検察官は、金沢支部の事例は、除霊と信じ込ませて数回淫行した事例なので、甘言による場合には当てはまらないと主張していましたが、裁判所は、侵害された保護法益は1個であること、犯意が1個であることを理由に包括一罪としました。
児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)と同様の考え方です。
犯行日 犯行地 行為内容
H25.7.18A県 わいせつ
H25.8.22B県 淫行
H25.9.1A県 淫行
H25.9.1A県 淫行
法定刑は
A県条例の法定刑
一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
B県条例の法定刑
2年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する
ですので、併合罪だと、罰金の上限は足し算なので最高250万円になりますが、包括一罪だと、最高100万円です。懲役刑の上限は併合罪説だと3年ですが、包括一罪説だと2年です。
主張書面
第3 4回の青少年条例違反罪は包括一罪となること
名古屋高裁金沢支部H19.3.22は、同一青少年に対する原判決
福井地裁H18.12.13
H17.12.11性交(福井県青少年愛護条例)
H17.12.25性交(福井県青少年愛護条例)
H18.3.12性交(福井県青少年愛護条例)という3回の性交について
名古屋高裁金沢支部H19.3.22
原判決は、第1〜第3の青少年条例違反の罪を併合罪としているが、青少年条例違反は、青少年の健全な育成を保護法益としているのであるから、同一犯意の下に同一の青少年に対して継続的に反復してみだらな性行為をした場合には、これを包括的に観察して一罪とすべきである。と判示しており、判例となっている。最長77日の間隔があっても包括一罪とするのである。
犯行日 前回からの日数
H17.12.11
H17.12.25 14日
H18.3.12 77日本件でも、淫行の間隔は最長34日であって、同一犯意の下に同一の青少年に対して継続的に反復してみだらな性行為をした場合であるから、包括一罪となる。
犯行日 犯行地 行為 前回からの日数
H25.7.18A県 わいせつ
H25.8.22B県 淫行 34日
H25.9.1A県 淫行 10日
H25.9.1A県 淫行 0日15時間
同一青少年に対する数回の青少年条例違反を包括一罪とする裁判例
東京地裁八王子H19.11.12
鹿児島地裁H19.1.25
宇都宮地裁H20.9.17
高知地裁安芸H20.1.15
横浜地裁横須賀H18.10.24
横浜地裁横須賀H18.10.24
横浜地裁横須賀H18.10.24
横浜地裁横須賀H21.1.28
高知地裁安芸H20.1.16
高知地裁H24.2.10
津地裁H22.12.27
名古屋高裁金沢支部 H19.3.22
福岡簡裁H25.10.1
福岡高裁H26.2.26
追記
無理矢理な控訴理由を作りまして、高裁でも追認してもらいました。「包括一罪とした上,重い同条例違反の罪の刑で処断した点」に法令適用の誤りは無いという点が金沢支部に次いで2個目の判例になります。
福岡高裁平成26年2月26日
2 控訴理由第2について
論旨は訴訟手続の法令違反ないし法令適用の誤りの主張として,略式命令をする場合に付随の処分として仮納付の裁判をすることはできない旨いうのであるが,そのような解釈を採ることはできない。
3 控訴理由第3について
論旨は法令適用の誤りの主張として,原判決が,A県青少年健全育成条例(以下「A県条例」という)違反及びB県条例違反の各罪を包括一罪とした上,重い同条例違反の罪の刑で処断した点について,被害者はA県在住であるから,A県条例の罪の刑で処断すべきである旨いうのであるが,独自の解釈を前提とするものであって,失当というほかない。