児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3Dプリンター:わいせつデータをメール頒布 警視庁逮捕

 芸術性の問題はさておくとして、従来のわいせつの議論で行けば、再生可能性の問題になります。

http://mainichi.jp/select/news/20140714k0000e040217000c.html
逮捕容疑は今年3月20日、香川県の会社員男性(30)ら不特定多数に、3Dプリンターで出力すると、女性器の造形物ができるデータをメールで送信したとしている。

判例コンメンタール刑法2巻
p282
陰部に該当する部分が塗りつぶされている写真でも、その部分の復元が通常人において比較的容易である場合はわいせつ図画にあたる(東京高判昭56.12.17 は黒色マジックインクで塗られたもの、) 。したがって、消去復元が復元な場合は、別途、前出最判昭58 .3.8 (サス企画事件)等の判断基準によることになる。

p282
(5) 仕掛け
行掛けが施されたものでは、通常人が脊易にからくりに気づきわいせつな図柄が顕在化するとの要件が必要となる。いわゆるヌード杯につき最判昭39.5.29 折り合わせると陰茎陰部の図柄となる手ぬぐいにつき大判昭14 ・6 ・24 同様のハンカチ及びマッチにつき名古屋高判昭4 ・12 ・23 がある。

p284
(1) 未現像フィルム
映両には未現像の映画フィルムも含む。名占屋高判昭41・3・10 は、わいせつ行為を撮影後未現像のまま領置され、警察官が被告人の示諾を得て現像し、これを押収したものにつき肯定した。
現像作業は比較的容易で、未現像のまま転々頒布、販売される吋能性があることが販売目的所持罪の可罰性の根拠となっている。なお、傍論で公然陳列罪は成立しないとL ている

p286
ビデオテープやDVD 等も、ビデオデッキやDVD プレイヤ一等の普及により家庭で容易に再生できるため、もはやわいせつ物性を争われることはない。

p286
(6) わいせつ情報
わいせつ情報の提供がパソコンネットやインターネット上でなされる場合のわいせつ物概念について、最決平13 ・7 ・16 (アルファーネット事件)は、わいせつ画像データを記憶、蔵置させたパソコンネットのホストコンピュータのハードディスクは本条のわいせつ物に当たるとし、公然陳列の既遂時期につき、「その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、わいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しない」とした。そして、パソコンネットのホストコンピュータのハードディスクにわいせつな両像を記憶、蔵置させ、不特定多数の会員が白己のパソコンを使用して画像データをダウンロードした画像表示ソフトを用いて画像を再生防覧することが可能な状態に置くことは公然陳列に当たるとし、会員が実際に再生隠覧することは必要でないとした。
本件では、画像データを再生問覧するために必要な操作は簡単であり、比較的容易に可能であるとした。ここでは、公然性の「認識可能性」概念は「アクセスの容易性」と同意義となる。

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エ 岡山地判平9. 12 ・158 (岡山エ7 エルマスク事刊)は同様にマスク処理をしていたが、インターネットのアダルトページにアクセスする人はほとんどマスク付け外し画像処理ソフトを持っており、受信後これを使用してマスクを外して画像を閲覧することができるから、わいせつ性があり、被告人にもわいせつ性の認識があったとし、また、本件で公然陳列されたのは、サーバコンピュータではなく、情報としての画像データであるとし、わいせつ物の概念に情報を含ませても刑法の解釈として許されるとした。