児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノをwinnyで公然陳列罪

 本当に全国初なのかという疑問と、共有ソフトごとに「全国初」と大々的に広報する意味があるのかという疑問と、4項提供罪(不特定多数)じゃないのかという疑問と、意外と量刑が軽いという疑問と・・・
 「スカイラインによるひき逃げ事件は全国初」「プリウスによるひき逃げ事件は全国初」なんて言わないでしょ。
 キャッシュがどうの、中継じゃないかとか、アップしていることを知らなかったという点については、故意の問題であって、客観面では問題ないと思います。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20100909-00000038-jnn-soci
容疑者は「ウィニー」を利用して、児童ポルノの動画などをダウンロードしていましたが、「ウィニー」で入手したデータは他の利用者にも公開される仕組みとなっています。警視庁は、容疑者がこの仕組みを知りながら利用していたことから、児童ポルノ禁止法違反の公然陳列にあたると判断し、異例の摘発に踏み切りました。(09日13:03)

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20100909-00000136-fnn-soci
容疑者(33)は2010年7月、自らが入手した少女のわいせつな動画を、ファイル共有ソフトWinny」上に公開し、不特定多数の利用者にダウンロードさせていた疑いが持たれている。
容疑者は、警視庁の調べに、「間違いなくやりました。中学生までの少女が好きだった」と容疑を認めているという。
Winny」を使って、わいせつ画像を公然陳列させたとして立件されたのは、全国で初めて。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100909-00000540-san-soci
同課によると、ウィニーはファイルをダウンロードすると、自動的にそのファイルは他の利用者が自由にダウンロードできる仕組みになっている。同課は容疑者がシステムを理解した上で動画を公開していたとみて、同容疑での立件に踏み切った。ウィニー利用者に同容疑の公然陳列を適用するのは異例。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100909-00000027-mai-soci
 ◇監視システムで浮上
 逮捕容疑は、7月15日、ウィニーを利用し、ファイル情報を暗号化する「キャッシュフォルダー」に女児のわいせつな動画2点を記録し、不特定多数が閲覧できる状態にしたとしている。
 容疑者は容疑を認め「以前から中学生までの女児が好きだった。09年2月ごろからウィニーを使うようになり、興味本位で児童ポルノ動画や画像を収集していた」と供述。ウィニーを使った理由については「動画を収集するのに使い勝手がよかったから」と話しているという。
 容疑者のパソコンにはウィニーで収集したアダルト画像や児童ポルノ画像など7万〜8万件のファイルが保存されており、同課は解析を進めている。
 キャッシュフォルダーは利用者間でファイルを共有・交換する窓口となるフォルダーで、暗号化したファイル情報が保管される。ファイルは自動的にアップロードされて誰もが閲覧できる状態となるため、同課は公然陳列に問えると判断した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100909-00000042-jij-soci
捜査関係者によると、ダウンロードしたファイルが自動的にアップロードされるウィニーの特性から、少なくとも「未必の故意」を問えると判断し、摘発に踏み切った。
 同課によると、ウィニー利用者の同容疑での摘発は全国初とみられる。ウィニーはサーバーを使用せず、通信を暗号化するなど匿名性が高いが、警察庁が1月に運用を開始した観測システムを活用し、特定した。


 キャッシュとか暗号化の点は、誰でも同じソフトを立ち上げれば解消されるわけですから、「公然陳列」というのに障害にはならないと思います。

最高裁第三小法廷平成13年 7月16日 
事件名 わいせつ物公然陳列被告事件 〔アルファネット事件・上告審〕理由
 弁護人川口直也他三名の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
 なお、所論にかんがみ、職権により判断する。
 原判決の認定によると、被告人は、自ら開設し、運営していたいわゆるパソコンネットのホストコンピュータのハードディスクにわいせつな画像データを記憶、蔵置させ、それにより、不特定多数の会員が、自己のパソコンを操作して、電話回線を通じ、ホストコンピュータのハードディスクにアクセスして、そのわいせつな画像データをダウンロードし、画像表示ソフトを使用してパソコン画面にわいせつな画像として顕現させ、これを閲覧することができる状態を設定したというのである。
 まず、被告人がわいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードディスクは、刑法一七五条が定めるわいせつ物に当たるというべきであるから、これと同旨の原判決の判断は正当である。
 次に、同条が定めるわいせつ物を「公然と陳列した」とは、その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないものと解される。被告人が開設し、運営していたパソコンネットにおいて、そのホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置させたわいせつな画像データを再生して現実に閲覧するためには、会員が、自己のパソコンを使用して、ホストコンピュータのハードディスクから画像データをダウンロードした上、画像表示ソフトを使用して、画像を再生閲覧する操作が必要であるが、そのような操作は、ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置された画像データを再生閲覧するために通常必要とされる簡単な操作にすぎず、会員は、比較的容易にわいせつな画像を再生閲覧することが可能であった。そうすると、被告人の行為は、ホストコンピュータのハードディスクに記憶、蔵置された画像データを不特定多数の者が認識できる状態に置いたものというべきであり、わいせつ物を「公然と陳列した」ことに当たると解されるから、これと同旨の原判決の判断は是認することができる。