児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

13歳未満に陰部等を露出した 姿態をとらせてこれを撮影させるという強制わいせつ罪に当たる行為は~~、 両行為は通常伴う関係にあり、自然的観察の下で社会的見解上1個のものであ ると評価することができるから、両罪を観念的競合とした原判決に誤りがある とはいえない(札幌高裁r05.1.19)

被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,
被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合に
おいては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為に一部重なる点があ
るものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないこと,両行為の性質等を
考慮すると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるとして,併
合罪の関係にある(東京高裁h28.2.19)けれど、13歳未満に陰部等を露出した
姿態をとらせてこれを撮影させるという強制わいせつ罪に当たる行為は~~、
両行為は通常伴う関係にあり、自然的観察の下で社会的見解上1個のものであ
ると評価することができるから、両罪を観念的競合とした原判決に誤りがある
とはいえない(札幌高裁r05.1.19)

 なお、わいせつ性に関する「独自の見解」は、いずれも検察官の論稿や別件
の検察官の主張です。

札幌高裁令和5年1月19日 
判    決
 上記の者に対する強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制
及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、令和4年9
月14日札幌地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てが
あったので、当裁判所は、検察官白坂裕之出席の上、審理し、次のとおり判決
する。
主    文
 本件控訴を棄却する。
理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人奥村徹作成の控訴趣意書並びに令和5年1月6日
付け及び同月13日付け各控訴趣意補充書に、これに対する答弁は、検察官白
坂裕之作成の答弁書に、それぞれ記載のとおりである。論旨は、不告不理、理
由不備、訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り及び量刑不当の主張である。


第1 不告不理の論旨について
 1 本件は、被告人が、被害者(当時13歳未満、以下「A」という。)が1
3歳未満であることを知りながら、4回にわたり、Aに対し、スマートフォン
のアプリケーションソフトを使用して、陰部等を露出した姿態をとって撮影
し、被告人のスマートフォンに送信するよう要求し、Aに陰部等を露出した姿
態をとらせ、これらをスマートフォンで撮影させた上、その動画データ4点
を、被告人のスマートフォンに送信させて、サーバコンピュータ内に記録・保
存させた、という事案である。
 2 所論は、原判示の罪となるべき事実のうち、Aに撮影させた動画データ
4点を被告人のスマートフォンに送信させ、サーバコンピュータ内に記録・保
存させたという部分は、強制わいせつ罪としては起訴されていないのに、原判
決は、当該部分を含めて強制わいせつ罪と認定しているから、審判の請求を受
けない事件について判決をしたものであり、不告不理の違法がある旨主張す
る。
 3 確かに、原判示の罪となるべき事実のみを読めば、所論指摘の部分も強
制わいせつ罪を構成する事実として認定したものと解釈することも可能とは思
われる。しかし、原判決の法令の適用についての補足説明の項も併せて読め
ば、罪となるべき事実の記載は、併合罪関係にある別個の訴因として起訴され
た強制わいせつの事実と児童ポルノ製造の事実を、両罪が観念的競合の関係に
あるものと解して、一体的に記載したものと認められ、原判決は、所論指摘の
部分について強制わいせつ罪を構成する事実として認定したものではないと認
められるから、原判決に不告不理の違法がないことは明らかである。所論は採
用できず、論旨は理由がない。


