児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

水庫一浩 強盗致傷等被告事件の被告人を執行猶予付き懲役刑に処した裁判員裁判の原判決について, その量刑判断は是認できないとして破棄し,被告人を実刑に処した事例(研修820号)

 原判決は懲役3年執行猶予5年保護観察で、検察官控訴の結果、A懲役6年6月,B懲役6年になった。
 最近の量刑理由でも量刑DBとか量刑傾向とかが多用されています。
 奥村の事件でも、同種事案の量刑傾向を示すと、その範囲内に収まっています。

(東京高裁平成28年6月30日判決)
【事案の概要】
本件は,被告人A及び被告人Bの両名が,共謀の上,深夜の路上において
第1 通行中の44歳の男性に対し,背後から体当たりをして転倒させ,左こめかみを拳で殴るなどして金品を強取しようとしたが,抵抗されてその目的を遂げず, その際, 同人に約2週間の加療を要する顔面打撲傷,両膝挫傷等の傷害を負わせ
第2第1の事案と同日,通行中の60歳の男性に対し,後方から肩付近をつかんで後方に引き倒し,預金通帳等在中のシヨルダーバッグ1個(時価合計約2550円相当)を強取し
第3第2の事案の1週間後,通行中の45歳の男性に対し,後方から肩をつかんで後方に引き倒し,仰向けに倒れている同人の顔面を拳で殴り,脇腹付近を足で蹴るなどして,現金約31万円及び財布等在中のビジネスバッグ1個(時価合計約4万4500円相当)を強取しその際同人に全治約5週間を要する左環指中節骨骨折及び右鼻部打撲の傷害を負わせたという強盗致傷2件及び強盗1件の事案である。
【原審における審理経過及び原判決の要旨】
1 原審における審理経
被告人両名は,裁判員裁判で審理された原審において,前記第1な
いし第3の事実をいずれも認めたため,争点は量刑となった。そし
て,検察官は,被告人Aについては懲役9年を,被告人Bについて
は懲役8年をそれぞれ求刑し,被告人Aと被告人Bの各弁護人は,
いずれも執行猶予付きの判決を求めた。
【本判決の要旨】
原判決に対し,検察官が量刑不当を理由に控訴したところ,本判決は,原判決を破棄して,被告人Aを懲役6年6月に,被告人Bを懲役6年にそれぞれ処した上,その理由について,以下のように判示した。
・・・
そこで,本件のような,共犯による連続的な強盗致傷の類型の量刑のおおまかな傾向をみると,その具体的な量刑分布は,量刑検索システムの検索条件をどのように設定するかなどによって多少異なるにせよ,その中心的量刑は懲役4年6月以上8年以下の範囲に収まっており, これがほぼ本件の量刑の大枠に相当するとみることができる。



【参考事項】
裁判員裁判の判決が量刑不当として破棄された判例としては,両親による幼児に対する傷害致死の事案について,被告人両名につき,懲役10年の求刑を超えて懲役15年に処した第1審判決及びこれを是認した第2審判決を量刑不当として破棄した最高裁平成26年7月24日判決・刑集68巻6号925頁があり, 同最高裁判決は,本判決でも引用されている
本判決の判断は, 同最高裁判決の判断に沿ったものであるが,裁判員裁判の判決に対し,検察官が量刑不当のみを理由として控訴した事案は珍しく,実務の参考になると思われる。
また, 同最高裁判決については, 「あくまで量刑傾向を重い方向で踏み出す場合についての判断であり,量刑傾向を軽い方向で踏み出す場合についての判断ではない。」とする見解もあったが(間光洋「最高裁で量刑不当による破棄自判がされた事例」季刊刑事弁護80号73頁),本判決は,同最高裁判決の判断が,量刑傾向を軽い方向で踏み出す場合についても妥当することを明らかにした点でも実務の参考になると思われる。
(法務総合研究所教官水庫一浩)

裁判年月日 平成26年 7月24日 裁判所名 最高裁第一小法廷 裁判区分 判決
事件名 傷害致死被告事件
裁判結果 破棄自判 文献番号 2014WLJPCA07249002
理由
 被告人Aの弁護人高山巌,被告人Bの弁護人木原万樹子,同間光洋の各上告趣意は,いずれも憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人A本人の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 しかしながら,所論に鑑み,職権をもって調査すると,原判決及び第1審判決は,刑訴法411条2号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。
第1 事案の概要等
第2 当裁判所の判断
 1 第1審判決の犯情及び一般情状に関する評価について,これらが誤っているとまではいえないとした原判断は正当である。しかしながら,これを前提としても,被告人両名を各懲役15年とした第1審判決の量刑及びこれを維持した原判断は,是認できない。その理由は,以下のとおりである。
 2 我が国の刑法は,一つの構成要件の中に種々の犯罪類型が含まれることを前提に幅広い法定刑を定めている。その上で,裁判においては,行為責任の原則を基礎としつつ,当該犯罪行為にふさわしいと考えられる刑が言い渡されることとなるが,裁判例が集積されることによって,犯罪類型ごとに一定の量刑傾向が示されることとなる。そうした先例の集積それ自体は直ちに法規範性を帯びるものではないが,量刑を決定するに当たって,その目安とされるという意義をもっている。量刑が裁判の判断として是認されるためには,量刑要素が客観的に適切に評価され,結果が公平性を損なわないものであることが求められるが,これまでの量刑傾向を視野に入れて判断がされることは,当該量刑判断のプロセスが適切なものであったことを担保する重要な要素になると考えられるからである。
 この点は,裁判員裁判においても等しく妥当するところである。裁判員制度は,刑事裁判に国民の視点を入れるために導入された。したがって,量刑に関しても,裁判員裁判導入前の先例の集積結果に相応の変容を与えることがあり得ることは当然に想定されていたということができる。その意味では,裁判員裁判において,それが導入される前の量刑傾向を厳密に調査・分析することは求められていないし,ましてや,これに従うことまで求められているわけではない。しかし,裁判員裁判といえども,他の裁判の結果との公平性が保持された適正なものでなければならないことはいうまでもなく,評議に当たっては,これまでのおおまかな量刑の傾向を裁判体の共通認識とした上で,これを出発点として当該事案にふさわしい評議を深めていくことが求められているというべきである。
 3 こうした観点に立って,本件第1審判決をみると,「同種事犯のほか死亡結果について故意が認められる事案等の量刑傾向を参照しつつ,この種事犯におけるあるべき量刑等について議論するなどして評議を尽くした」と判示されており,この表現だけを捉えると,おおまかな量刑の傾向を出発点とした上で評議を進めるという上記要請に沿って量刑が決定されたようにも理解されないわけではない。
 しかし,第1審判決は,引き続いて,検察官の求刑については,本件犯行の背後事情である本件幼児虐待の悪質性と被告人両名の態度の問題性を十分に評価していないとし,量刑検索システムで表示される量刑の傾向については,同システムの登録数が十分でなくその判断の妥当性も検証できないとした上で,本件のような行為責任が重大と考えられる児童虐待事犯に対しては,今まで以上に厳しい罰を科すことが法改正や社会情勢に適合するなどと説示して,検察官の求刑を大幅に超過し,法定刑の上限に近い宣告刑を導いている。これによれば,第1審判決は,これまでの傾向に必ずしも同調せず,そこから踏み出した重い量刑が相当であると考えていることは明らかである。もとより,前記のとおり,これまでの傾向を変容させる意図を持って量刑を行うことも,裁判員裁判の役割として直ちに否定されるものではない。しかし,そうした量刑判断が公平性の観点からも是認できるものであるためには,従来の量刑の傾向を前提とすべきではない事情の存在について,裁判体の判断が具体的,説得的に判示されるべきである。
 4 これを本件についてみると,指摘された社会情勢等の事情を本件の量刑に強く反映させ,これまでの量刑の傾向から踏み出し,公益の代表者である検察官の懲役10年という求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることについて,具体的,説得的な根拠が示されているとはいい難い。その結果,本件第1審は,甚だしく不当な量刑判断に至ったものというほかない。同時に,法定刑の中において選択の余地のある範囲内に収まっているというのみで合理的な理由なく第1審判決の量刑を是認した原判決は,甚だしく不当であって,これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。
 よって,刑訴法411条2号により原判決及び第1審判決を破棄し,同法413条ただし書により各被告事件について更に判決することとし,第1審判決の認定した罪となるべき事実に法令を適用すると,被告人両名の各行為は,いずれも刑法60条,205条に該当するので,各所定刑期の範囲内で,被告人Aについては,原判決が是認する第1審判決の量刑事情の評価に基づき検討を行って懲役10年に処し,さらに,被告人Bについては,実行行為に及んでいないことを踏まえ,犯罪行為にふさわしい刑を科すという観点から懲役8年に処することとする。そして,同法21条を適用して第1審における未決勾留日数中各400日をそれぞれその刑に算入し,第1審における訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担させないこととし,被告人Aに関する原審及び当審における訴訟費用は,同項ただし書を適用して同被告人に負担させないこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官白木勇の補足意見がある。
 裁判官白木勇の補足意見は,次のとおりである。
 1 量刑は裁判体の健全な裁量によって決せられるものであるが,裁判体の直感によって決めればよいのではなく,客観的な合理性を有するものでなければならない。このことは,裁判員裁判であろうとなかろうと変わるところはない。裁判員裁判を担当する裁判官としては,量刑に関する判例や文献等を参考にしながら,量刑評議の在り方について日頃から研究し,考えを深めておく必要があろう。評議に臨んでは,個別の事案に即して判断に必要な事項を裁判員にていねいに説明し,その理解を得て量刑評議を進めていく必要がある。
 2 量刑の先例やその集積である量刑の傾向は,それ自体としては拘束力を持つものではないし,社会情勢や国民意識の変化などに伴って徐々に変わり得るものである。しかし,処罰の公平性は裁判員裁判を含む刑事裁判全般における基本的な要請であり,同種事犯の量刑の傾向を考慮に入れて量刑を判断することの重要性は,裁判員裁判においても何ら異なるものではない。そうでなければ,量刑評議は合理的な指針もないまま直感による意見の交換となってしまうであろう。
 こうして,量刑判断の客観的な合理性を確保するため,裁判官としては,評議において,当該事案の法定刑をベースにした上,参考となるおおまかな量刑の傾向を紹介し,裁判体全員の共通の認識とした上で評議を進めるべきであり,併せて,裁判員に対し,同種事案においてどのような要素を考慮して量刑判断が行われてきたか,あるいは,そうした量刑の傾向がなぜ,どのような意味で出発点となるべきなのかといった事情を適切に説明する必要がある。このようにして,量刑の傾向の意義や内容を十分理解してもらって初めて裁判員と裁判官との実質的な意見交換を実現することが可能になると考えられる。そうした過程を経て,裁判体が量刑の傾向と異なった判断をし,そうした裁判例が蓄積されて量刑の傾向が変わっていくのであれば,それこそ国民の感覚を反映した量刑判断であり,裁判員裁判の健全な運用というべきであろう。私は,かつて,覚せい剤取締法違反等被告事件に関する判決(最一小判平成24年2月13日刑集66巻4号482頁いわゆるチョコレート缶事件判決)の補足意見において,「裁判員裁判においては,ある程度の幅を持った認定,量刑が許容されるべき(である)」と述べたが,それは以上のような適切な評議が行われたことを前提としているのである。
 3 本件では,裁判官と裁判員との量刑評議が必ずしも在るべき姿に沿った形で進められていないのではないかという疑問があり,それが本件第1審の量刑判断につながったのではないかと考えられる。裁判官としては,重要な事柄は十分に説明し,裁判員の正しい理解を得た上で評議を進めるべきであり,そうすることが裁判員と裁判官との実質的な協働につながると思われる。評議を適切に運営することは裁判官の重要な職責であり,裁判員裁判を担当する裁判官は,その点を改めて考えてみる必要があることを指摘しておきたい。
 検察官 藤本治彦 公判出席
 (裁判長裁判官 白木勇 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 横田尤孝 裁判官 山浦善樹) 

