児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「厚労省保育士の犯歴照会、義務に 登録取り消しを徹底」と言われても、私立だと前科照会できないだろう

厚労省保育士の犯歴照会、義務に 登録取り消しを徹底

 前科は法律上の欠格事由なので、現行法でも、公立の保育所であれば、前科照会可能だと思われます。公立以外の場合は前科照会は難しいと思います。

5訂版前科登録と犯歴事務p175
犯罪人名簿に基づく身分証明は,個人及び私の法人に対しては一切行ってはならない(昭和23.9.8自発第766号大分県総務部長あて自治課長回答, 昭和25.8. 17発連第448号山口県知事宛て地方自治庁次長回答)。
「犯罪事項がない」, 「既決犯罪通知に接しない」等の証明も,結局は犯罪人名簿に基づく証明にほかならないから,行ってはならない。なお,犯罪人名簿の閲覧も,この名簿の性格からみて何人に対しても許されるべきものではなく,本人からの申請に対しても同様である。

児童福祉法
第一八条の五[欠格事由]
 次の各号のいずれかに該当する者は、保育士となることができない。
一 成年被後見人又は被保佐人
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
三 この法律の規定その他児童の福祉に関する法律の規定であつて政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
四 第十八条の十九第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
五 国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)第十二条の五第八項において準用する第十八条の十九第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者

https://mainichi.jp/articles/20180101/k00/00m/040/086000c
厚労省保育士の犯歴照会、義務に 登録取り消しを徹底
毎日新聞2018年1月1日 08時00分(最終更新 1月1日 09時35分)
罪を犯した保育士の登録取り消しの流れ
 幼児へのわいせつ事件などを起こした保育士の登録取り消しを徹底するため、厚生労働省は、児童福祉法の関連省令を2月に改正する方針を決めた。保育士の逮捕情報を把握した時点で、取り消しに向け確認することを都道府県に義務付ける。併せて、逮捕を知った保育所などにも速やかに報告させるよう都道府県に促す。【宇多川はるか、国本愛】

<女児わいせつ、出所後再び保育士となりわいせつ 懲役15年>
<女児にスプレー、顔に重傷「わいせつ目的」>
<逮捕されても制御不能の衝動…セックス依存>
<医師わいせつ 性被害、子を守るには…>
<2歳児殺害 ベビーシッターに懲役26年>
 神奈川県内の保育所で、過去に実刑判決を受けた保育士が登録を取り消されないまま勤務し、園児への傷害致死罪などで起訴される事件があり、再発防止策が求められていた。

 児童福祉法は、禁錮以上の刑を受けた保育士は都道府県が登録を取り消し、執行から2年経過するまでは再び登録できないと定めている。ただし、現行法は、罪を犯した本人が届け出ることを前提としている。届け出がなかったため逮捕情報を把握できず、取り消されなかったケースは少なくないとみられる。

 厚労省は省令改正に伴い、都道府県に対し、市区町村が保有する犯罪歴情報の活用を促す通知を出す。罰金以上の刑(道路交通法違反の罰金などを除く)が確定すると、検察から本籍地の市区町村に通知され、犯罪人名簿に記載される。こうした情報を活用することで、都道府県に保育士の犯罪歴の把握を徹底させる考えだ。

 神奈川県平塚市の認可外保育所で2015年12月、生後4カ月の男児が死亡し、勤務していた保育士の男が傷害致死や強制わいせつなどの罪で起訴された。この男は10年に、東京都内の保育所で女児にわいせつな行為をした強制わいせつ罪で懲役3年の判決を受け、服役していた。だが、登録先の神奈川県はこの情報を把握していなかったため登録は取り消されず、男は出所後に再び保育士として勤務していた。

 学校現場でも、児童・生徒へのわいせつ問題を起こした教員の処分情報が共有されていなかったとして、文部科学省は「教員免許管理システム」を大幅に改善する方針を決めている。

相次ぐ幼児被害、教訓に
 保育所に預けられた幼児らへの保育士によるわいせつ事件は全国で相次いでいる。だが、刑の確定情報の把握は容易でなく、苦慮した宮崎や広島県なども、国に対策を要望してきた。神奈川県平塚市の事件後、問題は国会質疑で取り上げられるなど注目され、厚生労働省の今回の方針につながった。

 被害に遭った幼児や親は深い心の傷を負う。平塚市の事件で起訴された男は、他の女児らへの強制わいせつなどの罪で2017年12月に実刑判決を受けたが、被害児童の親たちはこの公判の意見陳述で「(出所後に)また簡単に保育士になったことで(子どもが被害を受け)、一生苦しみます」などと訴えていた。

 ただ、関連省令を改正しても、保育所都道府県が逮捕や刑の確定情報を得る手段は、本人や家族ら関係者の申告以外にはマスコミ報道などに限られるのが実情だ。情報の把握には依然として課題が残り、実効性を疑問視する声も上がる。

 神奈川県の担当者は「保育所などが犯罪歴を適切に把握できるかどうかは疑問。グレーの場合でも、人手不足で辞めてもらっては困るから、報告しない保育所もあり得る。現実的な対策にならないのではないか」と懸念する。

 保育制度に詳しい櫻井慶一・文教大教授(児童福祉論、子育て支援論)は「適切な保育を受ける権利は保障されるべきで、不適格者が排除されるのは当然。ただ、都道府県域を越えた問題なので、保育士登録情報を国が一元化して直接管理し、市町村の犯罪歴の把握と結びつける工夫が必要ではないか」と提案した。