児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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児童ポルノ・児童買春等22件でも執行猶予(広島地裁r030305)

 医師だからでしょうね。一般人だとどうなるか。

「第2 Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年1月26日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に、(住所略)被告人方(以下「被告人方」という。)において、みだらに同児童(当時12歳)と性交し、もって青少年に対し、淫行をし、」の「児童」は「青少年」じゃないとおかしいよね。

 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、広島県青少年健全育成条例違反被告事件について、当裁判所は、検察官多田浩輔並びに弁護人髙橋浩嗣(主任)及び同胡木健志各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。

理由
(各被害児童の氏名及び判決中の呼称は、別紙「氏名呼称一覧表」のとおりである。)
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 (令和2年6月26日付け起訴・同年(わ)第258号の公訴事実)
  令和2年3月1日午後5時41分頃から同日午後6時33分頃までの間に、広島県(以下略)L立体駐車場に駐車中の自動車内において、Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、同児童(当時17歳)に対し、現金2万円を対償として供与し、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第2 (令和2年7月10日付け起訴・同年(わ)第278号の公訴事実第1)
  Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年1月26日午後1時頃から同日午後3時30分頃までの間に、(住所略)被告人方(以下「被告人方」という。)において、みだらに同児童(当時12歳)と性交し、もって青少年に対し、淫行をし、
第3 (令和2年7月10日付け起訴・同年(わ)第278号の公訴事実第2)
  Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第2の犯行に際して、同児童(当時12歳)に被告人を相手として性交する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを、令和2年1月26日頃、被告人方において、ノートパソコン内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第4 (令和2年7月10日付け起訴・同年(わ)第278号の公訴事実第3)
  Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年1月26日午後2時12分頃、被告人方において、同児童(当時12歳)に対し、その乳房を露出させる姿態をとらせ、これを動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第5 (令和2年7月22日付け起訴・同年(わ)第296号の公訴事実第1)
  Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月28日午前10時27分頃から同日午後2時9分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時14歳)に対し、現金2万円を対償として供与し、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第6 (令和2年7月22日付け起訴・同年(わ)第296号の公訴事実第2)
  Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5の日時場所において、同児童(当時14歳)に被告人を相手として性交する姿態をとらせ、これを被告人が使用するiPadで撮影し、その動画データを、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第7 (令和2年8月7日付け起訴・同年(わ)第323号の公訴事実第1)
  Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年8月12日午前11時頃から同日午前11時59分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時15歳)に対し、現金4万1000円を対償として供与し、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第8 (令和2年8月7日付け起訴・同年(わ)第323号の公訴事実第2)
  Dが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第7の犯行に際して、同児童(当時15歳)に被告人の陰茎を口淫させる姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集し、編集後の動画データを、令和元年8月12日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第9 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第1の1)
  Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年5月4日午後2時14分頃から同日午後3時3分頃までの間に、広島県(以下略)ホテルM(省略)号室において、同児童(当時17歳)に対し、現金2万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第10 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第1の2)
  Eが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第9の日時場所において、同児童(当時17歳)に、被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出させる姿態をとらせ、これを被告人が使用する携帯電話機で撮影し、その動画データを同携帯電話機内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第11 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第2の1)
  Fが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年6月4日午後7時30分頃から同日午後8時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時17歳)に対し、現金3万3000円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第12 (令和2年9月30日付け起訴・同年(わ)第407号の公訴事実第2の2)
  Fが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第11の犯行に際して、同児童(当時17歳)に被告人を相手として性交する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和2年6月4日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第13 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第1の1)
  Gが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年9月7日午後0時頃から同日午後3時頃までの間に、被告人方において、同児童(当時14歳)に対し、現金3万円を対償として供与する約束をして、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第14 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第1の2)
  Gが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第13の犯行に際して、同児童(当時14歳)に被告人の陰茎を口淫する姿態及び乳房等を露出する姿態等をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和元年9月7日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第15 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第2の1)
  Hが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月5日午前10時30分頃から同日午後0時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時17歳)に対し、現金2万円を対償として供与し、同児童の陰部に自己の陰茎を押し当てるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし、
第16 (令和2年11月6日付け起訴・同年(わ)第467号の公訴事実第2の2)
  Hが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第15の犯行に際して、同児童(当時17歳)にその陰部に被告人の陰茎を押し当てる姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和2年3月5日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第17 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第1の1)
  Iが18歳に満たない児童であることを知りながら、平成30年10月28日午後9時50分頃から同日午後11時頃までの間に、被告人方において、同児童(当時16歳)に対し、現金3万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第18 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第1の2)
  Iが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第17の犯行に際して、同児童(当時16歳)に被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、平成30年10月28日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第19 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第2の1)
  Jが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年11月6日午後6時5分頃から同日午後9時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時16歳)に対し、現金2万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第20 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第2の2)
  Jが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第19の犯行に際して、同児童(当時16歳)に被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和元年11月6日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、
第21 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第3の1)
  Kが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年2月9日午後3時頃から同日午後5時30分頃までの間に、被告人方において、同児童(当時16歳)に対し、現金2万円を対償として供与する約束をして、同児童と性交し、もって児童買春をし、
第22 (令和2年11月19日付け起訴・同年(わ)第493号の公訴事実第3の2)
  Kが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第21の犯行に際して、同児童(当時16歳)に被告人を相手として性交する姿態及び乳房等を露出する姿態をとらせ、これをiPadで撮影した動画データを編集した動画データを、令和2年2月9日頃、被告人方において、同iPad内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)(括弧内の番号は、証拠等関係カード記載の請求証拠の番号を示す。)