司法研修所の未決算入の公式「起訴後の算入可能な未決勾留日数-(30+10×(公判期日の回数-1))」・公判前整理手続がある場合

 未決算入を気にする被告人もいるので、弁論で目安を主張していますが、
 司法研修所ではこう教えているようです。

第68期刑事裁判事前配布資料
処断刑等はどのように決まるか
刑事裁判教官室
9未決勾留日数の算入
刑法21条によって裁判所がその裁量により本刑に算入することができる未決勾留日数は,勾留状執行の日から判決言渡しの前日までの現実に拘禁された日数であり,起訴前の勾留期間も含む。【63】
どのくらい算入するのが適切かという点については,法律上算入可能な日数を全て算入すべきであるとする全部算入説と, 当該事件の捜査・審理に通常必要な期間の勾留は被告人が罪を犯したことに起因するやむを得ないものとして被告人の負担とし,それを超える部分について算入することをもって足りるとする一部算入説とがある。現在の実務の大勢は,一部算入説で運用されている。【68】
公判前整理手続制度が始まる以前には,具体的な算入の目処として,次のような運用(『研修所方式」と呼ばれることがある。)を行っている例が多かった。
①捜査段階の日数は算入しない(捜査に必要な期間であると考える。)。
②起訴後の(算入可能な)未決勾留日数のうち,審理に必要な合理的期間を控除した日数を, 10日単位(すなわち, 10日未満の端数が出た場合,四捨五入又は切り上げ・切り下げにより端数処理を行う。)で算入する。
③控除すべき「審理に必要な合理的期間」とは,
ア起訴日から第1回公判期日まで……30日
イ第1回公判期日以降・…………各期日(判決宣告期日も含む)ごとに10日(当該公判期日の審理を行うための準備(判決宣告期日については,判決作成の準備)のため,上記各日数くらいは通常必要であると考えられるから, これは未決算入の対
象に含めないと考える。)
以上の①~③を整理すると,次の計算式となる:
起訴後の算入可能な未決勾留日数一(30+10× (公判期日の回数-1))
ただし,③のアの期間が30日よりも短かったり,イが10日よりも短かったり場合には,それぞれの現実の日数しか控除しない。
公判前整理手続等を経る事件では公判期日が連続的に行われる傾向にあるし,公判前整理手続自体に一定期間を要するから, このような考え方を直接当てはめるのは相当ではないであろう。
それぞれの裁判体で実務上工夫をしているところであるが, 当該事件の捜査・審理に通常必要な期間の勾留を超える部分について算入をするという基本的な考え方は大方維持されているように思われる。ただし,その「審理に必要な期間」には,審理を実現するための争点及び証拠の整理のために必要な期間も含まれるとして,公判前整理手続のために通常必要な期間を一定のルールにより算出し,控除するという運用の傾向があるものとみられる。

「性暴力被害者の法的支援~性的自己決定権・性的人格権の確立に向けて」における児童ポルノ罪

 児童ポルノ・児童買春罪に過失処罰規定があるような記載ですが、使用関係がある場合のみです。使用関係がある場合無過失で免責になる余地は極めて少ないので、「まもなく 18歳になる女児が, 自ら18歳以上であると主張して,写真撮影等のモデルになりたいと応募してきた場合等に,撮影した者を罪に問うのは酷ではないか等という議論があり,設けられたと言われています。」という場合でも過失ありということで処罰されます。免責されないんだからこんな議論はなかったんじゃないかなあ。
 法文を丸写ししにしておいた方が正確でした。
 判例盛り込もうとしたら、罪数の判例しかないし

児童ポルノ禁止法等(角崎恭子弁護士〕
①児童ボルノ禁止法(児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)児童ポルノ禁止法は, 1999(平成11)年に定められましたが,その各規定は,条文としては読みにくいものが多いため,概略について説明します。
(1) 「児童買舂」の定義等2条1項に定める「児童」とは, 「18歳未満の者」を言い, 同条2項「児童買春」とは, 「児童又はその周旋者・保護者(親権者等) ・児童を支配下に置く者に対し,対価を供与し,又はその約束をして,児童に対し,性交等(性交若しくは性交類似行為,又は,性器を触る, 自己の性器を触らせること)をすること」を言います。
この条文の特徴は, 「児童買春」の定義の中に,狭義の性交だけでなく,その類似行為等が含まれる点です。
4条では, 「児童買春」をした者は, 5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処することが, 5条では, 「児童買春周旋」をした者は, 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又はこれの併科に処することが定められています。
(2) 「児菫ポルノ製造等」の定義等2条3項に定める「児童ポルノ」とは, 「写真,電磁的記録媒体等であって,次の①から③のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」を言います。
①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為にかかる児童の姿態
②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為にかかる児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部,臂部又は胸部)が露出又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの上記の「児童ポルノ」については,所持しているだけで処罰されます。
罰則は7条に規定されており,下記のとおりの処罰規定が設けられています。
①単純所持: l年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②提供:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(提供とは,写真又は記録媒体の交付, インターネットを介した送信等を指します。)
③提供目的製造等:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(製造等には,製造(複製保存を含む(最高裁平成18年2月20日決定)) ・所持・運搬・輸入・輸出・電磁的記録の保管が含まれます。)
④非提供目的製造等:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
⑤盗撮による児童ポルノ製造:3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
⑥不特定多数への提供等:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は併科(不特定多数への提供とは,児童ポルノを不特定多数の者に提供し,又は,公然と陳列する場合を言い, インターネット上へのアップロードや,児童ポルノを閲覧できるURLの表示も, 「公然陳列」に当たります(最高裁平成24年7月9日決定)。)
⑦不特定多数への提供目的製造等:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は併科
⑧不特定多数への提供目的輸出入:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は併科(3)注意点児童ポルノ禁止法には, 「児童の年齢を知らなかったとしても処罰を免れない(9条)。」という規定がありますが, 「18歳未満であると知らなかったことが無過失の場合はこの限りでない。」という規定も, 同時に設けられています。
この規定は,例えば, まもなく 18歳になる女児が, 自ら18歳以上であると主張して,写真撮影等のモデルになりたいと応募してきた場合等に,撮影した者を罪に問うのは酷ではないか等という議論があり,設けられたと言われています。
ただ,無過失というためには,少なくとも年齢が分かる公的な書類等で,児童の年齢を確認したこと等が要求されると考えられます。
また,第3章の5で解説する児童福祉法違反と児童ポルノ禁止法には,重なり合う部分も多くありますが,両方の法律に違反した場合は,併合罪として重く処罰されます(最高裁平成21年10月21日決定)。
2つの罪が併合罪として処断される場合には,その最も重い刑の長期(刑期の上限)に,その2分の1を加えたものが長期とされますので(刑法47条本文),法定刑の上限があがることになります。

