児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

迷惑防止条例違反の罪の構成要件該当性を判断するに当たっては,もっぱら行為自体やそれを取り巻く客観的,外形的事情によって判断すべきであり,行為者の目的や性的意図の有無等を加味して評価するべきではないとされた事例(大阪高裁R01.8.8)

 
 性的意図不要説。

判決速報
○参考事項
1 本件の主要な問題点は,本条例6条1項1号の解釈,及び被告人の本件行為が本条例同号違反行為に該当するか否かである。検察官は,控訴審において,本条例が主として社会的法益を保護法益とすることに鑑みれば,その言動等を客観的に観察して判断して,条例該当性を決すべきであるから,原判決が,本条例6条1項1号規定の行為につき,行為者の性的意図を必要とし,かつ,行為に性的意味が必要であると解釈したのは誤りである旨主張し,加えて,仮にこのような原審裁判所の立場に立ったとしても,本件は,被告人が性的意図をもって行為に及んだことは明らかな事案であり,そうであるのに原判決はその点の事実誤認をしている旨主張した。
これに対し,控訴審判決は, 本条例6条1項1号の主たる保護法益は,府民及び滞在者の生活の平穏と解され, この趣旨に照らすと,その違反行為に該当するか否かは, もっぱら行為自体やそれを取り巻く客観的,外形的な事情によって判断すべきであるとした。このような本条例の構成要件該当性の判断方法は,上記のとおり, そもそも検察官自身の主張に沿うもので,その判断方法が不当とはいえない。
そして,控訴審判決は, このような判断方法を前提とすると,本件行為が,客観的,外形的に見て,社会通念に照らし,人を著しく差恥させたり, 不安を覚えさせたりする行為とまではいえないと判示して,結論として,検察官の控訴を棄却したものである。
なお,Aの供述によれば,被告人は,本件以前から,繰り返しAに対して,鼻同士をくっつけたり,身体を持ち上げたり,着衣の中に手を差し入れるなどの身体的接触を行っていたとの事実が認められたが, 控訴審裁判所は,原審裁判所同様,本件以前から性的意図に基づきAに対して繰り返し身体的接触を行っていたとの内容の被告人の供述調書を全て却下した。
近時,強制わいせつ罪の成立要件の解釈に関して,最高裁の判決があり(最高裁平成29年11月29日大法廷判決) , 「刑法176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして,行為者の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが,故意以外の行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではない。」と判示しているところ,本条例6条1項1号については,強制わいせつ罪と同様に個人の性的自由を保護するという役割をも担っているため, 同条項における違反行為該当性の判断方法について,強制わいせつ罪の成立に関する判断方法と同様に解すべきか否かも注目すべき点であった。
本件類似の事案として,被告人が,飲食店内において,性同一性障害である被害者に対し,左胸部を着衣の上から右手でつかんだことが,兵庫県迷惑防止条例にある「公共の場所において,人に対して,不安を覚えさせるような卑わいな言動をしたとの事実に該当するか否かが争われた事案があり, 同事案について,大阪高等裁判所平成30年1月31日判決は,条例違反行為該当性の判断方法について, 「卑わいな」ものといえるか否かは,行為者の主観的意図によらず,その言動を客観的に見て決すべきであり,被告人に性的な意図がなく,胸部が膨らんでいることを確認するつもりであったとしても,そのことから直ちに「卑わいな言動」に当たらないとはいえないとした上, 戸籍上は男性であっても,胸も膨らみ,一見して女性にみえる姿をしていたAの胸部をつかむことは,社会通念上,「卑わいな言動」に当たると判示して,被告人を有罪とした。
本判決は,条例違反行為に該当するか否か判断する方法として, この大阪高等裁判所判決と同様の考え方に基づく判断方法を採ったといえるが,結論が有罪と無罪に分かれたのは,公訴事実となった行為自体を外形的,客観的に見た場合の意味合い, すなわち,事案の違いが主たる原因と思われる。
○参照条文
大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例17条2項, 1項2号,~ 6条1項1号