児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

量刑検索システム

 いままでがいかに盲目的というか、ブラックボックス的に量刑をやってきたかというのがわかりますね。

司法研修所 裁判員裁判における第一審の判決書及び控訴審の在り方P76
ところで,量刑の評議においては,証拠によって認められる量刑を決めるに当たって考慮すべき事情を確定しつつ,国民の視点,感覚,健全な社会常識などが反映された形で評議が行われ,刑が定められる必要があるが,裁判員裁判の量刑の評議においては,最高裁で開発された量刑検索システムを利用することが非常に有効であろう(注30)。
前記のとおり,我が国の刑法では非常に幅広の法定刑が定められており,裁判員にとっても,適切な量刑の判断のためには,このシステムの利用は欠かせないものといえよう。これまでの模擬裁判では,このような量刑資料については裁判員から求められた場合に示すにとどめるとの考え方もあったものと思われるoしかし,非常に幅広の法定刑を踏まえた法令の範囲内において,一定の数量の刑に還元させて刑量を算定することは,極めて困難なことである。
このような量刑資料を用いずに,裁判員に対して刑についての意見を求めることは,かえって,裁判員に混乱を生じさせることになるo (注30-76頁)で示したような使用方法であれば,量刑にも国民の視点,感覚,健全な社会常識などを反映させるという裁判員制度の趣旨を損なうことはないと思われる。もとより,事件はそれぞれ個性があるものであり,量刑検索システムも,あくまで, 刑を考える上での参考のデータとして用いるというものである。このデータから導き出される量刑先例に基づいて位置付けられた一定の刑の幅の中に,裁判員の判断を拘束するといった趣旨は全く想定されていないし,そのようなことがあってはならないことは先に検討したところからも明らかであろうo

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さらに,この量刑検索システムは,検察官や弁護人も利用が可能になるとのことであり,裁判員裁判における量刑評議が前述したプロセスをたどることにかんがみると,いずれは,検察官・弁護人においても,開示された前記の量刑検索システムによる量刑分布を参考とし,当該事件において考慮すべき事情を提示しつつ,当該事件は量刑分布の中(場合によってはその外側ということもあり得るであろう。)のどの辺りに位置付けられるかといったことを意識して,求刑あるいは量刑意見を述べることも期待されよう(注31)。