[001/002] 145 - 衆 - 法務委員会 - 12号
平成11年05月14日
○笹川委員 今の発議者の答弁の中で、マフィアその他がわかりにくいというお話があったので、私は、そういうことが起こり得るんですということを申し上げただけの話であります。
 例えば、「過失がないときは、この限りでない。」九条にありますね。いかなることがあっても処罰を免れないんだけれども、過失がないときというのをお尋ねしようと思ったんだけれども、時間の関係でなるたけ早くやめたいと思ったから。では、IDカードを見せなさい、ドライバーライセンスを見せなさいと言って年齢が確認できたらいいですよ。こんなことをしてはいけないんだけれども、仮にそうしたときに、できないでしょうから、幾つと聞いたときに、いや、十八と言った、だからおれは「この限りでない。」に入ると思うけれども、相手は、そんなこと言わなかった、私は正真正銘十四歳でしたと言われたときに、私は、申し上げたようなことがアメリカでもあったし、日本でも起こり得ますと。
 だから、国外犯の処罰というのはやはり難しい面がありますよということは、皆さんの勉強会の中でそういう話が出ましたかということをお聞きしただけであります。
○林(芳)参議院議員 お答えを申し上げます。
 私も先生がおっしゃることは、男性でございますのでというわけでもありませんが、よくわかるつもりでございまして、その意味で、この九条を置いておりまして、児童を使用する者以外は、この反対解釈として、過失の場合は認められないということ、除かれるということに一応して、これは国外犯にも適用がございますので、御懸念のところは、その辺のラインで、あとは運用のところできちっとやってもらわなければいけないというふうに考えておるところでございます。
○福岡委員 そうしますと、今その判例に従うということですから、実際的には、法的な意味で従属制があるとか親権に服するとかということよりもっと広い概念だということですね。事実上支配をしているというような関係に立つ者がそういうことをしたということですね。わかりました。
 それで、次にそれに関連しまして、第九条の規定全体を見てみますと、私は、本来、第五条ないし八条の罪というものは故意犯だと思うんですよ。故意犯を前提として、その年齢を知らなかった、十八歳未満であるということを知らなかったということに過失がある場合は処罰をするという、いわゆる過失犯を設定した規定だというふうに全体として認識するわけですけれども、それで間違いないでしょうか。
○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 結論から申し上げますと、委員の御指摘のとおりでございますが、五条から八条までに規定する犯罪は故意犯でありますから、児童である、この場合は十八歳未満でございますが、その認識がなければ処罰ができないというのがこの原則でございますけれども、児童を使用する者については年齢に関する調査確認義務があるというふうに考えられますので、このような者については、児童の年齢を知らないということを理由にしてのみ処罰を免れさせるのは妥当でないという判断をいたしまして、これらの者については、認識がないことについて過失があれば処罰するということにいたしたところでございます。
○福岡委員 そうしますと、この規定の仕方を見ると、何か、裁かれる被告人側の者が過失がないことについて立証責任を負うというようにも読めるんですよ。要するに、原則として、知らないことは処罰される、ただし、知らないことについて過失がない場合には免れるというような感じになりますから。ところが、実際は刑事訴訟法の大原則は、すべて構成要件的なもの、過失もいわゆる構成要件ですから、それについては検察側の立証の義務があるということははっきりした事実ですね。したがって、その点をやはり変更しているというわけじゃないでしょうか。そこのところだけ明確にしていただきたいんです。
○林(芳)参議院議員 お答え申し上げます。
 これも委員のおっしゃるとおりでございまして、このような規定には児童福祉法六十条三項というのもございますが、本条はこれに倣ったものでございます。これは解釈上、学説等いろいろあるようでございますが、我々といたしましては、憲法の三十一条に規定されております検察官の立証ということの原則にのっとりまして、検察官が過失を立証すべきであるというふうに考えております。



○佐々木(秀)委員 つまり、私がお尋ねをしたような事柄については、別の法律ないしは別の措置によって保護の措置を考えるべきである、こういうお考えだということでよろしいですね。
 それから、私が予定した質問は大分先ほど同僚委員からの御質問があり、それと重複している部分もありますので、もうお答えいただいたところについては割愛をさせていただきたいと思いますが、ただ、先ほども年齢についてのお話がありました。例えば、本法では児童については十八歳未満にしているわけですけれども、しかし、先ほども御指摘がありましたけれども、もう十五歳、十六歳などというと、例えば身体的には大人と変わりない、大人よりも立派な体をしている女性もたくさんいるわけです。諸外国の例で言うと、ドイツでは十四歳、フランスでは十五歳、ベルギーでは十六歳となっていると聞いております。それからまた、先ほども御指摘がありましたけれども、我が国では女性の婚姻適齢が十六歳になっているなどということもある。
 それで、これは先ほど福岡委員からも御指摘があったところですけれども、いわゆる第九条の、児童の年齢についての情を知っているかどうかということについてです。児童を使用する者が、児童の年齢を知らないことを理由にして、第五条から第八条までの規定による処罰を免れることはできない、ただし、過失がないときはこの限りではない、こうなっているわけです。今のような子供たちの身体の発育状況などからいうと、これは情を知るという、九条関係でいうと、使う場合に、一々戸籍抄本あるいは戸籍謄本などを出せというところまでは、恐らくどんな企業でも余りやってないんだろうと思うんです。まともな企業でもですよ。
 そうすると、そうでなくて、特に風俗だとか何かで使うような場合に、それを聞かない、それで本人の年齢を聞いて、本人の年齢についての偽りの申告、それを受けたという場合に、それをさらに突っ込んで確かめないままにというようなことが過失に当たるのかどうか、これは先ほどの御指摘にもあったけれども、なかなか難しいんじゃないかと思うんですね。
 それと、その外国の事例での年齢の問題などと比べると、これは経過の中でもいろいろ私どもも議論に参加したところだったんですが、十八歳という年齢はちょっと高過ぎるんじゃないかという意見がかなりあったんです。しかし、これで、十八歳で決めたということについて、簡単で結構ですから、そこを決断されたという事情について
○円参議院議員 先ほど福岡委員にもお答えしたんですけれども、一定の年齢に満たない者に対し特別の保護を与えることを定めた児童の権利に関する条約というものがございます。その対象となる児童は十八歳に満たない者とすることをこの条約では原則としておりまして、また我が国におきましては、児童が健やかに成長するように各般の制度を整備するとともに、児童に淫行させる行為等、児童買春に関連する行為をも処罰の対象とする法律に児童福祉法がございますが、同法の対象となる児童も十八歳に満たない者でございます。そして、これは女性の婚姻による例外を認めておりません。これらの条約や法律の目的とこの法律の目的から考えて、対象とするものの範囲も同一にすべきものと私どもは考えまして、十八歳未満の者をこの法律による児童としたわけでございます。先生がおっしゃるような議論はさまざまございましたけれども、そういうわけでございます。
○佐々木(秀)委員 一応そのように伺っておきます。
 それから、先ほど来他の委員からも御指摘がありましたように、これが刑法との関係で、特に児童に対する性的な犯罪、処罰も重くなっているというようなこと、あるいは犯罪類型としても構成要件的にぴたっといくのかどうかなというようなことから、これが濫用されるおそれはないんだろうかというようなことがありますね。
 例えば、児童ポルノの販売目的の所持だとか製造だとか運搬、これが禁止をされ、違反をすると処罰をされるということになるわけですが、そういうことが、例えば憲法二十一条二項の検閲の禁止に触れないか。つまり、原稿の作成だとか印刷段階だとかあるいは映画だとかビデオの撮影段階がこの販売目的の所持、製造、運搬禁止ということに触れないとは限らないのではないか。そうすると、今言ったような後者の段階でも強制捜査の機会が生じるのではないかというようなおそれが指摘をされたりするわけですね。そういうことから、第三条では「国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」こう書いてあるわけですね。
 そこで、これはむしろ法務省にお聞きをした方がいいのかと思いますけれども、私が今挙げたような例のほかに、ここで心配されている国民の権利の不当な侵害のおそれというのはどんなような事例が考えられるのか、そして、それに対する歯どめとして、この法律で賄えるのかどうか。先ほど、第九条関係では、過失の立証責任は捜査官の方にあるだろう、検察側にあるだろうというお話もあったんだけれども、私が述べたようなことからして、果たして立証可能なのかどうか、そんなことも含めて刑事局長にお尋ねをしたいと思います。
○松尾政府委員 まず、憲法の問題といいますか、重要な問題である検閲になるのかどうかという、ここのところからお答えしたいと思います。
 最高裁判例で、昭和五十九年十二月十二日に、検閲についての判例がございます。その判決での文言でございますが、検閲というのは何かということでございます。これは「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」、これが検閲だ、こう判示しているわけでございます。
 この法案の第七条では、確かに頒布等の目的で児童ポルノの製造、所持、運搬等をした者について処罰するという規定になっております。これは「対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査」するというものでないことは、この法案の文言からも明らかでございます。判決に言う検閲の概念には該当しないということがまず言えるかと思います。
 それから二番目に、この法案が成立した際の運用等で、例えばその濫用のおそれとか、あるいは概念の混同等が生じて混乱することがないのかという御趣旨かと思いますが、例えば、本法案では、既存の刑法あるいは児童福祉法その他の用いている文言と同じ文言がございます。同じ文言は、当然のことでございますが、従来の解釈あるいは判例によってその内容が逐次明らかにされてきている部分につきましては、その判例の流れといいますかそういうことが実務に定着しておりますので、その趣旨を体して、あるいはその趣旨を尊重しながら運用するということに当然なろうかと思います。
 ただ、この法案では、若干のところにつきまして従来よりも処罰範囲を広げたことがございます。この法文上の文言あるいはその趣旨につきましては発議者の方から何回かにわたっていろいろな観点からの御説明がございました。我々捜査当局といたしましては、国会におけるそうした法文についての御論議、あるいは参議院も通じてでございますが、委員会でいろいろ交わされましたことについて、その趣旨にのっとりまして慎重に適用してまいりたいと思っているところでございます。
○吉川(春)参議院議員 お答えいたします。
 これは故意犯ですので、やはり年齢が十八歳未満であるということの認識も必要といたします。
 同時に、ただ、五条から八条については、児童を使用する者については、児童の年齢に関する調査確認の義務があると考えられますので、これらの者が五条から八条までに規定する行為をした場合については、十八歳未満の者であるとの認識がなくても、認識がないことについて過失があれば処罰する、こういう法律の組み立てになっておりまして、したがって、原則として年齢について知らなくてはならない、これがこの法律の原則です。
○木島委員 そう読まざるを得ないのですね、これは。これは検察・法務といえども、この条文を読んだらそう読まざるを得ない、故意犯ですからね。しかし、そうなると、ほとんど脱法で捕まえることができなくなるのじゃないかという私の心配なんですね。まあ、そう聞いておきます。
 ではその次に、それではこの法律の組み立て方で、第四条の児童買春罪、これだけは、児童を使用する者は年齢を知らないことを理由として罪を免れることができないという、要するに、年齢の不知は許さずという立場から除外したのですね。何で第四条だけを除外してしまったのでしょうか。
○吉川(春)参議院議員 第四条を除外したというより、第四条が原則なんですね。
 それで、第五条から八条については、児童を使用する者ということになっておりまして、児童を使用するという者は、雇用関係にあるだけではなくて、もう少し広く解釈いたしますけれども、こういう性的な犠牲にならないように、児童に対して注意義務を持たなくてはならない、こういうような人について特に厳しく処罰することにしたということでありまして、原則は第四条です。
 そして、今は非常に子供たちの成長も早いから、十五、六歳なのか十九歳なのかという認識がなかなかつきにくいというのはお説のとおりでございますけれども、同時に、こういう場合には、例えば未必の故意が認められる場合もあるでありましょうし、しかし、年齢のことについて認識が不可能という場合にはやはり処罰をしない。これが立法政策といいますか、私たちはそういうことを選択をいたしました。
 今後、この法律が初めて日本で施行されることになるわけでございまして、これによって大半の処罰が免れるような実態になるというようなことがあれば、またその次の段階として考えなくてはならないと思いますけれども、私たちは、あくまで年齢の認識が必要だということを基本に置いて故意犯として組み立ててきた、こういうことです。
○木島委員 確かに、この法体系は第四条が基本、児童買春については基本条文なんですね。第四条は児童買春罪です。
 第五条は周旋です。それから、二項は業とした者です。第六条も周旋です。そして、二項は勧誘を業とした者ですから、確かに、使用するということを想定される場合が非常に高いことは事実です。ですから、そういう場合は、知らないことは許さないというのは非常にいいと思うのですね。七条以降もそうですが。だからといって、四条の児童買春罪の基本法について、私は、知らないことを許すというのは理屈が通らないと思うのですね。
 というのは、最近、高校生のアルバイトもふえているのですよ。高校生、どんどんアルバイトに入るわけです。そうすると、使用関係に入っていく高校生は非常に多いのですよ。そういう、たまたまある会社なり業にアルバイトとして入った高校生、高校生は大体十八歳未満ですからね。そうすると、使用関係が生まれるその使用者なり支店長が、地位を利用しなくたっていいですね、お金を渡して性行為に入ったら四条が適用なんですが、その支店長なり使用人が、その子の年齢、おれは知らぬ、十八歳以上だと思ったという弁解を許さなくたっていいんじゃないかな。想定できる。
 四条の場合でも、使用関係に入った女の子が被害者になることは大いに今の日本の社会状況の中で想定されるから、四条は外さなくてもいいんではないかなと思うので、要するに重くするという意味ですよ。年齢の不知は許さないという基本のところでいいんじゃないかなと思うのですが、これ、私、頑張り過ぎますと修正問題になってしまうので、この辺でやめますが、何か御答弁あったら……。
○大森参議院議員 被害者の年齢等が規定されている条文というのはほかにもございます。そのときにその年齢だと思わなかったという否認の弁解というのはよく出てくることでありまして、これをとめることはできません。その場合に、どういう立証ができるかということであると思います。
 それで、やはり原則は故意犯でありまして、児童を使用する者については、別の過失推定のような規定を置いたわけです。これは児童福祉法の規定と同じような内容と理解しておりますけれども、使用する者と言い得るためには、児童の年齢確認義務を課すことが相当と認められる関係のある者、その確認義務を尽くさなかったために児童の年齢を知らなくとも処罰されるのもやむを得ないと見られる者という、この基準から判断されるとしておりますけれども、例えば児童福祉法でも、こういう場合には児童保護のために、特に原則故意犯の一部例外的なものを認めたわけでありまして、これを広く広げるべきではないと思います。
 今回の、どこにこの使用する者の部分を当てはめるかにつきまして、買春者というのは、通常一回性の行為というものが予定されますので、ここからは除外いたしました。確かに、年齢が十八歳未満、十七歳ぐらいになると、故意の内容というものが、十七歳だから、例えば二十歳と思ったと見る場合もあると思います。要するに、その弁解が信用できるかどうかということで、あくまで立証の問題だと思います。

