1の青少年健全育成条例違反罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は全部につき破棄を免れない。
第4破棄自判
よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)

裁判年月日 令和元年12月 4日 裁判所名 新潟地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)185号
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、わいせつ略取、強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄、死体損壊、電汽車往来危険被告事件
裁判年月日 令和元年12月 4日 裁判所名 新潟地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)185号
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、わいせつ略取、強制わいせつ致死、殺人、死体遺棄、死体損壊、電汽車往来危険被告事件
文献番号 2019WLJPCA12046009
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,わいせつ略取,強制わいせつ致死,殺人,死体遺棄,死体損壊,電汽車往来危険被告事件について,当裁判所は,検察官中野康典,同藤井慎一郎及び同松居徹並びに国選弁護人小淵真史(主任)及び同二宮淳悟各出席の上審理し,次のとおり判決する。 
理由
(罪となるべき事実)
 第1 被告人は,自分の性的好奇心を満たす目的で,平成29年11月27日,新潟県上越市〈以下省略〉所在のa警察署において,以下の各動画データを記録した児童ポルノである記録媒体を内蔵した携帯電話機1台を所持した。
  1 他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
  2 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
法令の適用)
 罰条
 判示第1の行為 包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段(2条3項2号,3号)

児童の性交場面が流布された場合の慰謝料(訴額150万円、認容額合計55000円等)

 流通過程で中継した少年とその保護者に対する慰謝料請求のようです。
 示談した関与者については「訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,計320万円を受領している」と認定されています。

損害賠償請求事件
名古屋地方裁判所令和2年3月25日民事第10部判決
口頭弁論終結日 令和2年2月12日
       主   文

1 被告B1は,原告甲に対し,5万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告B1は,原告に対し,5000円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告D1は,原告甲に対し,15万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告D1は,原告乙に対し,1万5000円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告F1,F2及びF3は,原告甲に対し,連帯して5万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告F1,F2及びF3は,原告乙に対し,連帯して5000円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 原告らの被告B1,被告D1,被告F1,被告F2及び被告F3に対するその余の請求並びに被告B2,被告D2及び被告D3に対する請求をいずれも棄却する。
8 訴訟費用は,〔1〕原告らに生じた費用の100分の1と被告B1に生じた費用の100分の3を被告B1の負担とし,〔2〕原告らに生じた費用の100分の3と被告D1に生じた費用の100分の5を被告D1の負担とし,〔3〕原告らに生じた費用の100分の1と被告F1,被告F2及び被告F3に生じた費用の100分の4を被告F1,被告F2及び被告F3の負担とし,その余の費用は原告らの負担とする。
9 この判決は,第1項から第6項までに限り,仮に執行することができる。


