児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

木村光江「強制わいせつ罪における『性的意図』」判例時報 736号18頁

 わいせつの定義は非常に流動的なんだそうで、木村説の定義はありません。

拙稿1頁って17年前の論稿
強姦罪の理解の変化--性的自由に対する罪とすることの問題性
雑誌記事 木村 光江
掲載誌 法曹時報 55(9) 2003.9 p.2343~2360

木村光江・判評 736号18頁
6 わいせつな行為の意義
(1)大法廷判決の意図
 性的意図の位置づけは、平成29年判例により、犯罪の成立要件からわいせつ行為の判断基準の一要素へと移った(ただし、なお一定の独立の主観的要件は必要であるとする見解として、成瀬幸典・法学82巻6号113頁以下。客観的事実を超えた「人をその意思に反して自己又は第三者の性的衝動・性的欲求の対象として扱う意図」を強制わいせつ罪の主観的要件として認めるべきであるとする)。問題は、現代社会においてどのような行為が「わいせつな行為」、大法廷の文言でいえば「性的な意味のある行為」に当たるかである。「わいせつ」の定義としては、わいせつ物頒布等罪175条)に関する最判昭26・5・10(刑集5巻6号1026頁)の「性欲を刺激、興奮または満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」が、強制わいせつ罪においてもそのまま用いられてきたが、大法廷はこの定義に言及していない。
 学説上も、175条の定義を強制わいせつ罪に用いることへの批判は強く、性的自由に対する侵害行為がわいせつ行為であると理解する見解が多数である(山口厚『刑法各論〔第2版〕』(有斐閣、2010年)107頁、佐久間修『刑法各論〔第2版〕』(成文堂、2012年)115頁)。しかし、大法廷は、「性的自由を侵害する行為」という定義も用いていない。現在では、性的自己決定権の侵害といった保護法益の捉え方では、重大な被害を十分に捉えることができないとして、例えば、「性的不可侵性」(山中敬一・研修817号10頁)、被害者の性的尊厳・人格権の侵害(辰井聡子『町野古稀(上)』(信山社、2014年)425頁)といった理解も有力であり、わいせつ行為の定義自体は非常に流動的な状況にある(拙稿・前掲1頁以下参照)。大法廷が敢えて定義を示さなかったのは、現時点での一義的な定義が困難だという面もあるが、強制わいせつ罪の保護法益がかつてのように「性的自由に対する罪」だけでは説明できない状況にあるからである(本件のように児童に対するわいせつ行為も、自由に対する罪というよりは児童保護の観点が重要である)。
 一般的な定義を示す代わりに、大法廷は前述の通り、「わいせつな行為」を①性的な意味が明確な行為と②それが不明確な行為に分けて論じている。ただ、規範的構成要件要素の解釈に困難が伴うことは「わいせつ性」の判断に限らない。それにもかかわらず、敢えて大法廷がこのような区別を示して説明した理由に着目すべきであろう。おそらく「性的な意図」を独立の成立要件から外すに当たり、およそ行為者の主観を考慮しないとする趣旨ではないことを強調したかったものと思われる。「わいせつ」のような規範的判断において主観的事情を考盧しないことは非現実的だからである。そこで、「性的意図をおよそ要しない行為類型(①)」を取り出して、この部分については「性的意図」を成立要件としないことを明確にし、その上で、なお行為者の主観を考慮して判断すべき「限界事例」があることも見据えていると考えられる。本判決が「性的意図を独立の成立要件としない」ことを宣言した意義は大きいが、上述5(2)で述べたように、実質的な判断基準において昭和45年判例と決定的な違いがあるわけではない
(2)わいせつな行為の判断基準
 平成29年判例によれば、「わいせつな行為」の具体的な判断は、「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて」なされ、「そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」とされている。
 社会通念により判断する以上、当該被害者の個別具体的な被害感情そのものは基準となり得ず(それも判断材料の一つとはなり得ようが)、その時代の一般的な社会常識によらざるを得ない。より具体的には、当該行為の性質、被害者との関係、被害者の同意の有無、四囲の状況等(馬渡・前掲87頁)のほか、事案によっては医療上の必要性といった事情も考慮して判断されることになろう(たとえ衣服を脱がせる行為が診察上必要であっても、それを撮影することの必要性がなければわいせつ行為に当たる。広島高判平23・5・26、後掲表15参照)。
 身体的接触があれば「性的に意味のある行為」に当たることが多いであろうが、昭和45年判例で問題となった「裸にして写真を撮る行為」は、既に昭和62年の時点で(性的意図の有無にかかわらず)客観的には「わいせつな行為」に該当するとされていた。
(3)主観的事情の考慮
 では、行為者の性的意図を考慮しなければ判断し得ない場合とはどのような行為か。昭和45年以降の裁判例で、公刊物等で確認できるもののうち、行為自体のわいせつ性や性的意図が争点となった主なものについて、客観的なわいせつ性の程度と、性的意図の有無の観点から整理したのが本稿末尾の表である。
 客観的にわいせつ行為であることが明確な行為(表(ⅰ))については、昭和45年判例を除き全て有罪(●)となっているが、敢えて「性的意図は不要である」と明示したのが19、26(本件大法廷判決)である。これらを含む「I’」の分類は、被告人が性的意図以外の目的を主張した事案につき、性的意図との併存を認定したものである。
 それに対し、客観的にわいせつ行為性が認められないとされた例が(ⅲ)の6及び10であり、性的意図があることを認定しつつ強制わいせつ罪に当たらないとした。10は、嘔吐させることに性的満足を覚える者が、性的意図を持って女子高校生の口内に指を差し入れ嘔吐させる行為につき、客観的に「わいせつ行為」に当たらず暴行罪にとどまるとした。また、6は性的意図をもって女性の定期券を奪った行為について、窃取であってわいせつ行為ではないとした(東京高判昭62・7・9、豊田健・法学研究61巻2号267頁参照。不法領得の意思は認められる)。
 問題となりうるのが(ⅱ)の客観的に見てわいせつ性が必ずしも明確ではない類型であり、直接的な身体的接触がない場合や、近年は被害者自身に自画撮りさせて送信させる行為等が含まれる(非接触型のわいせつ行為につき、橋爪隆・研修860号3頁以下参照)。もっとも、成人女性・男性に対し意思に反して裸体を撮影する行為は、現在では性的意図を考慮することなく社会通念上わいせつ行為に当たるとされよう。それに対し、27判例(最決平30・9・10により維持された)は、ベビーシッターが乳幼児(男児)の陰茎を露出させて撮影した等の行為について、「日常でも目にするような全裸又は半裸の乳幼児の姿態を写真撮影するという態様」の行為のわいせつ性判断に当たり、被告人の性的意図の有無を考慮することは妥当であるとしている。
 さらに、最高裁が考慮すべきとする「行為者の主観的事情」は、「行為者自身の性欲を満たす性的意図に限られない」と指摘されている。性的屈辱感を感じさせる復讐目的や、第三者らの性欲を満たすための性産業に提供する目的も含むと考えられるからである(馬渡・前掲88頁)。ただ、このような目的は「一般人からみて性的意図があると考えられる事情」とほぼ同義であり、そのような意味での主観的事情であれば、わいせつ性の認識(故意)とほぼ重なることになろう。実質的にみれば、29年判例のいう「主観的事情」は「故意」とほぼ同義といえるのである。したがって、故意以外に主観的事情を考慮する必要がある事例は限定的となろう。
 7 まとめにかえて
 29年大法廷判決以降、強制わいせつ罪の議論の中心は、「性的意図の要否」から「わいせつ行為とは何か」に移った。わいせつ行為を、「性的性質を有する一定の重大な侵襲」とし、より具体的に検討する試みもなされている(佐藤・前掲法時60頁以下)。
 ただ、翻ってみると、昭和45年判例と平成29年大法廷判例との実質的な相違は、「性的意図の要否」の問題ではなかったように思われる。昭和40年刊行の注釈刑法では、単なる抱擁や、男が女の上に馬乗りになる行為、着衣の上から臀部を撫でる行為等はわいせつ行為ではないといった記述が見られる(同(4)293-294頁(所一彦執筆分))。もちろん状況にもよるが、現在ではこれらの行為については、わいせつ行為に当たるとされる場合も多いといえよう(なお、迷惑防止条例との関係については、嘉門優・季刊刑事弁護93号147頁以下参照)。昭和45年、平成29年の両判例の相違は、処罰範囲の違いであると考えるべきである。
 その処罰範囲の違いは、大法廷のいうように「社会の一般的な受け止め方」の変化によるものに他ならない。さらに、昭和45年判例が「通説にしたがって」性的意図を必要であるとしたのに対し、平成29年大法廷判例は「社会の一般的な受け止め方」にしたがって性的意図を成立要件とすることを否定した。両判例の違いには、学説と判例の関係の変化も現れているのである。

