児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

年令を偽った未成年者との性的行為

未成年者が成年者を自称していた場合の淫行については、
 東京都では禁止はされているが(18条の6)、過失は処罰されていない(28条に18条の6、24条の3が挙げられていない)。
 埼玉県では過失の場合も処罰されて、「過失がないとき」とは、単に青少年に年齢や生年月日を確認しただけ、又は身体の外部的発育状況等から判断しただけでは足り ず、学生証、運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の保護者 に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を講じて青少年の年齢を確認している場合をいう」と説明されている
という具合なので、行為地を示さないと検討できません。

東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二十八条 第九条第一項、第十条第一項、第十一条、第十三条第一項、第十三条の二第一項、第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
(平一六条例四三・一部改正)

https://grapecom.jp/information/news/itougohoukoku/
関係者各位、ファンの皆様へ
弊社所属タレント ○○××につきまして、以下の通りご報告いたします。
この度、××が未成年の女性と関係を持ったことが発覚いたしました。
詳細な調査の結果、××自身はその相手に年齢を偽られており、確認した身分証明書も偽造であったため未成年であることを知らずに行動していたことも判明いたしました。
年齢に関しての誤信があったものの、自身の置かれている立場に対する自覚と責任に著しく欠けておりましたことを弊社として重く受け止め、芸能活動の休止もやむを得ないものと判断するに至りました。
関係者各位、ファンの皆様には、多大なるご迷惑とご心配をお掛けすることを深くお詫び申し上げます。
××も今回の事態を重く受け止め、深く反省しております。今後は再発防止のため、××に対する指導を徹底するとともに、精神的なケアとサポートを行ってまいります。
活動再開の時期については、状況を慎重に見極めた上で判断し、改めてご報告させていただきます。

各地の青少年条例における年齢確認義務の内容 57
①両親が示した戸籍謄本も疑えとするもの~香川県・埼玉県 57
②戸籍・住民票まで調査すべきとするもの~山形・福島・愛知・愛媛 60
ア 大阪高裁s46を引用して、この程度の年齢確認義務があると説明する~山形・福島・愛知・愛媛 60
イ 大阪高裁s46には言及しないが、戸籍・住民票まで調査する義務があるという自治体~群馬・埼玉・静岡・香川・沖縄 62
ウ その他公信力のある証明書での確認を求めるもの~宮城・茨城千葉・新潟・石川・兵庫・鳥取・鹿児島 66
③必ずしも証明書までは必要なく、干支や生年月日尋ねれば足りるとするもの~北海道・・岩手・秋田・富山・岐阜・滋賀・京都・奈良・和歌山・島根・岡山・広島・愛媛・高知・福岡・宮崎 69
④通常人ならば青少年でないかと疑いを持つようなときに、相手方に年齢を問う程度のものであり、身分証明書運転免許証等による年齢調査義務まで求めたものではないとするもの~山口県 75
山口県青少年健全育成条例の解説 令和元年7月 75
⑤ 過失犯を処罰しないもの(東京都) 76
⑥ 具体的内容が不明のもの~栃木・徳島・佐賀・熊本・大分 76

自治体の解説も厳しい内容だが、挙げられている判例は、児童福祉法違反や風営法違反の使用者の注意義務のものなので、使用者による青少年条例違反の場合には類推可能だが、非使用者の一回性の淫行には適用できないだろう

埼玉県の解説r3
用語の 説明
「過失がないとき」とは、単に青少年に年齢や生年月日を確認しただけ、又は身体の外部的発育状況等から判断しただけでは足り ず、学生証、運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の保護者 に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を講じて青少年の年齢を確認している場合をいう。
関係する判例( 「過失がないとき」
○ 昭和 34 年5月 11 日最高栽判決(児童福祉法違反)
児童又はその両親が児童本人の氏名を偽り、他人の戸籍抄本をあたかも本人のごとく装って提出した場合、他人の戸籍抄本をあたかも児童本人のものであるかの使用することも職業の特殊性から当然あり得ることが容易に想像できるから、一方的な陳述だけで たやすく軽信することなく、他の信頼すべき客観的資料に基づいて調査をなすべきである。この調査を怠っている場合、児童福祉法第 60 条第3項但し書きにいう年齢を知らないことにつき過失がない場合に該
当しない。
○昭和 38 年4月 13 日東京家裁判決(風適法違反)
風俗営業者は、 全て の場合に戸籍謄本等を提出させたり、戸籍の照会をなすべき義務まで負うものではないが、応募者全員に対し住民票その他氏名、年齢等を通常明らかにし得る資料の提出を求めるか、 全て の場合に、単にその氏名、年齢等を述べさせ若しくは記載させ、又はその容姿を 観察するだけでなく、進んでその出生地、いわゆる「えと」年、その他、親兄弟や学校関係等について適宜の質問を発して事実の有無を確かめるとかの方法を講ずべきであり、すくなくとも本人の言うところ等に多少でも疑問があれば、右のような方法の外、進んで戸籍の照会を行う等客観的に通常可能な方法をとって事実を確かめ、その年齢を確認すべき法的な注意義務を有するものと解する。
・・・
香川県の解説
2) 「過失がないとき」とは、社会通念上、通常可能な年齢確認が適切に行われているか否かで判断され、例えば、相手方となる青少年に年齢や生年月日、干支等を聞いたり、身分証明書の提出を求める等客観的に妥当な確認措置がとられたにもかかわらず、その青少年が年齢を偽ったり、虚偽の証明書を提出する等行為者に過失がないと認められる場合をいう。
【参考判例】(昭和34年5月11日最高裁判決、要旨)
児童を接客婦として雇い入れる雇主は、児童、両親がその実家で差し出した他人の戸籍抄本が児童本人のものか否かを確かめるべきであり、そのために、単に児童、両親の一方的陳述だけで軽信することなく、他の客観的資料に基づいて調査をなすべきである。