       事実及び理由

第1 請求
1 被告B1及び被告B2は,原告甲に対し,連帯して150万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告B1及び被告B2は,原告乙に対し,連帯して15万円及びこれに対する平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告D1,被告D2及び被告D3は,原告甲に対し,連帯して300万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告D1,被告D2及び被告D3は,原告乙に対し,連帯して30万円及びこれに対する平成30年2月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告F1,被告F2及び被告F3は,原告甲に対し,連帯して120万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 被告F1,被告F2及び被告F3は,原告乙に対し,連帯して12万円及びこれに対する平成30年2月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,平成28年3月ないし5月に当時15歳であった原告甲の性交場面等を撮影した動画データがLINE等を使用して拡散されるという事件(以下「本件拡散事件」という。)が発生したところ,原告甲及びその親権者である原告乙が,本件拡散事件に関与した者及びその親権者に対し,以下のとおり共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
 原告らは,本件拡散事件の過程において,〔1〕上記動画データを当時の交際相手に送信した被告B1に対し,原告甲の人格権侵害を,被告B1の親権者である被告B2に対し,被告B1の送信行為に関する監督義務の懈怠を主張して,共同不法行為に基づき,原告甲に対する慰謝料150万円及び原告乙に対する弁護士費用15万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成30年2月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払を(上記第1の1及び2),〔2〕上記動画データを友人3名に送信した被告D1並びにその親権者である被告D2及び被告D3に対し,同様の主張をして,原告甲に対する慰謝料300万円及び原告乙に対する弁護士費用30万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である同月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を(上記第1の3及び4),〔3〕上記動画データを当時の交際相手に送信した被告F1並びにその親権者である被告F2及び被告F3に対し同様の主張をして,原告甲に対する慰謝料120万円及び原告乙に対する弁護士費用12万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である同月5日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(上記第1の5及び6)を,それぞれ求めた。
1 前提事実(争いのない事実並びに掲記証拠(枝番のあるものは枝番を含む。弁論併合前に提出された甲号証を「第5615号甲1」などといい,弁論併合後に提出された甲号証を「併合後甲12」などという。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 原告甲は,平成12年生まれの女性である。原告乙は,原告甲の母親であり,親権者である。(第5615号甲1,第5616号甲1,第5617号甲1)
イ 被告B1は,平成12年生まれの女性である。被告B2は,被告B1の母親であり,親権者である。(第5615号甲2,同甲3)
ウ 被告D1は,平成12年生まれの女性である。被告D2は,被告D1の父親,被告D3は,被告D1の母親であり,いずれも被告D1の親権者である。(第5616号甲2)
エ 被告F1は,平成12年生まれの女性である。被告F2は,被告F1の父親,被告F3は,被告F1の母親であり,いずれも被告F1の親権者である。(第5617号甲2)
(2)被告らの本件拡散事件への関与状況等
ア 被告B1は,平成28年3月中旬頃,友人である訴外Aから,訴外Aとその元交際相手である原告甲との性交場面等を撮影した動画データ(以下「本件動画データ」という。)の提供を受けた。そして,同月下旬頃,当時交際していた訴外Cからの依頼に応じ,訴外Cに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。(第5615号甲8,乙1から乙3まで,乙5)
イ 被告D1は,同年4月28日,当時交際していた訴外Cから,本件動画データの提供を受けた。そして,同日,訴外E,被告F1及び訴外Hに対し,同人らのアカウントで構成されるLINEグループを用いて本件動画データを送信した。(第5616号甲6,同甲7)
ウ 上記イにより本件動画データの提供を受けた被告F1は,同年5月2日,当時交際していた訴外Iからの依頼に応じ,訴外Iに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。(第5617号甲6,同甲7)
エ 本件動画データは,同年4月末頃より当時原告甲が通学していた高校に在籍する生徒らの間で拡散された。
(3)本件拡散事件後の状況
ア 原告甲は,平成28年7月頃,転校した。(併合後甲17)
イ 訴外A,被告B1,訴外C,被告D1,訴外E,被告F1及び訴外Eから本件動画データの提供を受け7名の知人に対して送信した訴外Gは,いずれも,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の非行事実により名古屋家庭裁判所に送致されたが,同裁判所はいずれも不処分の決定をした。(第5615号甲5,第5616号甲4,第5617号甲4)
(4)本訴訟における経過
ア 被告B1,被告B2,被告D1,被告D2及び被告D3は,原告らを相手方とし,原告らが,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E,訴外G,訴外H及び訴外I並びにこれらの者の保護者らとの間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切につき,文書提出命令を申し立てた。当裁判所は,平成30年12月13日,原告らに対し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切の限度で,その提出を命じる決定をし(平成30年(モ)第195号,同第198号),その後同決定は確定した。
イ しかしながら,原告らは,本訴訟の口頭弁論終結時まで,上記文書を一切提出しなかった。
2 争点及びこれに対する当事者の主張
(1)被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3の不法行為の成否(争点1)
(原告らの主張)
 親権者である被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3には,それぞれの子に対し,他人の名誉棄損・プライバシー侵害等の行為をしないという基本的な人間関係のルールを守るよう指導監督する義務があったのであり,近時「ネットいじめ」等の問題が顕在化していることを踏まえれば,携帯電話を利用させるに当たっては,これにより他人の権利を侵害することのないよう監督する義務があった。
 特に,被告F2及び被告F3は,被告F1が本件動画データを受け取ったことを被告F2に話しているのであるから,動画を削除させる等の対応をすべきであった。
 それにもかかわらず,被告B2,被告D2,被告D3,被告F2及び被告F3は,いずれもその義務を怠ったから,不法行為責任を負う。
(被告B2の主張)
 被告B1は,素行の悪くないごく普通の15歳の学生であった。したがって,被告B2に具体的な監督義務が発生していたとはいえないから,被告B2に監督義務違反があったとはいえず,不法行為は成立しない。
(被告D2及び被告D3の主張)
 被告D1は,生活態度に何ら問題のない15歳の学生であった。したがって,被告D2及び被告D3には,被告D1の他害行為を予見することは不可能であったから,被告D2及び被告D3に監督義務違反があったとはいえず,不法行為は成立しない。
(被告F2及び被告F3の主張)
 争う。
(2)原告甲及び原告乙の損害額(争点2)
(原告らの主張)
ア 被告B1及び被告B2の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,150万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも15万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
イ 被告D1,被告D2及び被告D3の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,300万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも30万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
ウ 被告F1,被告F2及び被告F3の不法行為により原告甲が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は,120万円を下らない。また,原告乙が負担した弁護士費用のうち,少なくとも12万円は上記不法行為と相当因果関係のある損害である。
(被告らの主張)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 被告B1,被告D1及び被告F1の責任
 被告B1,被告D1及び被告F1による本件動画データの送信行為は,それぞれ原告甲のプライバシー権を侵害するものであって,被告B1,被告D1及び被告F1は,それぞれ不法行為責任を負う。