○木島委員 もう論争をこれで私は打ち切りますが、一つだけ披露したいのがあるのです。神奈川県青少年保護育成条例であります。
 この条例は、第十九条で、みだらな性行為、わいせつな性行為の禁止規定があります。「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」「「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、」本件で言う性交のようなものです。「同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為」。わいせつな行為でしょうね。
 これが処罰されるのですが、神奈川県条例の大変ユニークな、画期的な条文は、第三十七条七項で、この十九条一項もしくは二項、今言った青少年に対するみだらな性行為罪、わいせつ行為罪を、その「行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、前各項の規定による処罰を免れることができない。 ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。」といって、使用関係がなくても、神奈川県条例の場合は年齢の不知は許さない、そういう弁解を許さないという条文を置いているので、これは神奈川県、なかなか大したものだなというふうに思っておりますので、ひとつ三年後の見直しのときにはこんな条文もこの法に盛り込めればいいなと私は思います。
 では、一点だけ聞きましょうか。この条例と本法との整合性の問題について御答弁願いたい。
○吉川(春)参議院議員 神奈川県条例の三十七条七項は、確かに本法の四条についても年齢の不知は許さない、こういう立場をとったと思います。今度この法案ができましても、確かにこの部分はまだ処罰として条例としては残るわけです。それは県の条例ですので、県の御判断によって、この法律との整合性のために条例の改正という手続をおとりになるのかあるいはそのまま残されるのかは県の判断だと思いますけれども、私は、立法政策として一つの方法であるということは認めたいと思います。
 同時に、先ほど来、木島議員の御意見ですけれども、児童の虐待、そういうことを許さないという強い意思を示すためということであれば、例えばポルノグラフィーの所持そのものを処罰した方がいいんじゃないかとか、そういうのもあったのですけれども、それも自社さ案からは削ったという議論がありましたけれども、ともかくこの法案をスタートしてみて、そして不都合があれば見直すということで、第一歩という形でそういう立場をとったということを御理解いただきたいと思います。
○吉川(春)参議院議員 ですから、この法律と重なる部分は効力を失うけれども、それからはみ出す部分については当然残るのであって、それをどうするかについては各地方公共団体の御判断である、この立場でございます。
・・・・・・・
[002/002] 145 - 参 - 法務委員会 - 8号
平成11年04月27日
高野博師君 第九条は、「児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。」。この条文を置いた趣旨は何でしょうか。
○委員以外の議員(林芳正君) お答え申し上げます。
 九条は、先生の御指摘のとおり知情のことを書いておりますが、この法案の第五条から第八条までに規定する各種の犯罪はいずれも故意犯でございます。ですから、児童であるという認識、すなわち定義のように十八歳未満の者であるという認識がなければ処罰ができない、これが故意犯の原則でございます。
 しかしながら、児童を使用する者については児童の年齢に関する調査や確認義務があるというふうに考えられまして、このような者について児童の年齢を知らないことのみを理由に処罰を免れさせる旨は妥当ではないという判断をいたしまして、これらの者については、当該児童が十八歳未満の者であることの認識がない場合においてもその認識がないことについて過失があれば処罰をするということを規定したものでございます。
高野博師君 それでは最後に、第九条の「児童を使用する者」とはどういうことか。児童福祉法第六十条にも同様の規定がありますが、そこで言う「児童を使用する者」と同じ内容と考えていいのでしょうか。
○委員以外の議員(林芳正君) まさに先生御指摘のとおり同様の定義だということでございますが、今先生がおっしゃられたように、「児童を使用する者」については、児童福祉法第六十条の第三項に同様の規定がありまして、これに倣ったのがこの法案のこの言葉でございます。
 児童福祉法の同規定におきます「児童を使用する者」の意義については、判例上、児童と雇用契約関係にある者に限らず、児童との身分的もしくは組織的関連において児童の行為を利用し得る地位にある者、またあるいは特にその年齢の確認を義務づけることが社会通念上相当と認められる程度の密接な結びつきを当該児童との間に有する者などという判例になっております。こういうことでございまして、本案における「児童を使用する者」の意義は、先生御指摘のとおりこれと同じものでございます。