ダークウエブの単純所持容疑で書類送検の報道

 タナー法の児童性立証を争うしか無いなあ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/959085981f5bb702daf2acf81923d434c9391768
ネットからダウンロードし「保存」…児童ポルノを所持した疑いで男4人を書類送検
6/8(月) 19:24配信
警察の調べに4人は容疑を認めている「違法だと知りながら捨てることが出来なかった」
インターネット上で幼い少女の裸の動画などをダウンロードし、所持した疑いで、京都や三重に住む男4人が書類送検されました。
児童ポルノ禁止法違反の疑いで書類送検された京都府三重県に住む男4人は、去年、ネット上で4歳から13歳の少女が裸でダンスを踊る動画などをダウンロードし、パソコンなどに保存した疑いが持たれています。
警察の調べに対し、4人は容疑を認めていて「違法だと知りながら捨てることが出来なかった」などと話しているということです。
全国33都道府県の警察の合同捜査で、同じサイトから少女の裸の動画や写真などが約4400回ダウンロードされたことがわかっていて、これまでに4人を含む合わせて60人が書類送検されています。
警察は、違法に18歳未満の少女の裸の動画や写真などを投稿していた人物の特定を急いでいます。

強制わいせつ罪と姿態をとらせて製造罪を観念的競合とした判例・裁判例 最新版

 脱がして、撮影するだけのは観念的競合になってます。
 触ったり、ダビングしたりすると、併合罪


名古屋地裁一宮H17.10.13
東京 地裁H18.3.24
東京 地裁H19.2.1
東京 地裁H19.6.21
横浜 地裁H19.8.3
長野 地裁H19.10.30
札幌 地裁H19.11.7
東京 地裁H19.12.3
高松 地裁H19.12.10
山口 地裁H20.1.22
福島 地裁白河H20.10.15
那覇 地裁H20.10.27
金沢 地裁H20.12.12
金沢 地裁H21.1.20
那覇 地裁H21.1.28
山口 地裁H21.2.4
佐賀 地裁唐津H21.2.12
仙台高裁H21.3.3
那覇 地裁沖縄H21.5.20
千葉 地裁H21.9.9
札幌 地裁H21.9.18
名古屋高裁H22.3.4
松山 地裁H22.3.30
那覇 地裁沖縄H22.5.13
さいたま地裁川越H22.5.31
横浜 地裁H22.7.30
福岡 地裁飯塚H22.8.5
高松 高裁H22.9.7
高知 地裁H22.9.14
水戸 地裁H22.10.6
さいたま地裁越谷H22.11.24
松山 地裁大洲H22.11.26
名古屋地裁H23.1.7
広島 地裁H23.1.19
広島 高裁H23.5.26
高松 地裁H23.7.11
広島 高裁H23.12.21
秋田 地裁H23.12.26
横浜 地裁川崎H24.1.19
福岡 地裁H24.3.2
横浜 地裁H24.7.23
福岡 地裁H24.11.9
松山 地裁H25.3.6
横浜 地裁H25.4.30
阪高裁H25.6.21
横浜 地裁H25.6.27
福島 地裁いわきH26.1.15
松山 地裁H26.1.22
福岡 地裁H26.5.12
神戸 地裁尼崎H26.7.29
神戸 地裁尼崎H26.7.30
横浜 地裁H26.9.1
津地裁H26.10.14
名古屋地裁H27.2.3
岡山 地裁H27.2.16
長野 地裁飯田H27.6.19
横浜 地裁H27.7.15
広島 地裁福山H27.10.14
千葉 地裁松戸H28.1.13
高松 地裁H28.6.2
横浜 地裁H28.7.20
名古屋地裁岡崎H28.12.20
東京 地裁H29.7.14
名古屋地裁一宮H29.12.5
東京 高裁H30.1.30
高松高裁H30.6.7
広島 地裁H30.7.19
広島 地裁H30.8.10

「A(当時15歳)が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため、同人と性交し、もって、青少年に対しみだらな性行為をした」という青少年健全育成条例違反罪の罪となるべき事実(仙台地裁R01.12.19)

青少年= 六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)という条例の定義なわけだから、「六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)であることを知りながら」を認定しないと、理由不備になるんじゃないかなあ。。


https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/729011.pdf
(定義)
第十四条 この章から第六章までにおいて、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 青少年 六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)をいう。

