あまり知られていませんが、青少年条例違反(淫行)というのは、法律上は、必ずしも個人の具体的な権利侵害はないと解説されていますので、訴訟をしても、被害を重く立証しないと、裁判例の数字では淫行1回につき5〜10万円程度の慰謝料しか認容されていません。被害者側からすると民事訴訟は割に合わない。
亀山継夫「判例研究 児童に淫行をさせる罪 その2」(研修347号60頁)(法務省刑事局青少年課長)
児童福祉法の淫行罪についての以上のような理解を前提とすると、条例の淫行罪の性格は、おのずから明らかになるといえよう。両者は、共に児童の健全な成長を保護法益とするものであるが、条例の性質上、後者は、前者に対する補充法的性格を有するものであること、後者が単に児童の淫行の相手方となることを構成要件としていること等からみれば、前者が「淫行」と「させる」の2要件によって、児童の健全な成長に対する現実の侵害ないしはそれに対する具体的危険を対象とするのに対して、後者は、児童が淫行をすることによる抽象的な危険を対象とするものと解する。
また、青少年条例違反という括りで見ると、起訴率は5割くらいです。刑事処分も1〜2回の淫行であれば罰金です。被疑者側からみれば、逮捕=報道された時点で、懲戒処分など重い社会的制裁を受けることになるし、(被疑者国選弁護の対象外ですので)弁護人を頼まなくても、慰謝料を払わなくても、数十万円の罰金だけで済むことはネット上で広く知られている。
そうなると医師・歯科医師等起訴猶予にならないと困る人を除けば捜査段階で急いで示談をする動機がありません
そういう場合に、訴訟前に、希望通りの慰謝料をもらうためには、被害者側としては納得できないと思いますが、被疑者側に、「罪を許す」「起訴しなくていい」などの意見を述べて起訴猶予にしてやるくらいの相当のメリットを与える必要があると思います。将来の悪影響が心配な状況で、そこまで許す必要があるのか。
青少年条例違反の示談というのは、こういう状況であることを考慮して、検討された方がいいと思います。