オウム事件の裁判記録 無期限保存へ 今後の調査研究のため

 刑事確定訴訟記録法9条の刑事参考記録として保管されるようです。
 

刑事確定訴訟記録法
第九条(刑事参考記録の保存及び閲覧)
1 法務大臣は、保管記録又は再審保存記録について、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、その保管期間又は保存期間の満了後、これを刑事参考記録として保存するものとする。
2法務大臣は、学術研究のため必要があると認める場合その他法務省令で定める場合には、申出により、刑事参考記録を閲覧させることができる。この場合においては、第四条第四項及び第六条の規定を準用する。
3刑事参考記録について再審の手続のため保存の必要があると認められる場合におけるその保存及び閲覧については、再審保存記録の保存及び閲覧の例による。
4法務大臣は、法務省令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定に基づく権限を所部の職員に委任することができる。


刑事確定訴訟記録法施行規則
第十四条 法第九条第二項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 民事上又は行政上の争訟に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
二 刑事上の手続に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
三 その他特に刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
(権限の委任)
第十五条 法第九条第四項の規定に基づき、刑事参考記録の保存及び閲覧に関する法務大臣の権限(刑事参考記録として保存する旨の決定に関する権限を除く。)は、刑事参考記録に係る被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の長(区検察庁にあつては、その所在地を管轄する地方裁判所に対応する検察庁の検事正。以下同じ。)に委任する。
(刑事参考記録の閲覧の申出等)
第十六条 法第九条第二項の刑事参考記録の閲覧の申出をしようとする者は、刑事参考記録閲覧申出書(様式第六号)を前条に規定する検察庁の長に提出しなければならない。
2 第十二条の規定は、刑事参考記録の閲覧について準用する。この場合において、同条中「保管検察官」とあるのは、「検察庁の長」と読み替えるものとする。

注釈 刑事確定訴訟記録法 押切謙徳 外著 
解釈
第一項
本項は、刑事参考記録としての保存の要件について定めるものである。
刑事参考記録は、刑事法制及びその運用に関する調査研究の重要な参考資料並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料としての件質を有する記録であるがハ注一二〉、ここにいう「刑事法制」とは、刑事に関する法律制度の意であって、手続法に関するもののみならず、実体法に関するものも含む概念である。
刑事参考記録の保存の円的は、法務省の所掌事務である司法制度に関する法令案の作成(法務省設置法第三条第四号)、内外の法令並びに司法制度及び法務に関する資料の調査、収集、整備及び編纂(同条第五号)、犯罪捜査の科学的研究(同条第二二号)、刑事に関する法令案の作成、犯罪の予防(同条第一五号)、犯罪者及びその改善更生に関する科学的研究(同条第二四号〉、刑事政策に関する総合的な調査研究(同条第三五号)等に資することに「犯罪に関する調査研究の重要な参考資料」としての刑事参考記録の範囲は、その目的から、自ずから限あり、定されることとなろう。
刑事参考記録は、刑事法制等の重要な参考資料となるものであるので、通常の場合は、記録の全部についてこれを保存することとなろうが一部についてのみ、例えば判決書だけを刑事参考記録として保存することもあり得るところである。
刑事参考記録としての保存期間については本法の定めるところではないが、その性質上半永久的に保存されることとなるものが多かろうと思われる。

第二項
本項は、刑事参考記録の閲覧に関する規定である。
法務大臣は、学術研究のため必要があると認める場合及び法務省令で定める場合には、閲賢しようとする者の申出により、刑事参考記録を閲覧させることができることとされている。
本条に基づき、刑事確定訴訟記録法施行規則第一四条は、民事上又は行政上の争訟に関して刑事参考記録を閲監する必要があると認める場合を列挙している
刑事上の手続に関して刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
その他特に刑事参考記録を閲覧する必要があると認める場合
刑事参考記録を閲覧させる場合については、謄本閲覧に関する第四条第四項の規定と閲覧者の義務に関する第六条の規定が準用される。第七条の規定の準用はなく、閲覧手数料の納付を要しない。
刑事参考記録の問覧の申出に対する法務大臣の措置に対しては、本法による不服申立てはできない(第八条参照)。また刑事参考記録の閲覧は権利又は法律上保護された利益として認められているわけではないので、行政不服審査法による不服申立て行政事件訴訟法による不服申立てもできない(注四

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180803/k10011561951000.html
オウム事件の裁判記録 無期限保存へ 今後の調査研究のため
2018年8月3日 13時50分

先月オウム真理教の一連の事件で13人の死刑囚全員に死刑を執行したことに関連し、法務省は、通常は一定期間過ぎると廃棄する刑事裁判の記録を、オウム真理教が関わった事件の記録などについては、今後の調査や研究のため、期限を定めず保存することを決めました。

法務省によりますと、刑事裁判の記録は、判決の内容によって確定後3年から50年、判決文は最長で100年間、検察庁で保管すると定められていて、一定期間過ぎると廃棄してしまいます。

こうした中、法務省は、オウム真理教が関わった事件の刑事裁判の記録については、今後の調査や研究のため、期限を定めずに「刑事参考記録」として保存することを決めました。

また、先月オウム真理教の一連の事件で13人の死刑囚全員に死刑を執行したことに関連し、死刑執行に関する行政文書についても無期限で保存することを決めました。

迷惑防止条例と国法の罪の関係~群馬県公衆に迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例解説s38

 古本屋にて
 国法と重ならないように解釈するようです。

s38群馬県公衆に迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例解説
第2条例の性格
この条例は、地方自治法第2条に定める地方公共団体の固有事務である住民および滞在者の安全を保持すること(同条第3項第1号) 、風俗のじゅん化に関する事項(同条第3項第7号)および犯罪の防止に関すること(同条第3項第8号)を執行するために制定されたものであって、その行政目的を実現するため、各条において住民一般に一定の義務を課し、その義務違反者に対しては、一定の刑罰を科することによって実効性を確保している。すなわち、この条例は、単なる刑罰法令ではなく、また国の委任事務を執行するための条例でもなくて、地方公共団体が固有する立法権に基づいて制定した固有の行政事務条例である。
次に、この条例は、その制定の目的趣旨において述べたように、現行法令の不備を補完するものとして立案されたものであるため、必然的に既存法令と密接な関連を有する。たとえば、粗暴行為、不当な金品の要求行為等については、刑法や軽犯罪法を主に適用し、景品買行為については、風俗営業等取締法、同施行条例、たばこ専売法、道路交通法等を適用していたものである。
その他この条例の各条項と関連を有するものとしては、刑法のわいせつ罪、暴行罪、脅迫罪、強要罪、詐欺罪、恐喝罪、器物毅棄罪等があるほか、売春防止法、船舶安全法等の特別法があるが、この条例は、そのいずれの条項をみても、既存法令の先占にふれるところはない。しかしこの条例は、既存法令の不備を補完するものであるため、既存法令とは、観念的競合、法条競合、牽連犯、併合罪等複雑な罪数関係を生じているのであるが、その詳細については後記の逐条の説明のとおりである。
・・・・
2捜査についての基本的な心構え
捜査手続きの具体的な要領については、後記第6によるが、この条例違反の捜査にあたっては、刑事訴訟法、犯罪捜査規範等の一般的原則にのっとって実施することはもちろんであるが、事犯の性質上、特に次の事項について留意する必要がある。
(1) 第1点は、関係法令との関連性を明確に認識しなければならないということである。
すなわち、この条例が、現行法令の不備欠陥を補なうために制定されたものであるため、規制の対象となっているものの多くは、前にもあげたとおり、刑法、軽犯罪法のほか、道路交通法物価統制令鉄道営業法風俗営業等取締法、同施行条例、船舶安全法等に規定する罪と、行為の形態、構成要件、保護法益等の点で密接な関連性をもっている。
そこで、この条例の特質をは握するためにも、また個々の罪の構成要件を理解するためにも、常にこれらの関係法令と比較対照して、関連性を明らかにし、いかなる程度に達し、いかなる要件を充足した場合に、刑法犯またはその他の特別法令の罪を構成するかについてよく検討し、その適用に誤りのないようにすること。
このことは、要するに、この条例は既存の法令とはその目的、趣旨において、あるいは手段方法において、または行為の主体や客体において重複をさけ、その先占を侵すことのないようにされているが、そのため、一行為数罪の関係を生じ、または手段もしくは結果たる関係を生じて、刑法第54条の適用をみるほか、あるいは法条競合となり、もしくは部分規定と包括規定としての包括一罪の関係を生ずる等、複雑な罪数関係を生じているものであり、したがって、捜査にあたっても単純一罪か否かによって、立証すべき内容を異にし、また実質的数罪の場合において、告訴、告発等の特別な訴訟条件をもつ犯罪の有無により、立件の方法を異にする等、罪数問題は現実の捜査活動に重要な関係をもつものである。
・・・
第6 捜査書類作成上の留意事項
1 一般的留意事項
(1) この条例は、現行法令の不備または欠陥を補うために制定されたものであるため、その規制の対象となっている行為のほとんどは刑法、軽犯罪法物価統制令または鉄道営業法等の既存法令と競合する場合が多い。
したがって、このような場合には、この条例のほか競合する法令の構成要件を充足するような捜査を行なって送致するよう配意すること。

わいせつな行為=客観的に「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる性的意味を有する」行為 松宮刑法各論講義第5版

「この点、客観的に相手方の性的差恥心を害する行為を要求する見解は、差恥心を感じない幼児等に対する本罪の成立を説明できないし、反対に、医学的に適切な処置であっても説明不足のために患者が性的差恥心を害された場合には、本罪ないし準強制わいせつ罪(178条)が成立することになりかねない。」ということで羞恥心説はだめ。
 現像不要なデジカメ等の普及で、低年齢に対する行為の客観証拠が出て来るようになって、乳幼児へのわいせつ行為の説明が求められるようになってきた。
 0歳4ヶ月に性的自由があるというには「性的自由」の説明も欲しいところだ。「性的自由を害されました」という供述は取れないからな