仙台地方裁判所
令和01年12月19日
主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 インターネットのアプリを通じて知り合ったA(当時15歳)が未成年であることを知りながら、同人に家出願望があることを利用して同人を誘拐しようと考え、令和元年8月23日頃、C市(以下略)の当時の被告人方において、宮城県内で両親と居住していた前記Aに対し、携帯電話機を利用して、自己の車に寝泊まりすることを了承する旨のメッセージを送信し、家出をして自己の下に来るように誘惑し、前記Aにその旨決意させ、同月24日午後1時30分頃、同市(以下略)付近路上において、同人と合流し、同人を同所付近に駐車中の自動車に乗車させて同車を発進させ、親権者に無断で前記Aを連れ去り、以後、同年9月3日午後9時50分頃までの間、同人を同車内で寝泊まりさせるなどして自己の支配下に置き、もって、未成年者を誘拐し、
第2 同年8月26日午前8時過ぎ頃、当時の前記被告人方において、前記A(当時15歳)が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため、同人と性交し、もって、青少年に対しみだらな性行為をした。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
  判示第1の行為 刑法224条
  判示第2の行為 青少年健全育成条例(昭和35年宮城県条例第13号)41条1項、31条1項
刑種の選択 判示第2の罪につき懲役刑を選択
併合罪の加重 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)
刑の全部執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件において、被告人は、被害者が中学生であることを知りながら、その家出願望を利用して家出するようにそそのかすなどして被害者を誘拐し、さらに、被害者をその性的欲望を満足させる対象としており、被害者の年齢を考慮すると、被告人の行為が今後被害者の健全な育成に悪影響を与える可能性も否定できず、その態様は巧妙かつ悪質で、その結果も軽視できない。
 また、突如、中学生の娘を誘拐された被害者の両親らの動揺や不安は察するに余りあり、被害者の母親が被告人の厳重な処罰を望むのも当然である。
 以上によれば、被告人の刑責は重大である。
 しかしながら、被告人は、本件各犯行時21歳であり、これまで前科、前歴がなく、また、本件各犯行を認め、今後犯罪行為は一切しない旨誓約し、捜査や裁判の手続を経て、現段階においては、内省が深まりつつあることに加え、被告人の母親が今後同居しながら、父親とともに、被告人を指導監督する旨誓約していることなどを考慮し、被告人に対しては、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(検察官上田勇樹、弁護人伊藤佑紀各出席)
(求刑 懲役2年)
第2刑事部
 (裁判官 江口和伸)

「わいせつな行為」とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」~司法研修所検察教官室著「捜査実例中心刑法各論解説」

 この定義には「性欲興奮」が入ってるので、使わないですよ。
 女児については、検察教官室は性的羞恥心説でしょうかね。0歳児は羞恥心害されないから無罪でいいですね。

強制わいせつ罪(刑法176条)の「わいせつな行為」
1 「わいせつな行為」について
「わいせつな行為」とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」と解されている。
具体的には、陰部や乳房、臂部への接触行為など身体的接触行為のほか、裸にして写真を撮影する行為など直接体に触れなくてもわいせつ行為に当たり得る。
2わいせつな行為に当たるか否かの判断について
最大判平29.11.29 (刑集71-9-467)は、「刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味合いがあるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。
したがって、そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。
しかし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当ではない。」旨判示した。
この事案は、被告人が、当時7歳の女児に対し、自己の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、同児の陰部を触るなどした事案である。
裁判所は、「知人から金を借りる際、金を貸す条件として被害児童とわいせつな行為をしてこれを撮影し、その画像データを送信するよう要求されたため行ったものであり、性的意図はなかった。」旨の被告人の主張は排斥できないとしつつ、上記行為について、「当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから、その他の事情を考慮するまでもなく、性的な意味合いの強い行為として、客観的にわいせつな行為であることは明らかである。」旨判示した。
上記判例は、わいせつ性の判断において一律に性的意図は不要としたものではなく、「個別具体的な事情の一つとして行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。」としつつ、行為者の主観を考盧するまでもなく客観的行為のわいせつ性が明白な場合には、行為者の性的意図が欠けていても強制わいせつ罪は成立し得るとしたものであることに留意する必要がある。
なお、上記判例について、前田雅英「最新刑事判例研究(第45回)」(捜査研究66-12-2)を参照されたい。
3年少者に対するわいせつ行為について
乳房への接触行為について、乳房が発達していない年少者であっても、性的意識が全く発達していないとはいえず、社会通念上も性的感情の侵害があると見られることから、乳房が未発達というだけではわいせつ行為にならないとはいえないと解されている。
4参考裁判例(新潟地判昭63.8.26判時1299-152)
被告人が、小学校のグラウンドで遊んでいた女児(当時7歳) を認め、同児に甘言を用いて誘い出し、同児を籾殻袋の上に座らせ、ポロシャツの前ボタンを外した上、そこから手を差し入れてその右乳部を多数回撫で回し、さらに、スカート内に手を差し入れてパンツの上からその臂部を撫でた事案。
なお、被告人には、5歳から9歳の女児の陰部を手指で弄ぶなどした強制わいせつ罪等の複数の前科があった。
公判で、弁護人は、「乳部も臂部も未だ何ら男児と異なるところはなく、その身体的発達段階と社会一般の通念からして、本件行為はわいせつ行為ということはできない。」旨主張した。
しかし、裁判所は、「被害児童は、性的に未熟で乳房も未発達であって男児のそれと異なるところはないとはいえ、同児は、女性としての自己を意識しており、被告人から乳部や臂部を触られて蓋恥心と嫌悪感を抱き、被告人から逃げ出したかったが、同人を恐れてこれができずにいたものであり、……一方、被告人は、同児の乳部や臂部を触ることにより性的に興奮をしており、そもそも被告人は当初からその目的で本件行為に出たものであって、この種犯行を繰り返す傾向も顕著であり、そうすると、被告人の行為は、強制わいせつ罪のわいせつ行為に当たるといえる。」旨判示した。
捜査のポイント
年少者に対するわいせつ行為について、
前記参考裁判例では、7歳の女児の乳部を撫で回すなどの行為がわいせつ行為と認定されたが、これは、被告人の性的傾向や、本件犯行時に陰茎が勃起するなど性的興奮状態にあったことのほか、被害児童は、「乳部を触られた際、気持ちが悪く、恐ろしくて泣き出したくなった。」旨供述し、被害後、祖母に「あのおじさん、エッチなおじさんなんよ・」などと言った言動なども考慮して判断したものと思われる。
このように、特に年少者に対する行為がわいせつ行為に当たるかどうかは判断が困難な場合もあることから、形式的に判断することなく、被疑者の性的傾向、当該行為に至る経緯、当該行為の態様、被疑者の性的興奮の程度、犯行後の被疑者の言動、被害児童の被害時の心情や、被害後の周囲への言動なども十分捜査をし、適切に判断する必要がある。
また、性的意図の有無について、前述のとおり、判例は、強制わいせつ罪において一律に性的意図を不要としたものではなく、客観的に見てわいせつな行為であることが明らかとまでは言い難い行為(例えば、単に接吻する行為や、裸体を写真撮影するにとどまる行為など)の場合には、被疑者の性的意図の有無が問題となるものと考えられることから、従前のとおり、被疑者の性的意図の立証も意識した捜査を行う必要があると思われる。