第4 法令適用の誤りの論旨について
 1 所論は、①被告人が遠隔地にいるAに裸体を撮影させた行為は、性的侵
襲が弱く、それだけでは被告人は全く性的興奮を得られないから、性的意味合
いは皆無か、極めて薄く、わいせつな行為に該当しない、あるいは、強制わい
せつ未遂罪が成立するにとどまる、②原判決は、罪数処理の記載で、被告人
が、Aに撮影させた動画データを被告人に送信させて、保存・記録させ、被告
人がその動画を見たことまでわいせつ行為と評価しているが、これらはわいせ
つ行為にならないし、Aに撮影させた行為までであればわいせつ行為となり得
るとしても、Aに動画データを送信記録させる行為に及ぶと、Aに撮影させた点
を含めて行為全体がわいせつ行為とは評価できなくなる、③接触を伴う強制わ
いせつ罪においては、犯人が被害者の面前にいることが前提とされているか
ら、非接触の強制わいせつ罪においても、犯人が規範的にみて被害者の目の前
にいるといえなければ、わいせつな行為に当たらないと解されるところ、本件
では、要求行為に遅れて撮影行為がされており、規範的にみて被告人がAの目
の前にいるとはいえず、わいせつな行為に当たらない、④本件は、Aを利用し
た間接正犯になっていなければ、強制わいせつ罪の正犯とはなり得ないとこ
ろ、Aは道具化しておらず、間接正犯になっていないから、強制わいせつ罪は
成立せず、せいぜい準強制わいせつ罪が成立するにとどまる、⑤原判決は本件
の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合としているが、両罪は包括
一罪である、などと指摘して、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな
法令適用の誤りがある旨主張する。
 2 しかし、以下のとおり、所論は全て採用することができない。
 ①については、被告人は、Aに要求して、陰部等を露出した姿態をとらせ、
これらをスマートフォンで撮影させているところ、その行為は、Aを性的意味
合いの強い陰部等を露出した裸体にさせ、Aの身体を性的な対象として利用で
きる状態に置いた上、これを撮影させて記録化することで、その内容を被告人
や第三者が知り得る状態に置くものであって、被告人がAに対して撮影した動
画データを被告人に送信することも要求して撮影させており、その撮影させる
行為自体にAがこの要求に従って動画データを送信して被告人がこれを閲覧す
ることになる具体的な危険性が認められることも踏まえると、その性的侵害性
は大きく、また、本件が、当時○○歳の男性である被告人が、SNSを通じて知
り合いアプリケーションソフトを利用してやり取りをしていたという関係にす
ぎない当時13歳未満の女児であるAに対し、Aの陰部等を見たいなどというメッ
セージや男性が自慰行為をしている動画データを送信するなどする中でなされ
たものであることも踏まえると、その性的意味合いは強いというべきであるか
ら、その行為が「わいせつな行為」に当たり、強制わいせつ既遂罪が成立する
と判断した原判決に誤りはない。
 ②については、前記のとおり、原判決が、被告人がAに撮影させた動画デー
タ4点を被告人のスマートフォンに送信させてサーバコンピュータ内に記録・
保存させた行為を、強制わいせつ罪を構成する事実として認定したとは認めら
れず、Aに動画データを送信・記録させる行為に及ぶと、Aに撮影させた点を含
めて行為全体がわいせつ行為とは評価できなくなるなどというのは、所論独自
の見解であって、採用の限りではない(なお、所論指摘の裁判例は、そのよう
な趣旨を判示したものとは解されない。)。
 ③については、接触を伴わない強制わいせつ罪の成否を、接触を伴う強制わ
いせつ罪の成否と同様に考える必然性はないし、犯人が規範的にみて被害者の
面前にいるとはいえない状況であっても、本件のように、被害者に要求して、
その身体を性的な対象として利用できる状態に置き、それを記録化して被告人
や第三者が知り得る状態に置くことで、接触を伴う強制わいせつ罪と同程度の
性的侵害をもたらし得ることは明らかであるから、所論は採用できない。
 ④については、刑法176条後段の強制わいせつ罪は、被害者の承諾がある
場合も含め、13歳未満の男女にわいせつな行為をすることで成立するとこ
ろ、本件において被告人が当時13歳未満のAに対して行った行為がわいせつな
行為に当たることは前記のとおりであり、それ以外の要件として被害者の道具
性が要求されるとする所論は、独自の見解であって採用できない。
 ⑤については、本件において、Aに陰部等を露出した姿態をとらせてこれを
撮影させるという強制わいせつ罪に当たる行為は、Aに陰部等を露出した姿態
をとらせてこれを撮影させた上、その動画データを被告人のスマートフォン
送信させて、サーバコンピュータ内に記録・保存させるという児童ポルノ製造
罪に当たる行為に包摂されていること、被告人は当初から撮影後に動画データ
を送信することも要求しており、撮影から送信、保存・記録までがほぼ同時刻
に行われていること、一般に本件のような態様のわいせつ行為は、撮影された
画像の内容を行為者等が知り得る状態に置くことを意図して行われるものと考
えられることも踏まえると、両行為は通常伴う関係にあり、自然的観察の下で
社会的見解上1個のものであると評価することができるから、両罪を観念的競
合とした原判決に誤りがあるとはいえない(なお、所論指摘の裁判例は、いず
れも本件とは事案を異にするものである。)。
第6 結論
 よって、刑事訴訟法396条、181条1項ただし書、刑法21条により、
主文のとおり判決する。
  令和5年1月19日
 札幌高等裁判所刑事部
   裁判長裁判官 成川洋司
      裁判官 並河浩二
      裁判官 牛島武人