(法令の適用)
 罰条
  判示第1、第5、第7、第9、第11、第13、第15、第17、第19及び第21の各所為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)4条、2条2項1号
  判示第2の所為 広島県青少年健全育成条例48条1項2号、39条1項
  判示第3、第6、第8及び第12の各所為 児童ポルノ法7条4項、2項、2条3項1号
  判示第4の所為 児童ポルノ法7条4項、2項、2条3項3号
  判示第10、第14、第16、第18、第20及び第22の各所為 児童ポルノ法7条4項、2項、2条3項1号、3号
 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
 刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 本件は、児童買春10件、児童ポルノ製造11件、条例違反1件からなる事案である。
 被告人は、約2年間にわたって、当時12歳から17歳までの児童11名を相手として児童買春等を行うとともに、その際の様子を撮影して児童ポルノを製造したものである。各犯行の内容自体が被害児童の健全な成長に害悪を与えるおそれのあるものであることはいうまでもない。被告人にこの種事犯の常習性があることは明らかであるし、被害児童らの思慮の浅さを顧みずに自己の性欲を満たそうとしたもので、被害児童らの人格を尊重しない態度は顕著である。児童買春の内容、件数、製造された児童ポルノの内容、量を踏まえると、本件は、同種事案の中でも最も悪質な部類に属するものといえる。上記の本件の犯情によれば、被告人の刑事責任は重い。
 他方で、被告人が各犯行を全て認めて反省の言葉を述べていること、保釈中に専門の医療機関で再犯防止プログラムを受け、今後もこれを受け続ける旨を述べて更生の意欲を示していること、被害児童8名に被害弁償を行い、贖罪寄付もしていること、被告人と同門の医師及び被告人の姉が証人として出廷して被告人の監督等を約束していること、医師である被告人は病院の内視鏡外科の主任部長として勤務していたが、本件が報道され、上記病院を懲戒解雇されるなどの社会的制裁を受けていること、被告人にはこれまでに前科前歴がないことなどの被告人のために酌むことのできる事情も認められる。
 そこで、以上の事情を考慮して、被告人の刑事責任の重さに応じて主文の刑を量定するとともに、今回は、その刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。
 よって、主文のとおり判決する。
(求刑・懲役3年)
刑事第1部
 (裁判官 松本英男)