3「わいせつな行為」の意味-本罪は「傾向犯」か?
 本罪については、それは「傾向犯」か否か、 という問題がある。
「傾向犯」とは、行為者のもつ一定の主観的な傾向ないし性向が構成要件要素に付着しているか、あるいは、客観的要素とともにその意味を決定しているものをいう。
「わいせつな行為」の場合は、その行為は行為者のわいせつな傾向ないし性向の表現であることを要するのである。
というのも、 「わいせつ」 とは、一般に、 「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」からである(175条に関して、最判昭和26・5・10刑集5-6-1026)。
この場合に、 「徒に性欲を興奮または刺激」されるのは、行為者、被害者またはその他の関係者一共犯者を含む-である。
つまり、 「わいせつな行為」は、その定義上、その行為が自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行われることを要することになる(最判昭和45・1・29刑集24-1-1頁、百選ⅡNo. 15は、これを「犯人の性欲」に限定していた)。
それゆえ、 「婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても、 これが專らその婦女に報復し、 または、 これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しない」とされている。
しかし、その後最高裁は、 もっぱら金銭を得る目的で7歳の女児に男性器を触らせ口にくわえさせる等の行為をさせ、 これを撮影してその画像データを送信したという事案に関し、犯人の性欲を満足させるという性的意図を一律に要求することはできないと判示した(最大判平成29・11・29刑集71-9-467)。
 学説は、一般に、本罪にこのような特殊な主観的要素を要求することに批判的である(団藤・各論491頁、平野・概説180頁、大谷・各論lll頁以下、中森・各論58頁、西田・各論100頁、林・各論90頁、山口・各論108頁等)。
被害者の性的自由を侵害する点を主眼として考える以上、行為者の側の特殊な主観的要素を本罪の構成要件に含ませることは相当でないというのである(団藤・各論491頁注(三)参照。その結果として、客観的に相手方の性的差恥心を害する行為であれば足りるとする見解が多い)。
また、下級審でも、性欲を興奮または刺激せしめるという、 この性的「意図」を、 「自らを男性として制的に刺激、興奮させる性的意味を有した行為であること」の「認識」に還元したものがある(東京地判昭和62・9・16判時1294-143.その事案は、若い女性の弱みを掴んで下着ショップで働かせようとの目的で全裸を撮影しようとして未遂に終わったというものである)。
問題は、 自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという行為の客観的属性が一義的に明らかでない行為にある。
たとえば、一見すると親権者の懲戒行為のように思われたが、実際には、その親権者はサデイステイックな性的意図で未成年者に暴行を加えており、 したがってそれは、主としてあるいは同時に、 「自己の性欲を刺激興奮させまたは満足させる意図」のもとに行われていたという場合である。
本罪を「傾向犯」とする見解は、まさにこのような場合に犯罪の成否を分けるのは、行為者の性欲満足という意図でしかないと考えたのである。前掲最大判平成29・ll.29も、 このような場合に行為者の目的等を考慮する必要性を否定していない。
この点、客観的に相手方の性的差恥心を害する行為を要求する見解は、差恥心を感じない幼児等に対する本罪の成立を説明できないし、反対に、医学的に適切な処置であっても説明不足のために患者が性的差恥心を害された場合には、本罪ないし準強制わいせつ罪(178条)が成立することになりかねない。
なお、 7歳の幼児に対する本罪の成立を認めたものとして、新潟地判昭和63.8.26判時1299-152、患者が差恥を感じても臨床検査技師である被告人にわいせつ目的が認定されないとして178条の罪を否定したものに、京都地判平成18・12・18公刊物未登載がある)。
しかし、 「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる性的意味を有していた」ことが一義的に明らかであるような行為であれば、行為者の動機のいかんに関わらず、その行為は被害者の性的自由を害する客観的意味を持つであろうし、逆に、そのような意味を有する行為であることがほとんど明らかにならないのであれば、行為者の「意図」のみを理由に本罪の成立を認めるのは「客観主義」 「行為主義」に反するであろう。
その意味で、「わいせつな行為」とは、 まず、客観的に「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる性的意味を有する」行為であることが必要である。
ゆえに、二義的な行為の場合でも、行為の具体的な脈絡から客観的にこの意味が判明しない場合には、 「わいせつな行為」に当たらないと解するべきであろう。
その結果として、行為が「自己または他人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる」意図という特殊な主観的要素は不要であると同時に、客観的にみて行為がそのような性的意味を有することは本罪の構成要件要素として、その認識は、本罪の故意そのものの内容として、必要であることになる。

強制性交強盗罪の裁判例(大分地裁h30.3.9)

 
 改正前の罪名だと、強姦+強盗致傷ですが、241条1項ということになって、傷害を含む場合もこれだけのようです

大谷刑法各論第5版 
(1) 強盗・強制性交等罪
本罪は,犯罪学上,強盗犯人が強盗の機会に強制性交等の行為に及ぶ場合が多いこと, また,強制性交等の機会に強盗行為に及ぶことが多い犯罪の実態を踏まえ, そのような行為の抑止と犯罪の重大性・悪質性に即した処罰の適正を図るため,強盗罪と強制性交等を結合させて独立の構成要件を設け,重い刑を科すこととしたものである。
(ア)行為本罪が成立するためには,強盗罪(もしくはその未遂罪)および強制性交等罪(もしくはその未遂罪)が,同一の機会に行われることが必要である。同一の機会に当たるか否かは,時間的・場所的な近接の程度と強盗または強制性交等の暴行・脅迫による反抗抑圧状態の継続性を基準に判断すべきである。

なお,本条は,強盗・強制性交等致傷の場合については規定していない。
強盗・強制性交等罪の法定刑は「無期又は7年以上の懲役」であるところから,致傷の結果は同罪に織り込まれているという趣旨で,敢えて条文に入れなかったものと考えられる。

改正前
第二四一条(強盗強姦及び同致死)
 強盗が女子を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。

改正後
(強盗・強制性交等及び同致死)
第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

大分地裁平成30年 3月 9日 
事件名 強盗・強制性交等,邸宅侵入,公然わいせつ被告事件
文献番号 2018WLJPCA03096005
 上記の者に対する強盗・強制性交等,邸宅侵入,公然わいせつ被告事件について,当裁判所は,裁判員の参加する合議体により,検察官志水崇通,同小林佐和子,主任弁護人靍野嘉厚及び弁護人内田精治各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役12年に処する。
 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由

 (罪となるべき事実)
 被告人は
 第3 強制的に●●●と性交等をしようと考え,同月31日午後7時30分頃から同日午後8時30分頃までの間,大分市〈以下省略〉cアパート110号室において,同人に対し,その両手及び両足を椅子等に結束バンド等で縛り付け,「騒いだら殺すぞ。」などと言って暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧した上,同人と口腔性交及び性交をし,さらに,その際,同人から,現金を強奪しようと考え,その頃,同所において,同人に対し,前記反抗抑圧状態に乗じ,同人管理の現金約4万3000円を奪い,その際,前記一連の暴行により,同人に全治まで約8日間を要する索条痕部の皮膚炎の傷害を負わせたものである。
 (証拠の標目)
 (累犯前科)
 (法令の適用)
 1 罰条
 判示第1の行為 刑法130条前段
 判示第2の行為
 邸宅侵入の点 刑法130条前段
 公然わいせつの点 刑法174条
 判示第3の行為 刑法241条1項
 2 科刑上一罪の処理
 判示第2の罪 刑法54条1項後段,10条(邸宅侵入と公然わいせつとの間には手段結果の関係があるので,1罪として重い邸宅侵入罪の刑で処断)
 3 刑種の選択
 判示第1及び第2の各罪
 懲役刑を選択
 判示第3の罪 有期懲役刑を選択
 4 累犯加重 刑法59条,56条1項,57条(判示各罪の刑にそれぞれ3犯の加重〔ただし,判示第3の罪の刑については,同法14条2項の制限に従う。〕)
 5 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第3の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重)
 6 未決勾留日数の算入 刑法21条
 7 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
 (量刑の理由)
 量刑判断の中心となる強盗・強制性交等の犯行についてみると,被告人は,家庭教師会社に娘に家庭教師を付けたいなどとうそを言って被害者を部屋に呼んだ上,被害者を椅子等に縛り付けるためのひも,結束バンド等を事前に購入して,すぐに使用できるように準備しており,顕著な計画性が認められる。そして,被告人は,部屋に来た被害者に対し,マジックのアンケートに協力してほしいなどとうそを言って,アイマスクを着用させ,これらのひも等を使用し,被害者の手足を椅子等に縛り付けるなどして行動の自由を完全に奪った上で,犯行に及び,膣内に射精までしている。その手口は,犯行実現の可能性の高い,極めて巧妙で,卑劣なもので,被告人が被害者に凶器を突き付けたり,直接的な暴力を加えたりしていないとしても,犯行態様はこの種事案の中でも悪質である。被害者が多大な精神的苦痛を受けたことはいうまでもなく,被告人への厳重な処罰を望むのは当然である。
 被告人は,同種服役前科2犯(直近前科は,本件同様にうそを言って,女性の手首を結束バンドで縛るなどして口淫をさせた罪を含む。)を有するのに,その刑の執行終了から7か月足らずで,被害者をより強力な方法で拘束する方法を考え,本件において性交にまで至っており,この種犯罪に対する被告人の規範意識は著しく低下している。
 以上に加えて,邸宅侵入,公然わいせつも犯していることを併せると,本件は,同種事案(強盗強姦1件,単独犯,強盗の点:既遂)の量刑傾向の中では重い部類に属する。
 被告人は,法廷で,被害者への謝罪を述べるなどして反省し,社会復帰後には専門機関において治療を受ける意欲を示しているが,これまで述べたところからすると,再犯のおそれが高いといわざるを得ない。
 以上の検討を経て,主文の刑を導いた。
 (求刑 懲役13年)
 平成30年3月22日
 大分地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 今泉裕登 裁判官 家入美香 裁判官 大須賀謙一)

