児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

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電車内で対面に座っていた乗客の下半身(ミニスカートの裾と膝の間あたりという特定の部位)を携帯電話で撮影した行為が,迷惑防止条例所定の「卑わいな言動」にあたるとされた事例(神戸地裁h26.4.25)

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年兵庫県条例第66号)違反,強盗傷人被告事件
神戸地方裁判所判決平成26年4月25日
 【事実認定の補足説明】
第1 争点
   本件の争点は,迷惑行為防止条例違反の罪に関し,?被告人がFを故意に撮影したか,?故意に撮影したとして,その行為が「卑わいな言動」にあたるか,強盗傷人罪に関し,?F及びGに,被告人所有の携帯電話機及び紙袋に対する占有が認められるか,?被告人が上記紙袋を持ち去る直前にGに対し暴行を加えた目的(紙袋を取り戻す目的で暴行を加えたのか),?被告人がF及びGに対し加えた暴行の程度(反抗を抑圧するに足りる暴行といえるか)である。
第2 当裁判所の判断
 1 条例違反の罪について
  (1) Fを撮影した行為の故意について
    検察官は,被告人が,判示第1記載の日時,場所において,故意に,所携の本件携帯をFの下半身に向けて撮影するなどした旨主張する。これに対し,弁護人は,判示第1記載の日時,場所において,本件携帯でFが写った画像が撮影されたこと自体は争わないものの,これは被告人が故意に撮影したものではない旨主張し,被告人もこれに沿う供述をする。
    そこで検討するに,関係各証拠によれば,当時被告人が所持していた本件携帯には,Fが写っている画像が3枚保存されており,そのうち平成25年6月17日午前零時3分頃に撮影された画像は,Fの下半身にズームインして,下半身の股間部分が画像のほぼ中央に収まるかたちで撮影され,ピントが合っていること,同日午前零時4分頃に撮影された画像は,Fの全身が頭の先から足先までどこも欠けることなく撮影されており,ピントが合っていること,同日午前零時9分頃撮影された画像は,Fの下半身の一部にズームインして撮影されている(ただし,ピントは合っていない)ことが認められる。このような画像を撮影するためには,本件携帯をカメラモードにした後,本件携帯の画面を見ながら,カメラの角度やズーム機能を意識的に調整した上,シャッターを押すことが必要であると考えられ,このような画像の存在自体から,被告人が上記3枚の画像を故意に撮影したことが強く推認される。
    この点につき,弁護人は,上記3枚の画像は,被告人が本件携帯を触っている際に,本件携帯の側面のボタンを誤って押したために撮影してしまった可能性がある旨主張する。しかし,上記のような画像を本件携帯の側面のボタンで撮影するためには,本件携帯を自然に持った状態で側面の下端付近にあるボタン(カメラモードへの切り替え及び撮影を行うもの)と,そこから離れた位置にあるボタン(ズーム機能を調節するもの)とを交互に多数回押す必要があるところ,そのような作業が偶然繰り返されたとは考えにくい。また,誤操作でカメラモードになることがあったとしても,カメラモードになれば,本件携帯の画面にカメラが捉えている画像が表示されるはずであり,画面を見ていれば誤操作をしたことに気付くはずである。そして,誤操作でカメラモードになったことに気付けば,画像を撮影することなく,直ちにカメラモードを終了させるはずである。そうすると,本件携帯の画面を見ていた被告人が(なお,被告人が同画面を見ていたことは,被告人と利害関係がなく,供述内容が具体的かつ詳細で信用できるFの供述及び被告人供述から認められる。),誤操作でカメラモードになったことに気付かず,その後,カメラモードにしたまま,画像を撮影するボタンやズーム機能を調節するボタンを多数回誤って押してしまったという可能性は想定できないといえる。
    また,弁護人は,Fの真正面からシャッターの音を鳴らして撮影するというのは常識では考え難い大胆な行動であること,被告人がFに対し,それほど強く抵抗することなくロックを解除して本件携帯を渡しているところ,このような行為は意図的に画像を撮影した者のとる行動としてはそぐわない旨主張する。しかし,シャッター音の点は,被告人において,自身の携帯電話機の画面に見入っているFには気づかれていないと思っていたり,たとえ,気づかれたとしても,確証のないFが抗議してくるとは思っていなかったとすれば,説明がつく行動である。また,本件携帯を渡した点も,Fに詰め寄られて追及され進退窮まったとすれば,これも説明のつく行動であるといえるから,弁護人が主張する事実は,Fを撮影する行為に関する被告人の故意を否定するものではない。
    以上からすれば,被告人は故意に,本件携帯をカメラモードにし,ズーム状態に作動させた上で,これを対面の座席に座っていたFの下半身に向けて撮影したと認めることができる。
  (2) 被告人がFを撮影した行為が「卑わいな言動」にあたるか
    検察官は,被告人がFの下半身を撮影した行為は,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年兵庫県条例第66号)(以下「本件条例」という。)3条2項にいう「卑わいな言動」に該当する旨主張するのに対し,弁護人は,これにあたらない旨主張する。
    そこで検討するに,前記認定の本件携帯内に保存されていた画像からすれば,被告人が,ミニスカートを履いて対面に座っていたFの,ミニスカートの裾と膝の間あたりという特定の部位を狙って画像を撮影していることが認められる。電車内で,ミニスカートを履いて座席に座っている女性が,対面に座っている男性から,上記のような特定の部位を狙う態様で撮影されれば,通常衣服で隠れており,かつ,性的な意味合いを持つ部分を,ミニスカートの裾と太ももの隙間から撮影されているのではないかと感じ,性的羞恥心を覚えることは社会通念上明らかといえる。そして,被告人が,約6分の間に,上記のような相手方に性的羞恥心を感じさせるような態様で,少なくとも3枚の画像を(そのうち2枚は上記特定の部位を狙って)撮影していることからすれば,被告人による上記撮影行為は,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな動作にあたり,本件条例3条2項の「卑わいな言動」にあたると認められる。
    弁護人は,被告人は向かいの席に座った状態で見ることができるFの全身等をそのまま撮影したに過ぎない旨主張するが,対象をカメラで撮影する行為と,単に目で見る行為とでは,その行為が終わった後に対象(の画像)を反復的・永続的に鑑賞することができるか否かという点で質的に異なるといえる上,被告人は,前記認定のとおり,Fの下半身という特定の部位にズームインして撮影しており,単に目で見る行為と同視することはできないことからすれば,上記弁護人の主張には理由がなく,その他の弁護人の主張も上記認定を覆すものではない。
  (3) 結論
    よって,被告人が本件携帯をズーム状態に作動させた上で,これを対面の座席に座っていたFの下半身に向けて撮影した行為につき,本件条例違反の罪が成立することから,判示第1のとおり認定した。