児童が撮って送った画像が交際終了後にばらまかれるという意味ではリベンジポルノと共通の問題がある。
文献
セクスティングとチャイルド・ポルノグラフィ
紙谷 雅子
2010.9.
Z22-497
ネット上の児童ポルノに関する擬律の混乱(sexting・ファイル共有・リンク)
奥村 徹
2011.7.
特集 ネットワーク社会における青少年保護 第35回法とコンピュータ学会研究会報告
Z2-796
判例研究 いわゆるセクスティングと児童ポルノ単純製造罪[東京高裁平成22.8.2判決]
園田 寿
2011.3.
Z71-N334
ネット上の児童ポルノに関する擬律の混乱(sexting・ファイル共有・リンク)
2 sextingの擬律
(1)
児童が撮って販売するなど強制がないない場合と脅迫等の強制を伴う場合とに大別できる。
(2)強制がない場合
コミュニティサイトなどで、卑猥な会話を交わした後で児童に平和的に頼んで撮影送信させる場合、児童が対価を要求して撮影送信する場合である。
児童ポルノ法7条の法文と立法担当者の説明*1*2に従えば、児童が刑事責任能力を備えている場合には、児童に7条2項又は5項の提供目的製造罪と同条1項又は4項の提供罪が成立し、依頼者はそれらの共同正犯となるはずである。
実際、児童を1項提供罪の正犯として検挙した事案*3がある。
ところが、裁判実務では、児童を利用する間接正犯による7条3項の製造罪(児童には犯罪不成立)とするのが通常である。
例えば、大阪高判H21.12.3*4は児童が有償で注文を受けて撮影送信したケースであるが、「当該児童は,原則的に,その被害者と位置付けられているというべきである。」という以外に特段の理由も示さず間接正犯と認めている。
また、東京高判H22.8.2*5は依頼者が甘言を弄して撮影送信させたケースであるが、被害児童が児童ポルノに該当する画像であることを認識して撮影送信している場合でも間接正犯と認めている。
しかし、児童が道具になっていない以上、間接正犯と評価することはできない。
すなわち、7条3項の製造罪の実行行為は
? 依頼者(犯人)が児童に対して所定の姿態をとらせること
? ?に基づき児童が所定の姿態をとること
? 撮影・記録・・・2条3項本文の媒体に記録された状態となること
であるところ、?は依頼者による送信要求行為であり、?は被害児童によって行われている。?のうち、撮影と被害児童の携帯電話への記録と依頼者への送信(受信サーバへの記録)までは被害児童によって行われ、受信と媒体への保存は依頼者の携帯電話において自動的に行われている。
実行行為のうち、児童の分担部分がどれ一つ欠けても、依頼者の携帯電話の媒体に児童ポルノを記録するという結果は実現できないし、児童が道具と化していない以上、児童の行為を依頼者の行為と同視することはできない。3項製造罪として捕らえるなら、被害児童と依頼者との共同正犯として処理する方が自然である。さらにいえば、児童に提供目的がある以上、児童に7条2項又は5項の提供目的製造罪と同条1項又は4項の提供罪が成立し、依頼者はそれらの共同正犯とするのが正解であろう。
にもかかわらず立法担当者の説明に反して無理な処理をする理由は強いて言えば児童に正犯性を認めることになると、児童が被疑者として扱われることになり、被害申告が困難になる事であろう*6。