児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強姦被害者が全裸で逃げた場合は公然わいせつ罪(174条)の構成要件に該当して違法阻却・責任阻却するという弁護士

 入浴中に災害で浴場が流された・焼失して裸で逃げたとかも、公然わいせつ罪の構成要件に該当するというかなあ。強姦被害者でも「全裸=わいせつ」という発想か。
 これは被害者に酷な結論でおかしい。ちょっと調べて、構成要件レベルで「わいせつな行為」に当たらないと言っておけば正解。

 刑法上の「わいせつ」というのは各罪によってニュアンスが違い、判例をみると公然わいせつ罪の場合は、能動的な要素・傾向犯的性格が重視されているようです。強制わいせつ罪の場合は、被害者の性的自由・羞恥心重視で、わいせつ物の場合は、見た方の興奮度合い。

大阪高等裁判所昭和30年6月10日
高等裁判所刑事判例集8巻5号649頁
高等裁判所刑事裁判特報2巻12号591頁
同条にいわゆるわいせつの行為とは性欲の刺げき満足を目的とする行為であつて、他人に羞恥の情を懐かしめる行為を云う

東京高等裁判所平成17年2月7日第9刑事部判決
(2)そこで,関係証拠によって認められる前記の「トレーナーを胸のところまで上げ,半ズボンを太股の真ん中まで下げて下半身を露出し,それに伴い陰茎を露出した」行為(以下においては,これを「本件行為」という。)が,本件において「わいせつな行為」と認定できるかが問題となる。当該行為が「わいせつな行為」に当たるか否かは,その行為がなされた具体的状況如何にかかるのであって,公然性が否定できない本件のような事案においても,その具体的状況によっては,「わいせつな行為」とは認めるに足りないことも十分あり得るところである。例えば,本件のような行為が子供が小便をするために衣服を上下に下ろしたとしても,それが「わいせつな行為」だという者はいないであろう。被告人のような成人男子の場合には,もとより,子供と同列に扱うことはできないが,なお,具体的状況によっては,「わいせつな行為」とまでは認められない場合があり得るというべきである。そこで,本件においては,以下のような事情を考慮しなければならない。
・・・
エ 検察官は,本件行為は,上着のトレーナーをめくり上げるなどいわゆる露出狂による行為態様に完全に符合するものであり,被告人が公然と陰茎を露出し,ことさらBらに見せようとしていた行為であるかのように主張するが,当該主張を裏付けるに足る証拠はなく,被告人にそのような嗜好があったことをうかがわせる証拠も何ら認められない。確かに被告人が本件現場において特異な格好をしていた理由については,被告人がそれ自体も否認しているためにつまびらかではないが,その客観的な行為態様のみから,当該行為がいわゆる露出狂による性的興奮を満足させるための行為であったと認定できるものではない。

http://www.bengo4.com/hanzai/b_274811/
Q 2014年08月14日 23時45分
強姦被害者が全裸で逃げた場合の公然わいせつ罪の成否

A弁護士 2014年08月14日 23時50分
実際には、外に出ないで。助けを求めるでしょうから、
机上の空論の議論ですが、理論的には成り立ちます。助けを求めるためであるなら、可罰的違法性がないとされるでしょう。

H弁護士 2014年08月15日 03時05分
公然わいせつ罪に抵触するのでしょうか?
条文には該当すると思います。
ただ,理論構成は違法性阻却,責任阻却等考えられるにしても,止むを得ない行為として処罰はできないと思われます。

H弁護士 2014年08月15日 07時28分
証明は当該女性がしなければならないのでしょうか?
建前としては検察官が,違法性阻却事由も,責任阻却事由もないことを検察官が立証すべきとはされていますが,実際には当該女性がご自身の主張を支えるために立証していくことになろうかと思います。