児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

少年事件の実務と法理実務「現代」刑事法

これも注文した。お世話になってるから。

少年事件の実務と法理―実務「現代」刑事法

少年事件の実務と法理―実務「現代」刑事法

 誤字一覧表を作られた腹いせに誤字誤植を捜すわけではありません。


追記
 植村判事は、被告人控訴・上告事件でも、差し戻したら検察官控訴されて不利益変更もありうるというのでしょうか?

 なお、同書には「少年法37条の削除について」という章があるが、【(カ)併合罪を・・・」の「【」は誤植である。

P407
【(カ)併合罪を観念的競合として取り扱っていた場合の処理
児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と.いわゆる児童ポルノ法7条3項の児童ポルノ製造罪の罪数関係については,最一小決平成21年10月21日裁時1494号3頁は併合罪の関係にあるとした。
他方,同事件は.第一審(札幌家庭裁判所小樽支部).第二審(札幌高判平成19年3月8日)ともに.観念的競合の関係にあるものとして審理・判決されてきていた。
最高裁は. 1. 2審判決には法令違反があるとしつつ.r被告人については.いずれにしても児童福祉法34条l項6号違反の罪の成立が認められ.児童ポルノ法7条3項の罪についても家庭裁判所が判断したことによって被告人に特段の不利益があったとはいえない」などとして原判決を破棄せず,上告を棄却した。
筆者は.この最高裁の判断は適切なものであったと受け止めているが.筆者なりの視点から補足する。
客観的には併合罪の関係にある甲罪(家庭裁判所に管轄のある罪)と乙罪(家庭裁判所には管轄がない罪)とが観念的競合の関係にあるとして家庭裁判所で審理・判決された事件が控訴審に係属した場合,控訴審が両罪を併合罪の関係にあると解した場合には.どのような処理をすることになるのであろうか。
違法があることは明らかであるから,原判決を破棄して乙罪については管轄地方裁判所に差し戻し,甲罪については自判又は管轄家庭裁判所に差し戻す.というのが自然な処理であるといえよう
しかしそうなった前提で考えると,被告人は併合の利益を享受しつつ第一審判決を受けていたのに.その利益が失われることになるばかりか,新たに.差し戻された審級での審理・判決を受けることになる。しかも.検察官控訴の場合は,刑事訴訟法402条所定の不利益変更禁止の制約を受けない。こういったことも第一審判決の量刑自体に不当な点があれば有意義な面はあろうが.そういったことが認められない事案では,このような処理をする実益があるとは思われない。
特に.本件のように.家庭裁判所で第一審判決がされている事案では,甲罪について家庭裁判所が管轄を持っている点は侵害されていなし、から尚更である。
これらを踏まえると.いわゆる手続維持の原則を適用して,控訴審としては,違法を指摘しつつも控訴を棄却する.換言すれば,本件における最高裁と同様の処理をすることも.控訴審における手続として許容されるのではないかと考えている。少なくとも,本故高裁決定はそういった処理をすることの積極的な妨げとなる判例ではないと解することができる。
いずれにしても,近時の法改正を経て現在ではこのような事態は生じなくなっているが.本件は.本条を削除する実務的な意義のあることを示した事例といえよう。]