2 争点1(親権者らの不法行為の成否)について
(1)親権者らの不法行為責任
 未成年者が責任能力を有する場合であっても,監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立するものと解される(最高裁昭和49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁参照)。
(2)被告B2,被告D2及び被告D3の責任
 原告らは,被告B2,被告D2及び被告D3には,子に携帯電話を利用させるに当たり,他人の権利を侵害することのないよう監督する義務があったのにこれを怠った旨を主張する。
 しかしながら,原告らは,監督義務の具体的内容やその義務の発生根拠となる具体的事実を主張していない。そして,本件以前に被告B1及び被告D1が一般的な非行等に及んだ事実だけでなく,携帯電話やSNS等を使用した友人との問題行動や本件類似のプライバシー侵害行為に及んだ事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告B1が本件動画データの送信を受けたことを被告B2が被告B1の送信行為前に,被告D1が本件動画データの送信を受けたことを被告D2及び被告D3が被告D1の送信行為前に,それぞれ知ったと認めるに足りる証拠もない。そうすると,本件動画データの送信行為当時,保護者に求められる一般的な指導を超えて,被告B2は被告B1に対し,被告D2及び被告D3は被告D1に対し,それぞれ本件動画データ等の性的な動画を送信しないように具体的に注意するなどの監督をすべき法的義務が発生していたとはいえない。
 上記諸点を踏まえると,被告B2,被告D2及び被告D3に原告らの主張するような不法行為が成立するなどとはいえない。
(3)被告F2及び被告F3の責任
ア 前提事実に加え,証拠(丁3,被告F3本人(第1回))及び弁論の全趣旨によれば,被告F2及び被告F3の本件拡散事件への関与状況等について,次の事実が認められる。
(ア)被告F1は,本件動画データを入手した平成28年4月28日頃,被告F2に対し,被告D1から本件動画データが送られてきたことを相談し,被告F2は,その翌日頃,被告F3に対し,その事実を伝えた。被告F3が,被告F1に確認したところ,被告F1は,そのような動画データが出回っているという噂があり,友人が本件動画データを実際に入手した旨を述べた。
(イ)被告F2及び被告F3は,当時原告甲及び被告F1が通学していた高校に対して報告することを検討したが,本件動画データの存在が発覚すれば原告甲が退学になるのではないかなどと考え,報告をしないこととする一方,被告F1に本件動画データを消去させることもなかった。
(ウ)被告F1は,その後の同年5月2日,訴外Iに対し,LINEを用いて本件動画データを送信した。
イ 被告F3の陳述書(丁4)及び本人尋問の結果(第2回)には,上記認定に反する部分がある。しかしながら,上記陳述書の作成前に実施された被告F3本人尋問の結果(第1回)には,被告F1の訴外Iに対する本件動画データ送信前に被告F2及び被告F3が被告F1の本件動画データ入手を知っていたことを明確に認める部分がある。そして,本訴訟において極めて重要というべき上記部分につき,被告F3は,本人尋問(第2回)に際して思い違いであったなどと,にわかに受入れ難い説明をするのみである。また,被告F3の陳述書(丁4)及び本人尋問の結果(第2回)のうち上記認定に反する部分を裏付ける適格な証拠もない。そうすると,これらの部分は採用できない。
ウ 上記認定事実によれば,被告F2及び被告F3は,被告F1が訴外Iに対して本件動画データを送信する約3日前には,本件動画データの内容及びそうした動画データが出回っているという噂があることや被告F1が友人から本件動画データを実際に入手したことを知っていたというのである。そうすると,被告F2及び被告F3は,その時点で,原告甲のプライバシーを著しく侵害するおそれのある動画を被告F1が入手し,かつ,実際に被告F1の友人らが他者に対して送信していることを具体的に認識した以上,被告F1が同様の行為に及ぶことを予見し得たといえる。したがって,被告F2及び被告F3には,判断能力のなお未熟な高校1年生である被告F1の親権者として,被告F1が原告甲の被害を更に拡大させることのないよう,被告F1に対し本件動画データを直ちに消去させるなどの措置を講じて被告F1を監督する義務があったというべきである。
 それにもかかわらず,被告F2及び被告F3は,被告F1に対し,被告F1が訴外Iに対して本件動画データを送信する前には本件動画データを消去させなかったのであるから,上記義務に違反したといえる。そして,被告F2及び被告F3のこのような監督義務違反と未成年者である被告F1の不法行為によって生じた原告甲のプライバシー侵害との間には相当因果関係が認められるから,被告F2及び被告F3には不法行為が成立する。
エ 被告F2及び被告F3の監督義務違反と被告F1の送信行為は,客観的に関連し,共同し合って原告甲のプライバシー侵害を生じさせたものといえるから,被告F2及び被告F3は,被告F1との関係で共同不法行為責任を負う。
3 争点2(原告甲及び原告乙の損害額)について
(1)原告甲の損害額
ア 文書提出命令違反の効果について
 前提事実(4)のとおり,当裁判所が,原告らに対し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で締結した示談契約の成立及び内容を証する文書の一切につき,その提出を命じる決定が確定したにもかかわらず,原告らはこれに従わない。
 この点に関し,被告B1,被告B2,被告D1,被告D2及び被告D3は,文書提出命令の申立てをするに当たり,上記示談書には少年1名につき60万円の示談金を受領した旨の記載があると主張している。また,被告D1,被告D2及び被告D3は,原告らが文書を提出しなかったことから,上記示談書には少年1名につき100万円の示談金を受領した旨の記載があると主張を変更している。他方,原告らは,示談契約をしたことは認める(訴状補正上申書)一方,示談金の金額を争っている。そして,証拠(丁3)によれば,被告F3は原告ら代理人から本訴訟提起前に30万円の示談の申入れをされるとともに,訴訟では120万円の請求をする旨告げられたことが認められる。上記諸点に加え,訴外Gは拡散した相手が多数であること(前提事実(3)),訴外Aは本件拡散行為の発端であること(前提事実(2))などを併せ考慮すると,訴外A及び訴外Gに関する示談書には各100万円の示談金を受領した旨の記載があるが,訴外C及び訴外Eに関する示談書には各60万円の記載があると認めるにとどめるのが相当である(民訴法224条1項)。
 そして,このような記載のある示談書からすれば,原告らは,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,訴外A及び訴外Gとの間では100万円ずつの合計200万円を,訴外C及び訴外Eとの間では60万円ずつの合計120万円を,それぞれ受領したものと認められる。
イ 慰謝料額
 本件動画データは,性交場面等という通常他人に特に見られたくない場面を撮影したものであり,これが更に送信されたことによる原告甲のプライバシー侵害の程度は極めて大きいといえる。そして,前提事実に加え,証拠(併合後甲16,原告乙本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告甲は平成28年3月ないし5月の本件拡散事件当時15歳にすぎなかった上,本件拡散事件の結果入学したばかりの高校に通学することに困難を来し,その後間もない同年7月頃に転校を余儀なくされたことが認められる。また,本件拡散事件には原告の元交際相手や日頃行動を共にしていた友人が関与していた。これらの事情からすると、原告甲の受けた精神的苦痛が極めて大きかったことは想像に難くない。他方で,上記アのとおり,原告らは,本件拡散事件に関し,訴外A,訴外C,訴外E及び訴外G並びにこれらの者の各保護者との間で示談契約を締結し,計320万円を受領している(なお,本件拡散事件に関して多額の示談金を受領した事実は,本件拡散事件を構成する各送信行為に関する慰謝料の額を検討するに当たって考慮すべきものであるのは当然である。)。これらに加え,本件全証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本件拡散事件に関する一切の事情を考慮すれば,被告B1,D1,F1,F2及びF3から原告甲に対して支払われるべき慰謝料額は,1名に対する送信行為につき5万円として算定するのが相当である。
 なお,被告らは,原告甲が訴外Aによる本件動画データの撮影行為を黙認したことなどに本件拡散事件の原因の一端があったことは否定できないから,損害賠償額を定めるに当たり過失相殺をすべきと主張する。しかしながら,撮影経緯等がどのようなものであれ,被告B1,被告D1及び被告F1はその時点の自己の判断に基づき本件動画データを更に送信して原告甲のプライバシーを侵害したものであって,このような不法行為の実質を踏まえると,被告らの主張する事実に基づき過失相殺を考慮するのは相当ではないというべきである。 
ウ 小括
 以上によれば,原告甲に支払うべき慰謝料の額は,被告B1が5万円,被告D1が15万円,被告F1,被告F2及び被告F3が連帯して5万円となる。
(2)原告乙の損害額
 本件全証拠及び弁論の全趣旨によって認められる本訴訟の類型,難易度,請求額及び認容額その他本訴訟に関する一切の事情を考慮して,被告B1の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は5000円,被告D1の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は1万5000円,被告F1,被告F2及び被告F3の不法行為と相当因果関係のある原告乙の弁護士費用は5000円と認めるのが相当である。
4 結論
 以上によれば,原告らの請求は,主文第1項から第6項までに掲記の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第10部
裁判長裁判官 鈴木尚久 裁判官 杉田時基 裁判官 崎川静香

