児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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 青少年条例違反2、児童買春罪1、姿態をとらせて製造罪1で懲役2年6月(那覇地裁h29.10.5)

 この程度の事件の情状立証で示談は必要ありませんし、この量刑だと示談は反映していません。普通懲役2年執行猶予です。
 沖縄県では青少年=満18歳に達するまでの者(婚姻した女子を除く。)と定義するので、「」満18歳に達しない青少年であることを知りながら」では構成要件を満たしません。婚姻経験がないことも摘示する必要があると思われます。

沖縄県青少年保護育成条例
(定義)
第5条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 青少年 満18歳に達するまでの者(婚姻した女子を除く。)をいう。
(2) 保護者 親権者、後見人、児童福祉施設の長その他青少年を現に監護する者をいう。
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〔解説〕
1 本条は、この条例で使用する主要な用語の意義を明確に定めて、解釈上の疑義が生じないようにしたものである。
2 青少年
(1) 青少年の上限を 18歳未満としたのは、ア 一般的にこの年齢までの青少年が心身とも未熟である。イ有害な環境や不健全な行為によって特に影響を受けやすい。
児童福祉法労働基準法、風適法等の関係法令でも保護の対象としている。
エ関係業界における自主規制(映倫維持委員会による成人映画の指定、日本ビデオ倫理協会による成人ビデオの指定)の状況等を考慮し、これらとの均衡を図ったものである。
(2) 改正前の条例では、青少年の下限を「小学校就学の始期(6歳に達した幼児の最初の4月1日)」 としていたが、最近、深夜に大型の複合施設において就学前の子供を同伴する保護者が見受けられたり、就学前の子供が強制わいせつの被害に遭うなど、これまで予期しなかった低年齢の子どもの健全育成を限害する問題が発生していることから、就学前の子供についても条例の保護の対象とする必要があるため、平成18年の改正で青少年の定義から下限年齢を撤廃したものである。
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(3) 婚姻した女子を青少年から除外したのは、女子は満16歳に達すれば父母の同意を得て婚姻することができ、婚姻により民法上の行為能力が与えられることと、当該女子の社会的、精神的条件を考慮して定めた基準である。なお、その後18歳に達するまでの間に離婚しでも、この条例でいう青少年には含まれないものとする。

裁判年月日 平成29年10月 5日 裁判所名 那覇地裁 裁判区分 判決
事件名 沖縄県青少年保護育成条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
 上記の者に対する沖縄県青少年保護育成条例違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官小澤早央里,弁護人川津知大(私選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
 
主文

 被告人を懲役2年6月に処する。
 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 平成29年5月3日午前11時47分頃から同日午後4時33分頃までの間に,那覇市〈以下省略〉のaホテル805号室において,A(当時16歳)が満18歳に達しない青少年であることを知りながら,専ら自己の性欲を満たす目的で同人と性交し,もって青少年に対し,みだらな性行為をし
 第2 同人が18歳に満たない児童であることを知りながら,前記日時場所において,同人にその胸部を露出する姿態をとらせ,これを被告人の携帯電話機付属のカメラで静止画として撮影し,同画像データ2点を同携帯電話機内蔵の電磁的記録媒体に記録・蔵置させ,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
 第3 平成28年12月2日午後10時26分頃から同月3日午前零時14分頃までの間に,沖縄県沖縄市〈以下省略〉のbホテル209号室において,B(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金5000円の対償を供与する約束をして,同児童と性交し,もって児童買春をし
 第4 平成29年2月19日午後3時48分頃から同日午後7時27分頃までの間に,同ホテル206号室において,C(当時17歳)が満18歳に達しない青少年であることを知りながら,専ら自己の性欲を満たす目的で同人と性交し,もって青少年に対し,みだらな性行為をした。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1及び第4の各所為 沖縄県青少年保護育成条例22条1項,17条の2第1項
 判示第2の所為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
 判示第3の所為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 (量刑の理由)
 被告人は,自己の性欲等を満たすために,いわゆる出会い系アプリを利用して,被害者らと知り合い,児童・青少年らの判断能力の乏しさに付け込み,約半年間の間に判示各犯行に及んだものであって,悪質な犯行である。本件各犯行によって被害者らの心身に与える影響等も大きいとみられる。本件各犯行当時,警察官の職にありながら,自制することなく本件各犯行に及んだ点でも厳しい非難を免れない。
 以上によれば,被告人の刑事責任を軽くみることはできない。
 しかしながら,被告人が本件各犯行を素直に認め,謝罪文を作成するなど反省していること,被害者らとの間で示談が成立していること,被告人には前科前歴がないこと,被告人の父親が出廷し今後の支援を誓っていること,自業自得とはいえ本件により懲戒免職となって社会的制裁を受けていることなどの事情も認められる。
 以上の事情を総合的に考慮した結果,被告人には,今回に限って刑の執行を猶予し,社会内で更生の機会を与えるのが相当であると判断した。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑・懲役2年6月)
 那覇地方裁判所刑事第1部
 (裁判官 川﨑博司)