 被害者をして撮影・送信させる行為はわいせつ行為にはならない。強要罪
製造罪とは併合罪というのが、従前の高裁判例でした

判例番号】L07120170
      強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護
等に関する法律違反被告事件
【事件番号】東京高等裁判所判決/平成27年(う)第1766号
【判決日付】平成28年2月19日

【出  典】判例タイムズ1432号134頁

 1 本件は,被告人が,被害者が18歳に満たない児童であることを知りな
がら,同女に対し,要求に応じなければその名誉等にいかなる危害を加えるか
もしれない旨脅迫して,乳房,性器等を撮影してその画像データをインターネ
ットアプリケーションを使用して送信するよう要求し,畏怖した被害者にその
撮影,画像データの送信をさせ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録
し,もって被害者に義務のないことを行わせるとともに,児童ポルノを製造し
た,という事案である。事実についての争いはなく,原審においては,情状に
ついての主張のみがされていたようである。
 原判決は,争いのない公訴事実をそのまま認定し,被害者に義務のないこと
を行わせた強要罪児童ポルノを製造した平成26年法律第79号による改正
前(本件は,改正法施行前の事案であった。)の児童買春,児童ポルノに係る
行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の罪(以下「3項製造
罪」という。)の成立を認めた。そして,これらの罪数関係について,観念的
競合の関係にあるとの法令の適用に係る判断を示した上で,被告人に懲役2年
・3年間執行猶予の判決を言い渡した。
 これに対して控訴が申し立てられたところ,本判決は,弁護人の多岐にわた
る控訴趣意についてはいずれについても理由がないとしたが,職権で,原判決
の罪数に関する上記判断について,誤りがあると指摘したものである。
 2 この判断に係る部分を具体的に説明すると,原判決は,本件における強
要罪と3項製造罪の関係について,実行行為の重なり合いの程度,両行為が通
常伴う関係にあるか,社会的事実としての一体性・同質性があるか,といった
観点から詳細な検討を加え,刑法54条1項前段の観念的競合に当たるものと
判断していたものである。
 これに対し,本判決は,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を
撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信
・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項
製造罪に触れる行為に一部重なる点があるものの,両行為が通常伴う関係にあ
るとはいえないこと,両行為の性質等を考慮すると,両行為は社会的見解上別
個のものと評価すべきであるとして,併合罪の関係にあるとの判断を示した。
 なお,本判決は,このように法令適用の誤りを指摘したものの,この誤りが
判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえないとして,控訴は棄却し
た。
 3 本件は,強要罪と3項製造罪の罪数関係について,観念的競合の関係に
あるか否かで,第一審と控訴審の判断が分かれたものであるが,この判断はそ
れほど容易なものではない。
 刑法54条1項前段にいう「1個の行為」の意義については,「法的評価を
はなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的
見解上1個のものとの評価をうける場合をいう」とされるが
最大判昭49.5.29刑集28巻4号114頁,判タ309号234
頁),この判断基準自体に抽象的な面があるため,なお具体的な罪数判断の場
面において,事案ごとに上記基準にいう「1個の行為」性が肯定
できるか否かを判断するほかないのである。
 この点,各種性犯罪と児童ポルノを製造する罪との関係については,3項製
造罪の場合も含め,併合罪とする高裁判例が多数を占めていたところ(三浦透
最高裁判所判例解説刑事篇平成21年度〔法曹会〕477
頁以下参照),最高裁は,被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影する
ことをもって児童ポルノを製造した場合において,児童福祉法34条1項6号
に触れる児童に淫行をさせる行為と3項製造罪に触れる行為
とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえない
ことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社
会的見解上別個のものといえるとして,両罪が観念的競合の
関係にはなく,併合罪の関係にあるとの判断を示した(最一小決平21.1
0.21刑集63巻8号1070頁,判タ1326号134頁)。
 児童ポルノを製造する罪は,上記最高裁決定の事案である児童福祉法34条
1項6号に触れる児童に淫行をさせる罪のほか,強姦罪,強制わいせつ罪,青
少年保護育成条例にいう淫行をさせる罪などとともに犯され
ることも多いが,上述したとおり,「1個の行為」性が肯定できるか否かは事
案ごとの判断となるため,上記最高裁決定後,こうした罪と児童ポルノを製造
する罪との罪数について,いかなる判断がされるかについて
は,事例の集積が待たれるところである。
 本判決は,強要罪と3項製造罪の関係についても,上記最高裁決定と同様の
罪数判断をした高裁レベルの判決として一事例を加えるもので,参照価値があ
るものと思われる。
 なお,本判決のほか,強要罪と3項製造罪の関係について,本判決同様,併
合罪の関係にあるとの判断をした高裁判決として,広島高裁岡山支部平成22
年12月15日判決(高等裁判所刑事裁判速報集平成22年
度182頁)がある。