(別紙)当事者目録
全事件原告 ■■■■(以下「原告甲」という。)
法定代理人親権者兼全事件原告 ■■■■(以下「原告乙」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 多田元
第5615号被告 B1(以下「被告B1」という。)
法定代理人親権者兼第5615号被告 B2(以下「被告B2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 片岡憲明
第5616号被告 D1(以下「被告D1」という。)
法定代理人親権者兼第5616号被告 D2(以下「被告D2」という。)
同 D3(以下「被告D3」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 岡厚希
第5617号被告 ■■■■(以下「被告F1」という。)
法定代理人親権者兼第5617号被告 ■■■■(以下「被告F2」という。)
同 ■■■■(以下「被告F3」という。)

エアドロップ痴漢の公訴事実記載例

 わいせつ画像を不特定又は多数の者に送信して頒布してるのだから、刑法175条1項でしょうね。

被告人は、令和2年7月2日 1413~1450ころ、兵庫県○○駅間走行中の列車内において A(21)に対して 携帯電話機を利用して男性器を露骨に撮影したわいせつ画像データ1点をAの携帯電話機に送信し、もって公共の乗物において 不安を覚えさせるような卑わいな言動をした。
 兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反 15条1項 3条の2 第1項1号

罰条
第3条の2 
1何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
第15条
1 第3条の2第1項から第3項まで、第5条第1項若しくは第2項又は第10条の2第1項の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解説・ほか(2016年9月)
(趣旨)
本条は、公共の場所等における盗撮等の人に対する不安を覚えさせるような卑わいな言動を始め、公共の場所等以外の場所又は乗物(一定のプライベート空間。以下「公共の場所等以外の場所等」という。)における下着等の盗撮行為、及び盗撮行為の前段階であるカメラ等の差し向けや設置行為(以下「盗撮行為等」という。)を禁止した規定である。
改正前の本条は、「公衆に対する迷惑行為(卑わいな言動)」を取り締まるためのものであったが、近年の社会情勢の大きな変化に伴い、多機能携帯電話端末等の機能の進歩がもたらす巧妙な盗撮行為が、公共の場所等以外の場所等(公衆便所や一般住宅等)で行われている実態に鑑み、これら公共の場所等以外の場所等における盗撮行為を規制することとしたものである。
1第1項は、第1号において、旧条例で規制していた公共の場所又は公共の乗物における卑わいな言動を規制しているほか、これまで当該行為自体をもって卑わいな言動ととらえることができなかった「設置」行為につき、盗撮目的での同行為を第2号において明確に規制したものである。

「不安を覚えさせるような卑わいな言動」とは、相手方に「不安を覚えさせるような」「野卑で、みだらな言動」をいう。
「不安を覚えさせるような」とは、いやらしいことをされるのではないかという心配を起こさせるようなという意味であるが、不安を覚えさせる言動かどうかは、個別具体的に認定しなければならない。
また、現に被害者が不安を覚えなくてもよく、被害者が当該行為に気付かない場合でも、もし、気付いたならば不安を覚えることが明らかな場合は本項が成立する。
(1) 痴漢行為
刑法の強制わいせつに至らない行為であり、具体的には、「電車等において、同意を得ていない人の身体に、衣服その他の身に着ける物の上から直接触れる」といった行為である。
(2) のぞき見行為
通常衣服等で隠されている人の下着又は身体をのぞき見するものである。要件として、のぞき見が、一般人をして不安を覚えさせるような卑わいな程度でなされることを必要とする。
具体的には、人のスカート内の下着等を下から積極的にのぞき見たり、手鏡をスカートの下に差し出して下着等を見る行為等をいう。
なお、1段落目の「のぞき見が、一般人をして不安を覚えさせるような卑わいな程度でなされることを必要とする」とは、積極的にのぞき見を行う(故意がある)ことが必要であるとの意味であって、例えば、スカートが風で捲れ上がった際に偶然に下着が見えたというような場合(故意がない)は、当然にして含まれない。
(3) 盗撮行為
通常衣服等で隠されている人の下着又は身体を、その人の承諾なく隠し撮りする行為である。
具体的には、写真機等を使って赤の他人のスカート内を隠し撮る行為、隠し撮る目的で写真機等をスカートに差し入れる行為をいう。
(4) その他卑わいな言動
「痴漢行為」、「のぞき見行為」、「盗撮行為又は盗撮目的で写真機等を向ける行為」以外のいやらしく・みだらで性的道義観念に反し、人に不安を覚えさせるような卑わいな言語・動作をいう。
具体的には、スカートを捲る、傘の柄等を他人の胸部や譽部に押しつける、耳元等に息を吹きかける、耳元で卑わいな言葉をささやく、女性に声をかけ「おっぱい大きいね。」「おつばい触らせて。」「おじちやんとエッチしよう。」などと言う言動がこれに当たる。

児童ポルノ単純所持罪の無罪判決(佐賀地裁R02.2.12)

 国選弁護人がタナー法に切り込みましたね。

■28281007
佐賀地方裁判所
令和02年02月12日
被告人
弁護人(国選) 東島沙弥子
検察官 高岡春美 山下忠佑
主文
本件公訴事実中、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反(令和元年8月19日付け起訴状の公訴事実第3)の点について、被告人は無罪。

(一部無罪の理由)
 1 公訴事実
 被告人は、自己の性的好奇心を満たす目的で、令和元年6月26日、F警察署の駐車場にとめた自動車内で、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データを記録した児童ポルノである記録媒体が内臓されたノート型パソコン1台を所持した。
 2 争点
 公訴事実の動画データに記録された本件女性が児童(18歳に満たない者)であると立証できているか。

 3 裁判所の判断
 (1) 本件女性の児童性について、合理的な疑いのない程度に立証できているとはいえない。したがって、犯罪の証明がないから、刑訴法336条により被告人に無罪の言渡しをする。
 (2) その理由は、以下のとおりである。
 ア 再生した動画データ(甲17)を見る限り、本件女性は、あどけない顔立ちや動作などからいって、小学生のようであり、上にみてもせいぜい中学生にしかみえない。この点は検察官の指摘に異論はない。しかし、弁護人が指摘するように、18歳以上の女性の中にも、ときには小学校高学年くらいにみえる女性がいることは否定できない(弁4)。動作なども児童に見せかけて演出することも可能である。したがって、その付近の年齢までは、顔立ちや動作などの印象だけから児童性の立証ができているとみるのは難しく、また、危険でもある。
 イ 検察官は、G医師の所見(甲16、18)をあわせると、児童性が立証できていると主張する。そこで、その所見の信用性について検討する。まず同医師の知識や経験に問題は見あたらない。タナー法自体についても、弁護人がいうような問題点が指摘されているものの、統計学的な数字による年齢判定の手法として十分に信用できる。特にタナー2期と判定できる場合には、検察官が指摘するように、18歳未満と推認することも可能と考えられる。
 しかし、タナー法は、もともと胸部及び陰毛のみに限定して判定する手法であるから、それらを正確に直接計測するのを前提としている。もちろん画像等からの判定も可能であるが、判定資料の品質によっては、判定自体の信用性に疑いが生じることは避けられない。本件の動画データは、画質がかなり荒く、重要な胸部及び陰毛について、鮮明とはいえない。G医師も、「乳房は画像処理が行われており判定が困難」とし、「画像上陰毛発生が見られるが、未だ明瞭には写っていない」としている(甲16)。陰毛については、画像からはほとんどないようにみえるが、あるとしてもその程度や、あるものを人為的に剃っているか否かの判定も難しい。そうすると、G医師は本件女性をタナー2期と判定しているが、その判定は上記のような不鮮明な画像をもとにしており、判定資料としての品質がよくない。このような画像をもとにタナーの度数判定が正確にできるかについて、常識的にみて疑いが残るといわざるを得ない。
 したがって、本件では、G医師の所見をあわせても、児童性が立証されているとはいえない。
(法令の適用)
(量刑理由)
刑事部
 (裁判官 杉原崇夫)