12歳との児童買春罪・強制性交の猶予判決(名古屋地裁R011205)

 755万円で示談して酌量減軽
 援助交際型というのは強制性交罪の科刑状況としては一番軽い部類になります。
 対償供与約束が児童買春罪の実行行為とすると、部分的にしか重なり合って居ませんが、観念的競合とされます

名古屋地裁令和元年12月 5日
事件名 強制性交等、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
主文
 被告人を懲役3年に処する。
 未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,A(別紙記載。当時12歳)が13歳に満たない児童であることを知りながら,平成31年3月9日午前2時15分頃から同日午前3時13分頃までの間に,愛知県大府市〈以下省略〉aホテル217号室において,Aに対し,約1万3000円相当のチケット代金等の支払を対償として供与する約束をして,Aと性交及び口腔性交をし,もって児童買春をするとともに,13歳未満の者に対し,性交等をしたものである。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 児童買春の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
 強制性交等の点 刑法177条後段
 科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので,1罪として重い強制性交等罪の刑で処断)
 酌量減軽 刑法66条,71条,68条3号
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 (量刑の理由)
 本件は,LINEを通じて知り合った被害者に対する犯行であるところ,被害者が小学6年生であることを確定的に認識した上で敢行している点,性交と口腔性交に及んでいる点で,悪質である。被害者は,本件後,通学に支障を生じるなど,本件により心身に悪影響を受けている。被害者の母親が,被告人との示談成立後も,心情の意見陳述として,本件が忘れたくても忘れられない出来事であって,被告人に対し,裁判が終わった後も,本件犯行を一生かけて償ってほしいなどと述べるのは当然である。
 以上の事情によれば,被告人の刑事責任は軽いものではない。
 しかしながら,被告人が被害者に対して暴行や脅迫を加えていないこと,被告人が示談金として755万円の支払義務を認めるといった内容で,被害者らとの間で示談が成立し,約束どおり500万円を支払済みであること,示談書において,被害者とその母親が被告人に対する実刑判決を望まない旨を表明していることが認められ,これらの事情は量刑上相応に考慮する必要がある。その他,被告人に前科がないこと,被告人が本件犯行を認めて反省の態度を示していること,被告人の母親が出廷して被告人の監督を誓約していること等を考慮し,刑法改正後の同種事犯の量刑傾向を踏まえると,本件については,酌量減軽の上で刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
 (検察官吉川剛史,同庭野永基,私選弁護人春田藤麿各出席)
 (求刑 懲役5年)
 令和元年12月6日
 名古屋地方裁判所刑事第5部
 (裁判長裁判官 板津正道 裁判官 西脇真由子 裁判官 新田浩志)

不特定又は多数の者に提供する目的製造行為(7条7項)を姿態をとらせて製造罪(4項)で起訴したら不成立無罪になるよ

児童ポルノ画像を送らせて売ってる人について

公訴事実
被告人はA(15歳)が18歳未満であることを知りながら,令和2年6月1日,大阪府内のA方において,被告人が,Aに乳房,陰部等を露出した姿態等をとらせ,これを同人の携帯電話機で動画撮影させた上,それらの動画データ11点を同携帯電話機から前記「」を使用して被告人の携帯電話機に送信させ,その頃,兵庫県内又はその周辺において,同動画データ11点を同携帯電話機で受信して同機に記録させて保存し,もって,衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

という起訴状がある。

 4項製造罪は「4前項に規定するもののほか」とされていて、提供目的がある場合には成立しないから、この訴因では不成立無罪になる。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 こういうと、不特定又は多数の者に提供する目的製造は7項だから、「4前項に規定するもののほか」に含まれないという反論が予想される。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
 しかし「提供目的」には、不特定又は多数の者に提供する目的も含む。不特定又は多数の者に提供する目的であっても、「提供する目的」であるからである。
 島戸判事もそういう。
 h26改正で項がずれたので島戸論文の「第3項」が姿態をとらせて製造罪(4項)となっている。島戸判事のいう、「第2項」が提供目的製造罪(現行法の3項製造罪)、「第5項」が不特定又は多数の者に提供する目的製造罪(現行法の7項製造罪)である。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
なお、第2項は、第5項に該当する場合を含むものであり、第3項においては、第2項に規定する場合のみを除けば、当然に第5項に該当する場合も除くこととなるものであるから、第3項において、第5項に該当する場合を除くこととはしなかったものである

 改正経緯からみても、制定時点では販売目的製造罪だけだったものが、H16で、提供目的製造罪と、不特定又は多数の者に提供する目的製造罪が新設され、さらに、目的が無い場合にも広げて姿態をとらせて製造罪も置いた経緯からは、目的製造罪が優先的に成立する趣旨が読み取れる。

 ということで、不特定又は多数の者に提供する目的製造罪(7項)が成立するときは、姿態をとらせて製造罪は不成立だ。



 なお公然陳列目的製造行為(7項)については、提供目的ではないので、姿態をとらせて製造罪で起訴してもいいみたいだ。なんかお粗末な立法だ。

■■■■■■■■■■についての立証責任は検察官にあること


 青少年条例の「婚姻していない18歳未満の者」とか、4項製造罪の「前項に規定するもののほか」とか、5項製造罪の「前二項に規定するもののほか」について、立証責任は検察官にあるよねと、か、罪となるべき事実に記載しないと理由不備じゃないかとか主張してみるために、文献をまとめてみた。





3 立証責任は検察官にあること 10
①条解刑事訴訟法 11
②新・判例コンメンタール刑事訴訟法4:第一審〔2〕317条~350条 11
③大コンメンタール刑事訴訟法第2版第07巻 11
④逐条実務刑事訴訟法 13
⑤石井一正 刑事実務証拠法第5版 13
⑥田宮裕「刑事訴訟法[新版]」 14
松尾浩也刑事訴訟法 新版補正第2版 下」1999 15
⑧三井誠「挙証責任と推定(3)」法学教室 第218号 18
⑨田宮裕「挙証責任・推定」季刊現代警察22(1)(71) 19
⑩安富潔「挙証責任と推定」月刊アーティクル191号 20
平野龍一 法律学全集 43 刑事訴訟法 21

刑集73巻5号登載予定 ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否 判例タイムズ1471号p18

