児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自動車ナンバー自動読み取りシステム(Nシステム)~ 幕田英雄 捜査法解説(第3版補訂版)-捜査手続から証拠法・公判手続入門まで-

 酒気帯びとか無免許運転の経路の取調で示されることがありますよね

自動車ナンバー自動読み取りシステム(Nシステム
1  Nシステムの意義
Nシステムとは、自動車使用犯罪発生時において現場から逃走する被疑者車両を速やかに捕捉し犯人を検挙すること並びに重要事件等に使用されるおそれの強い盗難車向を捕捉し犯人の検挙及び被害車向の回復を図ること等を目的として導入設置され、走行中の'自動車のナンバーを自動的に読み取り、手配車両のナンバーと照合するシステムである
2 Nシステムの適法性
Nシステムが、運転者等の肖像権を侵害し、その自動車による移動についての,|冑報を把握し監視するものであるとして、国に損害賠償請求がなされた事案において、裁判所は、同システムは走行車の搭乗者の容貌を撮影し画像が記録されるシステムではないこと、走行車両のナンバープレートはナンバーが外部に見えるように取り付けることが義務付けられており、同ナンバー及びそのナンバーの車両が公道上の特定の地点を一定方向に向けて通過したとの情報は秘匿されるべきものとはいえないこと、同システムによるこれら情報の取得・保有・利用の目的及び方法も正当と評価できることを挙げ、Nシステムによって、走行車両のナンバーデータを記録保存していることが原告の権利・私生活上の自由を違法に侵害するものとは認められないとした(束地判平13-2-6判時1748144 なお、車両ナンバープレートの文字データが抽出されるだけで、搭乗者の容貌・姿態が写っている、可能性のある画像が保存・記録されることはないことについては、東高判平17 1 19判タ1183345も言及)
3 Nシステムの保秘の必要性
Nシステムは、犯罪者にカメラ等の設置場所が知られないことによってこそ効果を発揮するものであり、これが公になった場合には、犯罪者が設置場所を避けて通行したり、共犯者にあえて設置場所を通行させてアリバイエ作をするなど、犯人検挙や犯行裏付けに支障が生ずることが一般的に想定されるそこで、具体的事件での同システムの逆用状況やカメラ等の設置場所等については外部に秘匿するとともに、同システムで得られた情報(特定車両の通過情報など) も内部での捜査資料としてのみ利用し、公判に証拠として提出しないようにすべきであるところで、証拠開示の対象範囲についての最高裁判例の趣旨(=設問67に照らし、「通過車両のデータそのものは具体的事件とは無関係に入手されており「当該事件の捜査弁の過程で作成され、又は入手した」証拠とは両えないから証拠開示の対象とはならないと解される。しかし、具体的事件の捜査の過程で、通過車両に関するデータの解析結果を記載し、あるいは通過車両データを出力印字したものを添付して作成した捜査報告書は、「当該事件の捜査の過程で作成され、又は入手した」証拠とされ、開示の対象となる場合もあり得ると考えられる(森島聡論文 刑事証拠開示の理論と実務307 判例タイムズ社参照)
 捜査官としては、Nシステムや通過車両に関する時効は供述調書や捜査報告書を初めとした捜査書類に記載しないようにするとともに、被疑者や参考人にもNシステムによって得た通過車両データを出力印字したものを示したり、Nシステムにより知り得た通過車両のデータの有無やその内容を告げることがないように注意すべきである。