姿態をとらせて製造罪の罪となるべき事実が理由不備とされた事例(仙台高裁R02.6.25)

 こういう判決はあかんのですよ。3号に該当する事実(全裸でとか半裸でとか陰部露出させとか)の記載がない。
 検察官の答弁書にはこれまではこれで問題なかったということで、あかん記載例が列挙されています。全滅だと思います。

某地裁某支部h01
罪となるべき事実
A(14)が18歳に満たない児童であることを知りながら,令和2年6月27日午後4時34分頃から同日午後5時31分頃までの間,天満ホテル201号室において,同児童に,被告人と性交する姿態等をとらせ,これを被告人のスマートフォンの撮影機能を用いて撮影し,その撮影データ19点を,同スマートフォン本体に内蔵された記録装置に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した
ものである。
(法令の適用)
罰条
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条4項,2項,2条3項1号,3号

控訴理由
 法文が
衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
であるから、これに該当する具体的事実を記載しなければならない。

 この点で、原判決には理由不備があるから、原判決は破棄を免れない。
   刑事判決書起案の手引き
でもできるだけ具体的に記載することが求められる。

>>
刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

アダルト動画の販売サイト「AV Market(エーブイ マーケット)」の管理者逮捕について

 まず、児童ポルノ購入者は、画像を削除した方がいいでしょう。できれば物理的破壊。
 さらに、児童ポルノと確認された画像については、購入者にも家宅捜索が入る可能性があります。このサイトには「18歳以上年齢確認済」との表示があるみたいですが、DL購入したが児童っぽかったということで既に警察相談した人もいます。購入者の対応については、愛知県警に問い合わせ中です。
 一般論としては、これまでの捜査実務として
  提供犯を検挙した場合には、購入者も捜査するのが最近のルーティン
  単純所持罪だけでは逮捕されることはない。
  児童ポルノ画像を破棄しておけば刑事処分になることはない。自分で破壊すれば証拠隠滅罪にはならない。
  復元されて児童ポルノ画像について説明を求められると取調が長引くことがあるので、物理的破壊が望ましい。
  削除していても、不意に捜索差押を受けることがある。
ということです。
 「単純所持・逮捕」などと不安を煽るような弁護士サイトは信用しないでください。
 削除・破壊したが、捜索差押を回避したいという場合には、面倒なのでそもそも回避する必要があるのかも含めて、弁護士に直接相談してください。  

 管理者の責任については難しい理屈なので、弁護人に説明しても理解できないと思います。
 画像の委託販売というのは、中立的なサービスということもあるから、winny最判を参考にします。
 刑事責任がある場合の管理者の責任としては幇助説(名古屋高裁)、単独正犯説(東京高裁)があって、はっきりしません。
 詳しい弁護士も来ないので、管理状況を説明するか黙秘するかでしょうね。
 以前、似たようなサイトについて、管理者の弁護人に選任されましたが、管理状況を説明して、起訴猶予になったことがあります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/5cf6150599dd6c5ecaca01b5e8182a4ef7b006c6
3人とも容疑を否認している。海外サーバーを使った児童ポルノサイトの運営者の検挙は全国で初めてという。
 サイトはアダルト動画などを売買できる仕組みで、1年で約10億円を超える売り上げがあったという。
 県警少年課によると、3人は2018年1月~昨年6月、アダルト動画の販売サイトを運営し、18歳未満の女児の裸の画像を有料で2人に提供するなどした疑いがある。
 容疑者は「児童ポルノはできるだけ削除するようにしていたが、チェックしきれていなかった。積極的に売っていたわけではない」と供述しているという。
 同サイトにはアダルト動画が並び、中には18歳未満とみられる少女の裸の動画も投稿され、一部に知られた存在だったという。サイトでは会員になると、アダルト動画を売ることができ、客が有料でダウンロードして買う仕組みで、売り上げの半分を運営者らが受け取っていたとみられる。

 同サイトは米国など海外のサーバーを使い、サイトの立ち上げや運営に関わっていた3人は海外に拠点を置き、北海道と行き来していたという。(村上友里)
 《児童ポルノ問題に詳しい奥村徹弁護士の話》 現状、児童ポルノはネットで売買されることが主流で、サイト運営者を摘発しなければ、このようなサイトはなくならない。問題なのは、サイト運営者がどんな責任を持つのか、はっきりしていないことだ。また、プロバイダーの責任もあいまいで、これらの責任を明確化するための法整備が必要だ。

追記
 「もう破棄している。捜索を回避できないのか」という相談を受けまして、警察とも連絡を取っています。
 破棄して相談のために出頭した場合は、警察庁と協議して、アリスクラブのdvd通販事件と同様に、「任意廃棄を含む注意警告に留めるべき事案」として処理してくださいというお願いをしています。
  児ポ対ニュース34号
  任意廃棄を含む注意警告に留めるべき事案
   どのような事案について警告等の措置に留めるべきかは
   事案ごとに警察庁少年課との協議において判断する

追記 7/11
購入者リストも押収された模様。

https://digital.asahi.com/articles/ASN7B6X6FN7BOIPE01Q.html
家宅捜索で押収した資料を分析し、明らかになった児童ポルノ販売サイトの会員情報(県警が氏名などを黒塗りにして公表)=2020年7月10日、愛知県警中村署、藤田大道撮影
県警は関係先約30カ所の捜索でパソコンなど約80点を押収。約2万人分の会員情報もあり、出品者や購入者についても調べている。