判例番号】L07120170

      強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護
等に関する法律違反被告事件

【事件番号】東京高等裁判所判決/平成27年(う)第1766号
【判決日付】平成28年2月19日
【判示事項】強要罪と平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童
ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の児童ポル
ノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
【参照条文】刑法45前段
      刑法54-1前段
      刑法223-1
      児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関
する法律(平26法79号改正前)7-3
【掲載誌】 判例タイムズ1432号134頁
      LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 本件控訴を棄却する。

       理   由

 弁護人奥村徹の控訴趣意は,訴訟手続の法令違反,法令適用の誤りおよび量
刑不当の主張であり,検察官の答弁は,控訴趣意にはいずれも理由がない,と
いうものである。
 1 法令適用の誤りおよび訴訟手続の法令違反の主張について
 論旨は,要するに,原判決が強要罪に該当するとして認定した事実は,それ
だけでも強制わいせつ罪を構成するから,強要罪が成立することはないにもか
かわらず,これを強要罪であるとして刑法223条を適
用して有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の
誤りがあり,また,原判決が平成26年法律第79号による改正前の児童買
春,児童ポルノに係る行為等の処罰および児童の保護等に
関する法律7条3項の罪(以下「3項製造罪」という。)に該当するとして認
定した事実も,実質的には強制わいせつ罪に当たり,以上の実質的に強制わい
せつ罪に該当する各事実について,告訴がないまま起訴
することは,親告罪の趣旨を潜脱し,違法であるから,公訴棄却とすべきであ
るのに,実体判断を行った原審には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟
手続の法令違反がある,というものであると解される。
 (1) 強要罪が成立しないとの主張について
 記録によれば,原判決は,公訴事実と同旨の事実を認定したが,その要旨
は,被害者が18歳に満たない児童であることを知りながら,同女に対し,要
求に応じなければその名誉等にいかなる危害を加えるかも
しれない旨脅迫して,乳房,性器等を撮影してその画像データをインターネッ
トアプリケーション「LINE」を使用して送信するよう要求し,畏怖した被
害者にその撮影をさせた上,「LINE」を使用して画
像データの送信をさせ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録し,もっ
て被害者に義務のないことを行わせるとともに,児童ポルノを製造した,とい
うものである。
 すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかな
る危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳
房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成
要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれ
ておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信さ
せるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行
為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほか
ないものである。
 弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で
行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要
件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部
分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像
データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当た
る,などと主張する。
 しかしながら,①については,本件起訴状に記載された罪名および罰条の記
載が強制わいせつ罪を示すものでないことに加え,公訴事実に性的意図を示す
記載もないことからすれば,本件において,強制わいせ
つ罪に該当する事実が起訴されていないのは明らかであるところ,原審におい
ても,その限りで事実を認定しているのであるから,その認定に係る事実は,
性的意図を含むものとはいえない。
 また,②については,量刑の理由は,犯罪事実の認定ではなく,弁護人の主
張は失当である。
 そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな
行為とすることはできない。
 以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠く
ものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない
行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に
包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合
により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。
 (2) 公訴棄却にすべきとの主張について
 以上のとおり,本件は,強要罪に該当するとみるほかない事実につき公訴提
起され,そのとおり認定されたもので,強制わいせつ罪に包摂される事実が強
要罪として公訴提起され,認定されたものではない。
 また,原判決の認定に係る事実は,前記(1)のとおり,強制わいせつ罪の
構成要件を充足しないものである上,被害者撮影に係る画像データを被告人使
用の携帯電話機で受信・記録するというわいせつな行為
に当たらない行為を含んだものとして構成され,これにより3項製造罪の犯罪
構成要件を充足しているもので,強制わいせつ罪に包摂されるとはいえない
し,実質的に同罪に当たるともいえない。
 以上のとおり,本件は,強要罪および3項製造罪に該当し,親告罪たる強制
わいせつ罪には形式的にも実質的にも該当しない事実が起訴され,起訴された
事実と同旨の事実が認定されたものであるところ,この
ような事実の起訴,実体判断に当たって,告訴を必要とすべき理由はなく,本
件につき,公訴棄却にすべきであるとの弁護人の主張は,理由がない。
 (3) 小括
 以上の次第で,法令適用の誤りおよび訴訟手続の法令違反をいう論旨には,
理由がない。
 2 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,原判決は,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとした上で,強
要罪の犯情が重いとして同罪の刑で処断することとしたが,本件の脅迫は一時
的で,害悪もすぐに止んでいるのに対し,3項製造罪は
画像の流通の危険やそれに対する不安が長期に継続する悪質なもので,原判決
の量刑理由でも,専ら児童ポルノ画像が重視されており,犯情は3項製造罪の
方が重いから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明
らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,本件の強要罪に係る脅迫行為の執拗性やその手口の卑劣性な
どを考慮すれば,3項製造罪に比して強要罪の犯情が重いとした原審の判断に
誤りはない。
 法令適用の誤りをいう論旨は,理由がない。
 なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であると
したが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画
像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを
受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と
3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う
関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,
両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪
関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につ
き懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前
段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法
定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記の
とおり法令の適用に誤りがあるが,この誤りによる処断
刑の相違の程度,原判決の量刑が懲役2年,執行猶予付きにとどまることを踏
まえれば,上記誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。
 3 量刑不当の主張について
 論旨は,被告人を懲役2年,3年間執行猶予に処した原判決の量刑は,重す
ぎて不当であり,執行猶予を付した罰金刑か,より軽い懲役刑(執行猶予付
き)とされるべきである,というのである。
 そこで検討すると,本件は,前示のとおりの強要罪,3項製造罪の事案であ
るが,原判決は,未成熟な被害者を利用した犯行動機に特段の酌量の余地がな
いこと,製造に係る児童ポルノ画像数が11点と多いこ
と,脅迫の手口が卑劣で悪質なことなどを指摘し,一方で,被告人に前科がな
く,反省の弁を述べていることなどの有利な事情をも踏まえて,前示の刑を量
定したものである。
 原判決の上記量刑判断は,当裁判所も相当として支持することができる。
 弁護人は,強烈な脅迫文言はないこと,被害者1名に対する1回の事案であ
ること,被告人が原判決後に反省を深めたことなどを考慮すべきである旨主張
するが,これらは原判決が前提としているか,原判決の
量刑を左右しないものである。
 また,弁護人は,類似事例の量刑を指摘して原判決の量刑を論難するが,個
別事情が様々な事案を指摘するもので本件に不適切である。
 量刑不当をいう論旨は,理由がない。
 4 結論
 よって,刑訴法396条により,主文のとおり判決する。
  平成28年2月19日
    東京高等裁判所第5刑事部
        裁判長裁判官  藤井敏明
           裁判官  福士利博
           裁判官  山田裕文