児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

整体師よる強制わいせつ・準強制わいせつにつき、「正当な施術」の判断方法(大阪高裁R03.2.10 大阪高裁判決速報令和3年10号)

整体師よる強制わいせつ・準強制わいせつにつき、「正当な施術」の判断方法(大阪高裁R03.2.10 大阪高裁判決速報令和3年10号)
 検察庁のコメントです。

参考事項
1判断構造
本件各事件では,各被害者が,被告人の正当な施術をわいせつ行為と誤認したかが争点の一つとされている。
裁判所は,整体師が顧客に対しわいせつ行為と誤解されるおそれのある性的部位(乳房,陰部等)に近い部位に施術する場合の正当な施術の前提として
① 整体師と顧客の関係性:整体師は,顧客に対し,当該施術内容について説明し,その上で顧客が施術を受けることに同意するか否か確認すべきであること
② 施術に至る経緯 整体師が顧客に施術への同意を求め,顧客が明示の同意をしたことを確認した上で,施術を行うべきことを示した上,本件では,(被告人の供述を前提としても)いずれも否定されることから,被告人の施術の正当性を否定し,被害者の供述の信用性を認めている。
整体師の「正当な施術」方法については,整体師ないしマヅサージ師が公的な資格ではなく,公認された団体が適正な施術方法を公開、しているわけではないため,個々の整体師が独自の主張をすることが可能ではあり,本件被告人も独自の主張を展開している。しかし,本件で裁判所が示したような,常識的な施術の在り方に反する施術が一般的に正当な施術と認められることはないと思われ、こような判断手法により被告人の弁解を適切に排斥することが可能である。
2 被害者証言の信用性に関する判断手法整体師がその地位を利用する犯行は少なくないが,施術の一環であるとごまかせるような態様の強制わいせつ事案が多く,性器損傷等の医学的証拠も残らず,防犯カメラ画像等も存在しないため,被害者の供述(直接証拠)以外に証拠がないことがほとんどであり,その信用性が重要となる。

本件では,各被害者の供述の信用性判断に当たり
① 被害に関する供述内容自体の具体性,詳細さ,自然性
② 正当な施術をわいせつ行為と誤解している可能性がないこと
③ 被害申告経緯の自然性
④ 虚偽供述動機がないこと(被告人は,施術の技量は優れていたようであり,各被害者とも被告人の施術の効果を認めており;何らトラブルはなかった)
⑤ 被告人を殊更悪く言わないこと(被害者Bについては,自己に不利に解されるような点も正直に供述していること)
などの基本的な事項を丁寧に認定している。