追記7/20
 全員が捜索されるのかという質問が多いが、警察がタナー法とか過去の製造事案の記録から児童ポルノと断定した画像・動画の購入者について、メールや決済関係の記録などを精査して、購入者が割り出されたものについて、割り出された順に、全国の警察に割り振って捜索が行われると思われるので、購入者全員が捜索されるわけではないと思います。しかし、何割・何人というのは、いま聞かれても警察にもわからないと思います。

追記7/23
警視庁の事件を参考にしてください。
2017.4.15 ありすdvdで検事に捜索押収(現認される)
2017.5.2 「厳選DVD ショップありす」関係者逮捕(稼働期間2016.1~2017.4)
~~この頃から、購入者の相談増え、警視庁に相談持ち込む~~
2017.9.6 「厳選DVD ショップありす」関係者有罪判決(東京地裁
2017.9.22 検事 罰金50万円(略式命令)
2017.10.21 漫画家捜索(現認される)
2017.11.21 漫画家書類送検
2018.1.1 「児童ポルノ7200人購入名簿 検事、警官ら 200人まず摘発」読売
 ~~このころ、購入者パニック状態~~
2018.2.27 漫画家略式命令(東京簡裁)
2018.3~7月 月島警察に出頭相談(全員、捜索省略して厳重注意)

追記7/24
 弁護士の選び方を聞かれますが、「児童ポルノに強いと宣伝する弁護士」「単純所持罪で逮捕される可能性があるという弁護士」とか「破棄していると起訴されない理由を理論的に説明できない弁護士」には相談しないことでしょう。

追記8/4
 他の弁護士の費用と方針の違いの問い合わせが多くなりましたが、当職の方針は、「自首」ではなく「警察相談」であり、「不起訴」ではなく「厳重注意」であって、報酬は頂いていません。破棄されていれば起訴されませんので。

https://www.saitoyutaka.com/2020/07/4440/
初回相談料5000円、身柄がついていない場合の着手金22万円、不起訴の場合の報酬33万円となります。


8/11追記
 「破棄して捜索回避を相談しようと愛知県警に電話して名前を告げたら、警察が住所・職業を知っていた」という話を聞きました。本当だとすると、購入者の特定が進んでいることになります。

追記8/23
 「破棄したので捜索を避けたい」という無料相談が300件以上あって、相談料などFAQを無料で返しています。有料(相談料は一律22000円です)の相談で、個別事情を聞いて警察相談などの対応の要否・可否を検討しています。捜索を受けても影響がない場合には、「静観」という選択になります。警察相談となるときの着手金は刑事弁護なのでだいたい33~44万円(報酬金は無し)です。クレジットカード払いやクレジットカードによる分割払いも一応可能です。

https://digital.asahi.com/articles/ASN8Q5WKJN8QOIPE00C.html?_requesturl=articles%2FASN8Q5WKJN8QOIPE00C.html&pn=5
海外拠点のアダルト動画の販売サイトの運営者らが摘発された事件に関連し、このサイトで児童ポルノの画像などを売買したとみられる会員ら100人超が警察に申告や相談をしていることが捜査関係者への取材でわかった。愛知県警などは約2万人分の会員名簿を押収。児童ポルノの購入者や出品者を児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで調べる方針だ。
 「サイトで児童ポルノを販売した。自首したい」「児童ポルノ動画などを購入した。自分も逮捕されるのか」
 捜査関係者によると、全国の警察に6月以降、サイトの出品者や購入者からこうした相談が相次いでいる。その数は、1カ月で100人以上にのぼる。児童ポルノ問題に詳しい奥村徹弁護士のもとにも、サイトで児童ポルノ動画などを購入したとみられる医師や教員ら約300人が相談に来ているという。


追記9/1
 これまで警察相談の内容を警察にfaxで送ってたんですが、今後は紙で送ってくれと言われました。警察相談を受け付けないというデマがあるようですが、そういうことはないですね。報道にも出てます。

digital.asahi.com
出品者や購入者ら200人超から相談や自己申告が警察に寄せられていた。
県警は、身体の発達状況などから18歳未満とみられる画像や動画について、売買記録などを捜査。容疑が固まり次第、9日にも出品者の男1人を逮捕し、今後は購入者についても同法違反(単純所持)容疑で立件する方針とみられる。

追記9/21
 弁護士経由で書面で警察相談した人には、本籍地の番地・電話番号・メールアドレスなどの誤記について警察から電話で確認が来ています。相談を契機として購入者リストとの突き合わせなどの捜査がされているということです。

追記10/15
 児童ポルノを持って出頭すると、「自首」にはなるでしょうが、提供犯側も含めて捜査されますので長引くし、送検されて、起訴猶予か罰金ということになります。
 警察庁が購入者の相談を集計しはじめたようですね。

児童ポルノ動画出品の疑いで逮捕 /愛知県
2020.10.14 朝日新聞
 同容疑者から動画を購入した横浜市の男性(28)が今年7月に出頭。全国の警察には今月12日現在で購入に関する相談が439件寄せられているという。

盗撮なのにひそかに製造罪にならないことに注意してください。強制わいせつ行為の際の盗撮行為について、ひそかに製造罪(7条5項)で有罪とした事例(名古屋地裁)

 盗撮なのにひそかに製造罪にならないことに注意してください。
 児童ポルノ製造関係の各罪は縄張りが厳しくて、「4前項に規定するもののほか」「5前二項に規定するもののほか」という限定があるので、目的製造罪が成立する場合には姿態をとらせて製造罪は成立しない、姿態をとらせて製造罪が成立する場合にはひそかに製造罪は成立しないことになっています。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする


 とすると、こんな感じで、性犯罪・福祉犯の機会に行われた製造行為は姿態をとらせて製造罪であってひそかに製造罪ではありません。「被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る」という姿態をとらせているので、姿態をとらせて製造罪であってひそかに製造罪ではない。

第1  A(当時11歳)に強いてわいせつな行為をしようと企て,  6月16日午後9時18分頃から同日午後9時52分頃までの間,前記被告人方1階の和室内において,前記Aに対し,同人の衣服を脱がせるなどした上,同人の陰部等を手指で触るなどして弄び,同人の陰部等を舐め,同人の胸を直接揉むなどし,もって強いてわいせつな行為をし
第2 前記日時場所において,前記Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為をビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し
たものである。