姿態をとらせて製造罪の場合は、複製時点で姿態とらせてないという問題でしたが、ひそかに製造罪の場合は、複製時点でも被害児童からみて「ひそかに」であることは間違いないわけで、構成要件に欠けるという問題はないのですが、複製をひそかに製造罪だとすると、不可罰とされていたはずの単純複製行為が全部ひそかに製造罪になってしまい、処罰範囲が広すぎるという問題が出てきて、最高裁が「ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が, 当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は, 同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる」という判示をして穴をふさいだ感じです。立法ミスじゃないかなあ。

ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を
別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否 判例タイムズ1471号p18
対象事件|
令和元年11月12日決定
最高裁判所第一小法廷
平成31年(あ)第506号
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件
裁判結果|
上告棄却
原審|
名古屋高等裁判所平成30年(う)第383号
平成31年3月4日判決
第1審|
名古屋地方裁判所平成30年(わ)第579号,
平成30年(わ)第888号
平成30年11月5日判決
公刊物|
刑集73巻5号登載予定
参照条文|
児童買春児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項, 7条2項, 5項





3  5項製造罪と同じように製造手段が限定されている児童ポルノ法7条4項の製造罪(児童に全裸姿態等をとらせ, これを記録媒体等に描写することにより児童ポルノを製造する罪。以下「4項製造罪」という。)においても,本件と同様二次的製造行為について同罪が成立するか否かという問題があり, 4項製造罪に関する立法関与者の解説では,複製は除外されるとの見解が示されていた(森山眞弓ほか編著「よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』100頁, 島戸純「「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律』について」譽察学論集57巻8号96頁)が,最高裁第三小法廷平成18年2月20日決定・刑集60巻2号216頁,判タ1206号93頁は, 「法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ, これを電磁的記録にかかる記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たる」として, 3項(現4項)製造罪の成立を認める判断を示した。
5項製造罪においても, 4項製造罪と同様,複製の問題が生ずることが予想されたところ,立法関与者の解説を見ると, 5項製造罪は,手段の限定がされているため,盗撮により製造された児童ポルノを後に複製する行為は,基本的に本条項の処罰対象ではないと考えられるが,少なくとも,撮影者本人による「製造」として予定される一連の行為までもが5項製造罪の対象から除外されるものではないと考えられるとの見解が示され,平成18年判例が紹介されている(坪井麻友美「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報66巻11号57頁)。
4本決定は, 「ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は,同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる」と判示し,原判決の判断を是認しているが,平成18年判例と同じような表現を用いていることから,同判例と|司様,盗撮をして製造を行った者が, その電磁的記録を別の記録媒体に複写するなどして二次的製造行為に及んだ場合には,「ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造した」と法的に評価できるとして,5項製造罪の成立を認めたものと思われる。
5 5項製造罪は,平成18年判例後の法改正で新設されたものであるが, 4項製造罪と同様の論点が残る形で立法がなされていることからすると, 5項製造罪に関する法令解釈を示した本決定は,実務上重要なものと考えられる。

「児童ポルノ豪州に大量持ち込み 実刑判決」という報道

 1000本といっても、きょうび映画フィルムではないので、スマホかHDDに納まるので、ビックリするほどではありません。
 日本法でも外国への輸出が児童ポルノ法(5年)、関税法(10年)で禁止されていますが、ネットで国境を越えるデータには適用されないので、出番がありません。
 そんな話を外郵の税関の人に聞いたことがあります。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
。。。
関税法
(輸出してはならない貨物)
第六十九条の二
1 次に掲げる貨物は、輸出してはならない。
るところにより輸出するものを除く。
二 児童ポルノ児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第二条第三項(定義)に規定する児童ポルノをいう。)

第百八条の四
2 第六十九条の二第一項第二号から第四号までに掲げる貨物を輸出した者(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻し(同項第三号及び第四号に掲げる物品であつて他の法令の規定により当該物品を積み戻すことができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより行うもの及び第六十九条の十一第二項の規定により命じられて行うものを除く。)をした者を含む。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する

https://au.news.yahoo.com/tourist-jailed-australia-1000-child-porn-videos-042441422.html
Tourist jailed after arriving in Australia with 1000 child abuse videos
Yahoo News Australia Australian Associated PressYahoo News Australia27 May 2020
A Japanese tourist has been jailed for 16 months in a Western Australian prison for possessing more than 1000 child exploitation videos on his phone.

, , pleaded guilty to attempting to import child abuse material and was sentenced in the WA District Court on Tuesday.

Judge Fiona Vernon heard he had 1091 videos in his possession.

Japanese tourist Masahiro has his phone viewed by Australian Border Force at Perth airport.


He was sentenced to 16 months' jail with a $5000 good behaviour bond for a further eight months following his release.

His tourist visa was cancelled the day of his arrest and he will be deported when released from prison.

After arriving from Tokyo, the Japanese national was arrested at Perth International Airport in November after Australian Border Force officers initially found about 200 videos and pictures depicting child abuse.

Further examinations found hundreds more videos were saved in an app on his mobile.

The maximum penalty for importing or exporting child abuse material is 10 years’ imprisonment and/or a fine of up to $525,000.

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200527/k10012447681000.html
児童ポルノ豪州に大量持ち込み 東京電力子会社社員に実刑判決
2020年5月27日 21時19分

大量の児童ポルノの動画などをオーストラリア国内に持ち込もうとしたとして、関税法違反の罪に問われている日本人の男に対し、現地の裁判所は、禁錮1年4か月の実刑判決を言い渡しました。

裁判記録などによりますと、東京電力ホールディングスの子会社、東京電力パワーグリッドの社員、被告(31)は、去年11月、オーストラリア西部のパース国際空港に到着した際、荷物検査で、所持していたスマートフォンから児童ポルノの動画などが見つかり逮捕され、その後わかったものを含めて、児童ポルノの動画や画像1000本余りを持ち込もうとしたとして、関税法違反の罪に問われています。

これまでの裁判で、被告は罪を認めていて、26日開かれた裁判で、パースの地方裁判所は、禁錮1年4か月の実刑判決を言い渡しました。

オーストラリアでは、国境警備隊児童ポルノなど子どもを搾取の対象とする犯罪の取締りを強化しています。

一方、東京電力ホールディングスは、NHKの取材に対し、「当社社員が有罪判決を受けたことは誠に遺憾であり、大変申し訳ない。今後、事実関係を調査の上、厳正に対処する」とコメントしています。

国民生活安定緊急措置法施行令2条の「購入価格を超える価格」とは?

 結果的に3510円で仕入れて、3500円で売ったことになるが、譲渡時=仕入れ額が確定してない時点では「衛生マスクの譲渡(・・・当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)」とはならないので、譲渡はあるけど譲渡罪は成立してないということですよね。刑法的にはどう説明しますかね?
 
