児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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「児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例」 最高裁判例解説刑事編H21P463

 「20の児童淫行があり これらは包括して1個の児童淫行罪とされた。).そのうち13に関して3頃製造罪の行為が認められる(これらも包括して1罪の3項製造罪とされた。)」という事案が執行猶予になることは通常ありえないんですよ。管轄違いの主張が出たので、家裁は丸く収めるためにギリギリの執行猶予の判決を出した。被告人は検察官控訴に対する防御として控訴したというのが発端になっています。検察官から控訴取り下げの要求もありました。
 結局、1審の量刑が軽過ぎたので破棄する実益がなかったんですよね。1審から担当している弁護人の本音です。ホントは検察官控訴されてもおかしくなかったんですが、間違って観念的競合で起訴してしまったという弱みがあったので控訴しなかったと推測します。

3 原判決の法令違反に対する対応について
(1) 本決定は. 「児童ポルノ法7条3項の罪についても上記改正前の少年法37条により家庭裁判所の管轄を認めて審理,判決した第1審判決を是認した原判決は,法令に違反するものである。」としたが,原判決を破棄することをせず「しかしながら,被告会人については,いずれにしても児童福祉法34条1項6号違反の罪の成立が認められ,児童ポルノ法7条3項の罪についても家庭裁判所が判断したことによって被告人に特段の小利益があったとはいえないことなどに照らすと, 上記法令違反を理由として原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。」とした。この点について,以下,説明する。
本決定は,著しく正義に反するものとは認められないとしているから,刑訴法411条柱書きの「原決決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるとき」との要件を満たさないと判断したものと解される。したがって,法令の違反が判決に影響を及ぼすことは前提としているように思われる。
このように「原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるとき」といえないとされたことについてはどのような事情が考慮されたものであろうか。判文は,いずれにしても児童福祉法34条1項6号違反の罪の成立が認められること,児童ポルノ法7条3頃の罪についても家庭裁判所が判断したことによって被告人に特段の不利益があったとはしえないことを挙げているが,これを分析検討すれば,以下のような事情が指摘できるように思われる。
ア 本件においては. 20の児童淫行があり、これらは包括して1個の児童淫行罪とされた。).そのうち13に関して3頃製造罪の行為が認められる(これらも包括して1罪の3項製造罪とされた。)ところ,児童淫行罪の法定刑は重く(10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科).本件自体非常に悪質な事案であるが,被告人について酌むべき事情があることも考慮し,懲役3年・5年間執行猶予・保護観察とされたものである。そうすると,仮に3項製造罪(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)が犯罪事実から除外されたとしても,量刑が原判決よりも大幅に軽くなる事案とは到底考えられない(本件で実刑が選択されていれば,児童ポルノ製造罪が除外されることにより執行猶予となる可能性が出てくることも考えられなくはないが,本件はそのような事案ではない。)。
イ 家庭裁判所が3項製造罪について併せて判断したことは,被告人が仮に3項製造罪について地力裁判所で別に審理された場合と比べると,併合の利益を享受したという意味で被告人にとって利益であったということが可能である。
ウ 家庭裁判所による判断を受けたことは,被告人にとって特段の不利益があったとはいえない。すなわち,家庭裁判所の裁判官は,地万裁判所の裁判官と資格の面において全く同じであり,その他の面においても家庭裁判所における刑事裁判手続が地方裁判所における手続と違いがあるとはいえない。家庭裁判所地方裁判所のいずれが審理・判決するかは,平成20年改正を見ても明らかなように,立法政策としていずれの選択もあり得た問題である。
以上のような事情が,本決定が原判決の罪数判断の誤りを指摘したで上告は棄却することとした背景にあったのてはないかと推察される。