 これもひそかに製造罪不成立。「前記児童が被告人と性交する姿態及び被告人の陰茎を口淫する姿態」をとらせているので、姿態をとらせて製造罪。

被告人は
A(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 平成32年6月16日午後3時28分頃から同日午後5時34分頃までの間大阪市北区ホテル403号室において,同児童に対し,現金4万円の対償を供与する約束をして,同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をし
第2 前記日時,場所において,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態及び被告人の陰茎を口淫する姿態等を小型カメラ,ビデオカメラ及びスマートフォンで撮影し,その動画データを同小型カメラ及び同ビデオカメラに装着したマイクロSDカード並びに同スマートフォン内の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し

女性による男性に対する青少年条例違反事件

 量刑的にはちょい軽くなっています。
 青少年が主体という場合は、青少年条例違反は立たないんでしょうかね。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4005271.htm
男子中学生を自宅に招き入れ、みだらな行為をしたとして40歳の女が逮捕されました。女の自宅は、以前から近所の少年たちのたまり場になっていたということです。

 逮捕されたのは、横浜市の会社員容疑者で、14日朝、自宅で、中学3年の男子生徒にみだらな行為をした疑いが持たれています。
 警察によりますと、容疑者の自宅は数人の少年が出入りするたまり場となっていて、近所の人から相談を受けた警察が、以前、容疑者を注意していました。

神奈川県青少年保護育成条例の解説 平成25年3月
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な上記を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
[趣旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をすることを禁止したものである。また、ごれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
※罰則
第1項違反2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第53条第1項)
第2項違反1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第53条第2項第2号)
[解説]
本条は、青少年を対象としだ性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様のほか、当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
I 第1項関係
1 「みだらな性行為」の意義については、第3項で規定されている。その解釈は、象徴的には「人格的交流のない性交」を言うものであり、具体的には、次のものが例として挙げられる。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うもの
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなもの
③ 行きずりの青少年を相手方とするもの、あるいは多数人を相手方とし、又はこれらを互いに相手方とするもの等
2 「わいせつな行為」についても第3項で規定されているが、その解釈は前記①、②、③と同様な態様による性交類似行為等であり、具体的には、いわゆる素股や尺八等はもちろん、陰部を手などで触れる(又は触れさせる)行為、また、単なる性欲の目的を達するためにのみ行う接吻、乳房を撫でること等が該当する。
なお、本条は青少年に対する行為そのものを禁止する規定であり、刑法第174条に規定する公然わいせつ罪とは異なり、行為の公然性は不要である。
3本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交した場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女聞の性行為は、該当しないものである。

糞便送付による威力業務妨害事件(広島高裁R02.2.18)