 犯罪収益仮装罪で問題になったことがあって、事前収賄罪では法的位置付けについては,構成要件には属さない「客観的処罰条件」とする見解と,構成要件要素であるとする見解が対立している。という解説があるようです。
 譲渡の時点で備わってることが予定されているので構成要件ですよね。

判例番号】 L06310091
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷決定/平成20年(あ)第865号
【判決日付】 平成20年11月4日
【出  典】 判例タイムズ1285号80頁
 (1) 判示事項1の点に関する前記①の主張は,一見もっともらしいが(秋山実「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項の犯罪収益等隠匿罪を積極的に適用した一事例」研修662号123頁にも同旨の問題提起がある。),犯罪行為の対価として前払いで得た財産が「犯罪行為により得た財産」に含まれることは,実務上も学説上も当然のこととされてきたのであるし,実質論からしても,前払い代金が「犯罪収益」となり得ないなどという解釈は明らかに不合理である。そして,法文の「犯罪行為により得た」というのは「犯罪行為を原因として」と解することができるから,文理上も特段支障はないと解される。なお,本件では,前提犯罪である児童ポルノ提供罪は,犯罪収益取得事実仮装罪の実行行為の終了後に行われており,同罪は前提犯罪の成立を待って完成すると考えられるが,このように後の事情により犯罪が完成するという事象は,「公務員になろうとする者が,その担当すべき職務に関し,請託を受けて,賄賂を収受し,又はその要求若しくは約束をしたときは,公務員となった場合において,5年以下の懲役に処する。」とする刑法197条2項の事前収賄罪でも発生する。すなわち,同罪に係る収賄行為は当該賄賂を収受した時点で終了しており,その後,その者が公務員になることにより犯罪が完成するのであるが,本件の犯罪収益取得事実仮装罪についても,これと同じように考えることができるのであれば,不合理とはいえないと思われる(このほか,破産手続開始前に債権者詐害行為をした後,破産手続開始決定が確定したときに同行為を処罰する破産法265条1項の詐欺破産罪等も同様である。ただし,事前収賄罪の「公務員になったこと」等の法的位置付けについては,構成要件には属さない「客観的処罰条件」とする見解と,構成要件要素であるとする見解が対立している。)。

 

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200523-OYT1T50226/
 中国のネット通販サイトで購入したマスクを転売したとして、大阪府警淀川署が、30歳代の夫婦を国民生活安定緊急措置法違反容疑で書類送検していたことがわかった。書類送検は20日付。新型コロナウイルスの影響でマスクが品薄になったことを受け、同法では、小売業者から仕入れたマスクを高値で転売することを禁止している。
 捜査関係者によると、夫婦は3月16日、大阪市淀川区のJR塚本駅のロータリーで、通行人に対し、50枚入りの使い捨てマスク1箱を3500円で販売した疑い。止めた車にマスクの箱を積んで購入を呼びかけており、他にも数人に売ったという。

 夫婦は3月初旬、クレジットカードを使い、中国の通販サイトでマスク数十箱を米ドルで購入。その日の為替レートで利益が出るように転売額を設定したが、カード決済は後日だったため、レートの変動で転売額の方が1箱数十円安くなった。夫婦は転売後、損失が出ていたことに気付いたという。

 夫婦は任意の調べに対し、「転売は違法だと認識していた」と供述したが、同法は高値での転売を規制しており、同署は起訴を求めない「しかるべき処分」の意見を付けた。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=349CO0000000004
国民生活安定緊急措置法施行令
施行日: 令和二年三月十五日
最終更新: 令和二年三月十一日公布(令和二年政令第四十二号)改正
(法第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等)
第一条 国民生活安定緊急措置法(以下「法」という。)第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等は、衛生マスクとする。
(衛生マスクの転売の禁止)
第二条 衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡(不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであつて、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。

附 則 (令和二年三月一一日政令第四二号) 抄
(施行期日)
1 この政令は、公布の日から起算して四日を経過した日から施行する。
(経過措置)
2 改正後の第二条の規定は、同条に規定する譲渡のうちこの政令の施行の日前に締結された売買契約によるものについては、適用しない。

姿態をとらせて製造罪をひそかに製造罪として有罪にしている可能性がある事件~障害者施設通う女子高生 シャワーシーン盗撮し胸触る…「ネズミ確認のため」と一部争う"元代表"有罪判決(札幌地裁R02.5.22)

 弁護人・被告人から連絡が欲しいところですが、「女子高校生にシャワーを浴びるように指示。女子高校生は、被告が事前にカメラを設置した仮設シャワー室で裸になりシャワーを浴びました。」という場合は、姿態をとらせて製造罪であって、ひそかに製造罪は成立しません。判例を提供しますので、確認してください。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ac48d6163a6102cb98c3581fb6179c9bfbad00ec
障害者施設通う女子高生 シャワーシーン盗撮し胸触る…「ネズミ確認のため」と一部争う"元代表"有罪判決
5/22(金) 22:15配信

北海道ニュースUHB
男に有罪判決を言い渡した札幌地方裁判所
 女子高校生(当時16)の身体を撮影したうえで、いかがわしい行為をしたとして、児童買春や強制わいせつなどの罪に問われている男の判決公判で、札幌地裁は5月22日、男に懲役2年執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。
 判決によりますと、被告は2019年6月、自身が代表を務めていた障害自立支援施設で、デイサービスに通う女子高校生にシャワーを浴びるように指示。女子高校生は、被告が事前にカメラを設置した仮設シャワー室で裸になりシャワーを浴びました。
 カメラには女子高校生の胸や下半身がうつっていて、その後動画を保存しました。

撮影型強制わいせつ罪と姿態をとらせて製造罪が併合罪となっている事例(富山地裁R011203)

 「同児童(当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,手でその下衣及び下着を脱がせた上,両足を大きく広げさせて陰部を露出する姿態をとらせ,同陰部付近を自己の携帯電話機付属のカメラで接写し」と「前記第2のとおり同児童に性器等を露出させる姿態をとらせ,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影して,同携帯電話機に内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し,」とが、社会的見解上2個の行為だというのですよ。
 判例は「撮影」と「保存」とが違うとかいいますけど、デジカメで保存できてなかったら「撮影失敗」「撮影できてない」っていいますよね