自衛隊・児童ポルノDVD4枚所持・停職2日

 1月から大騒ぎなのに、5月まで持ってたんだ。捨てるとか破いておけば処罰も懲戒もなかった。

児童ポルノDVDを所持 陸自隊員を懲戒処分
2018.08.01 神戸新聞社
 ◆児童ポルノDVDを所持 陸自隊員を懲戒処分 陸上自衛隊伊丹駐屯地(伊丹市緑ケ丘7)は31日、児童買春・ポルノ禁止法に抵触する動画DVD4枚を所持したとして、中部方面総監部付隊の40代の男性陸曹長を停職2日の懲戒処分にしたと発表した。同駐屯地によると、陸曹長は昨年4月、インターネットでDVDを購入。今年5月、警察の家宅捜索で発覚した。

消防士・DVD12枚、CD3枚所持→停職2月依願退職

 アリスの事件が神奈川県警で。
 去年5月から購入者が騒ぎ出して、今年1月にはパニックになって、みんな破棄したと思ってました。

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12198-065658/
東京消防庁によりますと、懲戒処分を受けたのは世田谷消防署の男性消防副士長(24)で、おととし、児童のわいせつな動画を記録したDVDなどをインターネット上で複数購入し、隠し持っていたということです。
 去年5月に摘発された児童ポルノ販売サイトの購入者リストに副士長が含まれていて、今年6月になって神奈川県警から事情聴取を受け、自ら報告したということです。
 副士長は1日付けで依願退職し、「児童の性的行為に興味を持っていた」と話しているということで、東京消防庁は「再発防止に努めてまいります」とコメントしています。(01日11:32)
・・・
https://www.sankei.com/affairs/news/180801/afr1808010019-n1.html
同庁によると、消防副士長は平成28年4月~7月、インターネット上で児童ポルノが記録されたDVD12枚、CD3枚を購入。今年6月、児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)で神奈川県警から事情聴取を受け、職場に「県警から任意の取り調べを受けている」と申告したという。同庁の聞き取りに「違法という認識はあった。児童の性的行為に興味があった」と話しているという。

娘へのわいせつ行為を続けた父親に懲役6年 「妻と娘の猶予判決嘆願書」に疑問の声

 性的虐待を警察に相談したというのが捜査の端緒だと思いますが、そんなに重くなると考えてなかったりするし、被告人が生活を支えている場合には、妻や被害児童が生活に困ることがあるので、「軽くして下さい」という嘆願書が出ることもしばしばあります。
 弁護人としては飛びついてしまいますが、情状としてはほとんど評価されません。「被害感情は強くない」という程度でしょう。

判例
東京高裁h20.9.17
所論は,被害児童が宥恕している点を重視すべきであるという。確かに,被害児童は,被告人の刑を軽くして欲しい旨の嘆願書を書くなどしている。しかしながら,この種の事案については,性的被害者にいつ「PTSD (心的外傷後ストレス障害)」が生じるかは分からないものであるし,性的被害者に対する支配が、強い悪質な事案であればあるほど,その宥恕の意思を得やすいという特徴もある。したがって,被害児童の宥恕の意思については,被告人からの支配がなくなり,もはやPTSDが生じる可能性が少なくなった後のものであるか否かを慎重に検討する必要がある。そうすると被害児童には,現在被告人以外に親権を行使できる者はおらず,今後の生活や進学の悩みがあること,~~~これらの事情からすれば,現在,被告人からの支配がなくなったとか, 「PTSD」 が生じる可能性が少なくなったとは到底いえない状況であり,このような状況下における被害児童の宥恕の意思は,被告人にとって酌むべき事情として重視すべきものとはいえない。

娘へのわいせつ行為を続けた父親に懲役6年 「妻と娘の猶予判決嘆願書」に疑問の声
https://sirabee.com/2018/08/01/20161734512/
■被害少女と妻の提出した嘆願書に疑問
また、「被害少女や妻が嘆願書をどうして出すのかが不思議」といったコメントも寄せられている。
自分を傷つけた父親の猶予を求める嘆願書を、なぜ少女が書かなければならなかったのか。この事態には、ニュースで報じられていること以上のなにかがあるのかもしれないと考えている人が多いようだ。

「被害少女や妻が猶予判決を求める嘆願書を提出していたとあるが、これは少女の意思だったんだろうか? 母親が書かせたものじゃないかと勘ぐってしまうし、また子供と共にこの男と暮らそうとしていたんじゃないかと勘ぐってしまう」

「最低の父親だが、それに対し嘆願書を書くんだね…」

「被害少女や妻が猶予判決を求める嘆願書を提出。意味がわからない。闇の部分が多い」

現在、わいせつ誘拐・強制わいせつ(後段)・強制わいせつ(後段)・強制わいせつ(後段)・強制わいせつ致傷・強制性交(後段)・詐欺・殺人・私電磁的録不正作出・同供用被告事件・児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反・児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反・児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,・児童買春罪・児童買春罪・児童買春罪・準強姦・所持・所持・所持・所持・所持・所持・所持・所持・製造・製造・製造・製

 
 結局、複合的な事件が奥村に回ってくるようです。

DVD2枚単純所持→捜索→停職5日

 対応としては、まず、弁護士に相談して、破壊して証拠残すことです。それで立件(起訴とか罰金)は無くなるので。
 罰金がなければ重い懲戒処分もありません。

https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20180730000180
児童ポルノ所持で海尉停職 摘発サイトの顧客リストに印刷用画面を開く
 海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)の第1航空群司令部は30日、児童ポルノDVD2枚を自宅に所持したとして、同基地教育航空隊の20代男性2等海尉を停職5日の懲戒処分にした。
 司令部によると、2等海尉は昨年2~3月ごろ、インターネットで児童ポルノDVDを購入。今年1月、摘発された販売サイトの顧客リストに基づき、警察から児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の疑いで家宅捜索を受け、発覚した。

どのような場合に、青少年と知らないことについて過失があると認められるのであろうか。~藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護育成条例」風俗・性犯罪シリーズ捜査実務全書9第3版

 
 ちょっと古い文献ですが、こういう解説がありました。

第2 版補訂部分(平成15 年6 月現在)
島戸純(法務省刑事局付検事)
第3 版補訂部分(平成19 年3 月現在)
島根悟(元法務省刑事局参事官)
隈良行(法務省刑事局付検事)

C 淫行規制条例と児童買春罪との関係(補訂)
① 法律と条例とが同一とみられる事項を規定している場合について、最高裁判所は、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみではなく、それぞれの趣旨、日的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する図の法令と条例が併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する日的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同ーの目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨でなく、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との聞に何らの矛盾抵触はなく、条例が図の法令に違反する問題は生じえないのである (最大判昭50.9.10 刑集29.8.489) としているが、両者の聞に矛盾抵触が生じた場合、法律の規定が優先され、条例の規定が無効となる
② ところで、児童買春・ポルノ法の児童買春罪と淫行規制条例とを比較すると、少なくとも対償の供与又はその約束がなされて性交等に及んだ行為を処罰するという部分に限っては、その趣旨、目的、内容及び効果において完全に重複するものと考えられ、かかる部分に|期する条例の規定は効力を有しないこととなる。児童買春・ポルノ法附則第2 条第1 項も、地方公共団体の条例の規定で、同法で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、同法の施行と同時にその効力を失う旨定めているが、これは、前記の趣旨を確認的に規定したものであると考えられる
③ そして、児童買春・ポルノ法は、「児童買春」について、児童等に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせること)としているのに対し、淫行規制条例は、児童に対する「淫行」、「みだらな性行為」等を処罰対象としている。
したがって、淫行規制条例の「淫行」、[みだらな性行為」が児童買春・ポルノ法の「性交等」よりも広い場合には、同法の「性交等」 よりも広い部分について、児童買春・ポルノ法がいかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されないから、条例の効力を認めることになると考えられる。
① なお、この場合、児童買春・ポルノ法上、児童買春罪については年齢の知情性に関する推定規定がないから、行為者に被害児童の年齢についての認識を欠いた場合に、児童買春罪による処罰ができないとしても、淫行規制条例による処罰ができないか問題となる
両者の規制が重なる部分については、児童買春・ポルノ法が児童買春罪について年齢の知情性に関する推定規定をあえて設けず、故意犯処罰の原則を貫いている以上、この法律の判断が優先されるべきであり、淫行規制規定による処罰はできないものと考えられる