裁判年月日 令和 2年 2月18日 裁判所名 広島高裁 裁判区分 判決
事件名 威力業務妨害、わいせつ文書頒布被告事件
裁判結果 棄却 文献番号 2020WLJPCA02189002
理由
第1 控訴趣意
 本件控訴の趣意は,弁護人岩西廣典作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。
 論旨は,封筒に人糞等を入れて大使館等に送付した被告人の行為は,公館の関係職員を不快な気持ちや侮辱された気持ちにさせることはあっても,畏怖させるに足りる状態にまでは至らせてはいないのに,人糞を危険物との意を込めて「人糞ようの不審物」と証拠に基づかない認定をし,このような物が在中しているとの不安を抱かせたなどとして威力業務妨害罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があり,刑法234条の「威力を用いて」の解釈適用を誤った法令適用の誤りがあるというのである。
 そこで,記録を調査して検討する。
第2 検討
 1 原判決が認定した罪となるべき事実の要旨
 原判決が認定した本件威力業務妨害罪の要旨は,被告人が,文書(後記①ないし③は「日本人が拉致されているのに北朝鮮に援助は拒否する。韓国とは国交断絶へ。日本の金はとるな。泥棒。出て行け。韓国にはうんこをプレゼントします。」と記載したもの,後記④は「日本人拉致者を巻き込んて金正恩朝鮮労働党委員長を支援することははっきりと断ります。」と記載したもの,後記⑤は「日本人拉致者を巻き込んで文在寅韓国大統領が金正恩朝鮮労働党委員長を支援することは断じてゆるせん。韓国とは国交断絶へ。出て行け。SK Materials Japan!」と記載したもの)及びビニール袋入りの人糞を封入した封筒を,①平成31年1月20日ころ駐新潟大韓民国総領事館(原判示第1の1)及び②駐広島大韓民国総領事館(同第1の2)に,③同月22日ころ駐日本国大韓民国大使館(同第1の3)に,④同年2月17日(同第1の4)及び⑤同年3月22日に駐広島大韓民国総領事館(同第1の5)にそれぞれ宛てて投函し,いずれも到達させて(以下,被告人が文書と糞便の入った封筒を各総領事館等に郵送し,配達人を介して各総領事館等まで到達させた行為を,まとめて「本件郵送行為」といい,郵送先となった各総領事館等を「本件各公館」という。),本件各公館の関係職員らに人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせるなどし,これにより,警察への通報等の対応を余儀なくさせて,その正常な業務の遂行を困難にさせたというものである。
 2 原判決の(争点に対する判断)の項の説示の要旨
  ⑴ 本件各犯行の経緯と本件各公館の対応については,原判決が(争点に対する判断)の項の2で説示するとおりである。このうち,同2⑷の本件各公館の対応は,要するに,前記①,③では開封して内容物を確認した上で警察への通報等を行ったが,前記②,④,⑤では封筒の外観等から不審物と判断し,警察への通報等を行った後,警察官立会の下で開封して内容物を確認したというものである。
  ⑵ 原判決は,この事実関係を前提にして,被告人の本件郵送行為が「威力を用いて」に該当することについて,(争点に対する判断)の項の3⑵において,次のとおり説示している。
 「本件封筒は,宛先だけで差出人の記入がなく,その外からは内容物が分からない体裁のものであった。開封前から異臭がするものもあったが,開封して初めて人糞ようの汚物が入っていることが確認できた。人糞はそれ自体が直ちに有害なものではないとしても,一般に,他人の糞便には,汚物として嫌悪感を抱き,糞便が入った封筒が一般の郵便物として郵送されてくることなどは誰も思いもよらない異常な出来事であって,そのような汚物が入った封筒を目にしたりするだけでも不快で,予期せずに手に取ったりすれば強い嫌悪感を感じるものである。そして,そのような異常な行動に出る送り主の強い悪意を窺わせる点でも不安を高じさせる。また,公館はその外国を代表する施設であり,公館に糞便を送りつけることは,その国への侮辱を意味するから,公館の職員としては,公館の安寧や尊厳を守るためにも,このような行為の目的,政治的,組織的な背景の有無を考察し,前述したようなさらなる加害行為にエスカレートするおそれも警戒して,警察への通報や,本国の上級機関等の関係各機関への報告等を行うか否かの検討を差し迫って求められることになる。さらに,一見人糞のように見えても,人体に有害な物質が仮装されていないかどうかは,科学的な分析を経ないと確定できないから,公館の職員は,『アメリ炭疽菌事件』のように,公館を攻撃するために危険物が送られてきたのではないかとの不安や危険を感じることもあろう。このように,公館に糞便を送り付ける行為は,これを受け取った公館の職員が強い嫌悪感を抱いたり,危険物が送られてきたのではないかと不安を覚えたり,あるいは,公館の関係職員は,他の業務を差し置いても,このような不審物に対する警察や関係機関へのしかるべき対応を余儀なくされることになる。このような意味で,公館に糞便を送付した本件行為は,公館の関係職員らの自由な意思を著しく制約するに足りるものであり,威力に該当する。」
 この原判決の説示に,論理則,経験則等に照らし不合理な点はない。
  ⑶ この説示に関し補足すると,本件郵送行為は,開封後,その内容物を確認した本件各公館の関係職員に対し,著しい不快・嫌悪の情を抱かせて心理的動揺を生じさせ得るとともに,人糞を封入するという異様さと同封の文書の内容等とが相まって,氏名不詳の送り主が当該国に対する強い敵意を有する人物であり,今後公館の関係者らに対する加害行為へと行動を発展させるのではないかという不安を抱かせる性質のものであったといえる。また,その外見・臭気等から人糞である蓋然性が高いと当時考えられたとしても,病原菌等の人体に有害なものが混入している可能性も否定できず,危険物であるという不安を抱かせるものであったともいえる。被告人の行為は,客観的に見て本件各公館の関係職員に対し上記のような心理的威圧感を与えて事実上業務遂行に支障を生じさせる性質のものであり,人の自由意思を制圧するに足る作用を有するものとして「威力を用いて」に該当するというべきである。なお,本件郵送行為後,因果の流れとして開封に至る蓋然性は高いとはいえるものの,犯罪が成立するのは現実に本件各公館の関係職員が開封して内容物を確認した時点と解するのが相当である。この点について,原判決の(罪となるべき事実)では,本件各公館の関係職員に開封させたことを明示してはいないが,実体としては,前記のとおり,いずれの犯行でも,警察への通報の前後において,本件各公館の関係職員により開封されており,原判決の(罪となるべき事実)中の「到達させて」の文言には,「到達させ,公館の関係職員に開封させて」との趣旨を含むものと解するのが相当である。
 3 所論の検討
 所論は,原判決が,本件各公訴事実中の「人糞ようの汚物その他の危険物が在中している旨の不安を抱かせるなどし」との記載部分について,(罪となるべき事実)で「人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせるなどし」との表現に変えて認定したのは,(争点に対する判断)の項の3⑵の前記説示内容と合わせて見れば,「不審物」に危険物との意を込めた趣旨であると指摘した上で,実際には危険物は入っておらず,関係職員らがそのような不安を抱いていたという証拠もない(控訴趣意書によると,原審において,弁護人は,人糞以外に危険な物が入っている可能性があるという危機意識があった旨の記載部分は全て不同意としたと主張している。)から,前記認定は事実誤認であるという。
 しかし,弁護人が不同意にしたという部分を除いた関係証拠によっても,本件各公館の関係職員が不審物であるとの不安を抱いたと推認することは,論理則,経験則等に照らし不合理とはいえず,原判決に所論がいうような事実の誤認はない。本件郵送行為により到達した封筒を本件各公館の関係職員に開封させて内容物を認識させることが「威力を用いて」に該当するかどうかは,行為の態様,当時の客観的状況,妨害の対象となる業務の性質・内容等からして当該業務を妨害するに足りるような性質・程度のものであるかという観点から客観的に判断すべきものである(弁護人が控訴趣意書7頁で,威力の認定は社会通念に基づいて行うものであると主張しているのも,同趣旨と解される。)。原判決の(争点に対する判断)の項の3⑵の前記説示は,本件郵送行為の「威力を用いて」の該当性の客観的判断として経験則等に基づく評価を示したものであって,実際に本件各公館の関係職員が説示にあるような不安を抱いたことを認定した趣旨のものでないことは明らかである。
 これに対し,原判決の(罪となるべき事実)は,被告人の行為により実際に生じた前記職員の自由意思の制圧と正常な業務の遂行の阻害という具体的事実を認定することにより,本件について危険犯である威力業務妨害罪の該当性を示すとともに,その危険が現実化したことを情状事実として摘示したものと解するのが相当である。
 なお,この点に関し,所論は,原判決の(罪となるべき事実)中の「人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせ」との認定部分と,(争点に対する判断)中の「一見人糞のように見えても,人体に有害な物質が仮装されていないかどうかは,科学的な分析を経ないと確定できないから,公館の職員は『アメリ炭疽菌事件』のように公館を攻撃するために危険物が送られてきたのではないかとの不安や危険を感じることもあろう」との記載部分を対比すると,そこにいう不安の内実は別物といえるから,威力該当性の判断について,刑訴法378条4号後段の「理由にくいちがいがある」場合に当たるとも主張する。しかし,実質的に両者の「不安」の内実が異なっているとはいい難い上,(罪となるべき事実)の項における認定の意義と,(争点に対する判断)の項における「威力を用いて」該当性判断の説示の趣旨は既に指摘したとおりであって,その間に論理的な矛盾・くいちがいはないというべきであるから,この点の所論も失当である(もっとも,所論が指摘するとおり,原審で取調べた証拠に現れておらず,検察官も主張していない「アメリ炭疽菌事件」を引用して本件の危険性を論ずる原判決の説示部分は,やや適切さを欠くことは否めない。)。
 論旨は理由がない。
第3 結論
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
 令和2年2月18日
 広島高等裁判所第1部
 (裁判長裁判官 多和田隆史 裁判官 水落桃子 裁判官 廣瀬裕亮)