強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,暴行被告事件
富山地方裁判所判決令和元年12月3日
(罪となるべき事実)
 被告人は
第2 平成29年1月9日午後2時21分頃から同日午後2時22分頃までの間,前記場所において,同児童(当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,手でその下衣及び下着を脱がせた上,両足を大きく広げさせて陰部を露出する姿態をとらせ,同陰部付近を自己の携帯電話機付属のカメラで接写し,もって13歳未満の児童に対してわいせつな行為をした。
第3 同児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第2の日時頃,前記第2の場所において,前記第2のとおり同児童に性器等を露出させる姿態をとらせ,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影して,同携帯電話機に内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し,もって衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
第4 平成30年3月14日午後9時3分頃から同日午後9時4分頃までの間,前記当時の被告人方において,前記児童(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,同児童にその胸部及び性器等を露出させる姿態をとらせ,その陰部を指で広げるなどした上,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影し,もって13歳未満の児童に対してわいせつな行為をした。
第5 同児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第4の日時頃,前記第4の場所において,前記第4のとおり同児童にその胸部及び性器等を露出させる姿態をとらせ,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影して,同携帯電話機に内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し,もって衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
 罰条
  判示第1,第2の各所為
   各平成29年法律72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
  判示第3,第5の各所為
   各児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
  判示第4の所為
   刑法176条後段
  判示第6の所為
   刑法208条
 刑種の選択     判示第3,第5,第6につきいずれも懲役刑
 併合罪の処理    刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 訴訟費用の不負担  刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
(出席した検察官 武藤絢子)
(出頭した国選弁護人 脇徹)
(求刑 懲役7年)
  令和元年12月6日
    富山地方裁判所刑事部
           裁判官  小林礼子

児童淫行罪の機会の盗撮行為や「隠しカメラを設置したチームの事務所で児童らにスポーツブラの試着をさせるという手口で盗撮した」のを、ひそかに製造罪(7条5項)とした事例(東京地裁r2.3.2 確定)

 ハメ撮り盗撮は製造罪(7条4項 姿態とらせて製造罪)だっていうてるやん。
 量刑理由に出てくる「隠しカメラを設置したチームの事務所で児童らにスポーツブラの試着をさせるという手口で盗撮した」というのも姿態をとらせて製造罪であって、ひそかに製造罪ではない。
 盗撮して姿態をとらせて製造した場合は、ひそかに製造罪は成立せず、姿態をとらせて製造罪のみが成立するという大阪高判例があります。
 控訴せず確定したそうですが、成立しない罪で服役することになりますので、弁護人はこういう点をチェックして下さい。

判例はここに紹介してあります
okumuraosaka.hatenadiary.jp

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

判例ID】 28281043
【裁判年月日等】 令和2年3月2日/東京地方裁判所
【事件名】 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、児童福祉法違反被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 楡井英夫 小野裕信 竹田美波
【出典】 D1-Law.com判例体系

■28281043
東京地方裁判所
令和02年03月02日
 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、児童福祉法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山口隼人及び私選弁護人柿原研人各出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、●●●が運営する女子サッカーチーム●●●のコーチとして同チームに在籍する児童らに対してサッカーの指導等をしていたものであるが、
第1(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第1関係)
 ●●●(当時14歳ないし15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同児童が同チームに在籍していた当時はサッカーの指導等をし、同児童が同チームを退団した後も引き続き同児童の進路、学習等について助言をするなどしていた立場を利用して、
1 平成30年4月7日午前10時頃から同日午後0時頃までの間に、東京都●●●事務所(以下「本件事務所」という。)内において、同児童に被告人を相手に性交させ、
2 同年5月5日午後1時頃から同日午後4時頃までの間に、本件事務所内において、同児童に被告人を相手に性交させ、もって児童に淫行をさせる行為をし、
第2(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
 前記第1の1及び2の日時場所において、2回にわたり、ひそかに、前記児童が被告人と性交する姿態、被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態及び同児童が陰部等を露出した姿態を同所に設置した小型カメラで動画撮影し、撮影した動画データを自己が使用するパーソナルコンピュータに接続したUSBメモリ1個(令和元年東地領第4006号符号1)に記録して編集した上で保存し、もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより児童ポルノを製造し、
(法令の適用)
罰条
 判示第1の行為
  児童福祉法60条1項、34条1項6号(包括一罪)
 判示第2の行為
  児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項(2条3項1号、2号、3号)、2項(包括一罪)

(量刑の理由)
 本件は、スポーツチームのコーチである被告人が、在籍中の指導や脱退後の進路の助言をしていた立場を利用して児童1名(当時14歳ないし15歳)と2回性交した児童福祉法違反(第1)、その様子を盗撮した児童ポルノ製造(第2)と、合宿先やチームの事務所内で多数の在籍児童(当時11歳から15歳)の陰部等を盗撮した児童ポルノ製造(第3ないし第9)からなる事案である。
 量刑の核心である淫行とその関連事案についてみると、被害児童は、当時、被告人に対して一定の好意を抱くなどしていたとは認められるものの、チーム在籍中はもとより、脱退後も助言を継続してきたという関係性や、被害児童の年齢などにも鑑みれば、大人として指導、育成を行うべき立場にある被告人が、その立場を悪用し、児童の思慮分別の未熟さに乗じて、2回も性交に及んだとみるべきであって、相当に卑劣で悪質との評価を免れない。淫行の際に盗撮していた点も含め、自己の性欲を満たすために被害者を弄んでおり、強い非難に値する。被害児童の親が子を案じ、被告人の厳罰を求めるのは当然である。
 また、その余の盗撮事案についてみても、約1年の間に7回にわたり、被告人は、コーチの立場を悪用し、持参した隠しカメラを合宿先の浴室等に設置するという手口や、隠しカメラを設置したチームの事務所で児童らにスポーツブラの試着をさせるという手口で盗撮したものである。常習性が顕著である上、いずれの犯行も被告人の立場や児童らの信頼を悪用して性欲を満たそうとしたという点において、淫行関連事案と共通している。30名を超える被害者及びその親の多くが被告人の厳罰を求めるのは十分に理解できる。
 他方で、・・・
刑事第15部
 (裁判長裁判官 楡井英夫 裁判官 小野裕信 裁判官 竹田美波)

画像から「15歳から17歳程度」と判断した事例・自己の性的好奇心を満たす目的でポルノの所持を開始した場合,特段の事情がない限り,その後の所持についても,自己の性的好奇心を満たす目的であると推認するのが合理的である。とされた事例(浜松支部R2.2.21)

「流行のシャギーカット,ほっぺたがポッチャリしており,足は中くらいの太さであるが棒状であること,ませた顔でニキビがないこと,小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められること,胸はAカップかBカップくらいである程度あるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度と認められる。」というのですが、 見かけ15~17と18歳とは区別できないでしょう。そんなAV嬢もいるでしょう。
 自己の性的好奇心を満たす目的については、警察文献では否定される例も出てたと思いますが、エッチなビデオであれば肯定されてしまうようです。

