男児への手淫は、みだらな行為かわいせつ行為か?(長崎地裁R05.1.17)
長崎県の解説では「性交に類する行為とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる手淫、口淫(尺八)、肛淫、触淫(素股)等である。」となっているので、 「異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる手淫」はみだらな行為になって、そういう状況でない手淫は、わいせつ行為ですよね。長崎地裁R05.1.17の罪となるべき事実では「異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる」の記載がないから、わいせつ行為ですね。
長崎県少年保護育成条例の解説h31
(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第16条
1何人も、少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2何人も、少年に前項の行為を教え、又は見せてはならない。
[要旨]
本条は、心身ともに未成熟な少年の健全な育成を図るため、少年に対するみだらな性行為、わいせつな行為等を禁止し、刑法その他関係法令では規制することができない反社会的な性行為等から少年を保護しようとする規定である。
[解説]
1 「みだらな性行為」とは、広く少年に対する性行為一般をいうものと解すべきものではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為(最高裁判決昭和60年10月23日)をいう。
なお、性交に類する行為とは、実質的にみて、性交と同視し得る態様における性的な行為をいい、例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における性交を模して行われる手淫、口淫(尺八)、肛淫、触淫(素股)等である。
2 「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。(東京高裁判決昭和39年4月22日)
具体的には、「陰部に対する弄び、押し当て」、「乳房に対する弄び」、「接吻」、「裸にしての写真撮影」などがあげられるが、「みだらな性行為」と同様に、当該行為が少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うものであること、又は、少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなものであることを要する。(大阪高裁判決平成23年6月28日参照)
3第1項の「してはならない」とは、少年を相手方とするみだらな性行為、わいせつな行為を禁止しているので、相手方となった少年の承諾の有無を問わない。また、少年から勧誘された場合も同じである。
d1-law
28310881
長崎地方裁判所
令和05年01月17日
上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、長崎県少年保護育成条例違反被告事件について、当裁判所は、検察官田﨑博文並びに弁護人佐藤敬弘(主任)及び同山下俊夫各出席の上審理し、次のとおり判決する。理由
(罪となるべき事実)
令和4年9月22日付け、同年10月11日付け、同月21日付け及び同年11月2日付け各起訴状記載の公訴事実と同一であるから、これらを引用する。
(証拠の標目)
(量刑の理由)
刑事部
(裁判官 芹澤俊明)
起訴状
令和4年11月2日
長崎地方裁判所 殿
長崎地方検察庁
検察官事務取扱副検事 田﨑博文
下記被告事件につき公訴を提起する。
記
公訴事実
被告人は、●●●が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 令和4年6月20日午後6時17分頃、長崎県内の同児童方において、同児童(当時13歳)にその陰茎を露出させる姿態をとらせ、これを同児童が使用する動画撮影機能付き携帯電話機で撮影させた上、その動画データ1点を同携帯電話機からアプリケーションソフト「G」のメッセージ機能を使用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、長崎県内又はその周辺において、同動画データ1点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録して保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し
第2 同年8月5日午前11時35分頃から同日午前11時45分頃までの間、●●●に駐車中の普通乗用自動車内において、専ら自己の性的欲望を満足させる目的で、前記●●●(当時13歳)に対し、その陰茎を手淫し、もって少年に対し、みだらな性行為をし
たものである。
罪名及び罰条
第1 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
同法第7条第4項、第2条第3項第3号
第2 長崎県少年保護育成条例違反
同条例第22条第1項第1号、第16条第1項