(イ) 青少年の年齢の知情性について
① 行為者を淫行につき処罰するためには、淫行当時、その相手方が青少年であることについて知っていなければならないし、特に無過失のみ不処罰の旨の規定のあるところでは知らないことにつき過失がある場合でなければならないのは、前述のとおりである。
後者について、どのような場合に、知らないことについて過失があると認められるのであろうか。
結論としては、具体的事案によって千差万別としか言えず、青少年の年齢が18歳直前なのか14 、5 歳などはるかに若年であるのか、行為者と青少年の知り合った経緯、行為者の身分、立場などを総合して判断するしかない。
しかし、育成条例の「淫行等」について、前述のように、単なる不道徳な性行為というのでなく、前記のように、限定した概念として、青少年の未成熟を利用し、あるいは乗じるなどの特に不当な行為をとらえていることからすれば、相手が未成熟な背少年であることを知っていることが前提のはずと考えられ、過失であれ、その認識を欠いている場合を、「知って」淫行等した場合と同列に論じられるのか疑問なしとしない。
放に過失の認定には慎重であるべきであるし、過失の程度も重過失と言えるようなものに限るべきではなかろうか。
児童買春・ポルノ法等において児童の使用者についてのみ過失ある場合の処罰が規定されていることも参考とされるべきである。
②過失認定が難しい一例を見てみる。
デートクラブやいわゆるキャバクラなどの客が、その応のホステスを相手に性交又は性交類似行為に及んだ場合、その行為が単に性欲を満-たすためだけの深行に当たることは明らかであるから、その相手が18 歳未満の青少年であれば、淫行規制条例の適用を受け得ることになる
ところで、当節、青少年の肉体的発育はめざましく、15 、6 歳で成人以上の体格をしている者も珍しくはなく、化粧、衣類によって、その外見のみから18 歳以上か18 歳未満であるかを判別することは困難な場合が多いが、デートクラブやキャパクラなどでアルバイトしている青少年の場合には殊更外見からの年齢判断はできにくし、客は、被疑者として取り調べられると、年齢については「知らなかった。」と否認する者が多い一方、恥、不名誉に思い早く終わらせたい気持ちからか、「若いなと思った。」「本人は18 歳と言ってたが、まだかもしれないと思った」などの未必的認識を認める供述をする者も多く、これを根拠に過失を認定している例も見受けられる
しかし、キャパクラなどは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法第2 条第3 号により、18 歳未満の者を接客に使えないはずであり、通常の客は、ホステスは18 歳以上との認識で来応すると思われ、仮に、前記のような若干の疑念を抱いたとしても、客にその点を確認する方法は相手ホステスに尋ねるくらいしかないだろうし、それ以上の確認を要求すること自体非現実的であろう。実質的には否認の場合の認識との間にどれほどの径庭もないと言うべきであろう。
一方、捜査官に対しては、「当該客に年齢を問かれ、17 歳と答えた」「もうすぐ18 歳の誕生日と言った。」などと、客の年齢知情を裏付ける供述をする青少年が稀でないが、キャバクラなどで働いている青少年には、すでに取調べに慣れていて、自己が被保護者たる青少年であることを利用し、被害者的立場を誇張し、かつ、捜査官に迎合的な供述をする者がまま見られ、しかもそのような店の経営者は、客寄せのために成人前の若い女子を雇う傾向が強く、中には、18 歳未満と知っていても履い入れ、客に聞かれたら18 歳と答えるよう指示している場合が多いのは周知の事情であるから、右青少年の供述を全面的に信用することは危険である。
このような例では、結局は、客が既に青少年と話をする機会などがあってその身上を知り得る関係にあったとか、当該応には18 歳未満の女子ばかりを世いているなどの噌があって、容の来応理由になっていたと認められるなど、個別具体的に、淫行の相手が18 歳未満であることについて客観的に知り得る状況があったことを明らかにしなければ、過失を認めるべきではないと考える。
 淫行規制条例は、青少年の健全育成、保護のために、これを阻害する行為を回避する義務を年長者に負わせたものであるが、保護の対象たる青少年が自らの意思でいわば性を売り物にするデートクラブやキャパクラなどに身を置く以上、その保護は、個別の容を淫行で処罰することによるより、むしろ雇用主の児童福祉法違反、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反、売春防止法違反などを処罰することで図られるべきところではないかとも考えられる

豊中市もブロック塀解体等の補助

 さあ、解体して生け垣に

「一部損壊」に補助 北部地震で各自治体 /大阪府
2018.07.30 朝日新聞
■ブロック塀撤去などにも

 6月18日に発生した大阪北部地震を受け、道路に面した危険なブロック塀の撤去費用の一部を補助する府内自治体が増えている。

 ●豊中市
 豊中市は、道路に面したブロック塀を撤去する費用を、かかった工事金額の8割、上限20万円まで補助する制度を新設した。高さが60センチを超えるコンクリートブロック、石材、れんがなどで作られた塀が対象となる。道路に面した生け垣の費用の助成制度の増額も予定。申し込みは市街地整備課(06・6858・2342)。

 ●島本町
 島本町は、公道や公園などに面した民間のブロック塀の撤去費を補助する制度を新設。対象は高さが80センチ以上のブロック塀のほか、石やれんが、コンクリートの塀など。一部撤去の場合は塀の高さが80センチ以下とすることが条件。補助額の上限は20万円。申請は8月上旬から2020年3月末まで。問い合わせは町都市計画課(075・962・0360)。

 ●泉佐野

 泉佐野市は、道路に面したブロック塀撤去と、代替フェンスの設置に最大35万円まで補助する制度を設けた。実施期間は8月1日から来年3月末まで。大阪北部地震後に塀を撤去した人も補助を受けられる。補助対象は不特定多数の人が通る道路(私道含む)に面したブロック塀で、撤去のみの場合は最大15万円まで補助。問い合わせは市都市計画課(072・447・8124)。

 ●熊取町

 熊取町は、公道に面したブロック塀を撤去し、代わりのフェンスを設置する住民への補助制度(上限20万円)を新設。8月1日から受け付け、来年3月まで実施。対象は60センチ以上のブロック塀で、1敷地あたり1回。20万円以下なら費用の全額を補助。問い合わせは町まちづくり計画課(072・452・6401)。

 ●吹田市

 吹田市は民間のブロック塀(高さ60センチ超)撤去と、撤去に伴うフェンス設置にかかる費用の一部を補助。8月13日から受け付ける。撤去費は上限15万円、フェンス設置費は上限25万円を補助。問い合わせは市開発審査室(06・6384・1910)。(室矢英樹、永井啓吾、加戸靖史)

朝日新聞社

傷害致死で懲役10年(控訴中)、強制わいせつ罪(176条後段)・児童ポルノ製造で懲役15年(東京高裁H30.7.25)の事例

 一審判決は公開されています。

裁判年月日 平成29年12月26日 裁判所名 横浜地裁 裁判区分 判決
事件名 強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 有罪(懲役15年(求刑 懲役18年)) 文献番号 2017WLJPCA12266002
:::
裁判年月日 平成30年 2月14日 裁判所名 横浜地裁 裁判区分 判決
事件名 傷害致死被告事件
裁判結果 有罪(懲役10年(求刑 懲役13年)) 文献番号 2018WLJPCA02146006

 原判決の宣告刑を足したら25年になりますよね。
 東京高裁h30.1.30は殺人罪があるのに26年ということで、ちょっとバランス悪いですよね。分離しちゃうと量刑に支障が出てきます。
 強制わいせつ罪(176条後段)のわいせつの定義も決まってないので、争って欲しいところです。
 

裁判年月日 平成30年 1月30日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件名 保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
裁判結果 控訴棄却 文献番号 2018WLJPCA01306002
事案の概要
◇被告人が、当時生後4か月ないし5歳であったAからIまで及び13歳未満の氏名不詳の乳幼児12名に対し、一部の被害者には陰茎の包皮をむくなどの暴行を加えるなどして、いずれも性器を露出するなどの姿態をとらせた上、カメラ等で写真撮影し、当該撮影画像データを電磁的記録媒体に保存するなどしたという、強制わいせつ又は強制わいせつ致傷及び児童ポルノ製造、また、当時2歳のI及び生後8か月のHをわいせつな行為をする目的で誘拐して被告人方まで連れ込んだ上、Iに対し、わいせつな行為をしたという、わいせつ目的誘拐及び強制わいせつ、鼻口部を手で塞ぐなどして窒息死させたという、殺人、また、Hに対し、約12時間にわたってミルク等の栄養を全く与えず、その後は水分も与えず、約2時間にわたって全裸のまま放置するなどして、Hに生命に危険を及ぼすおそれのある重度の低血糖症及び脱水症、中程度の低体温症の傷害を負わせたという、保護責任者遺棄致傷事件において、原審が被告人を懲役26年に処したことから、検察官及び被告人が控訴した事案

https://www.toonippo.co.jp/articles/-/60543
神奈川県の二つの保育施設に勤務していた際、女児15人にわいせつ行為を繰り返したとして、強制わいせつと児童買春・ポルノ禁止法違反の罪に問われた元保育士の控訴審判決で、東京高裁は25日、懲役15年とした一審横浜地裁判決を支持し、被告の控訴を棄却した。
 弁護側は量刑が重すぎると主張したが、秋葉康弘裁判長は「保育士の立場を悪用し、自らの欲望を満たすため幼児を道具のように扱った」と退けた。
 判決によると、平塚市の認可外保育施設「託児所ちびっこBOY」と横浜市の保育園で、当時1〜6歳の女児15人に計50回、わいせつな行為などをした。
共同通信社

https://www.sankei.com/affairs/news/180718/afr1807180008-n1.html
今年2月の一審横浜地裁判決によると、27年12月6日未明、施設内でちゃんを暴行して頭の骨を折るなどし、搬送先の病院で同日午前10時ごろに死亡させた。
被告は勤務先の保育施設で女児15人にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつと児童買春・ポルノ禁止法違反の罪でも起訴され、昨年12月に懲役15年の判決を受けて控訴している。