静岡地方裁判所浜松支部令和2年2月21日刑事部判決
       判   決
 上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官大作顕子,同永井絢子,弁護人伊豆田悦義(私選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       理   由

【罪となるべき事実】
第2 被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年7月18日,浜松市α区β×××番地の×所在の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データを記録した児童ポルノであるDVD14枚を所持した。
【証拠の標目】《略》
3〔2〕判示第2の事実における〔ア〕DVD1枚の児童ポルノ該当性について
 弁護人は,判示第2の事実における各DVD(以下,単に「各DVD」という。)のうち,「○○○○○○○○○○」と印字されたラベルが貼られたケースに入っているもの(以下「本件DVD」という。)については,写っている女性(以下「本件女性」という。)が18歳未満ではない疑いがあるとして,児童ポルノ該当性を争うため,以下検討する。
(1)本件DVDを含む複数のDVDに写っている女性の年齢判断をした,当時国立大学法人a大学の法医学講座の助教授であったP2医師(以下「本件医師」という。)の供述の概要は,次のとおりである。
 私は,約13年間の法医実務経験を有しており,その間,法医解剖数約605件,行政解剖数約53件,検案数約281件を経験し,幼児から第二次性徴期である8歳くらいから18歳くらいまでの少女の解剖,検案も多数担当している。これらの経験や医学文献に基づき,女子の陰毛,乳房及び外陰の発育度並びに骨盤の増大度等を総合考慮し,約27年間の法医実務経験を有する同講座の教授と共に判断する。18歳未満の可能性が高いが,18歳未満とは完全に言い切れない者を除外し,ほぼ18歳未満として間違いない者について,18歳未満と判断する。
 本件DVDの映像は,モザイク等がなく性器が鮮明に写されたものである。本件女性は,流行のシャギーカット,ほっぺたがポッチャリしており,足は中くらいの太さであるが棒状であること,ませた顔でニキビがないこと,小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められること,胸はAカップかBカップくらいである程度あるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度と認められる。
(2)以上の本件医師の供述は,豊富な実務経験を有する専門的な立場からの合理的なものとして信用できる。
 この点,弁護人は,本件医師の前記供述の信用性に関し,本件医師は,子供の成長には個人差が大きく,外見を観ての年齢判断は困難であり,まして,映像を観ての判断で正確性は劣らざるを得ないとの留保を付しており,年齢判断の正確性には限界があるほか,本件医師が本件女性の年齢判断の根拠とする事情は,いずれも,女性の成長度合いや体型に関する個人差として常識的に考えられる幅を考慮すれば,成人女性についても該当する可能性のあるものであると主張する。
 しかし,本件医師は,弁護人が指摘する留保を付しつつも,自身の経験等に基づいて判断するとしているのであって,この留保をもって,直ちに本件医師の年齢判断の正確性が否定されることにはならない。本件医師は,本件DVDの映像は性器が鮮明に写されたものであるとした上で,具体的な事情を根拠にあげて,本件女性の年齢判断をしているものである。確かに,本件医師が本件女性の年齢判断の根拠とする事情は,個別にみれば,いずれも成人女性についても該当する可能性のあるものではあるが,本件医師は,これらを総合考慮の上,自身の豊富な経験や文献に基づき,同じく豊富な経験を有する教授と共に,本件女性の年齢を15歳から17歳程度と判断しているのであって,その正確性については十分信用できる。
 したがって,弁護人の前記各主張は,本件医師の前記供述の信用性を揺るがすものとはいえない。
(3)以上のとおり,信用できる本件医師の前記供述によれば,本件女性の年齢は,15歳から17歳程度と認められるとされている。この点について,弁護人は,15歳から17歳程度との表現からすれば,本件女性が18歳に達している可能性を排斥していない旨主張するが,本件医師は,18歳未満の可能性が高いが,18歳未満とは完全に言い切れない者を除外し,ほぼ18歳未満として間違いない者について,18歳未満と判断するとしているのであって,15歳から17歳程度との供述は,18歳に達している可能性を排斥しているものと考えるべきである。
(4)したがって,本件女性の年齢は18歳未満であると認められ,他の証拠もあわせ鑑みれば,本件DVDは,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)2条3項にいう「児童ポルノ」に当たるといえる。
4〔2〕判示第2の事実における〔イ〕自己の性的好奇心を満たす目的の有無について
 弁護人は,判示第2の行為日である平成30年7月18日時点において,被告人は,各DVDへの興味・関心を失っていたとして,各DVDの所持につき,児童ポルノ法7条1項にいう「自己の性的好奇心を満たす目的」を争うため,以下検討する。
(1)関係証拠によれば,各DVDは,本件DVDを含め,児童ポルノ法2条3項にいう「児童ポルノ」に当たるといえ,また,被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,各DVDを入手したことが認められる。このように,自己の性的好奇心を満たす目的でポルノの所持を開始した場合,特段の事情がない限り,その後の所持についても,自己の性的好奇心を満たす目的であると推認するのが合理的である。
(2)本件において,被告人が,平成30年7月18日を基準として,10年以上,各DVDを視聴していなかった可能性は否定されない。もっとも,各DVDは,被告人方の書斎の本棚に保管されていたのであり,被告人が視聴しようと思えばいつでも視聴できたものである。同書斎には,明らかに不要なものも保管されており,廃棄されていないからといって,直ちに被告人が各DVDへの興味・関心を有していたことにはならないものの,少なくとも,各DVDは,一見してポルノと分かる外観ではなく,廃棄することが困難であったといった事情は見当たらない。各DVDは,同日時点で存在する他のポルノに比べれば,画質等が劣るものであるが,性的好奇心が向けられるには十分なものである。そして,前記2で説示したとおり,被告人は,同日頃において,女子児童に性的興味を有していたと認められるところである。
 以上のとおり,被告人は,各DVDを視聴しようと思えば容易に視聴でき,かつ,それによって,自己の性的好奇心を満たすことができたものといえるのであって,前記特段の事情は認められない。結局,同日時点において被告人は各DVDへの興味・関心を失っていたとの弁護人の前記主張は,単に被告人が各DVDへの具体的な興味を失っていたとの主張に過ぎず,児童ポルノ法7条1項にいう「自己の性的好奇心を満たす目的」を否定するものではない。
(3)したがって,被告人は,判示第2の行為日である平成30年7月18日時点において,自己の性的好奇心を満たす目的で,各DVDを所持していたと認められる。
【法令の適用】
罰条
判示第2の行為 包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段,2条3項1号,2号,3号
刑種の選択
判示第2の罪 懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情が最も重い判示第1の1の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予 刑法25条1項
【量刑の理由】
令和2年2月21日
静岡地方裁判所浜松支部刑事部
裁判長裁判官 山田直之 裁判官 横江麻里子 裁判官 宮田裕平