児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

同一青少年に対して、40日間に4回、2県にまたがって行われた青少年条例違反(淫行・わいせつ行為)は包括一罪(福岡簡裁H25)

 検察官は、金沢支部の事例は、除霊と信じ込ませて数回淫行した事例なので、甘言による場合には当てはまらないと主張していましたが、裁判所は、侵害された保護法益は1個であること、犯意が1個であることを理由に包括一罪としました。
 児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)と同様の考え方です。

犯行日 犯行地 行為内容
H25.7.18A県 わいせつ 
H25.8.22B県 淫行  
H25.9.1A県  淫行  
H25.9.1A県  淫行  

 法定刑は

A県条例の法定刑
一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
B県条例の法定刑
2年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する

ですので、併合罪だと、罰金の上限は足し算なので最高250万円になりますが、包括一罪だと、最高100万円です。懲役刑の上限は併合罪説だと3年ですが、包括一罪説だと2年です。


主張書面
第3 4回の青少年条例違反罪は包括一罪となること
 名古屋高裁金沢支部H19.3.22は、同一青少年に対する

原判決
福井地裁H18.12.13 
H17.12.11性交(福井県少年愛護条例)
H17.12.25性交(福井県少年愛護条例)
H18.3.12性交(福井県少年愛護条例)

という3回の性交について

名古屋高裁金沢支部H19.3.22
 原判決は、第1〜第3の青少年条例違反の罪を併合罪としているが、青少年条例違反は、青少年の健全な育成を保護法益としているのであるから、同一犯意の下に同一の青少年に対して継続的に反復してみだらな性行為をした場合には、これを包括的に観察して一罪とすべきである。

と判示しており、判例となっている。最長77日の間隔があっても包括一罪とするのである。

犯行日 前回からの日数
H17.12.11
H17.12.25       14日
H18.3.12        77日

 本件でも、淫行の間隔は最長34日であって、同一犯意の下に同一の青少年に対して継続的に反復してみだらな性行為をした場合であるから、包括一罪となる。

犯行日 犯行地 行為  前回からの日数
H25.7.18A県 わいせつ 
H25.8.22B県 淫行  34日
H25.9.1A県  淫行  10日
H25.9.1A県  淫行  0日15時間

同一青少年に対する数回の青少年条例違反を包括一罪とする裁判例
東京地裁八王子H19.11.12
鹿児島地裁H19.1.25
宇都宮地裁H20.9.17
高知地裁安芸H20.1.15
横浜地裁横須賀H18.10.24
横浜地裁横須賀H18.10.24
横浜地裁横須賀H18.10.24
横浜地裁横須賀H21.1.28
高知地裁安芸H20.1.16
高知地裁H24.2.10
津地裁H22.12.27
名古屋高裁金沢支部 H19.3.22
福岡簡裁H25.10.1
福岡高裁H26.2.26


追記
 無理矢理な控訴理由を作りまして、高裁でも追認してもらいました。「包括一罪とした上,重い同条例違反の罪の刑で処断した点」に法令適用の誤りは無いという点が金沢支部に次いで2個目の判例になります。

福岡高裁平成26年2月26日
2 控訴理由第2について
 論旨は訴訟手続の法令違反ないし法令適用の誤りの主張として,略式命令をする場合に付随の処分として仮納付の裁判をすることはできない旨いうのであるが,そのような解釈を採ることはできない。
3 控訴理由第3について
 論旨は法令適用の誤りの主張として,原判決が,A県青少年健全育成条例(以下「A県条例」という)違反及びB県条例違反の各罪を包括一罪とした上,重い同条例違反の罪の刑で処断した点について,被害者はA県在住であるから,A県条例の罪の刑で処断すべきである旨いうのであるが,独自の解釈を前提とするものであって,失当というほかない。