教育職員免許法の欠格事由
10年というのは、刑法34条の2の刑の消滅によるものです。消滅した前科というのは、役場に前科照会しても出てこないので調べるのも難しいでしょう。
罰金の執行終了から5年経過して、「前科なし」として採用されている公務員もいるようです。
教育職員免許法5条1項4号・5号の「3年」を延長することは可能だったと思いますが、前科による資格制限とのバランスで、変えないようです。
採用の時に、昔の官報公告をチェックするということでしょうが、漏れてしまうこともあるでしょう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201225/k10012783711000.html
一方、懲戒免職になっても処分から3年が経過すれば再び教員免許を取得できる仕組みを見直す法改正については「殺人罪などの重罪を犯し、懲役刑に処せられた場合でも、刑の執行後10年で刑が消滅する。わいせつ行為で処分された教員だけ二度と免許を取れなくさせることは、現行の法律では難しい」と述べ、見送る考えを示しました。
教育職員免許法
(授与)
第五条
1普通免許状は、別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める単位を修得した者又はその免許状を授与するため行う教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、授与しない。
三 禁錮以上の刑に処せられた者
四 第十条第一項第二号又は第三号に該当することにより免許状がその効力を失い、当該失効の日から三年を経過しない者
五 第十一条第一項から第三項までの規定により免許状取上げの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
刑法
第三四条の二(刑の消滅)
1 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
条解刑法第4版
1 ) 本条の趣旨
本条はいわゆる前科抹消の規定であり,刑に処せられた者につき,一定期間の善行の保持を条件として前科のない者と同様の待遇を受けることとしているものである。前科に伴う法律上の効果としては,刑法上の効果と他の法令上のいわゆる資格制限等の効果がある。
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(イ) 他の法令上の効果
刑法以外の法令においては,前科を資格制限事由としているものが多くみられる。裁判官(裁46(1)) ,検察官(検察20(1)) ,弁護士(弁7(1)),保護司(保護司4(2)),学校の校長及び教員(学校教育9(2)) ,教育委員会の委員(地方教育行政の組織及び運営に関する法律4③(2))等については, 禁銅以上の刑の言渡しの効力が失われるまでの間,欠格事由となり, 医師(医師4(3)),歯科医師(歯科医師4(3)) ,薬剤師(薬剤師5(3)) ,保健師,助産師,看護師,准看護師(保健師助産師看護師9(1))等については, 罰金以上の刑の言渡しの効力が失われるまでの間裁量的に欠格事由となるとされている。また,宅地建物取引業者(宅地建物取引業5①(3)),建設業者(建設業8(7)) ,公認会計士(公認会計士4(3)) , 司法害士(司法書士5(1)),行政書士(行政書士2の2(4))等については,禁鋼以上の刑の執行を終わり,又は執行を受けることがなくなってから一定期間欠格事由に該当するとされている。このほか, 一定の罪によって刑に処せられた者について,一定期間欠格事由としたり資格や権利を剥奪するもの(公職選挙法252条による選挙権及び被選挙権の停止等)がある。~~
7) 刑の消滅の効果
刑の消滅の効果は,刑の言渡し又は刑の免除の言渡しが法律的になかったと同一の状態になることである。このことは,刑の執行猶予期間の満了の場合(27)及び大赦(恩赦3(1)),特赦(同5)が行われた場合と同じであるが, これらが執行猶予の欠格事由や累犯の成否等(本条注1㈲参照)に影響し得るのに対し,本条の消滅期間は執行猶予までの期間や累犯適用の期間等よりも長いので,影響は及ばず,実質的な効果を有するのは資格制限(本条注1 (イ))の回復の場面である(なお, 少年については少年法60条がある)。
本条による刑の消滅は, 有罪言渡し後の善行の保持を基礎としてその効力を消滅させるものであるから, その効果が遡ることはなく,将来に向かって刑の言渡しを受けなかった者と同一に取り扱われることになる効力を持つだけであると解される(恩赦11参照)。
したがって,刑の言渡しによって資格を剥奪され, 失職した者が本条の刑の消滅によって当然に復職するわけではない。
また,刑の言渡し等の効力が消滅しても,過去に犯罪により処罰されたという事実そのものが消滅することはなく, 一事不再理の効力や45条の併合罪処理§34の2注7) における確定判決の効果も左右されない(大赦につき仙台高判昭28・3・31高集6-3-307)c
なお,判例は, 本条により失効した刑の言渡しを量刑判断の資料とすることができ
るとしている(最判昭29・3・11集83270)。